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第17章 海と大地の狭間に
第680話 神話の遡上による面倒な話が
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ヴェガはいつものように一人で話をしているうちに感情が高ぶってきたらしく、身振り手振りを交えつつ『忌まわしの都』について語り出す。
司法官という職務はオレの感覚ならば、私情を交えるべき立場ではないはずなのだが、これがアンティリウスを信仰する人間の傾向なのか、はたまたヴェガ個人の性質なのかはちょっと分からない。
「そしてその『忌まわしの都』を象徴する神が、干拓地で崇拝されている双子神なのだ!」
「え? それは本当なのですか?」
干拓地で聞いた神話では、双子神は人々の醜い争いを見せたくない母神『大海の貴婦人』の意思で眠らされて、父神である火山の神ボルカの大噴火でようやく目を覚ました事になっていたけど、どうやらヴェガ達の神話では時系列が違うらしい。
「もちろんだとも。かの双子神は忌わしい邪神だと言ったが、奴らは汚らわしくも兄弟姉妹同士で結ばれる事を信徒達に勧め、それによってごく近い血縁だけの特権階級を作りあげてその腐敗が永遠に続くようにしたのだ」
「そしてそれが干拓地では未だに続いているとおっしゃるのですか」
「ああそうだ。だからあの忌わしい邪神への崇拝は決して許してはならんのだ。たとえ表向きは人々の役に立つ善良な顔をしていても、それは人の心を腐らせ邪な崇拝へと導かんとする邪悪な意図が含まれているのだからな」
以前に出会った『相対思想の神』であるオセンタルカを嫌悪している勢力も、似たような表現を使っていたな。
まあそのあたりはどこであっても敵対する信仰への罵倒は同じということか。
しかしこれは推測だけど、たぶん太古から近親婚のような真似をしていたからヴェガ達は双子神の信徒を毛嫌いするようになったのではない。
恐らく双子神の教団が干拓地での地盤沈下によって『双子神の力を高めるため』に近親婚を始めた結果、それを死刑に値する大罪だと認識しているアンティリウスの司法官が敵視するようになったのではないだろうか。
そして『ごく近い血縁だけの特権階級』が生まれたのも事実だろうけど、もちろんそれは結果としてそうなってしまったのであって『腐敗が永遠に続く』ような意図があったわけでもあるまい。
だがそれがいつしか遡って太古の昔、噴火によって滅んだ『忌まわしの都』の伝説と結びついて、このような言い伝えになっているような気がするぞ。
もちろんいまそんな事を指摘しても、ヴェガが受け入れるはずも無いので、ここは適当に話を合わせるしか無いか。
しかし双子神の教団が使役している『地の底に呼ぶもの』がその『忌まわしの都』で命を落とした人間の亡霊だったとすると、火砕流に呑み込まれて死んだ後も魂を縛られて使役され、しかも地元の人間からは『堕落した者どもが受けた天罰の結果』と見なされているのだから、何とも気の毒な事だ。
オレにどうにか出来るのならば、彼らをどうにか解放してやりたいところだけど、今の時点では何をすればいいのか見当もつかないな。
そしてここでヴェガはその表情を引き締め、オレに問いかけてくる。
「改めて問うがお前達の旅は『忌まわしの都』と何か関係があるのではないのか?」
「それは……」
この質問にはちょっとばかりオレも返答に窮する。
しかしヴェガはたたみかけるようにその身を寄せてきた。
「ごまかすな。エレリアの身体が丈夫では無いので、湯治のためという話はウソではないかもしれないが、本当の目的が別にあるらしい事ぐらい見当はついていた」
やっぱり司法官だけあって、そういうところは敏感なのか。
もちろんヴェガが双子の行動について疑問に抱くのは当然だな。
面倒なのはガレリア・エレリアの兄妹は双子神の教団が行っている近親婚には反対しているが、双子神の信徒である事はかわりない。
もちろんあの兄妹にとって双子神は邪神では無く、ただ干拓地の地盤沈下を阻止するために大地を象徴する父神との繋がりを強化したいだけなのだ。
その方法で本当に地盤沈下が阻止出来るのかどうか、オレにはまったく分からないが、それでも彼らの手助けをするのを決めた事に迷いは無い。
「念のために断っておきますけど、あの二人は別に『忌まわしの都』を探しているのではありませんよ」
これはウソでは無いぞ。ガレリア達が探しているのはあくまでも『双子神の失われた生誕の聖地』なのだから。
仮に『忌まわしの都』について聞いたところで、二人とも何の事だか見当もつかないのは確かだ。
「では何が目的なのだ? 断っておくが私は堂々と女の裸を覗きに来るような輩を信じるわけにはいかぬからな」
ぬう。先ほどガレリアが風呂を覗きに来た事が、また厄介な事態を招いているな。
それはともかくここで双子神を邪神だと信じ込んでいるヴェガにそのまま話をしたら、確実にガレリア達を捕らえようとするだろう。
そうなっても切り抜けられる手はいろいろと考えてはいるけど、なるだけヴェガを敵に回すような真似は避けたいところだ。
「ヴェガさんのその言葉だとわたしの方は信じて下さっているのですか?」
「勘違いしないでもらいたいが、まだあの男よりもマシというだけだからな」
やっぱりヴェガはガレリアに裸を見られた事を根に持っているらしい。
