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第19章 神気の山脈にて
第814話 待ち受ける社に向かって
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しばしの後、オレは近くの渓流にて『精霊使い』の魔法で水の精霊に火事を消してもらうよう頼んでおく。
先ほど出てきた炎の精霊は、単なる足止め目的だったから、せいぜい数分で姿を消したがそれでも大きな山火事になるのは避けたい。
オレが魔力を提供すると、渓流の水がまるで透明な巨人のように立ち上がっていまだ煙をあげている方向へと歩いて行く。
どうにかあれで火が消える事を祈っておこう。
「これは驚いたな……本当に君に出来ない事はないのかと思えるほどだよ」
「だから買いかぶりというものですよ」
フォラジの感嘆の声を否定しつつ、オレは先ほど山賊から聞いた山頂の社へと向かう事にする。
「ところでフォラジさんは『神の首』について何かまだ黙っている事がありませんか?」
「確かにあるのだが……」
この世界の知識神の信徒にとって知識は文字通り『飯の種』だから、そうそう他者に教えるわけにはいかないのだろうけど、こんなところで出し惜しみするなよ。
「今後、わたし達が向かう先で何があるか分かりません。その危険を避けるために、フォラジさんが知っている事があれば聞いておきたいのですよ」
「誤解しないでくれ、別に隠しているわけではない。ただ確証が無いのでそう簡単に口にするわけにはいかないのだ」
「それでも構いません。知っていれば、何かの参考になるでしょう」
フォラジは少しばかり考え込んだ様子を見せるが、何事か決心した様子を見せる。
「実はこれは公然と口には出来ない事なのだが、我がマークホール神が持ち帰り、そして後世になって失われたのは『神の首』ではないという話があるのだよ」
どういう意味だろうか?
もちろん『神ではなく精霊だ』とか勢力毎の呼び名の違いではないはずだ。
「何百年も研究を続けて、その実態がハッキリしないのだ。だから実は『神の首』とはまた別のものだったのではないか、そういう学説もあるのだよ」
なるほど。『神の首』と呼ばれていても、それが本当に言葉通りの意味とは限らないな。
あくまでも隠語で表現されていたものが、数百年の間に真相が分からなくなってしまったと言う事は十分にありうる。
しかしそれなら真相は何だったと言うのだろうか。
「フォラジさんはその正体が何だったと思っているのですか?」
「それが何だと簡単に分かれば苦労はしないよ。ただ過去にも同様の事を唱えて、探索に出た者は大勢いるけど――」
「誰もその真相にはたどり着けなかったというのですか?」
「それどころか生きて戻ったものすらいないと、言われているんだ」
大げさな気もするが、ひょっとすると誰かがその追求を止めたくてそんな話を広めたかもしれないな。
もっともそんな事を幾ら考えても答えが出るはずも無いか。
「そろそろ見えてきたようですよ」
遠目の山頂にツタに覆われた石垣が見える。
規模は以前に見た石造りのピラミッドに比べれば遥かに小さいが、その周囲には幾つもの霊体が集まってきている様子だ。
いったい何が起きているのだろうか。
かなり不安もあるが、ここで引き下がるという選択肢などオレには存在しない。
「フォラジさんはどうするのですか?」
「もちろん同行させてもらうよ。今さら何を言っているのだね?」
「分かりました。それでは行きましょう」
オレとフォラジは細い山道を登に入る。
しかし次から次にいろいろな精霊がこちらに襲いかかってくる。
どうやらここに入ったものには、無条件で攻撃するように命じられているらしい。
しかしこの程度の精霊ならば、オレの敵ではない。次から次に『追放』をかけてこの世から追い払う。
「いやはや。本当にそれだけの力があれば、怖いものなど何もなさそうだ」
「そんなに都合よくいかないので、少し前、フォラジさんに助けてもらったのですよ」
ここでフォラジは改めて真剣なまなざしを注いでくる。
「一つ聞いていいかな?」
「なんですか?」
「君の本当の名前は『アルタシャ』なのだろう? その髪も染めているだけで金髪ではないのかな?」
知識神の信徒だったら『アルタシャ』について知っているのは当たり前だし、これだけ一緒にいてオレの能力を見ていたら当然だな。
正直に言えば『いつ聞いてくるのか』と考えていたところだよ。
「君は『白き貴婦人』の神命を受けて、この地における不穏な動きを食い止めようとしているのだね」
「違いますよ。ここに来たのはあくまでも自分の意思です。フォラジさんと同じく」
「なるほど。君は自らの意思で行動しても、全ては神命に沿うというわけか。ボクもその域に早く達したいものだな」
またいつものようにもの凄く過大評価されているな。
