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第19章 神気の山脈にて
第782話 神殿にて行われていた事は
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神殿の最上部に展開していた光景は、胸が悪くなりそうなものだった。
周囲にはオレの『霊視』に幾つもの霊体が写り、それだけでも不吉な気配を感じ取るには十分過ぎるものだった。
そこには三人の人間が、先ほど襲ってきた短刀使いと同じように顔をマスクで覆った上で、集まっていた。
だがそんな事はどうでもいい。
吐き気を催すほどおぞましいのは、神殿の中央に石造りの祭壇が備えられ、そこに見たところ二十代と思しき女性が縛り付けられていたのだ。
そしてそこで今まさにその首を切り落とすべく、マスクの男の一人が大きく斧を振りかぶっていたのだ。
その下の女性は気絶しているのか、はたまた何らかの薬物を嗅がされているのか、何の反応も示していない。
ええい! 何考えていやがる!
オレは斧を振りかぶった男に対し『平静』をかけると、その体勢で硬直する。
そしてそのときに気がついた。
女性の切り落とされかけていた首の下には、頭に椀を掲げた神像らしくものが置かれ、あふれ出る鮮血を受け止めるようになっていたのだ。
やはり。今まで聞いていた『椀かづき』に生け贄を捧げる儀式そのままだな。
「君たちは何をしているのだ!」
さすがにフォラジも生きている人間の首をはね、生け贄にする行為は許しがたいか。
もしもオレ抜きで来ていたら、間違い無くフォラジが次の生け贄になっていたところだけど、ここは敢えて突っ込みを入れている場合では無い。
残りの二人が武器を掲げてこちらに向かってきたのだ。
これぐらいならどうにかなる。人数が多ければ暴力的活動を抑止する『調和』をかけるところだが、ここは改めて二人に『平静』をかける。
そうすると残った連中も揃って動きを止める。
その上で周囲を確認したが、他に動く者はいない。
どうやら先ほど襲ってきた二人と合わせて、合計五人だけだったらしい。
とりあえず意識が硬直している内に、全員を縛り上げて、フォラジのいた砦の警備兵にでも突き出し、後の裁きは任せるとしよう。
「いいかね! 君たち――」
フォラジは動きを止めた連中に向けて説教しようとしているが、本当に良くも悪くもぶれない人だな。
「そんな事よりもまず動けないように拘束して下さい! わたしはあちらの女の人を手当しますから!
「あ、ああ」
動きを止めた連中をフォラジに任したところで、オレは祭壇にくくりつけられていた女性に駆け寄る。
服装からするとどうやらこの近辺の村からさらわれてきたのだろう。
意識は失っているが、外傷は無い様子なのでホッとするところだ。
とりあえず意識を取り戻させるべきだろうか。しかし周囲にはまだ霊体がうろついているし、それを見てパニックに陥られたらまた面倒な気がしてくる。
そんな事を考えていたら、フードの連中を縛り上げたフォラジがこちらに近づいてくる。
そしてそこでフォラジが発した言葉はオレの意表を突くものだった。
「ふうむ。しかしこの連中は何をしていたのだ?」
「え? ええ?!」
フォラジは何を言っているんだ?
ド素人のオレだって、連中が女性を『椀かづき』様への生け贄に捧げる儀式をやろうとしていた事ぐらいは一目で分かるぞ。
それとも何か重大な誤解が発生しているのだろうか?
「どう見ても生け贄の儀式以外の何ものでもないのでは……」
「そんな事は分かっている。君はボクを何だと思っているのかね」
非常識な学者バカで、危なっかしくて見ちゃいられない人だとは思っているけど、まだ何か裏の事情でもあるのだろうか。
「それならフォラジさんも言っていたように、ケフェルティリ神への信仰が広まった結果としてここで生け贄を――」
「だからそれがおかしいと言うのだよ!」
なぜかフォラジは力を込めて断言する。
「いいかね! この連中の装束は明らかにケフェルティリ神の信徒の伝統に沿ったものではない!」
「はあ? それが問題なのですか?」
いくら何でもそんなところをフォラジが問題視していたとは思わず、オレはついつい生返事をしてしまう。
「もちろんそれだけではない! 儀式を行う日取りや進め方、その他もろもろ何もかも間違っている! 要するに無学なものが適当に思いつきで生け贄を捧げようとしていただけなのだ!」
どうやらフォラジがさっき『何をしているのだ』と文句を言ったのは、生け贄を捧げようとしていた事そのものではなく、その儀式の内容に突っ込みを入れていたらしい。
つくづく世俗離れした男だな。もしも万が一、正しいやり方で進めていたら、貴重な研究資料だと思ってそのまま見物していたかもしれないぞ。
いや。それどころかあのままだったら『正しい儀式』について、連中に対し説教をしていたかもしれない。
「あのう……まさかとは思いますけど人間を生け贄に捧げる事をフォラジさんは認めているのですか?」
「何を馬鹿な事を言っているのだね?」
フォラジは呆れた様子でこぼす。
「そんな真似が許される筈がないだろう。過去の歴史において生け贄を捧げていた行為に対して学術的興味を持つ事と、それを実行するのは天と地ほども違う。それとも君はその区別がつかない程の愚か者なのか?」
「それは……すみません」
なぜオレが謝らねばならないのか釈然としないけど、フォラジがそこまで人の道を踏み外しているワケではない事は確認出来た事でよしと考えるしかないのだろうか。
周囲にはオレの『霊視』に幾つもの霊体が写り、それだけでも不吉な気配を感じ取るには十分過ぎるものだった。
そこには三人の人間が、先ほど襲ってきた短刀使いと同じように顔をマスクで覆った上で、集まっていた。
だがそんな事はどうでもいい。
吐き気を催すほどおぞましいのは、神殿の中央に石造りの祭壇が備えられ、そこに見たところ二十代と思しき女性が縛り付けられていたのだ。
そしてそこで今まさにその首を切り落とすべく、マスクの男の一人が大きく斧を振りかぶっていたのだ。
その下の女性は気絶しているのか、はたまた何らかの薬物を嗅がされているのか、何の反応も示していない。
ええい! 何考えていやがる!
