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第17章 海と大地の狭間に
第702話 一応は信頼をもらって
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とりあえず不死の大司祭はこの世を穏便に去っていってくれたようだから、ひとまずは安心だが、当然ながらオレ達がここに来た目的は彼を救う事では無い。
本当にこの下に都市が埋まっていたとしても、それだけでは言わば『この地のどこかに埋蔵金が埋まっている』という話と同じようなもので、オレ達には何の意味も無い。
まあオレの場合、頼めば発掘作業に人手を大勢出してくれる知り合いの当てが何人かいるけど、その場合でもケルマル信徒達は反発するだろうし、いろいろな面倒は避けられない。
やっぱりオレ達だけでどうにかするしかないな。
だがこの塔の頂上部分は長年にわたり入り込んだ土で床がかなり埋もれているが、間違い無く下への階段があるはずだ。
それを探れば地下に向かうルートが見つかるはず。
ただそこまでに埋もれていたら、オレが大地の精霊にでも掛け合って、どうにか掘り起こしてもらうとしよう。
もちろんここで何をしようが、干拓地の地盤沈下をどうしようもない事は十分にあり得るがそれはそれで、オレも覚悟はしている。
その場合はガレリア・エレリアには『失われた聖地を見つけ出した』という成果をもって干拓地に戻り、双子神の教団をよりよい方向に導くべく頑張ってもらえばいいだろう。
当然ながらそのためには、この地に眠っているであろう過去に失われた何らかの宝を証拠として持ち帰る必要がある。
出来れば強力な魔力を有した聖遺物でもあればいいのだが、それがなくとも宝珠とか王笏とか、その類いの象徴となり得るものが見つかれば十分だ。
もちろん最悪の場合として、ガレリア・エレリア達が寺院に帰ったところで、罪人として扱われるようなことになる可能性も否定出来ないが、そのときはオレが正体を明かしてどうにかしよう。
それはそれでややこしい事になるのは確実だが、少なくとも二人が牢屋に放り込まれるよりは――そしてそれに見て見ぬフリをするよりも――ずっとマシだろう。
ここでガレリアがオレに話しかけてくる。
「アル。すまないがエレリアが疲れたらしいので、少し頼まれてくれるか?」
「分かりました」
やはりエレリアにとって霊体と接触するのは負担が大きいらしいな。もともと身体が丈夫でないし、これまでの旅の疲労もあるのだろう。
オレの魔法で支えてはいるけど、当然ながらそれにも限度というものがある。
とりあえず『疲労回復』をエレリアにかけたが、やはり効果は限定的なようだな。
「ひとまずお二人はいったんここを出て、しばらく休んでいて下さい。ここはわたしが調べておきますから」
「分かった。感謝するぞ」
そう言って双子が一度、出ていったところでヴェガが小声でオレに話かけてくる。
「エレリアもいろいろ気になるが……アルについて聞かせてもらってよいだろうか?」
ちょっと前にオレに事について聞いて来たのを、エレリアに中断させられたが、やっぱりオレの能力が気になるのは当然か。
「アルが治癒の女神の信徒なのは分かっている」
いえ。本当は違うんですけど、それを否定するとやっぱり話が面倒になるので、ここは同意するしかない。
「だがそれにしてもアルの能力はあまりに桁違いだ。大勢の人間の病気を造作も無く治し、また先ほどもあれだけ強力な魔法をまるで蝋燭を吹き消すかのように、消し去っていたな?」
「ええ……まあそうですね……」
さすがに司法官だけあって『そんなの普通です』なんて答えたら、ウソをついているのはモロバレだろうなあ。
「しかもこれだけいろいろな出来事に関わっておきながら、その落ち着きようは何度もこんな事を経験しているとしか思えない」
ここで改めてヴェガはズイと身を寄せてくる。
「いったいアルの正体は何者なのだ?」
「何者だと言われましても、わたしが何か密命でも帯びて、この地でいかがわしい活動を行っているのかとお疑いなのですか」
「いくら何でもアルが邪悪な意図を持って行動しているとは思っていない。数日の付き合いだが私の目は節穴では無いぞ」
ガレリア達、二人が一緒にいただけで『双子での近親婚ではないのか』と目を吊り上げ、槍を振りかざしていたような記憶があるけど、そこを今突っ込んでも仕方ないか。
「大陸中にその名を轟かせている、治癒の女神の女英雄の話は私も聞いた事がある。もしかしたらアルは――」
うぐう。やっぱりそこに話がいくか。
普通だったそんな事を考えたりはしないだろうけど、オレが今まで繰り返しとんでもない能力を見せてきたから、ヴェガも確信とまではいかなくとも『もしかしたら』と思っているに違いない。
だがここでヴェガは小さくため息をつく。
「まあいい。いまは話せないのは相応の理由があるのだろう。だがこの一件が片付けば、アルの身の上の事を教えてくれまいか?」
「分かりました。約束しましょう」
どうやらヴェガもこっちの事を慮ってくれたらしい。
ただオレを過去の行為について聞いているなら、ひょっとすると人に言えない『神命』を帯びてここで活動しているのではないかと深読みしている可能性もあるな。
