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第19章 神気の山脈にて
第778話 寺院の廃虚について尋ねたところ
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そんなわけでオレはまだいろいろと知識を披露したい様子を見せているフォラジに対して問いかける。
「すみませんがそのケフェルティリ神の寺院跡はどこにあるのか教えていただけないでしょうか?」
「それはダメだよ」
またしても即答か!
ここでフォラジはオレに対して警戒の視線を向けてくる。
「君はそこで何をするつもりなのだい? まさか古の寺院跡だからと言って貴重な宝や遺物があるかもしれないと思っているのではあるまいな?」
ファンタジーなら使われなくなって久しい太古の寺院跡なんて、まさに冒険者にとっては格好の狩り場だからな。
この世界ではそこまで貴重なお宝が出る事は極めて希だ――オレにも僅かながら経験はあるがそんなのは例外だろう。
しかし珍しく古い神像のたぐいを骨董品として欲しがる好事家はどこにでもいるだろうし、そんな奴らに荒らされてしまった遺跡も数多いのは間違い無い。
だからフォラジはそこに可能な限り、他人を寄せ付けたくないのだろう。
まあフォラジ自身は金銭的価値には意義を見いだしていない――この点はオレも同じだ――あくまでも学術的興味があるだけだからこそ、お宝を探して遺跡をあさる行為を嫌悪しているというよりは蔑視しているのだな。
「待って下さい。遺跡から物取りをする気はありませんよ」
「それでは何が目的なのだね?」
オレの場合は、そういう寺院跡に入るとそこの守護霊あたりが興味を持って出てくる事が多いし、もしそんな事が無くとも賢者系やシャーマン系魔法を使う事で、過去の知識を得ることも可能だ。
しかしオレの年代では、普通はせいぜいかじった程度の魔法が使えるだけなので、そんな事を言っても普通は信じないだろう。
「わたしもそういう過去の遺跡に興味があるんです。もちろんただ見るだけですから、余計な事をする気はありません」
「おおそうか! それは疑って悪かった!」
随分とあっさり信じるんだな!
いや。それでいいのだけど、やっぱりかなりの世間知らずなのだろう。
「いやあ。すまないな。君も先ほど見たように、ここには無学な者しかいなくて、そいつらはボクの行動を『宝探し』としか思っていなくてね。ついつい君も同じかと思ってしまった」
ここでフォラジは小さく息を吐く。
「ただ連中の考える『宝』とは黄金だったり、宝石だったりの浅はかなものばかりだ。お陰で初めのうちはボクの集めた研究資料を見せろと文句を言われたものだ」
「それでは今は違うのですか?」
「うん。あの無学な連中には考古的な興味が無いので、ボクの研究や遺跡に関わろうとしないのはありがたいよ」
一応は同じところで生活しているのに、あからさまに蔑んだ態度を示されるとオレとしてはあまりいい気はしない。
「ところでその遺跡には亡霊の類いが出てきたりはしないのですか?」
襲われたら命にかかるような強力な存在がいれば、フォラジが無事である筈がないけど、生きている人間に対して意思を伝えるのがやっとな程度の弱体な霊体だったら、この世界では結構あちこちにいるものだ。
殆どの場合、そんな弱体な霊体は自分から人間に関わろうとはしないけど、オレの場合は『神の領域に足を突っ込んでいるのにまだ人の身』という変わり種のせいか、そんな相手が寄ってきて話を聞かせようとしてくることがしばしばあるので、そこは気になるな。
「それだったら気にする事は無いさ」
「何もいないのですか?」
「いや。消え入りそうな意識で『呪ってやる』とか『我らの聖地に入るな』とか言ってくるだけの、霞のような霊体がいるだけだよ」
おいおい。雑魚の霊体はオレにとっても何ら脅威ではないけど、そんな奴らに呪われて一切、気にもしないのか。
「それをあなたは気にしないのですか」
