異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

文字の大きさ
744 / 1,316
第18章 奇怪なる殺戮者?

第744話 ガザックの言葉から分かったものは

しおりを挟む
 今までいろいろと理不尽な言いがかりをつけられたり、勘違いされたりは数え切れない程あるが、まさかオレがその魔法で人工的に作られた疑似生命体などと誤解されているとはな。
 これはちょっと今までに無かった展開ではあるけど、どうすればいいだろうか。

「それでなぜわたしがその擬似生命体だと思ったのですか?」
「私にはお前の身に宿る人間とは異なる魔力が見えているのだ。言い逃れは出来んぞ」

 オレの魔力はそこらの小神よりも相当上回っているから、確かに人間離れしたものなのは間違い無い。
 そしてこのヒュールの町でオレに比肩しうる存在は、住民が信仰を捧げている町の神ぐらいしかいないはず。
 だけどオレが昨晩、出会った殺人鬼や水銀の女性のいずれも魔力のおいてはオレよりもずっと下だったぞ――残念ながら物差しとなるのがオレの魔力なので、細かいところまで計る事が出来ず、常人をどれだけ凌いでいるかという比較は出来ないのが悩ましい。
 そうか。たぶんガザックはその疑似生命体について断片的な情報しか持っていないのだ。
 だから疑似生命体が――少なくとも現時点では――それほど強大な存在ではないにも関わらず必死で『特別な魔力の持ち主』を探し続けた挙げ句、たまたま見かけたオレが人間離れした魔力を有していたので飛びついてしまったというところだな。
 しかしこれは困ったな。オレがその疑似生命体で無いと言っても、それを証明するとなると一苦労だ。
 相手のガザックは功を焦って、オレがその対象だと決めつけてしまっているのだから尚更説得は難しいだろう。

「お前は自分がどんな存在なのか分かっていなかったのだろうが、恐らくはゾスモス卿が十年前に発見した疑似生命メルティナであろう!」

 メルティナ? それがあの殺人鬼か、もしくは水銀の女性の名前なのか。
 まあ少なくとも殺人鬼の方は自分の名など覚えていなかったのは間違い無いし、たぶんどちらも名前なんぞどうでもいいのだろう。
 だが十年前というとサレナの父であったゾスモスが大発見を成し遂げたと言われつつ、謎の自殺を遂げた時だな。

「それをどうしてあなたが知っているのです?」

 シドンも実家でゾスモスの死が自殺だと聞いたらしいが、あくまでも断片的なものであって詳しい事情は知らなかったからな、ガザックが知っている事は是非とも聞き出したい。

「残念ながらゾスモス卿の研究資料は殆ど残っていない」
「何故ですか?」
「理由は不明だが、当時屋敷に仕えていた者によると、溺愛していた娘の前で狂乱した挙げ句、研究室に飛び込んで自らの身と共にその全てを焼き尽くしたそうだ」

 え? サレナの父は娘を溺愛していたって?
 いったいどういうことだ?
 サレナの言葉からすれば、むしろ娘を憎悪していたかのように思えるのだが。
 その話が本当だと仮定するとゾスモスが狂乱した時に、とんでもない事を口走っただけかもしれない。
 それ以外にも幼いサレナが何かを誤解し記憶違いをしている可能性は当然考えられるし、娘を愛していたというのがあくまでも外面であって、内心を隠していた事もありうる。
 待てよ。
 疑似生命が人から人に乗り移るのなら、ゾスモスは乗り移られかけ、それで覚悟の焼身自殺を遂げたのかもしれないぞ。
 幼い頃にサレナが聞いたという憎しみのこもった『お前さえいなければ』の言葉は、ゾスモスが自分に乗り移った疑似生命に対して向けたものであって、むしろ己を犠牲にして娘を守ろうとした結果という事になる。
 そうすると当時、五歳でそんな事情など知るよしも無いサレナは、父が自分を呪ったと思い込んでいるのか。
 その場合はそれまでの溺愛よりも、最期の呪いの言葉だけが記憶に強烈に残ってしまったというのは特に不思議でも無い。
 もちろんオレの想像でしかないけど、少なくともそれを伝えればサレナにとって救いにはなるはずだ。

「ほぼ全ての資料はそのときに焼失してしまい、残ったのは僅かな焼け残りと後は亡くなる前に周囲の人間にこぼしていた証言だけだ。それと過去の資料を付き合わせた結果として疑似生命メルティナの名が出てきたのだ!」

 ガザックの説明を受けていろいろと分かってきたのはありがたいが、さてどうしよう。
 オレがそのメルティナでは無い事を伝えた上で、少なくとも二体の疑似生命体らしき相手が蠢動している事を教えたとしても今のガザックは聞く耳を持つだろうか?
 望み薄かもしれないが、このままではまたその疑似生命体が殺人を引き起こすのは確実だ。

「待って下さい。繰り返していいますけどわたしはそのメルティナなどという存在とは違いますよ」
「そうだな。疑似生命体は器となる肉体を変えると記憶や知識がかなり抜け落ちるらしい。だからお前が自分の正体を覚えていない事は不思議でも何でも無い」

 そういえば殺人鬼もそんな事を言っていたな。
 そしてそれでいて『自分が何者か知りたい』と言っていたから、あれがその疑似生命体ならば身体を渡り歩いて『自分探しの旅』をしていた事になる。

「疑似生命体は人間の生命を喰らって、生き続ける。だからその身体を調べれば永遠の命の手がかりが得られる筈だ」

 神造者の時と同じく、どうやらガザックはオレを研究材料にしたいらしい。
 この場を切り抜けるにはたぶん話し合いでは無理だろう。
 こうなったら『イロールの化身』になって見せた上で、オレが『アルタシャ』だと示せば理解は得られるかな。
 そんな事を考えていたら、いきなり激しく『取調室』のドアが叩かれて、外がかなり騒がしくなってきたのだった。
しおりを挟む
感想 104

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

処理中です...