オレは斧を振りかぶった男に対し『平静』をかけると、その体勢で硬直する。
そしてそのときに気がついた。
女性の切り落とされかけていた首の下には、頭に椀を掲げた神像らしくものが置かれ、あふれ出る鮮血を受け止めるようになっていたのだ。
やはり。今まで聞いていた『椀かづき』に生け贄を捧げる儀式そのままだな。
「君たちは何をしているのだ!」
さすがにフォラジも生きている人間の首をはね、生け贄にする行為は許しがたいか。
もしもオレ抜きで来ていたら、間違い無くフォラジが次の生け贄になっていたところだけど、ここは敢えて突っ込みを入れている場合では無い。
残りの二人が武器を掲げてこちらに向かってきたのだ。
これぐらいならどうにかなる。人数が多ければ暴力的活動を抑止する『調和』をかけるところだが、ここは改めて二人に『平静』をかける。
そうすると残った連中も揃って動きを止める。
その上で周囲を確認したが、他に動く者はいない。
どうやら先ほど襲ってきた二人と合わせて、合計五人だけだったらしい。
とりあえず意識が硬直している内に、全員を縛り上げて、フォラジのいた砦の警備兵にでも突き出し、後の裁きは任せるとしよう。
「いいかね! 君たち――」
フォラジは動きを止めた連中に向けて説教しようとしているが、本当に良くも悪くもぶれない人だな。
「そんな事よりもまず動けないように拘束して下さい! わたしはあちらの女の人を手当しますから!
「あ、ああ」
動きを止めた連中をフォラジに任したところで、オレは祭壇にくくりつけられていた女性に駆け寄る。
服装からするとどうやらこの近辺の村からさらわれてきたのだろう。
意識は失っているが、外傷は無い様子なのでホッとするところだ。
とりあえず意識を取り戻させるべきだろうか。しかし周囲にはまだ霊体がうろついているし、それを見てパニックに陥られたらまた面倒な気がしてくる。
そんな事を考えていたら、フードの連中を縛り上げたフォラジがこちらに近づいてくる。
そしてそこでフォラジが発した言葉はオレの意表を突くものだった。
「ふうむ。しかしこの連中は何をしていたのだ?」
「え? ええ?!」
フォラジは何を言っているんだ?
ド素人のオレだって、連中が女性を『椀かづき』様への生け贄に捧げる儀式をやろうとしていた事ぐらいは一目で分かるぞ。
それとも何か重大な誤解が発生しているのだろうか?
「どう見ても生け贄の儀式以外の何ものでもないのでは……」
「そんな事は分かっている。君はボクを何だと思っているのかね」
非常識な学者バカで、危なっかしくて見ちゃいられない人だとは思っているけど、まだ何か裏の事情でもあるのだろうか。
「それならフォラジさんも言っていたように、ケフェルティリ神への信仰が広まった結果としてここで生け贄を――」
「だからそれがおかしいと言うのだよ!」
なぜかフォラジは力を込めて断言する。
「いいかね! この連中の装束は明らかにケフェルティリ神の信徒の伝統に沿ったものではない!」
「はあ? それが問題なのですか?」
いくら何でもそんなところをフォラジが問題視していたとは思わず、オレはついつい生返事をしてしまう。
「もちろんそれだけではない! 儀式を行う日取りや進め方、その他もろもろ何もかも間違っている! 要するに無学なものが適当に思いつきで生け贄を捧げようとしていただけなのだ!」
どうやらフォラジがさっき『何をしているのだ』と文句を言ったのは、生け贄を捧げようとしていた事そのものではなく、その儀式の内容に突っ込みを入れていたらしい。
つくづく世俗離れした男だな。もしも万が一、正しいやり方で進めていたら、貴重な研究資料だと思ってそのまま見物していたかもしれないぞ。
いや。それどころかあのままだったら『正しい儀式』について、連中に対し説教をしていたかもしれない。
「あのう……まさかとは思いますけど人間を生け贄に捧げる事をフォラジさんは認めているのですか?」
「何を馬鹿な事を言っているのだね?」
フォラジは呆れた様子でこぼす。
「そんな真似が許される筈がないだろう。過去の歴史において生け贄を捧げていた行為に対して学術的興味を持つ事と、それを実行するのは天と地ほども違う。それとも君はその区別がつかない程の愚か者なのか?」
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