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第19章 神気の山脈にて
第781話 神殿に向かう途中にて
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残っている足跡を見る限り、この先に進んだ相手は複数ではあるがそれほど大勢ではない。多く見ても十人はいないだろう。
だがこの寺院跡に入りこんだ相手は何者だろうか。
これがただの観光客ならいいのだが、まずその見込みはない。
元の世界で考えれば観光客が押し寄せるような凄い廃虚だが、どう考えてもこの世界においてはこんな辺境の地に来る相手はまずいない。
そうすると宝探しにでも来た山師か?
この場合はさほど脅威でもないとは思うが、フォラジは我慢出来ないだろう。
そう思った瞬間、フォラジはいきなり叫ぶ。
「これは! もしや山師では!」
「ちょ、ちょっと待って下さい」
今にも駆け出そうとするフォラジをひとまず止める。
相手が何ものか分からないが、この場合は相手が脅威であると想定するべきだ。
しかしフォラジは血相を変えて先に進もうとする。
「この先にある遺物を持ち去られる危険性があるのだよ!」
「それよりもこちらの身が危険です」
「ならばアル君は下がっていなさい、ボクだけでもどうにかしましょう」
ああ。本当にこの人は研究以外の事が目に入らなくなるんだな。
「金目当てに遺物を盗み出すような輩を許容するわけにはいかない! 我がマークホール神の教義でも知識が失われるのを見逃してはならないのだ!」
「だからフォラジさんが死んだら、あなたの有する知識も失われてしまいますよ!」
「それもまた承知の上だ。前にも言ったが、そのときは我が神の御許において、後から来たものに我が知識を語るだけだ」
冷静に考えれば、結局はフォラジもこの中にある文化的な遺産を持ち去るつもりなのだから、傍目には大差はないだろう。
しかしフォラジにとっては自分が知識を得る事こそが正しいのであり、宝探しの連中とは根本的に違うと信じているのは確実だ。
しかたがない。ここはオレがフォラジと共に中に入って状況を確認するしかないな。
「分かりました。それではここはわたしが一緒に行きましょう」
「そうか。まあ君が止めようがどうだろうがボクは行くけどな」
そんなわけでオレとフォラジは階段状のピラミッドの頂部へと続く階段へと向かう。
頂部には屋根に覆われた神殿と思しき部分がある。
そしてどうもそこで何ものかが活動しているらしい。
もちろんそれだけなら気にする事でも無いのだが、頂部に近づく毎に不吉な空気が周囲に漂ってくる。
オレの『霊視』に幾つもの霊体が見えてきたのだ。もちろんいずれもオレと比較すれば弱い霊体であり、脅威にはならないがそれでも明らかに不自然だ。
どうもこの廃虚に残っていた霊体が、ピラミッドの頂部に引きつけられているように感じられる。
これはどう考えてもこの先にいるのはただの盗掘者の類いではないぞ。
いや。元の世界でよくあるパターンなら盗掘者が余計な事をした結果、封印が解けて邪神復活とかもあり得る話だった。
この世界ではさすがにそんな事はあり得ない筈だが、それでも何らかの有害な存在が封じられている場合は当然ありうる。
残念ながら屋根があるから、上空から見下ろす『鷹の目』の魔法では様子を伺う事は出来ないので直接行って確認するしかないのだ。
そうするとやっぱりフォラジが危険だな。
「ちょっと待って下さい」
オレはフォラジに対して『除霊』の魔法をかける。これでそこらの霊体からの攻撃は十分に防げる筈だ。
「おや。この魔法は? ひょっとすると君はシャーマンか何かかね?」
「その説明は後です。今は気をつけて下さい」
そして頂部につく直前、そこから二人の人影が飛び出してくる。
見ると顔を覆面で隠しているが、その手には石造と思しき短刀を手にしている。
どう考えてもこちらを歓迎している様子ではない。
「君達はいったい何をしているのかね?! ここは貴重な歴史的遺物があるのだよ。それを誰に断って勝手な真似をしているのだ?!」
叫ぶフォラジの姿は一見すればそれなりに格好いいけど、勝手にこの遺跡を私物化しているのはむしろあんたの方だろう。
それを本人が全く自覚していないどころか、むしろ正当な行為だと確信しているところが何とも困ったところだ。
元の世界でも先進国ではかつて支配した土地の文化財を『無知な蛮人から保護する』と称して集めたもので博物館が埋め尽くされている例が幾つもあったと聞いた事があるが、フォラジもそれに近いようだ。
「……」
相手はフォラジの糺弾に応じる事は無く、その短剣を掲げて無言で躍りかかってきた。どう考えても話に応じるつもりは無いようだ。
ややこしくなる前にここは『平静』をかけて二人の動きを止める。
「ふむ。ボクを通してくれると言う事は、少しは話が通じるということか。やはり知識を求める事の正しさは万人に通じるのだな」
おい! 今のはオレが魔法をかけたことに気付いていないのか?
