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第17章 海と大地の狭間に
第681話 エレリアの話から
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とにかくここはオレがヴェガと双子の間を取りなすしかないな。
「確かにヴェガさんの思っておられるとおり、あの兄妹は決して双子神と無関係ではありません。しかし繰り返しますけど、決して双子同士で結ばれるとか、そのような事を考えているワケではないのです」
「ならば何が目的なのだ?」
「それなのですけど――」
仕方が無いので、ここは出来る限り正直に話すしか無いか。
少なくともヴェガは偏狭な面はあっても、話が通じない相手ではないし、ここはどうにか双子の意図を伝えて納得してもらうしかない。だが――
「その件については私が話をしましょう」
静かな声が響いたので思わず振り向くと、そこにはエレリアとその後に続くガレリアが揃っていた。
ただエレリアの背後にいるガレリアはいろいろと制裁、もとい説教されたらしく憮然とした表情を浮かべている。
「いいだろう。分かっていると思うが、舌先三寸でのごまかしは通用しないぞ」
そう言っててヴェガは愛用の槍を握りしめると、そこでガレリアは妹を庇うように二人の間に立った。
取りあえずここはオレがいつものように『調和』をかけて暴力的な活動は抑止しておこう。
「あなたも分かっておられるでしょうけど、我らは確かにあなたの嫌う『双子神』の信徒ではあります」
「つまり今まで私を騙していたのか!」
ヴェガは怒りを示すが、エレリアはまるで動じない。
「いいえ。少なくともこれまで私どもは誰もそれを否定はしていませんよ。兄さんもアルさんもそんな事は口にしていませんよね?」
「ああ。確かにその通りだ」
「むう……だがアルは確かお前達のことを――」
「思い出して下さい。アルさんはあなたに対して我ら兄妹が『双子神の司祭では無い』とお伝えしたはずです。実際に信徒ではあっても司祭ではありませんからウソではないですよ」
そうだ。オレもこの二人が『双子で結ばれる事は無い』と繰り返しては来たが、決して『双子神の信徒』である事を否定はしてこなかった。
しかしエレリアはちゃんとそれを意識して覚えていたのか。なかなか抜け目ないな。
「だがそれだとしても――」
「あなた方のルールではあくまでも『近親婚』がいけないのであって『双子神の信徒』であることそのものは罪では無いはずです。違いますか?」
「ぐう……」
エレリアは初対面の病弱で儚げな印象とは異なり、随分としたたかなのだな。
まあオレがヴェガに対してついた明白なウソは『ガレリアと恋人同士』というものだけど、そっちは少なくとも当面は突っ込まれる心配は無いだろう。
もしも可能ならば真っ先にウソだとカミングアウトしたい話なんだけど。
「だが本当の目的がエレリアの湯治では無いのは確かだろう」
「ええ。確かに本当の目的は違いますよ。我らはかつての失われた双子神の聖地を探しているのです」
「やはりそうか!」
ヴェガはまたしても怒りを示すもののエレリアは動じない。
「誤解なさらないで下さい。我らはあくまでも干拓地における危機への救いを求めているだけであって、あなたが考えているような邪な意図などありません」
「そんな話が信じられるか!」
「待ってくれ! 妹の言葉は本当だ! 疑うなら妹では無く俺を刺せ!」
必死で妹をかばうガレリアの態度は立派ではある。
恋人面して迫ってこなかったら、もっとよかったとは思える程には格好いい。
「落ち着いて下さい。繰り返しますがそもそもヴェガさんが双子神を敵視しているのは、その司祭階級が近親婚をしているからなのですよね?」
「もちろんだとも。それは何度も言っているだろう」
「我らはむしろその近親婚を辞めさせたいのです。この旅の目的の一つがそれなのです」
「いったいどういうことだ?」
「まず双子神の司祭達が近親婚を始めたのは、百年ほど前の話です」
「待てい!」
このエレリアの言葉にヴェガは明らかに怒りを示す。
「双子神は双子でありながら夫婦でもある邪な近親相姦の邪神であろうが! ならば最初からお前達の司祭共もそうしていたはずだ」
「何だと! いや……」
今度はガレリアが激発するが、すぐに引き下がったのはエレリアがテレパシーで止めたからなのだろうな。
そしてエレリアの方は全く動じる事無く話を続ける。
「実際に我ら兄妹が過去の記録を調べた結果ですよ。干拓地が次第に沈みつつある事に危機感を抱いた我らの先達は双子神の力を高めるため、その結びつきを強めると称して双子の近親婚を始めたのです。しかしそれは誤りでした」
「むう……」
どうやらエレリアが『近親婚』を否定した事で、ヴェガの興奮も少しは収まったらしい。
「そして我らの双子神が太古からあくまでも二神一柱の兄妹神であって、夫婦では決して無い事を証明するためにもその生誕の地を探し出し、事の真相を明かす必要があるのです。つまり我らの行動はヴェガさんの意志にも沿う事になると思いますよ」
エレリアは静かだがそれでも力強く断言した。
