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第18章 奇怪なる殺戮者?
第744話 ガザックの言葉から分かったものは
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今までいろいろと理不尽な言いがかりをつけられたり、勘違いされたりは数え切れない程あるが、まさかオレがその魔法で人工的に作られた疑似生命体などと誤解されているとはな。
これはちょっと今までに無かった展開ではあるけど、どうすればいいだろうか。
「それでなぜわたしがその擬似生命体だと思ったのですか?」
「私にはお前の身に宿る人間とは異なる魔力が見えているのだ。言い逃れは出来んぞ」
オレの魔力はそこらの小神よりも相当上回っているから、確かに人間離れしたものなのは間違い無い。
そしてこのヒュールの町でオレに比肩しうる存在は、住民が信仰を捧げている町の神ぐらいしかいないはず。
だけどオレが昨晩、出会った殺人鬼や水銀の女性のいずれも魔力のおいてはオレよりもずっと下だったぞ――残念ながら物差しとなるのがオレの魔力なので、細かいところまで計る事が出来ず、常人をどれだけ凌いでいるかという比較は出来ないのが悩ましい。
そうか。たぶんガザックはその疑似生命体について断片的な情報しか持っていないのだ。
だから疑似生命体が――少なくとも現時点では――それほど強大な存在ではないにも関わらず必死で『特別な魔力の持ち主』を探し続けた挙げ句、たまたま見かけたオレが人間離れした魔力を有していたので飛びついてしまったというところだな。
しかしこれは困ったな。オレがその疑似生命体で無いと言っても、それを証明するとなると一苦労だ。
相手のガザックは功を焦って、オレがその対象だと決めつけてしまっているのだから尚更説得は難しいだろう。
「お前は自分がどんな存在なのか分かっていなかったのだろうが、恐らくはゾスモス卿が十年前に発見した疑似生命メルティナであろう!」
メルティナ? それがあの殺人鬼か、もしくは水銀の女性の名前なのか。
まあ少なくとも殺人鬼の方は自分の名など覚えていなかったのは間違い無いし、たぶんどちらも名前なんぞどうでもいいのだろう。
だが十年前というとサレナの父であったゾスモスが大発見を成し遂げたと言われつつ、謎の自殺を遂げた時だな。
「それをどうしてあなたが知っているのです?」
シドンも実家でゾスモスの死が自殺だと聞いたらしいが、あくまでも断片的なものであって詳しい事情は知らなかったからな、ガザックが知っている事は是非とも聞き出したい。
「残念ながらゾスモス卿の研究資料は殆ど残っていない」
「何故ですか?」
「理由は不明だが、当時屋敷に仕えていた者によると、溺愛していた娘の前で狂乱した挙げ句、研究室に飛び込んで自らの身と共にその全てを焼き尽くしたそうだ」
え? サレナの父は娘を溺愛していたって?
いったいどういうことだ?
サレナの言葉からすれば、むしろ娘を憎悪していたかのように思えるのだが。
その話が本当だと仮定するとゾスモスが狂乱した時に、とんでもない事を口走っただけかもしれない。
それ以外にも幼いサレナが何かを誤解し記憶違いをしている可能性は当然考えられるし、娘を愛していたというのがあくまでも外面であって、内心を隠していた事もありうる。
待てよ。
疑似生命が人から人に乗り移るのなら、ゾスモスは乗り移られかけ、それで覚悟の焼身自殺を遂げたのかもしれないぞ。
幼い頃にサレナが聞いたという憎しみのこもった『お前さえいなければ』の言葉は、ゾスモスが自分に乗り移った疑似生命に対して向けたものであって、むしろ己を犠牲にして娘を守ろうとした結果という事になる。
そうすると当時、五歳でそんな事情など知るよしも無いサレナは、父が自分を呪ったと思い込んでいるのか。
その場合はそれまでの溺愛よりも、最期の呪いの言葉だけが記憶に強烈に残ってしまったというのは特に不思議でも無い。
もちろんオレの想像でしかないけど、少なくともそれを伝えればサレナにとって救いにはなるはずだ。
「ほぼ全ての資料はそのときに焼失してしまい、残ったのは僅かな焼け残りと後は亡くなる前に周囲の人間にこぼしていた証言だけだ。それと過去の資料を付き合わせた結果として疑似生命メルティナの名が出てきたのだ!」
ガザックの説明を受けていろいろと分かってきたのはありがたいが、さてどうしよう。
オレがそのメルティナでは無い事を伝えた上で、少なくとも二体の疑似生命体らしき相手が蠢動している事を教えたとしても今のガザックは聞く耳を持つだろうか?
