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第19章 神気の山脈にて
第812話 シャーマンと対面して
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あのシャーマンが仮に『首』について知っていて、それを胴体と一つにしたら『椀かづき』が復活する事になるのだろうか。
そうは言っても崇拝の力が神の力に直結するこの世界では、どのような神話を有しようと、神が復活していきなり全盛期の力を振るい世界を席巻する、といった元の世界のフィクションでよくある展開はありえない。
しかし『椀かづき』の場合は、この近辺の住民が畏れ敬う存在だから、本当に復活したのなら、神話で語られるような『倒した相手の骸が山脈になる』ほどの事は無いにしても、取るに足らない相手ということはないはずだ。
彼の目的がこの地域に入り込んでシャーマンを馬鹿にしてきた『文明人』に一泡ふかせるような事だったら、十分に目的を果たせるかもしれない。
「もしかするとあなたは『椀かづき』の失われた首について何かご存じなのですか?」
「それを教えたとしたら、お前は協力するのか?」
もちろん協力などするはずがない。
第一、交易路の監視のために作った砦を攻め落とされたテシュノ王国が、黙って引き下がる筈が無い。
間違い無く新たな軍勢が送り込まれてきて、更なる流血を招くだろう。
だけど最初に『協力しない』と言えば、そこで話が打ち切りになるかもしれないので、ここはちょっとばかり話題を変えよう。
「待って下さい。あなた方が攻め落とした砦の主が怒って攻めてくる事は考えていないのですか?」
「確かに今すぐ奴らが来たら、こちらは逃げるしかあるまい」
とりあえず『そんな軟弱な奴らなど幾ら来ても敵ではない』などと言うほど現実離れはしていないか。
そして険しい山の地形を利用してしぶとくゲリラ戦というのは、双方にとっていろいろと面倒だし、近隣の住民にとっても激しく迷惑だろう。
「だがこの俺が目的を果たせば、どれほどの連中が攻めてこようが恐るに足らん」
うわあ。これはこれで困った展開だな。
この人は『精霊の首を蘇らせ、伝説の力を持ってすれば軍勢にでも勝てる』と思っているのかもしれない。
どう考えてもそんな『典型的ファンタジーの悪役』的な発想に基づいて行動したところで、うまく行くはずが無いのだ。
そうか。『伝説の存在が蘇ったところで、いきなり世界を席巻する力を得られるワケではない』という事をオレが知っていても、他の人間が知っているとは限らないのだった。
こっちは『首』を繋げさえすれば、母であるイスタスが語っていたような、凄まじい力が得られると勘違いしている可能性が高いな。
「それでお前は協力をするのか?」
「そんな事は出来ません。むしろ大勢の犠牲を出して、あなたが無駄死にするだけですよ」
「そうだ。彼女の言うとおりだ!」
ここでフォラジが横合いから叫ぶ。
「我がテシュノ王国は過去にも君たちのようなものどもを無数に討伐してきたのだ」
「なんだと?!」
ああ。我慢しきれなくなったのだろうけど、余計な刺激をするな。
「待って下さい――」
「そのような下らぬ幻想にしがみついて現実を見ず、正しい信仰を持たぬ連中など、我らの敵ではないのだよ」
そう言ってフォラジは誇らしげに胸を張る。
「だからすぐに配下の山賊共を引き連れて降参したまえ。今ならまだ法の庇護は与えよう。だがこれ以上、無益な抵抗をするようならば、君たちは一人残らず殲滅されるだろう」
おいおい。ついこの前、あっちは砦を攻め落としたのだぞ。
もちろんそれぐらいの事など、蚊が刺した程の打撃でしか無いだろうけど、相手がそれで調子に乗っている事は十分にありうる。
そんな脅しを真に受けてくれるとはとても思えない。だが――
「ぐう。調子に乗りおって……」
あれ? どこかフォラジに圧倒されているかのように見えるぞ。
この人もシャーマンならフォラジはそれほど特別な力を持っているわけではない事ぐらい、気付きそうなものだけどな。
「確かにお前達は強大な力を有してはいるだろう。だがそんなものなどこの俺が全て覆してくれるわ!」
それを叫ぶと、相手は踵を返して引き返そうとする。
「逃げるな!」
フォラジは叫ぶと、ここでオレの方に向き直る。
「すまないが、あやつも捕らえてくれまいか?」
「え?」
「アル君の力を見せつければ、ヤツもこれ以上の反抗をする意思など無くすだろう。そうすれば配下の連中も降参するに違いない」
そういうことか!
フォラジはオレが魔法で植物を操って山賊連中を捕らえたのを、まるで自分の勢力の力であるかのようにハッタリかましていたんだ。
確かに相手から見れば、自分の送り込んだ手下が、強力な魔法により植物に埋め尽くされて動けなくなっていたら驚くに決まっているな。
そしてオレの魔力を見て尋常で無い存在だと見抜いたので、何ものなのか探ろうと話をして、警戒しつつ協力させられないかと考えていたに違いない。
だけどフォラジはその空気を察して、オレがテシュノ王国の側であるかのように見せたのだ。
草木を操るオレの魔法を見れば、山を逃げ回ってゲリラ戦など出来ないと思わせ、抵抗の意思をくじこうとしたのだな。
利用されたのは不本意だが、それで無益な流血が避けられるならやむを得ないか。
いろいろと複雑な気持ちだが、今はフォラジにあわせるしかない――そう思って改めて見返すと、相手の姿はもう見えなくなっていた。
マズい! ただ逃げただけならいいけど、これで下手に追い込まれたら、ヤケになって何をするか分からないぞ!
