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第20章 とある国と聖なる乙女
第828話 兵士達に案内された先にて
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しばらくして日が暮れてきたところで、オレたちが進んでいる道の前方に十数人の武装した兵士の一団が姿を見せる。
「おお。イオド卿。ご無事でしたか」
「あなたの部隊が逆賊どもの襲撃を受けたと聞いて、駆けつけた次第です」
どうやらイオドを迎えに来たこの国の兵士らしい。だがこのときオレの周囲には安堵の空気よりも、むしろ緊張感が漂い始める。
「そうか……お役目ご苦労」
駆け寄ってきた兵士達に対してイオドは、ねぎらいの言葉をかけるが、むしろその表情は険しくなっている。
兵士達の様子を見る限り、イオドに敵対している様子はなくあくまでも任務の一環として迎えに来ただけのようだ。
しかしそれでもイオドが警戒しているのは、たぶんこの兵士達の所属と何か関係があるのだろうな。
ひょっとすると敵対する派閥の兵士だったりするのだろうか。
「スコテイ閣下も卿の事を心配されておいででした。そのため我らを出迎えとしてここによこされたのです」
「そうか……閣下の心配りには感謝の意に絶えぬと伝えてくれ」
「いえいえ。イオド卿のご無事を確認できたら、護衛するように我らは命じられております。どうぞこちらに」
どうもそのスコテイという男とイオドはかなり微妙というか、面倒な関係にありそうだな。
口ぶりからするとイオドの上司で結構、偉いようだが今回イオドが危なかったのはそのスコテイの仕込みを疑っているのかもしれない。
兵士の態度からするとイオドも相応の地位にあるようだが、わざと少数の兵士だけで危険な任務に送り出し、そこを伏勢で襲撃して命を狙ったなんて展開がありうるな。
もちろん証拠など何もないし、そもそもオレはスコテイとイオドの関係など何も知らない以上、口にするわけにはいかないが。
そして兵士は当然ながら、オレの方に視線を向けてくる。
旅装束で顔はフードで隠しているし、どう考えてもイオドに同行する軍人には見えないから、兵士たちから不審に思われないほうがおかしい。
「ところでそちらは?」
「危機にあった時に助けてくれた我が恩人だ。余計な詮索は無用である」
「分かりました。それでは我らと共に来てください。この近くの官舎にてスコテイ閣下もお待ちでございます」
この言葉に対し、イオドは意外そうに問いかける。
「わざわざスコテイ閣下がお越しになったのか?」
「はい。イオド卿に命令を下された後で、この近くにて別の匪賊共の情報が入りましたものですから」
元の世界だと『閣下』と言えば、万単位の軍勢を率いている将軍のようなイメージもあるけど、この世界ではそんな大軍を動かせる国はそう多くは無い。
有力な国でも国王が直々に動員をかけて、どうにかそれだけの軍勢を集められるかどうかというところだ。
このフラネス王国なら数百人の軍勢を率いているだけでも、立派な指揮官だろう。
そんなわけでオレとイオドは兵士達に囲まれつつ、西日が陰る中で近くの粗末な役所に足を運ぶこととなった。
オレとイオドはかがり火で照らされて、軍に接収されたとおぼしき建物に案内された。
「すまぬな。このような事になるとは思ってはいなかったのだ」
イオドの声はかなり緊張している。
先ほどの話があったスコテイという男への畏れと『聖女』と言う事になっているオレの身を心配してもいるのだろう。
「それはいいのですけど……わたしも同行せねばならないのですか?」
正直なところ『聖女』云々も厄介だけど、目立ち過ぎるオレの容姿もいろいろと問題を引き起こしかねない。
「うむ。兵士はどうやらそのような命令を受けているらしい」
もしもスコテイがイオドを謀殺しようとしていて、深傷を負わせたにも関わらず逃げられ、この通りピンピンしている事を知ったら、やっぱり同行者を疑うだろうな。
ただスコテイに何か思惑があったとしても、さすがにこうやって陣に呼び寄せておいて、いきなり攻撃して殺害という挙には出ないだろう。
そこまでやれるのなら、そもそも謀殺のような回りくどい真似はすまい。
そう思っていると入り口に脇に立っている警備兵が問いかけてくる。
「失礼ながらそちらのお連れの方も、顔を見せていただけますかな?」
「申し訳ないが、こちらは――」
「女性なので道中、顔を隠しておられる事は分かっていますが、ここならば安全です」
もちろん容姿を晒したくは無いのだがここで拒否したら、それこそ怪しすぎるか。仕方ないのでオレはフードを外す。
「これでよろしいでしょうか」
「ぬう……」
「お主は――」
顔を見せると周囲の空気が一変するのはいつもの事か。イオドもやっぱり男なので、オレの容姿に息を呑んでいる。
「……それではこちらにいらして下さい」
兵士も一瞬、驚いた様子を見せたが、すぐに感情を押し殺した声でオレ達を中に案内した。
だけどチラチラとオレを横目で見ているようだ。