望み薄かもしれないが、このままではまたその疑似生命体が殺人を引き起こすのは確実だ。
「待って下さい。繰り返していいますけどわたしはそのメルティナなどという存在とは違いますよ」
「そうだな。疑似生命体は器となる肉体を変えると記憶や知識がかなり抜け落ちるらしい。だからお前が自分の正体を覚えていない事は不思議でも何でも無い」
そういえば殺人鬼もそんな事を言っていたな。
そしてそれでいて『自分が何者か知りたい』と言っていたから、あれがその疑似生命体ならば身体を渡り歩いて『自分探しの旅』をしていた事になる。
「疑似生命体は人間の生命を喰らって、生き続ける。だからその身体を調べれば永遠の命の手がかりが得られる筈だ」
神造者の時と同じく、どうやらガザックはオレを研究材料にしたいらしい。
この場を切り抜けるにはたぶん話し合いでは無理だろう。
こうなったら『イロールの化身』になって見せた上で、オレが『アルタシャ』だと示せば理解は得られるかな。
そんな事を考えていたら、いきなり激しく『取調室』のドアが叩かれて、外がかなり騒がしくなってきたのだった。
これはちょっと今までに無かった展開ではあるけど、どうすればいいだろうか。
「それでなぜわたしがその擬似生命体だと思ったのですか?」
「私にはお前の身に宿る人間とは異なる魔力が見えているのだ。言い逃れは出来んぞ」
オレの魔力はそこらの小神よりも相当上回っているから、確かに人間離れしたものなのは間違い無い。
そしてこのヒュールの町でオレに比肩しうる存在は、住民が信仰を捧げている町の神ぐらいしかいないはず。
だけどオレが昨晩、出会った殺人鬼や水銀の女性のいずれも魔力のおいてはオレよりもずっと下だったぞ――残念ながら物差しとなるのがオレの魔力なので、細かいところまで計る事が出来ず、常人をどれだけ凌いでいるかという比較は出来ないのが悩ましい。
そうか。たぶんガザックはその疑似生命体について断片的な情報しか持っていないのだ。
だから疑似生命体が――少なくとも現時点では――それほど強大な存在ではないにも関わらず必死で『特別な魔力の持ち主』を探し続けた挙げ句、たまたま見かけたオレが人間離れした魔力を有していたので飛びついてしまったというところだな。
しかしこれは困ったな。オレがその疑似生命体で無いと言っても、それを証明するとなると一苦労だ。
相手のガザックは功を焦って、オレがその対象だと決めつけてしまっているのだから尚更説得は難しいだろう。
「お前は自分がどんな存在なのか分かっていなかったのだろうが、恐らくはゾスモス卿が十年前に発見した疑似生命メルティナであろう!」
メルティナ? それがあの殺人鬼か、もしくは水銀の女性の名前なのか。
まあ少なくとも殺人鬼の方は自分の名など覚えていなかったのは間違い無いし、たぶんどちらも名前なんぞどうでもいいのだろう。
だが十年前というとサレナの父であったゾスモスが大発見を成し遂げたと言われつつ、謎の自殺を遂げた時だな。
「それをどうしてあなたが知っているのです?」
シドンも実家でゾスモスの死が自殺だと聞いたらしいが、あくまでも断片的なものであって詳しい事情は知らなかったからな、ガザックが知っている事は是非とも聞き出したい。
「残念ながらゾスモス卿の研究資料は殆ど残っていない」
「何故ですか?」
「理由は不明だが、当時屋敷に仕えていた者によると、溺愛していた娘の前で狂乱した挙げ句、研究室に飛び込んで自らの身と共にその全てを焼き尽くしたそうだ」
え? サレナの父は娘を溺愛していたって?
いったいどういうことだ?
サレナの言葉からすれば、むしろ娘を憎悪していたかのように思えるのだが。
その話が本当だと仮定するとゾスモスが狂乱した時に、とんでもない事を口走っただけかもしれない。
それ以外にも幼いサレナが何かを誤解し記憶違いをしている可能性は当然考えられるし、娘を愛していたというのがあくまでも外面であって、内心を隠していた事もありうる。
待てよ。
疑似生命が人から人に乗り移るのなら、ゾスモスは乗り移られかけ、それで覚悟の焼身自殺を遂げたのかもしれないぞ。
幼い頃にサレナが聞いたという憎しみのこもった『お前さえいなければ』の言葉は、ゾスモスが自分に乗り移った疑似生命に対して向けたものであって、むしろ己を犠牲にして娘を守ろうとした結果という事になる。
そうすると当時、五歳でそんな事情など知るよしも無いサレナは、父が自分を呪ったと思い込んでいるのか。
その場合はそれまでの溺愛よりも、最期の呪いの言葉だけが記憶に強烈に残ってしまったというのは特に不思議でも無い。
もちろんオレの想像でしかないけど、少なくともそれを伝えればサレナにとって救いにはなるはずだ。
「ほぼ全ての資料はそのときに焼失してしまい、残ったのは僅かな焼け残りと後は亡くなる前に周囲の人間にこぼしていた証言だけだ。それと過去の資料を付き合わせた結果として疑似生命メルティナの名が出てきたのだ!」
ガザックの説明を受けていろいろと分かってきたのはありがたいが、さてどうしよう。
オレがそのメルティナでは無い事を伝えた上で、少なくとも二体の疑似生命体らしき相手が蠢動している事を教えたとしても今のガザックは聞く耳を持つだろうか?
望み薄かもしれないが、このままではまたその疑似生命体が殺人を引き起こすのは確実だ。
「待って下さい。繰り返していいますけどわたしはそのメルティナなどという存在とは違いますよ」
「そうだな。疑似生命体は器となる肉体を変えると記憶や知識がかなり抜け落ちるらしい。だからお前が自分の正体を覚えていない事は不思議でも何でも無い」
そういえば殺人鬼もそんな事を言っていたな。
そしてそれでいて『自分が何者か知りたい』と言っていたから、あれがその疑似生命体ならば身体を渡り歩いて『自分探しの旅』をしていた事になる。
「疑似生命体は人間の生命を喰らって、生き続ける。だからその身体を調べれば永遠の命の手がかりが得られる筈だ」
神造者の時と同じく、どうやらガザックはオレを研究材料にしたいらしい。
この場を切り抜けるにはたぶん話し合いでは無理だろう。
こうなったら『イロールの化身』になって見せた上で、オレが『アルタシャ』だと示せば理解は得られるかな。
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