それはこの兄妹が崇拝する双子神の妹である海の女王リーナ神の存在を思わせる程のものだった。
だけどそれで海の力が増しているから、干拓地が少しずつ沈んでいっているのではないかとついつい内心でツッコミを入れてしまったけどな。
「確かにヴェガさんの思っておられるとおり、あの兄妹は決して双子神と無関係ではありません。しかし繰り返しますけど、決して双子同士で結ばれるとか、そのような事を考えているワケではないのです」
「ならば何が目的なのだ?」
「それなのですけど――」
仕方が無いので、ここは出来る限り正直に話すしか無いか。
少なくともヴェガは偏狭な面はあっても、話が通じない相手ではないし、ここはどうにか双子の意図を伝えて納得してもらうしかない。だが――
「その件については私が話をしましょう」
静かな声が響いたので思わず振り向くと、そこにはエレリアとその後に続くガレリアが揃っていた。
ただエレリアの背後にいるガレリアはいろいろと制裁、もとい説教されたらしく憮然とした表情を浮かべている。
「いいだろう。分かっていると思うが、舌先三寸でのごまかしは通用しないぞ」
そう言っててヴェガは愛用の槍を握りしめると、そこでガレリアは妹を庇うように二人の間に立った。
取りあえずここはオレがいつものように『調和』をかけて暴力的な活動は抑止しておこう。
「あなたも分かっておられるでしょうけど、我らは確かにあなたの嫌う『双子神』の信徒ではあります」
「つまり今まで私を騙していたのか!」
ヴェガは怒りを示すが、エレリアはまるで動じない。
「いいえ。少なくともこれまで私どもは誰もそれを否定はしていませんよ。兄さんもアルさんもそんな事は口にしていませんよね?」
「ああ。確かにその通りだ」
「むう……だがアルは確かお前達のことを――」
「思い出して下さい。アルさんはあなたに対して我ら兄妹が『双子神の司祭では無い』とお伝えしたはずです。実際に信徒ではあっても司祭ではありませんからウソではないですよ」
そうだ。オレもこの二人が『双子で結ばれる事は無い』と繰り返しては来たが、決して『双子神の信徒』である事を否定はしてこなかった。
しかしエレリアはちゃんとそれを意識して覚えていたのか。なかなか抜け目ないな。
「だがそれだとしても――」
「あなた方のルールではあくまでも『近親婚』がいけないのであって『双子神の信徒』であることそのものは罪では無いはずです。違いますか?」
「ぐう……」
エレリアは初対面の病弱で儚げな印象とは異なり、随分としたたかなのだな。
まあオレがヴェガに対してついた明白なウソは『ガレリアと恋人同士』というものだけど、そっちは少なくとも当面は突っ込まれる心配は無いだろう。
もしも可能ならば真っ先にウソだとカミングアウトしたい話なんだけど。
「だが本当の目的がエレリアの湯治では無いのは確かだろう」
「ええ。確かに本当の目的は違いますよ。我らはかつての失われた双子神の聖地を探しているのです」
「やはりそうか!」
ヴェガはまたしても怒りを示すもののエレリアは動じない。
「誤解なさらないで下さい。我らはあくまでも干拓地における危機への救いを求めているだけであって、あなたが考えているような邪な意図などありません」
「そんな話が信じられるか!」
「待ってくれ! 妹の言葉は本当だ! 疑うなら妹では無く俺を刺せ!」
必死で妹をかばうガレリアの態度は立派ではある。
恋人面して迫ってこなかったら、もっとよかったとは思える程には格好いい。
「落ち着いて下さい。繰り返しますがそもそもヴェガさんが双子神を敵視しているのは、その司祭階級が近親婚をしているからなのですよね?」
「もちろんだとも。それは何度も言っているだろう」
「我らはむしろその近親婚を辞めさせたいのです。この旅の目的の一つがそれなのです」
「いったいどういうことだ?」
「まず双子神の司祭達が近親婚を始めたのは、百年ほど前の話です」
「待てい!」
このエレリアの言葉にヴェガは明らかに怒りを示す。
「双子神は双子でありながら夫婦でもある邪な近親相姦の邪神であろうが! ならば最初からお前達の司祭共もそうしていたはずだ」
「何だと! いや……」
今度はガレリアが激発するが、すぐに引き下がったのはエレリアがテレパシーで止めたからなのだろうな。
そしてエレリアの方は全く動じる事無く話を続ける。
「実際に我ら兄妹が過去の記録を調べた結果ですよ。干拓地が次第に沈みつつある事に危機感を抱いた我らの先達は双子神の力を高めるため、その結びつきを強めると称して双子の近親婚を始めたのです。しかしそれは誤りでした」
「むう……」
どうやらエレリアが『近親婚』を否定した事で、ヴェガの興奮も少しは収まったらしい。
「そして我らの双子神が太古からあくまでも二神一柱の兄妹神であって、夫婦では決して無い事を証明するためにもその生誕の地を探し出し、事の真相を明かす必要があるのです。つまり我らの行動はヴェガさんの意志にも沿う事になると思いますよ」
エレリアは静かだがそれでも力強く断言した。
それはこの兄妹が崇拝する双子神の妹である海の女王リーナ神の存在を思わせる程のものだった。
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