いや。フォラジもとっくに気付いているけど、知らん顔して自分の正当性の証明にしているのかもしれない。
この世界ではそういう図々しい相手に出会った事も何度もあるからな。いちいち気にしてはいられない。
そしてオレとフォラジは揃って最上部の神殿部へと足を踏みいれた。
だがこの寺院跡に入りこんだ相手は何者だろうか。
これがただの観光客ならいいのだが、まずその見込みはない。
元の世界で考えれば観光客が押し寄せるような凄い廃虚だが、どう考えてもこの世界においてはこんな辺境の地に来る相手はまずいない。
そうすると宝探しにでも来た山師か?
この場合はさほど脅威でもないとは思うが、フォラジは我慢出来ないだろう。
そう思った瞬間、フォラジはいきなり叫ぶ。
「これは! もしや山師では!」
「ちょ、ちょっと待って下さい」
今にも駆け出そうとするフォラジをひとまず止める。
相手が何ものか分からないが、この場合は相手が脅威であると想定するべきだ。
しかしフォラジは血相を変えて先に進もうとする。
「この先にある遺物を持ち去られる危険性があるのだよ!」
「それよりもこちらの身が危険です」
「ならばアル君は下がっていなさい、ボクだけでもどうにかしましょう」
ああ。本当にこの人は研究以外の事が目に入らなくなるんだな。
「金目当てに遺物を盗み出すような輩を許容するわけにはいかない! 我がマークホール神の教義でも知識が失われるのを見逃してはならないのだ!」
「だからフォラジさんが死んだら、あなたの有する知識も失われてしまいますよ!」
「それもまた承知の上だ。前にも言ったが、そのときは我が神の御許において、後から来たものに我が知識を語るだけだ」
冷静に考えれば、結局はフォラジもこの中にある文化的な遺産を持ち去るつもりなのだから、傍目には大差はないだろう。
しかしフォラジにとっては自分が知識を得る事こそが正しいのであり、宝探しの連中とは根本的に違うと信じているのは確実だ。
しかたがない。ここはオレがフォラジと共に中に入って状況を確認するしかないな。
「分かりました。それではここはわたしが一緒に行きましょう」
「そうか。まあ君が止めようがどうだろうがボクは行くけどな」
そんなわけでオレとフォラジは階段状のピラミッドの頂部へと続く階段へと向かう。
頂部には屋根に覆われた神殿と思しき部分がある。
そしてどうもそこで何ものかが活動しているらしい。
もちろんそれだけなら気にする事でも無いのだが、頂部に近づく毎に不吉な空気が周囲に漂ってくる。
オレの『霊視』に幾つもの霊体が見えてきたのだ。もちろんいずれもオレと比較すれば弱い霊体であり、脅威にはならないがそれでも明らかに不自然だ。
どうもこの廃虚に残っていた霊体が、ピラミッドの頂部に引きつけられているように感じられる。
これはどう考えてもこの先にいるのはただの盗掘者の類いではないぞ。
いや。元の世界でよくあるパターンなら盗掘者が余計な事をした結果、封印が解けて邪神復活とかもあり得る話だった。
この世界ではさすがにそんな事はあり得ない筈だが、それでも何らかの有害な存在が封じられている場合は当然ありうる。
残念ながら屋根があるから、上空から見下ろす『鷹の目』の魔法では様子を伺う事は出来ないので直接行って確認するしかないのだ。
そうするとやっぱりフォラジが危険だな。
「ちょっと待って下さい」
オレはフォラジに対して『除霊』の魔法をかける。これでそこらの霊体からの攻撃は十分に防げる筈だ。
「おや。この魔法は? ひょっとすると君はシャーマンか何かかね?」
「その説明は後です。今は気をつけて下さい」
そして頂部につく直前、そこから二人の人影が飛び出してくる。
見ると顔を覆面で隠しているが、その手には石造と思しき短刀を手にしている。
どう考えてもこちらを歓迎している様子ではない。
「君達はいったい何をしているのかね?! ここは貴重な歴史的遺物があるのだよ。それを誰に断って勝手な真似をしているのだ?!」
叫ぶフォラジの姿は一見すればそれなりに格好いいけど、勝手にこの遺跡を私物化しているのはむしろあんたの方だろう。
それを本人が全く自覚していないどころか、むしろ正当な行為だと確信しているところが何とも困ったところだ。
元の世界でも先進国ではかつて支配した土地の文化財を『無知な蛮人から保護する』と称して集めたもので博物館が埋め尽くされている例が幾つもあったと聞いた事があるが、フォラジもそれに近いようだ。
「……」
相手はフォラジの糺弾に応じる事は無く、その短剣を掲げて無言で躍りかかってきた。どう考えても話に応じるつもりは無いようだ。
ややこしくなる前にここは『平静』をかけて二人の動きを止める。
「ふむ。ボクを通してくれると言う事は、少しは話が通じるということか。やはり知識を求める事の正しさは万人に通じるのだな」
おい! 今のはオレが魔法をかけたことに気付いていないのか?
いや。フォラジもとっくに気付いているけど、知らん顔して自分の正当性の証明にしているのかもしれない。
この世界ではそういう図々しい相手に出会った事も何度もあるからな。いちいち気にしてはいられない。
そしてオレとフォラジは揃って最上部の神殿部へと足を踏みいれた。
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