この先にいるスコテイという男がどんな相手かはまだ分からないが、もしもイオドがいなかったら、こんなところ誘われても即座に逃げていたところだろう。
そんなわけでオレは緊張しつつ、役所の中に足を踏みいれる事になった。
「おお。イオド卿。ご無事でしたか」
「あなたの部隊が逆賊どもの襲撃を受けたと聞いて、駆けつけた次第です」
どうやらイオドを迎えに来たこの国の兵士らしい。だがこのときオレの周囲には安堵の空気よりも、むしろ緊張感が漂い始める。
「そうか……お役目ご苦労」
駆け寄ってきた兵士達に対してイオドは、ねぎらいの言葉をかけるが、むしろその表情は険しくなっている。
兵士達の様子を見る限り、イオドに敵対している様子はなくあくまでも任務の一環として迎えに来ただけのようだ。
しかしそれでもイオドが警戒しているのは、たぶんこの兵士達の所属と何か関係があるのだろうな。
ひょっとすると敵対する派閥の兵士だったりするのだろうか。
「スコテイ閣下も卿の事を心配されておいででした。そのため我らを出迎えとしてここによこされたのです」
「そうか……閣下の心配りには感謝の意に絶えぬと伝えてくれ」
「いえいえ。イオド卿のご無事を確認できたら、護衛するように我らは命じられております。どうぞこちらに」
どうもそのスコテイという男とイオドはかなり微妙というか、面倒な関係にありそうだな。
口ぶりからするとイオドの上司で結構、偉いようだが今回イオドが危なかったのはそのスコテイの仕込みを疑っているのかもしれない。
兵士の態度からするとイオドも相応の地位にあるようだが、わざと少数の兵士だけで危険な任務に送り出し、そこを伏勢で襲撃して命を狙ったなんて展開がありうるな。
もちろん証拠など何もないし、そもそもオレはスコテイとイオドの関係など何も知らない以上、口にするわけにはいかないが。
そして兵士は当然ながら、オレの方に視線を向けてくる。
旅装束で顔はフードで隠しているし、どう考えてもイオドに同行する軍人には見えないから、兵士たちから不審に思われないほうがおかしい。
「ところでそちらは?」
「危機にあった時に助けてくれた我が恩人だ。余計な詮索は無用である」
「分かりました。それでは我らと共に来てください。この近くの官舎にてスコテイ閣下もお待ちでございます」
この言葉に対し、イオドは意外そうに問いかける。
「わざわざスコテイ閣下がお越しになったのか?」
「はい。イオド卿に命令を下された後で、この近くにて別の匪賊共の情報が入りましたものですから」
元の世界だと『閣下』と言えば、万単位の軍勢を率いている将軍のようなイメージもあるけど、この世界ではそんな大軍を動かせる国はそう多くは無い。
有力な国でも国王が直々に動員をかけて、どうにかそれだけの軍勢を集められるかどうかというところだ。
このフラネス王国なら数百人の軍勢を率いているだけでも、立派な指揮官だろう。
そんなわけでオレとイオドは兵士達に囲まれつつ、西日が陰る中で近くの粗末な役所に足を運ぶこととなった。
オレとイオドはかがり火で照らされて、軍に接収されたとおぼしき建物に案内された。
「すまぬな。このような事になるとは思ってはいなかったのだ」
イオドの声はかなり緊張している。
先ほどの話があったスコテイという男への畏れと『聖女』と言う事になっているオレの身を心配してもいるのだろう。
「それはいいのですけど……わたしも同行せねばならないのですか?」
正直なところ『聖女』云々も厄介だけど、目立ち過ぎるオレの容姿もいろいろと問題を引き起こしかねない。
「うむ。兵士はどうやらそのような命令を受けているらしい」
もしもスコテイがイオドを謀殺しようとしていて、深傷を負わせたにも関わらず逃げられ、この通りピンピンしている事を知ったら、やっぱり同行者を疑うだろうな。
ただスコテイに何か思惑があったとしても、さすがにこうやって陣に呼び寄せておいて、いきなり攻撃して殺害という挙には出ないだろう。
そこまでやれるのなら、そもそも謀殺のような回りくどい真似はすまい。
そう思っていると入り口に脇に立っている警備兵が問いかけてくる。
「失礼ながらそちらのお連れの方も、顔を見せていただけますかな?」
「申し訳ないが、こちらは――」
「女性なので道中、顔を隠しておられる事は分かっていますが、ここならば安全です」
もちろん容姿を晒したくは無いのだがここで拒否したら、それこそ怪しすぎるか。仕方ないのでオレはフードを外す。
「これでよろしいでしょうか」
「ぬう……」
「お主は――」
顔を見せると周囲の空気が一変するのはいつもの事か。イオドもやっぱり男なので、オレの容姿に息を呑んでいる。
「……それではこちらにいらして下さい」
兵士も一瞬、驚いた様子を見せたが、すぐに感情を押し殺した声でオレ達を中に案内した。
だけどチラチラとオレを横目で見ているようだ。
この先にいるスコテイという男がどんな相手かはまだ分からないが、もしもイオドがいなかったら、こんなところ誘われても即座に逃げていたところだろう。
そんなわけでオレは緊張しつつ、役所の中に足を踏みいれる事になった。
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