異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第18章 奇怪なる殺戮者?

第746話 会長の語った事は

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 とりあえずオレは会長に声をかける。

「すみませんが、わたしの事はなるだけ他の人には黙っていてもらえませんか?」
「しかしそれでは不慮の事態が起きたときに――」
「それはわたしではなく、殺人鬼の身柄の拘束に挑む人たちの事を心配して下さい」

 オレの言葉を聞いて、会長は小さく嘆息する。

「なるほど……あなた様が大陸に名を馳せる理由がよく分かった気がします」
「もしもの事があれば、怪我をした人はわたしが手当てしましょう。それよりも確認したいことがあります」
「ガザックが口にしていた疑似生命体の事ですな」

 会長はこうなっては仕方ないとばかりにため息をつく。

「それにつきましては永遠の命を求めた過去の長年の研究の結果、生まれたものであり、その鍵を握っていると言われています」
「具体的にはどういう存在なのですか?」
「申し訳ありませんが、それにつきましては……」
「あれだけの無礼を働き、またそれを寛大に許して下さったアルタシャ様の質問に答えられないと言われるのか!」

 ここでミツリーンが横から怒った声で会長を責める。
 おいおい。頼んでもいないのに勝手な事をしないでくれ。

「待って下さい。極秘事項となれば会長の独断で部外者に明かすワケにはいかないのでしょう。わたしも無理にとは言いませんよ」
「いえ。極秘事項というわけではないのです。実際にいまでも研究しているものも何人かいますので」
「それではどうして?」
「実態については遠い昔に記録が散逸してしまった上に、魔術師達も長年の論議でいろいろな学説が唱えられており、恥ずかしながら会長の私でも実態をつかんではいないのです」

 なるほど。そういうことか。
 元の世界でも過去には当たり前に知られていた事ですら、百年も経つとその実態がよく伝わってなくてとんでもなく誤解されていたり、学者が偉そうにその誤解をマスコミで披露したりする事すらしばしばあったらしいからな。
 ここでもそれでワケが分からなくなっているのだろう。

「分かっている限りで構いませんのでお教え願えますか」
「ええ。過去に幾度か永遠の命を求めた魔術師達によって作られたと言われていますが、魔術師協会で現存を確認しているものは無いようです」

 それは本当だろうか?
 もっとも会長が存在を知っていて隠しているとしたら、この場でオレが追求したとしても答えるはずもない。のらりくらりかわすだけだ。
 あともう一つ、オレが出会った殺人鬼と水銀の女性がいずれも疑似生命体だったとしたら、それぞれにかなりの違いがあるのは間違い無い。
 疑似生命体の個体差かもしれないし、器となった人間の差かもしれないが、今のところは結論など出せないな。

「その中で現存していると思われているのが、先ほどガザックさんが言われていた『メルティナ』なのですか?」
「はい。ただ私もそれ以上、詳しい事は存じておりません……あ、もちろん後でガザックには知っている事を残らず報告させますので、それでどうにかご勘弁を」
「会長はどこまでご存じなのですか?」
「念のために申し上げておきますが、現在ではこのヒュールで疑似生命体を研究しているものは多くありません。もちろん私も無関係です」

 どうやらこの人も保身が最優先らしい。
 会長は疑似生命体により永遠の命が得られるという話そのものに懐疑的で、ただ面倒が増えたとしか思っていないのかもしれないぞ。

「先代の会長についてはアルタシャ様もお聞き及びの事と思いますが……あの一件以降はまともに研究に取り組む者は殆どいなくなったのです」

 元いた世界のフィクションでも『永遠の命を求めた者には破滅が訪れる』というのはよくあるパターンだった。
 確かに永遠の命が本当に得られるなら、その実例がこの町にいなければおかしい。
 それが見当たらない上に、取り組んでいた会長が奇怪な焼身自殺を遂げたとなれば、研究が一気に下火になるのは当然か。
 そんな事を考えていると、魔術師協会の幹部らしき人がやってきて会長に耳打ちすると、一気に顔色が変わる。

「な、何だと?! それは本当か?」
「はい。残念ですが……」

 いったい何があったんだ?
 ここで会長は改めてオレに向き直り、頭を下げる。

「申し訳ありません。実はアルタシャ様が言われていた雑貨屋には手の者を急いで送り込んでいたのです」
「なんですって?」

 そうか。先ほどから会長が疑似生命体に関して話をしていたのは、オレをここに引きつけておくためで、とっくに魔術師協会は手を回していたというわけか。
 オレにもしもの事があったら、更に面倒事を抱える事になると思ってやったに違いない。

「それで踏み込んだ時、既にその雑貨屋は……」

 やっぱりそうか。殺人鬼は昨晩の時点で既に『器』を変えると言っていたからな。
 オレ達が逃げ延びたからには、追い詰められるのは確実だと判断してとっとと逃げ出したに違いない。

「もちろん現在、我らも手を尽くして捜査中です。遠からず拘束できる事でしょう」
「しかしそのときにはまた別の人間が犠牲になっているのですよね」
「お言葉の通りですが……弁解させていただきますと、報告によれば踏み込んだ時には既に手遅れでございまして……」

 ええい。結局のところこの会長も考えるのは保身かよ。
 だがこうなってしまってはオレに出来る事など殆ど無いし、後は魔術師協会を含め、この町の人たちに任せるしかないか。
 しかしこの見込みは――いつものように――外れる事になるのだが。
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