そうは言っても崇拝の力が神の力に直結するこの世界では、どのような神話を有しようと、神が復活していきなり全盛期の力を振るい世界を席巻する、といった元の世界のフィクションでよくある展開はありえない。
しかし『椀かづき』の場合は、この近辺の住民が畏れ敬う存在だから、本当に復活したのなら、神話で語られるような『倒した相手の骸が山脈になる』ほどの事は無いにしても、取るに足らない相手ということはないはずだ。
彼の目的がこの地域に入り込んでシャーマンを馬鹿にしてきた『文明人』に一泡ふかせるような事だったら、十分に目的を果たせるかもしれない。
「もしかするとあなたは『椀かづき』の失われた首について何かご存じなのですか?」
「それを教えたとしたら、お前は協力するのか?」
もちろん協力などするはずがない。
第一、交易路の監視のために作った砦を攻め落とされたテシュノ王国が、黙って引き下がる筈が無い。
間違い無く新たな軍勢が送り込まれてきて、更なる流血を招くだろう。
だけど最初に『協力しない』と言えば、そこで話が打ち切りになるかもしれないので、ここはちょっとばかり話題を変えよう。
「待って下さい。あなた方が攻め落とした砦の主が怒って攻めてくる事は考えていないのですか?」
「確かに今すぐ奴らが来たら、こちらは逃げるしかあるまい」
とりあえず『そんな軟弱な奴らなど幾ら来ても敵ではない』などと言うほど現実離れはしていないか。
そして険しい山の地形を利用してしぶとくゲリラ戦というのは、双方にとっていろいろと面倒だし、近隣の住民にとっても激しく迷惑だろう。
「だがこの俺が目的を果たせば、どれほどの連中が攻めてこようが恐るに足らん」
うわあ。これはこれで困った展開だな。
この人は『精霊の首を蘇らせ、伝説の力を持ってすれば軍勢にでも勝てる』と思っているのかもしれない。
どう考えてもそんな『典型的ファンタジーの悪役』的な発想に基づいて行動したところで、うまく行くはずが無いのだ。
そうか。『伝説の存在が蘇ったところで、いきなり世界を席巻する力を得られるワケではない』という事をオレが知っていても、他の人間が知っているとは限らないのだった。
こっちは『首』を繋げさえすれば、母であるイスタスが語っていたような、凄まじい力が得られると勘違いしている可能性が高いな。
「それでお前は協力をするのか?」
「そんな事は出来ません。むしろ大勢の犠牲を出して、あなたが無駄死にするだけですよ」
「そうだ。彼女の言うとおりだ!」
ここでフォラジが横合いから叫ぶ。
「我がテシュノ王国は過去にも君たちのようなものどもを無数に討伐してきたのだ」
「なんだと?!」
ああ。我慢しきれなくなったのだろうけど、余計な刺激をするな。
「待って下さい――」
「そのような下らぬ幻想にしがみついて現実を見ず、正しい信仰を持たぬ連中など、我らの敵ではないのだよ」
そう言ってフォラジは誇らしげに胸を張る。
「だからすぐに配下の山賊共を引き連れて降参したまえ。今ならまだ法の庇護は与えよう。だがこれ以上、無益な抵抗をするようならば、君たちは一人残らず殲滅されるだろう」
おいおい。ついこの前、あっちは砦を攻め落としたのだぞ。
もちろんそれぐらいの事など、蚊が刺した程の打撃でしか無いだろうけど、相手がそれで調子に乗っている事は十分にありうる。
そんな脅しを真に受けてくれるとはとても思えない。だが――
「ぐう。調子に乗りおって……」
あれ? どこかフォラジに圧倒されているかのように見えるぞ。
この人もシャーマンならフォラジはそれほど特別な力を持っているわけではない事ぐらい、気付きそうなものだけどな。
「確かにお前達は強大な力を有してはいるだろう。だがそんなものなどこの俺が全て覆してくれるわ!」
それを叫ぶと、相手は踵を返して引き返そうとする。
「逃げるな!」
フォラジは叫ぶと、ここでオレの方に向き直る。
「すまないが、あやつも捕らえてくれまいか?」
「え?」
「アル君の力を見せつければ、ヤツもこれ以上の反抗をする意思など無くすだろう。そうすれば配下の連中も降参するに違いない」
そういうことか!
フォラジはオレが魔法で植物を操って山賊連中を捕らえたのを、まるで自分の勢力の力であるかのようにハッタリかましていたんだ。
確かに相手から見れば、自分の送り込んだ手下が、強力な魔法により植物に埋め尽くされて動けなくなっていたら驚くに決まっているな。
そしてオレの魔力を見て尋常で無い存在だと見抜いたので、何ものなのか探ろうと話をして、警戒しつつ協力させられないかと考えていたに違いない。
だけどフォラジはその空気を察して、オレがテシュノ王国の側であるかのように見せたのだ。
草木を操るオレの魔法を見れば、山を逃げ回ってゲリラ戦など出来ないと思わせ、抵抗の意思をくじこうとしたのだな。
利用されたのは不本意だが、それで無益な流血が避けられるならやむを得ないか。
いろいろと複雑な気持ちだが、今はフォラジにあわせるしかない――そう思って改めて見返すと、相手の姿はもう見えなくなっていた。
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