異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第18章 奇怪なる殺戮者?

第732話 サレナの奇妙な夜の行動とは

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 何だって?
 サレナが夜中にこの家からいなくなるだって?
 しかもそれは連続殺人が起きたのとほぼ同時期に始まったとは、何らかの関係があるということなのか。
 いや。本当はずっと前から夜の街に出歩いて遊んでいたけど、たまたまシドンが気付いたのが最近だったという実につまらないオチかもしれない。
 サレナは先ほど、シドンが夜中に出歩いていると聞いて、祖父の死の悲しさを紛らわすために夜遊びしているのではないかと言っていたが、それはひょっとすると彼女の行動に根ざした事だった可能性がある。

「僕が最初に気付いたのは、たまたま夜中に便所に行っていたとき、姉さんがこの屋敷から出て行く姿が見えたからなんです」
「そのときはいつ屋敷に戻ってきたのですか?」
「すみません。僕も不安だったのですけど、その時は寝床に戻って寝ていたら、朝には姉さんは戻っていました」

 まあ。そこは仕方ないか。

「そのときは僕もそれほど深刻には考えていなかったのでそのままにしていました。だけどその晩に例の殺人鬼が人殺しをしていたと聞いて、しかもその後でも姉さんはしばしば夜中に寝室からいなくなる事に気付いたんです」

 ここまで聞くとお約束の展開なら、サレナが連続殺人と何か関わりがあると思うかもしれない。もちろん昨晩出会った殺人鬼は、サレナとは似ても似つかぬ相手だけど、それが単独犯とは限らないからな。
 だがほんの短時間の付き合いだが、少なくともサレナが連続殺人を引き起こしているとはちょっと想像出来ない。
 そりゃ人間には外見からは分からない、いろいろな面がある事は何度も思い知らされてきたけれど、それでも限度というものがある。

「そのことについてサレナさんは何と言っているのですか?」
「姉さんは僕が寝ぼけて勘違いしたとの一点張りなんです」

 そうするとオレが聞いても教えてくれるはずはないか。

「それでは昨晩のシドンは……」
「ええ。いなくなった姉さんを探していたんです」

 なるほど。それだからシドンは外出禁止令の出ている夜の街をあちこち探し回って、キョロキョロしていたというのだな。
 しかし幾らサレナの事が心配になったからと言って、殺人鬼のために外出禁止令が出ている夜の街に出向くとは、やはりシドンも相当に向こう見ずな面があるものだ。

「それでシドンにはサレナさんが出向くところに、何か心当たりがあるのですか?」
「いえ……申し訳ないのですけど……」

 もしもシドンに心当たりがあったら、真っ先にそこに向かっただろうな。
 まあシドンの態度からして、やっぱりサレナが連続殺人に関わっているとは思っていないのは間違い無い。

「夜中に出歩くのは、どんな時です? 毎晩ですか?」
「さすがにそこまで煩雑では無いのですけど……だいたい二、三日に一回ぐらいですね」

 そうするとオレがこの屋敷に滞在して待っていたら、サレナが夜中にこっそり出歩く時も来ると言うことか。
 いや。シドンにまで隠しているとなると、オレがこの屋敷に滞在していたら、彼女は何もしない可能性も高いな。
 とにかく何らかの目星はつけたいところだ。

「シドンの想像で構いませんけど、サレナさんはなぜ夜中に出歩き、またそれをあなたに隠していると思いますか?」
「最初は僕も夜遊びしているのではないかと思っていたんですけど、それにしても様子がおかしくて。だけどそれ以外にはまるで見当がつかないんです……本当に僕は頼りにならなくてすみません」

 サレナが殺人に手を染めている可能性は無いとしても、何かを知っていてそれを止めようとしているとか、シドンの祖父の研究について隠されたものがあって、それに関して夜中に出歩く必要があるとか、想像するだけなら幾らでも出てくる。
 もちろんそんな根拠の無い頭の中でこねくり回したものに基づいて、行動するなど危険極まり無い事だ。
 しかしこのまま何もせずに立ち去るとか、無為に過ごすなどという選択肢はオレには無い。

「分かりました。こうなったらわたしが出来る限り協力しましょう」
「本当ですか?! ありがとうございます!」

 シドンはいかにも嬉しげに深々と頭を下げる。

「しかしシドンが問うても答えないとなると……わたしが聞いても同じでしょうね」
「僕もそう思います。だけど……」

 ここでシドンはちょっとどころかかなり申し訳なさそうな表情に変わる。

「これはもの凄く図々しいお願いなんですが……」

 その態度を見れば、シドンがオレに何を頼もうとしているのかはだいたい見当がつく。

「サレナさんが夜中に出歩いたとき、わたしが後をつけて、そこで何をしているのか調べて欲しいのですね」
「そうなんです! 本当に厚かましいお願いで、しかも僕はロクにお礼も出来ません。それでもアルさん以外に頼れる人はいないんです!」

 そう言ってシドンは深々と頭を下げる。もしもオレがやれといったら土下座でもなんでもしそうな勢いだな。
 そんなに簡単に、まだ出会ってから一日も経っていない相手を信頼するなと言いたくなるが、オレのこれまでの行動と、あとはやっぱり見た目が理由だろうなあ。
 まあいい。どっちにしてもここまで来たら乗りかかった船だ。

「どこまで出来るかはわかりませんけど、やってみましょう」
「あ、ありがとうございます!」

 そういってシドンははね飛ばされたかのような勢いでオレの胸元に飛び込んでくる。おい。感極まったのは分かるが、いくら何でもそりゃ図々しくないか?
 そしてそのとき――

「ちょっとシドン、いつまでそこに――ええ?!」

 扉のところにサレナが姿を見せたのだった。
 思わず二人揃って振り向くと、サレナははじめ言葉を失って呆気にとられていた様子で、それから次第にその眉がつり上がっていく。

「あんたら……ここでいったい何をやっているのよ……」
「え……いや。姉さん。これは……」

 ここでシドンもようやくオレの胸に身体を埋めている体勢になっていたのに気付いたらしく、その顔を真っ赤に染めつつ弁解を試みる。

「このバカァー! エロガキが!」

 古ぼけた屋敷が震えるかと思える勢いで、サレナは甲高い叫びを挙げた。
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