異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第20章 とある国と聖なる乙女

第827話 イオドと『神なる皇帝』について

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 イオドと同行する道すがら、オレとしてはいろいろと尋ねたいことがあった。

「先ほどの話ですと、首都では聖女達が隔離されているそうですけど、いったいいかなる扱いをされているのですか?」
「お主が気になるのは当然だな。危害を加えられているわけではなく、丁重に扱われてはいるようだが、自由な行動は出来ないのは確かだ。この程度の事しか言えないのは何とも心苦しいのだが……」

 さすがに聖女達がいろいろと『危ない目』に遭っているわけではないらしい。
 ただこれだけでは王の意図はよく分からないな。
 オレが得ている情報では、聖女教会は表向きの権力には近づかないが、自分達の回復魔法独占を崩そうとする相手には容赦はしなかった。
 仮に王妃が『アルタシャ』を名乗っていたとしても、聖女教会が自分達の寄って立つ基盤に手をつけるのを許すとは思えない。
 まだ王が即位してから二ヶ月というから、教会が表立って動いていないだけなのか?
 だがそれでも聖女教会が新王についての情報収集を怠っているとは思えない。
 聖女が警戒されるのは、王国の方でもそれをわかっているからかもしれないな。
 幾ら何でも正面切って聖女教会と対立するとは思えないが、ひょっとするとこの国では聖女教会のグレーゾーンを探って危険なゲームをしているのか?

 元の世界でもそんなことをしている国家は幾つか覚えがあるが、一つ間違うと国を滅ぼしてしまいかねない危険な賭けだぞ。
 それともオレの想像が外れているだけなのか。
 とにかくそのあたりは首都についてから、いろいろ調べるしかないだろう。

「ところでこちらからも幾つか尋ねてよいかな? お主は首都についてからどうするつもりなのだ?」

 これはちょっとばかり返答が難しいな。
 もちろん具体的な当てがあるわけでもないが、なによりもイオド自身がそもそもこの国の体制側の人間だ。
 新王には不満を抱いているかもしれないし、助けたオレに感謝はしてくれているけど、だからと言って『味方』になってくれると考えるのは軽率に過ぎる。

「いえ。今は当てがあるわけではありません」
「それならばしばらく我が家に逗留していかぬか? お主には命を助けられていて、今もこの身を心配して同行してくれているのに、ちゃんとした礼をせねば家名の恥だ」
「ご配慮はありがたいのですけど……」
「もちろんお主の身に手を出すような真似は決してせぬぞ。小官もそこまで愚かではない」

 ううむ。ありがたい申し出ではあるのだけど、首都についてからどうするのかはオレもまだ決めかねている。
 当然ながら場合によってはイオドの迷惑にもなりかねないので、無事に到着できればそこで別れようと思っていたのだ。
 あとイオドはいまのところ、顔をフードによって隠しているオレの旅装束は『女の一人旅だから』とさほど不審に思っていない様子だが、容姿を見せたらやっぱり男としていろいろとあって当然だろう。
 しかし今のところはイオドから情報を得るに越した事は無いし、ここは好意を受けておいた方がいいか。
 もしも問題が出て来たら、その時はイオドの元を去ればいい――この時のオレはそう考えていた。


 そんなわけでしばし二人で街道を進んだところ、イオドは道の脇に目をとめる。

「すまぬ。ここで少し待っていてくれぬか?」

 そう言ってイオドは道端にある、風化の進んだ石碑に向かう。
 いちおうは周囲の草は刈られており、地元の住民が捧げ物をしているにも見えるが、殆ど人も訪れていないようだ。
 イオドはそこに近づくと汚れを払い、深々と頭を下げる。崇拝とまではいかなくとも敬意を払ってはいるらしい。

「すみません。この石碑はいったい何なのですか?」
「ああ。これは『神なる皇帝ウルバヌス』がこの地に滞在した事を記念して作られた石碑なのだ」

 オレがこれまで聞いた限りで大陸東方における信仰は、これまで活動してきた中部と同様に多神教の勢力がほとんどらしい。
 もちろん地域や文化が異なると、同じ神でも異なる姿で崇められていたりすることがよくあるのも、これまでとは変わらない。
 だが大きく異なる点の一つは、大陸東方では広く『帝国の皇帝』が神として崇拝されているということだ。
 東方の大部分を支配していた大帝国では、代々の皇帝が神として崇拝されており、その皇帝の業績に応じた魔術を信徒に提供していたと聞いている。
 帝国の崩壊後、国家としてそれらの皇帝への崇拝は行われていないが、それでも東方の各地で細々と信仰が残るだけでなく、それなりに敬意は払われているらしい。

「皇帝ウルバヌスは、強大な軍を招集して大いなる征服行を成し遂げたのだ。だから我ら軍人は今でも敬意を払っている。そしてこの石碑はウルバヌス帝に率いられた軍団が駐屯した事の証なのだ」

 なるほど。滅びた帝国の皇帝に対する崇拝もいろいろあるのだろうけど、その業績によりこうやって残るものもあれば、忘れられてしまうものもあるのだろうな。
 待てよ。そういえばこのフラネス王国はかつての帝国の再興を唱えているのだったな。
 国王のこれまでの行いは、帝国の皇帝のように自分を神と崇めさせるためのものだったりするのだろうか?
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