「失われた過去の歴史に光を当てようとする、ボクの行動を邪魔するような愚かな霊の言う事など気にする必要がどこにあるのかね?」
まったくこの人も大概だな。もしも強力な霊のいる場所に出くわしていたら、フォラジはとっくに命を落としていただろう。
本人がそれを恐れていないのは分かっているが、本当に危なっかしい。
「何にせよ君がその寺院の跡に興味があるというなら、明日にも案内しようじゃないか」
「それはありがとうございます」
ようやく本筋に入れた気がするな。
「ところで今日はどうするつもりなんだい」
「ここにも宿ぐらいはありますよね。そこに泊めてもらうつもりです」
この砦と周囲の集落にも出入りの商人などがいるだろうから、それを泊める施設もあるはずだ。
だが今はまだ平穏とは言え、ここは言わば『警備の最前線』であるわけで、施設に泊まるにしても身体検査を要求されるかもしれない。
砦の兵士にオレの素顔を晒すと、いろいろ面倒な事になる可能性が高いので、危険があるならさっさと出ていって野宿でも何でもするけどな。
「もしもよかったらここに泊まっていきたまえ」
「え? いいのですか?」
「見ての通り、貧乏でむさ苦しいところだけど、それで我慢してくれるならね」
ううむ。フォラジは学の無い人間を蔑んでいるのは明らかだが、決して悪人というわけでもないのだな。
この世界は――この世界でも――単純に善人・悪人を分けられないからいろいろとややこしい。しかしそうするとやはりちょっと問題がある。
「そろそろフードを外してくれまいか? 君が女性で一人旅だから警戒しているのは分かるけど、顔ぐらいは見せてくれてもいいだろう」
やっぱりそうなるか。
いや。フォラジは当たり前の事を言っているに過ぎないのだけど、こっちにとっては過去の経験から素顔を晒すとろくな事にならない方が圧倒的に多かった。
しかしどの道、寺院跡まで案内してもらうのだから、いつまでも顔を隠しているワケにもいかない。
そんなわけでオレはフードをとって素顔を晒す。すると――
「むう! その顔はもしや?!」
いきなりフォラジの表情が変わった。それは今までのように、オレの容姿に圧倒されたのとはまた別の何かだった。
え? まさかフォラジはオレの顔を知っているのか?!
「すみませんがそのケフェルティリ神の寺院跡はどこにあるのか教えていただけないでしょうか?」
「それはダメだよ」
またしても即答か!
ここでフォラジはオレに対して警戒の視線を向けてくる。
「君はそこで何をするつもりなのだい? まさか古の寺院跡だからと言って貴重な宝や遺物があるかもしれないと思っているのではあるまいな?」
ファンタジーなら使われなくなって久しい太古の寺院跡なんて、まさに冒険者にとっては格好の狩り場だからな。
この世界ではそこまで貴重なお宝が出る事は極めて希だ――オレにも僅かながら経験はあるがそんなのは例外だろう。
しかし珍しく古い神像のたぐいを骨董品として欲しがる好事家はどこにでもいるだろうし、そんな奴らに荒らされてしまった遺跡も数多いのは間違い無い。
だからフォラジはそこに可能な限り、他人を寄せ付けたくないのだろう。
まあフォラジ自身は金銭的価値には意義を見いだしていない――この点はオレも同じだ――あくまでも学術的興味があるだけだからこそ、お宝を探して遺跡をあさる行為を嫌悪しているというよりは蔑視しているのだな。
「待って下さい。遺跡から物取りをする気はありませんよ」
「それでは何が目的なのだね?」
オレの場合は、そういう寺院跡に入るとそこの守護霊あたりが興味を持って出てくる事が多いし、もしそんな事が無くとも賢者系やシャーマン系魔法を使う事で、過去の知識を得ることも可能だ。
しかしオレの年代では、普通はせいぜいかじった程度の魔法が使えるだけなので、そんな事を言っても普通は信じないだろう。
「わたしもそういう過去の遺跡に興味があるんです。もちろんただ見るだけですから、余計な事をする気はありません」
「おおそうか! それは疑って悪かった!」
随分とあっさり信じるんだな!
