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第17章 海と大地の狭間に
第685話 開拓地で見つけたものは
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オレ達が民兵達からあからさまな不信感を込められた視線を注がれつつ、関所を出てしばらく進んだところで、ヴェガは小さく侘びを述べる。
「すまんな。見苦しいところを見せてしまった。気を悪くしただろう」
「いえ。お気になさらず。むしろ助かりました」
ヴェガが連中の注意を引いてくれていなかったと思うとゾッとする。
そういう意味ではヴェガのおかげでこちらは助かったわけで、むしろ感謝すべきだろうな。
オレの言葉を受けて、ガレリアとエレリアも合いの手を入れてくる。
「アルの言うとおりだ。別にヴェガが悪いわけではなかろうが」
「ええ。ヴェガさんがいなければ、この地に入ることもできなかったでしょう。私どもは感謝していますよ」
「うむ……これもきっと神命だろう」
そういえばガレリアは、エレリアこそが双子神の寵愛篤く、彼女の行動は神命によるものだと信じていたようだが、いろいろあるにしろオレやヴェガが旅の仲間に加わっている事もまた『神の意図』だと考えているかもしれないな。
「そう言ってくれると私も気が楽になる……だが決してお前達に対しても気を許したわけではないからな、そこは勘違いをするなよ」
思い返せばヴェガはあくまでもオレ達の監視が目的だったんだな。ガレリアが『神命』だと口にした事で、むしろ意識されてしまったか。
どこかツンデレっぽい台詞ではあるが、まあこれは別に照れ隠しでは無いだろう。
そんなわけでオレの方からヴェガに問いかける。
「しかし本当によそ者を毛嫌いしているのですね」
「ああ。ケルマルを崇拝するもの達も我等と同じ太陽を崇拝してはいるのだが、やつらはそのもっとも辺境で活動しているために、自分たち以外のものを信頼しないし、先ほど連中が口にしたように女を低く見る傾向が強いのだ」
元からヴェガの属する文化は男尊女卑が結構強かったらしいが、その中でもさらに特別なのは間違い無いな。。
おそらく辺境で開拓するにあたって周囲からの襲撃を常に警戒せねばならないので、女性はなるだけ外に出さないようになったが、それが転じて『女は家に属するもの』的な価値観が根付いてしまったのかもしれないな。
元々は大切な女性を守るためのものだったのが、世代を重ねた事で当初の意図が忘れられて、女性を束縛する面が強くなってしまったとすれば何とも皮肉な話だ。
いずれにせよ先ほどはヴェガが『女の身で武装して司法官を務めている』ことに連中の警戒感が集中してくれたけど、次に出会った相手が同じとは限らない。
とにかく下手をするとこの近隣の社会全体が敵に回ってくる危険性もあるわけだから、なるだけ人は関わらずに移動はしたい。
しかし幾ら閉鎖的と言っても外部とは完全に断絶しているワケではない事は先ほどのヴェガと指揮官との会話でも分かるから、旅の商人などもいるはずだ。
「旅人を泊める宿ぐらいはないのですか?」
「もちろんそれぐらいなら存在する。しかしケルマルの司祭が発行した通行証が無いと、やはり警戒されるのは避けられないようだ。私もここに来るのは初めてなので、どの程度なのかはよく分からないがな。つくづく役に立たなくてすまん」
ここでヴェガはまたしても申し訳なさそうな表情を浮かべる。
「そんな事を考えても仕方ありません。とにかく先に進みましょう」
まあ野宿を繰り返すぐらいなら、今まで何度もやってきたことだから特に気にはならない。
ただそれで身体が丈夫では無いエレリアの事が気になる。
そんなわけでオレ達は開拓地を歩む。
火山の噴火でこの地域が火砕流に覆われて、全滅したのは遠い昔の事であり、少なくとも表面的にはその時代の残滓と言えるものは見当たらない。
しかしヴェガの言うところの『忌まわしの都』を探し出す事については、さほど心配はしていなかった。
何しろそのときに命を落とした、浮かばれぬ亡霊が今でも悶えているのだ。
その彼らが火砕流に呑み込まれた場所の上に、何事も無く農地や村が広がっているなどということは普通無いだろう。
ただもしも『呪われた土地』として忌み嫌われていたとしたら、これだけ閉鎖的な集団だから迂闊に聞き回ると、警戒されてまたいろいろと厄介な事にもなりかねない。
下手をすれば『魔女狩り』の対象として、地域を挙げて追い回される危険性すらあるな。
そんな事を考えていると日が暮れてきたのだが、道の先にはかなり大きな建物が見えてきた。村ではなく恐らくは寺院だろう。
遠目にもかなりの規模に見える。
「今日はあそこに泊めてもらいましょうか?」
「ううむ。受け入れてもらえればよいが……とにかく私が交渉しよう」
オレ達が歓迎されざる客なのは分かっているが、それでもヴェガが同行している以上はいきなり攻撃されたりはしないはずだ。
そんなわけでオレ達は見つけた寺院に向かうことにした。
だが近づくにつれてオレは少しばかり不自然な事に気付く。
太陽はかなり傾いているとは言えど、まだ沈んでいるわけでもないのに、あたりには人の姿が見当たらないのだ。
「これは……」