ただそれを問い詰めないと言う事は、少なくともオレが悪しき意図を持って行動しているとは思っていないわけで、信頼はしてくれているのだろう。
いろいろと面倒はあるけど、こうして友人が増えるのはオレにとっても喜ばしい事だよ。
本当にこの下に都市が埋まっていたとしても、それだけでは言わば『この地のどこかに埋蔵金が埋まっている』という話と同じようなもので、オレ達には何の意味も無い。
まあオレの場合、頼めば発掘作業に人手を大勢出してくれる知り合いの当てが何人かいるけど、その場合でもケルマル信徒達は反発するだろうし、いろいろな面倒は避けられない。
やっぱりオレ達だけでどうにかするしかないな。
だがこの塔の頂上部分は長年にわたり入り込んだ土で床がかなり埋もれているが、間違い無く下への階段があるはずだ。
それを探れば地下に向かうルートが見つかるはず。
ただそこまでに埋もれていたら、オレが大地の精霊にでも掛け合って、どうにか掘り起こしてもらうとしよう。
もちろんここで何をしようが、干拓地の地盤沈下をどうしようもない事は十分にあり得るがそれはそれで、オレも覚悟はしている。
その場合はガレリア・エレリアには『失われた聖地を見つけ出した』という成果をもって干拓地に戻り、双子神の教団をよりよい方向に導くべく頑張ってもらえばいいだろう。
当然ながらそのためには、この地に眠っているであろう過去に失われた何らかの宝を証拠として持ち帰る必要がある。
出来れば強力な魔力を有した聖遺物でもあればいいのだが、それがなくとも宝珠とか王笏とか、その類いの象徴となり得るものが見つかれば十分だ。
もちろん最悪の場合として、ガレリア・エレリア達が寺院に帰ったところで、罪人として扱われるようなことになる可能性も否定出来ないが、そのときはオレが正体を明かしてどうにかしよう。
それはそれでややこしい事になるのは確実だが、少なくとも二人が牢屋に放り込まれるよりは――そしてそれに見て見ぬフリをするよりも――ずっとマシだろう。
ここでガレリアがオレに話しかけてくる。
「アル。すまないがエレリアが疲れたらしいので、少し頼まれてくれるか?」
「分かりました」
やはりエレリアにとって霊体と接触するのは負担が大きいらしいな。もともと身体が丈夫でないし、これまでの旅の疲労もあるのだろう。
オレの魔法で支えてはいるけど、当然ながらそれにも限度というものがある。
とりあえず『疲労回復』をエレリアにかけたが、やはり効果は限定的なようだな。
「ひとまずお二人はいったんここを出て、しばらく休んでいて下さい。ここはわたしが調べておきますから」
「分かった。感謝するぞ」
そう言って双子が一度、出ていったところでヴェガが小声でオレに話かけてくる。
「エレリアもいろいろ気になるが……アルについて聞かせてもらってよいだろうか?」
ちょっと前にオレに事について聞いて来たのを、エレリアに中断させられたが、やっぱりオレの能力が気になるのは当然か。
「アルが治癒の女神の信徒なのは分かっている」
いえ。本当は違うんですけど、それを否定するとやっぱり話が面倒になるので、ここは同意するしかない。
「だがそれにしてもアルの能力はあまりに桁違いだ。大勢の人間の病気を造作も無く治し、また先ほどもあれだけ強力な魔法をまるで蝋燭を吹き消すかのように、消し去っていたな?」
「ええ……まあそうですね……」
さすがに司法官だけあって『そんなの普通です』なんて答えたら、ウソをついているのはモロバレだろうなあ。
「しかもこれだけいろいろな出来事に関わっておきながら、その落ち着きようは何度もこんな事を経験しているとしか思えない」
ここで改めてヴェガはズイと身を寄せてくる。
「いったいアルの正体は何者なのだ?」
「何者だと言われましても、わたしが何か密命でも帯びて、この地でいかがわしい活動を行っているのかとお疑いなのですか」
「いくら何でもアルが邪悪な意図を持って行動しているとは思っていない。数日の付き合いだが私の目は節穴では無いぞ」
ガレリア達、二人が一緒にいただけで『双子での近親婚ではないのか』と目を吊り上げ、槍を振りかざしていたような記憶があるけど、そこを今突っ込んでも仕方ないか。
「大陸中にその名を轟かせている、治癒の女神の女英雄の話は私も聞いた事がある。もしかしたらアルは――」
うぐう。やっぱりそこに話がいくか。
普通だったそんな事を考えたりはしないだろうけど、オレが今まで繰り返しとんでもない能力を見せてきたから、ヴェガも確信とまではいかなくとも『もしかしたら』と思っているに違いない。
だがここでヴェガは小さくため息をつく。
「まあいい。いまは話せないのは相応の理由があるのだろう。だがこの一件が片付けば、アルの身の上の事を教えてくれまいか?」
「分かりました。約束しましょう」
どうやらヴェガもこっちの事を慮ってくれたらしい。
ただオレを過去の行為について聞いているなら、ひょっとすると人に言えない『神命』を帯びてここで活動しているのではないかと深読みしている可能性もあるな。
ただそれを問い詰めないと言う事は、少なくともオレが悪しき意図を持って行動しているとは思っていないわけで、信頼はしてくれているのだろう。
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