だがそんな余計な事を考えている時間は無かった。
目的の社に到達したからだ。
だがそこには明らかに周囲とは別物の空気が漂っていた。
それは一目見ただけで、普通の人間だったら逃げ出しかねないほど不穏なものだ。
恐らく多くの生け贄を捧げた結果として、おぞましい力を集めてしまったのだろう。
「よく来たな……歓迎するぞ」
その全身からはつい先ほど会った時とはまるで別物の空気を漂わせつつ、シャーマンが姿を見せたのだ。
先ほど出てきた炎の精霊は、単なる足止め目的だったから、せいぜい数分で姿を消したがそれでも大きな山火事になるのは避けたい。
オレが魔力を提供すると、渓流の水がまるで透明な巨人のように立ち上がっていまだ煙をあげている方向へと歩いて行く。
どうにかあれで火が消える事を祈っておこう。
「これは驚いたな……本当に君に出来ない事はないのかと思えるほどだよ」
「だから買いかぶりというものですよ」
フォラジの感嘆の声を否定しつつ、オレは先ほど山賊から聞いた山頂の社へと向かう事にする。
「ところでフォラジさんは『神の首』について何かまだ黙っている事がありませんか?」
「確かにあるのだが……」
この世界の知識神の信徒にとって知識は文字通り『飯の種』だから、そうそう他者に教えるわけにはいかないのだろうけど、こんなところで出し惜しみするなよ。
「今後、わたし達が向かう先で何があるか分かりません。その危険を避けるために、フォラジさんが知っている事があれば聞いておきたいのですよ」
「誤解しないでくれ、別に隠しているわけではない。ただ確証が無いのでそう簡単に口にするわけにはいかないのだ」
「それでも構いません。知っていれば、何かの参考になるでしょう」
フォラジは少しばかり考え込んだ様子を見せるが、何事か決心した様子を見せる。
「実はこれは公然と口には出来ない事なのだが、我がマークホール神が持ち帰り、そして後世になって失われたのは『神の首』ではないという話があるのだよ」
どういう意味だろうか?
もちろん『神ではなく精霊だ』とか勢力毎の呼び名の違いではないはずだ。
「何百年も研究を続けて、その実態がハッキリしないのだ。だから実は『神の首』とはまた別のものだったのではないか、そういう学説もあるのだよ」
なるほど。『神の首』と呼ばれていても、それが本当に言葉通りの意味とは限らないな。
あくまでも隠語で表現されていたものが、数百年の間に真相が分からなくなってしまったと言う事は十分にありうる。
しかしそれなら真相は何だったと言うのだろうか。
「フォラジさんはその正体が何だったと思っているのですか?」
「それが何だと簡単に分かれば苦労はしないよ。ただ過去にも同様の事を唱えて、探索に出た者は大勢いるけど――」
「誰もその真相にはたどり着けなかったというのですか?」
「それどころか生きて戻ったものすらいないと、言われているんだ」
大げさな気もするが、ひょっとすると誰かがその追求を止めたくてそんな話を広めたかもしれないな。
もっともそんな事を幾ら考えても答えが出るはずも無いか。
「そろそろ見えてきたようですよ」
遠目の山頂にツタに覆われた石垣が見える。
規模は以前に見た石造りのピラミッドに比べれば遥かに小さいが、その周囲には幾つもの霊体が集まってきている様子だ。
いったい何が起きているのだろうか。
かなり不安もあるが、ここで引き下がるという選択肢などオレには存在しない。
「フォラジさんはどうするのですか?」
「もちろん同行させてもらうよ。今さら何を言っているのだね?」
「分かりました。それでは行きましょう」
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しかし次から次にいろいろな精霊がこちらに襲いかかってくる。
どうやらここに入ったものには、無条件で攻撃するように命じられているらしい。
しかしこの程度の精霊ならば、オレの敵ではない。次から次に『追放』をかけてこの世から追い払う。
「いやはや。本当にそれだけの力があれば、怖いものなど何もなさそうだ」
「そんなに都合よくいかないので、少し前、フォラジさんに助けてもらったのですよ」
ここでフォラジは改めて真剣なまなざしを注いでくる。
「一つ聞いていいかな?」
「なんですか?」
「君の本当の名前は『アルタシャ』なのだろう? その髪も染めているだけで金髪ではないのかな?」
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だがそこには明らかに周囲とは別物の空気が漂っていた。
それは一目見ただけで、普通の人間だったら逃げ出しかねないほど不穏なものだ。
恐らく多くの生け贄を捧げた結果として、おぞましい力を集めてしまったのだろう。
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