いや。それでいいのだけど、やっぱりかなりの世間知らずなのだろう。
「いやあ。すまないな。君も先ほど見たように、ここには無学な者しかいなくて、そいつらはボクの行動を『宝探し』としか思っていなくてね。ついつい君も同じかと思ってしまった」
ここでフォラジは小さく息を吐く。
「ただ連中の考える『宝』とは黄金だったり、宝石だったりの浅はかなものばかりだ。お陰で初めのうちはボクの集めた研究資料を見せろと文句を言われたものだ」
「それでは今は違うのですか?」
「うん。あの無学な連中には考古的な興味が無いので、ボクの研究や遺跡に関わろうとしないのはありがたいよ」
一応は同じところで生活しているのに、あからさまに蔑んだ態度を示されるとオレとしてはあまりいい気はしない。
「ところでその遺跡には亡霊の類いが出てきたりはしないのですか?」
襲われたら命にかかるような強力な存在がいれば、フォラジが無事である筈がないけど、生きている人間に対して意思を伝えるのがやっとな程度の弱体な霊体だったら、この世界では結構あちこちにいるものだ。
殆どの場合、そんな弱体な霊体は自分から人間に関わろうとはしないけど、オレの場合は『神の領域に足を突っ込んでいるのにまだ人の身』という変わり種のせいか、そんな相手が寄ってきて話を聞かせようとしてくることがしばしばあるので、そこは気になるな。
「それだったら気にする事は無いさ」
「何もいないのですか?」
「いや。消え入りそうな意識で『呪ってやる』とか『我らの聖地に入るな』とか言ってくるだけの、霞のような霊体がいるだけだよ」
おいおい。雑魚の霊体はオレにとっても何ら脅威ではないけど、そんな奴らに呪われて一切、気にもしないのか。
「それをあなたは気にしないのですか」
「失われた過去の歴史に光を当てようとする、ボクの行動を邪魔するような愚かな霊の言う事など気にする必要がどこにあるのかね?」
まったくこの人も大概だな。もしも強力な霊のいる場所に出くわしていたら、フォラジはとっくに命を落としていただろう。
本人がそれを恐れていないのは分かっているが、本当に危なっかしい。
「何にせよ君がその寺院の跡に興味があるというなら、明日にも案内しようじゃないか」
「それはありがとうございます」
ようやく本筋に入れた気がするな。
「ところで今日はどうするつもりなんだい」
「ここにも宿ぐらいはありますよね。そこに泊めてもらうつもりです」
この砦と周囲の集落にも出入りの商人などがいるだろうから、それを泊める施設もあるはずだ。
だが今はまだ平穏とは言え、ここは言わば『警備の最前線』であるわけで、施設に泊まるにしても身体検査を要求されるかもしれない。
砦の兵士にオレの素顔を晒すと、いろいろ面倒な事になる可能性が高いので、危険があるならさっさと出ていって野宿でも何でもするけどな。
「もしもよかったらここに泊まっていきたまえ」
「え? いいのですか?」
「見ての通り、貧乏でむさ苦しいところだけど、それで我慢してくれるならね」
ううむ。フォラジは学の無い人間を蔑んでいるのは明らかだが、決して悪人というわけでもないのだな。
この世界は――この世界でも――単純に善人・悪人を分けられないからいろいろとややこしい。しかしそうするとやはりちょっと問題がある。
「そろそろフードを外してくれまいか? 君が女性で一人旅だから警戒しているのは分かるけど、顔ぐらいは見せてくれてもいいだろう」
やっぱりそうなるか。
いや。フォラジは当たり前の事を言っているに過ぎないのだけど、こっちにとっては過去の経験から素顔を晒すとろくな事にならない方が圧倒的に多かった。
しかしどの道、寺院跡まで案内してもらうのだから、いつまでも顔を隠しているワケにもいかない。
そんなわけでオレはフードをとって素顔を晒す。すると――
「むう! その顔はもしや?!」
いきなりフォラジの表情が変わった。それは今までのように、オレの容姿に圧倒されたのとはまた別の何かだった。
え? まさかフォラジはオレの顔を知っているのか?!
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