ヴェガも怪訝な表情を浮かべているから、たぶん様子がおかしい事には気付いているのだろう。
そして寺院に近づいたところで、その理由は明白になった。
その寺院は既に放棄されて廃虚となっていたのだ。
「すまんな。見苦しいところを見せてしまった。気を悪くしただろう」
「いえ。お気になさらず。むしろ助かりました」
ヴェガが連中の注意を引いてくれていなかったと思うとゾッとする。
そういう意味ではヴェガのおかげでこちらは助かったわけで、むしろ感謝すべきだろうな。
オレの言葉を受けて、ガレリアとエレリアも合いの手を入れてくる。
「アルの言うとおりだ。別にヴェガが悪いわけではなかろうが」
「ええ。ヴェガさんがいなければ、この地に入ることもできなかったでしょう。私どもは感謝していますよ」
「うむ……これもきっと神命だろう」
そういえばガレリアは、エレリアこそが双子神の寵愛篤く、彼女の行動は神命によるものだと信じていたようだが、いろいろあるにしろオレやヴェガが旅の仲間に加わっている事もまた『神の意図』だと考えているかもしれないな。
「そう言ってくれると私も気が楽になる……だが決してお前達に対しても気を許したわけではないからな、そこは勘違いをするなよ」
思い返せばヴェガはあくまでもオレ達の監視が目的だったんだな。ガレリアが『神命』だと口にした事で、むしろ意識されてしまったか。
どこかツンデレっぽい台詞ではあるが、まあこれは別に照れ隠しでは無いだろう。
そんなわけでオレの方からヴェガに問いかける。
「しかし本当によそ者を毛嫌いしているのですね」
「ああ。ケルマルを崇拝するもの達も我等と同じ太陽を崇拝してはいるのだが、やつらはそのもっとも辺境で活動しているために、自分たち以外のものを信頼しないし、先ほど連中が口にしたように女を低く見る傾向が強いのだ」
元からヴェガの属する文化は男尊女卑が結構強かったらしいが、その中でもさらに特別なのは間違い無いな。。
おそらく辺境で開拓するにあたって周囲からの襲撃を常に警戒せねばならないので、女性はなるだけ外に出さないようになったが、それが転じて『女は家に属するもの』的な価値観が根付いてしまったのかもしれないな。
元々は大切な女性を守るためのものだったのが、世代を重ねた事で当初の意図が忘れられて、女性を束縛する面が強くなってしまったとすれば何とも皮肉な話だ。
いずれにせよ先ほどはヴェガが『女の身で武装して司法官を務めている』ことに連中の警戒感が集中してくれたけど、次に出会った相手が同じとは限らない。
とにかく下手をするとこの近隣の社会全体が敵に回ってくる危険性もあるわけだから、なるだけ人は関わらずに移動はしたい。
しかし幾ら閉鎖的と言っても外部とは完全に断絶しているワケではない事は先ほどのヴェガと指揮官との会話でも分かるから、旅の商人などもいるはずだ。
「旅人を泊める宿ぐらいはないのですか?」
「もちろんそれぐらいなら存在する。しかしケルマルの司祭が発行した通行証が無いと、やはり警戒されるのは避けられないようだ。私もここに来るのは初めてなので、どの程度なのかはよく分からないがな。つくづく役に立たなくてすまん」
ここでヴェガはまたしても申し訳なさそうな表情を浮かべる。
「そんな事を考えても仕方ありません。とにかく先に進みましょう」
まあ野宿を繰り返すぐらいなら、今まで何度もやってきたことだから特に気にはならない。
ただそれで身体が丈夫では無いエレリアの事が気になる。
そんなわけでオレ達は開拓地を歩む。
火山の噴火でこの地域が火砕流に覆われて、全滅したのは遠い昔の事であり、少なくとも表面的にはその時代の残滓と言えるものは見当たらない。
しかしヴェガの言うところの『忌まわしの都』を探し出す事については、さほど心配はしていなかった。
何しろそのときに命を落とした、浮かばれぬ亡霊が今でも悶えているのだ。
その彼らが火砕流に呑み込まれた場所の上に、何事も無く農地や村が広がっているなどということは普通無いだろう。
ただもしも『呪われた土地』として忌み嫌われていたとしたら、これだけ閉鎖的な集団だから迂闊に聞き回ると、警戒されてまたいろいろと厄介な事にもなりかねない。
下手をすれば『魔女狩り』の対象として、地域を挙げて追い回される危険性すらあるな。
そんな事を考えていると日が暮れてきたのだが、道の先にはかなり大きな建物が見えてきた。村ではなく恐らくは寺院だろう。
遠目にもかなりの規模に見える。
「今日はあそこに泊めてもらいましょうか?」
「ううむ。受け入れてもらえればよいが……とにかく私が交渉しよう」
オレ達が歓迎されざる客なのは分かっているが、それでもヴェガが同行している以上はいきなり攻撃されたりはしないはずだ。
そんなわけでオレ達は見つけた寺院に向かうことにした。
だが近づくにつれてオレは少しばかり不自然な事に気付く。
太陽はかなり傾いているとは言えど、まだ沈んでいるわけでもないのに、あたりには人の姿が見当たらないのだ。
「これは……」
ヴェガも怪訝な表情を浮かべているから、たぶん様子がおかしい事には気付いているのだろう。
そして寺院に近づいたところで、その理由は明白になった。
その寺院は既に放棄されて廃虚となっていたのだ。
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