ただ『男に裸を見られたからには相手を殺すか、結婚するしかない』とか、その手の困った掟があるわけではないのは少しばかりホッとするところだと考えるしかないのかな。
司法官という職務はオレの感覚ならば、私情を交えるべき立場ではないはずなのだが、これがアンティリウスを信仰する人間の傾向なのか、はたまたヴェガ個人の性質なのかはちょっと分からない。
「そしてその『忌まわしの都』を象徴する神が、干拓地で崇拝されている双子神なのだ!」
「え? それは本当なのですか?」
干拓地で聞いた神話では、双子神は人々の醜い争いを見せたくない母神『大海の貴婦人』の意思で眠らされて、父神である火山の神ボルカの大噴火でようやく目を覚ました事になっていたけど、どうやらヴェガ達の神話では時系列が違うらしい。
「もちろんだとも。かの双子神は忌わしい邪神だと言ったが、奴らは汚らわしくも兄弟姉妹同士で結ばれる事を信徒達に勧め、それによってごく近い血縁だけの特権階級を作りあげてその腐敗が永遠に続くようにしたのだ」
「そしてそれが干拓地では未だに続いているとおっしゃるのですか」
「ああそうだ。だからあの忌わしい邪神への崇拝は決して許してはならんのだ。たとえ表向きは人々の役に立つ善良な顔をしていても、それは人の心を腐らせ邪な崇拝へと導かんとする邪悪な意図が含まれているのだからな」
以前に出会った『相対思想の神』であるオセンタルカを嫌悪している勢力も、似たような表現を使っていたな。
まあそのあたりはどこであっても敵対する信仰への罵倒は同じということか。
しかしこれは推測だけど、たぶん太古から近親婚のような真似をしていたからヴェガ達は双子神の信徒を毛嫌いするようになったのではない。
恐らく双子神の教団が干拓地での地盤沈下によって『双子神の力を高めるため』に近親婚を始めた結果、それを死刑に値する大罪だと認識しているアンティリウスの司法官が敵視するようになったのではないだろうか。
そして『ごく近い血縁だけの特権階級』が生まれたのも事実だろうけど、もちろんそれは結果としてそうなってしまったのであって『腐敗が永遠に続く』ような意図があったわけでもあるまい。
だがそれがいつしか遡って太古の昔、噴火によって滅んだ『忌まわしの都』の伝説と結びついて、このような言い伝えになっているような気がするぞ。
もちろんいまそんな事を指摘しても、ヴェガが受け入れるはずも無いので、ここは適当に話を合わせるしか無いか。
しかし双子神の教団が使役している『地の底に呼ぶもの』がその『忌まわしの都』で命を落とした人間の亡霊だったとすると、火砕流に呑み込まれて死んだ後も魂を縛られて使役され、しかも地元の人間からは『堕落した者どもが受けた天罰の結果』と見なされているのだから、何とも気の毒な事だ。
オレにどうにか出来るのならば、彼らをどうにか解放してやりたいところだけど、今の時点では何をすればいいのか見当もつかないな。
そしてここでヴェガはその表情を引き締め、オレに問いかけてくる。
「改めて問うがお前達の旅は『忌まわしの都』と何か関係があるのではないのか?」
「それは……」
この質問にはちょっとばかりオレも返答に窮する。
しかしヴェガはたたみかけるようにその身を寄せてきた。
「ごまかすな。エレリアの身体が丈夫では無いので、湯治のためという話はウソではないかもしれないが、本当の目的が別にあるらしい事ぐらい見当はついていた」
やっぱり司法官だけあって、そういうところは敏感なのか。
もちろんヴェガが双子の行動について疑問に抱くのは当然だな。
面倒なのはガレリア・エレリアの兄妹は双子神の教団が行っている近親婚には反対しているが、双子神の信徒である事はかわりない。
もちろんあの兄妹にとって双子神は邪神では無く、ただ干拓地の地盤沈下を阻止するために大地を象徴する父神との繋がりを強化したいだけなのだ。
その方法で本当に地盤沈下が阻止出来るのかどうか、オレにはまったく分からないが、それでも彼らの手助けをするのを決めた事に迷いは無い。
「念のために断っておきますけど、あの二人は別に『忌まわしの都』を探しているのではありませんよ」
これはウソでは無いぞ。ガレリア達が探しているのはあくまでも『双子神の失われた生誕の聖地』なのだから。
仮に『忌まわしの都』について聞いたところで、二人とも何の事だか見当もつかないのは確かだ。
「では何が目的なのだ? 断っておくが私は堂々と女の裸を覗きに来るような輩を信じるわけにはいかぬからな」
ぬう。先ほどガレリアが風呂を覗きに来た事が、また厄介な事態を招いているな。
それはともかくここで双子神を邪神だと信じ込んでいるヴェガにそのまま話をしたら、確実にガレリア達を捕らえようとするだろう。
そうなっても切り抜けられる手はいろいろと考えてはいるけど、なるだけヴェガを敵に回すような真似は避けたいところだ。
「ヴェガさんのその言葉だとわたしの方は信じて下さっているのですか?」
「勘違いしないでもらいたいが、まだあの男よりもマシというだけだからな」
やっぱりヴェガはガレリアに裸を見られた事を根に持っているらしい。
ただ『男に裸を見られたからには相手を殺すか、結婚するしかない』とか、その手の困った掟があるわけではないのは少しばかりホッとするところだと考えるしかないのかな。
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