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第20章 とある国と聖なる乙女
第833話 連れて行かれた先では
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翌日の朝になってオレが起きて部屋から出ると、またネアラから睨まれた。
「取りあえず今日は私がこの近くを案内する事になっているわ。学校も明日にも通うから、道をちゃんと覚えなさいよ」
「ありがとうございます」
昼前にオレとネアラは共にニグリ家を出る。
案内と言っても観光名所を巡るわけではなく、近くの市場や、明日から通う『蒼穹女学院』の建物を示されたぐらいだ。
これが少年漫画だったら学院の建物は、異様なオーラに覆われて『ゴゴゴゴ』なんて書き文字の擬音が踊っていたりするのがお約束だが、もちろんそんな事はなく、遠目ではかなり立派な石造りの建物だという点しか分からない。
「それからここでは――」
「待って下さい」
ネアラが説明を始めようとしたところで、いつの間にかオレ達二人を包囲するように軍人が何人か集まってきている事に気がついた。
まさかオレ達を連行するつもりか?
「何よ。口答えは許さないと言ったはずよ」
状況をまだ把握していないネアラは、またしてもオレを睨み付ける。
まずいな。オレ一人ならどうにでもなったけど、ネアラを置き去りにして逃げて彼女だけ拘束されるような事態は避けたい。
それに兵士たちの目的はネアラではなく、オレのはずだ。
とにかく今はネアラに危害が及ばない事を最優先しよう。
そう考えたところで、兵士たちが揃って近寄ってくる。さすがに武器を抜いてはいないが、もしもオレが逃げ出したら躊躇なく拘束するつもりで身構えているのは間違いない。
「な、何ですか?」
ようやく兵士たちに気づいたネアラは、ただならぬ空気を感じ取ってオレに対し叫ぶ。
「ちょっとあなた! 何をやらかしたのよ!」
その質問はもう身に覚えがありすぎて、何から答えていいのか分からないぐらいだよ。
そして寄ってきた兵士は落ち着いた口調で問いかけてくる。
「失礼します。あなた方は二グリ家のご令嬢であられますな?」
「ええ……そうですけど。いかなる要件でしょうか」
兵士たちの口調が『犯罪者の拘束』のようなものではないと分かったので、ネアラも少しは落ち着いたようだ。
「この度、ニグリ家の養女となられたのはどちらのお方ですかな?」
「わたしです」
オレが答えると隊長らしき男が前に出てくる。
「申し訳ありませんが、縁組に伴う手続きがありますので、お手数ではありますが我らにご同行願えますかな」
表向きは丁重な態度だが、こちらに有無を言わせぬだけの威圧感があった。
もちろん断ればどうなるかは考えるまでも無い。
「来ていただくのはお一人だけで結構ですので、そちらのお嬢さんはお引き取りいただけますか?」
「手続きの話というなら仕方ないわね。夕食までは帰ってきてよ」
「分かりました。それでは後の事はよろしくお願いします」
ひとまずオレはネアラと別れ、兵士達に同行する。
もちろんこれがただの『手続き』の話でない事は分かっていたけど、こうなってはジタバタしても無駄だ。
鬼が出るか蛇が出るか――もっともオレの経験上、出くわす相手はそのどちらよりも遥かに恐ろしい事が多いのだけどな。
しばしの後、オレは役所の一室に案内されたが、そこで待っていたのは予想通り、底知れぬ笑みを浮かべたスコテイだった。
「いったい何の用ですか? 聞いていた手続きの話ではないですね?」
予想通りだったとしても、ちょっとは緊張せずにはいられない。
ただ建前上は『イオドの義理の娘』であるオレを犯罪者として無理矢理に連行するような真似は出来ないからこのような手段をとったとすれば、スコテイもそうそう手荒なことはしてこないはずだ――少なくとも今のところは。
「ふうむ。随分と落ち着いたものだな。やはりこの国を調べるべく送り込まれた『聖女』ともなると違うものなのか?」
「いったい何の話ですか」
オレは別にシラを切っているわけではない。
本当に聖女教会とは無関係なのだから――相手がどう思うかは別として。
「ふん。お前が深傷を負ったイオドの傷を治した事は見当がついているのだよ」
そんな事をスコテイが知っているのは、やはりイオドを待ち伏せした連中と繋がっているからだろうか?
もっとも仮に問い詰めたところで、この男がそれをバラすような間抜けの筈が無いけどな。
「聖女教会所属の聖女が一人でうろついている筈がありません。もしもわたしの事をお疑いならば聖女教会に問い合わせてくれても結構ですよ」
「随分とふてぶてしいものだな。もちろんそれぐらいはとっくにやっている」
ここでスコテイは以前に見せた、怜悧な視線をオレに注いでくる。
どうやらこちらの反応を伺ったらしい。
「なるほど。確かにお前は『この地の聖女教会』とは無関係らしい」
そりゃそうだ。
だいたい聖女教会が本当にこの国をスパイするなら、わざわざマークされやすい回復魔法の使い手では無く、ミツリーンのような男を送り込むだろう。
しかし実際に聖女教会といろいろ面倒な関係にあって、警戒している側からすれば、オレに対して疑念を持つのは当然か。
「いずれにしてもお前がどう言いつくろうとも、こちらがその気になれば小娘ひとりぐらい、どうにでもなる事は分かるな」
「それでもこうやって連れてきたと言う事は、わたしに何か要求する事があるのでしょう?」
スコテイがオレに求めるのは、身体を要求するとかそんな俗な欲望では無いはずだ。
もちろんそれだからこそより恐ろしいのだけどな。
「取りあえず今日は私がこの近くを案内する事になっているわ。学校も明日にも通うから、道をちゃんと覚えなさいよ」
「ありがとうございます」
昼前にオレとネアラは共にニグリ家を出る。
案内と言っても観光名所を巡るわけではなく、近くの市場や、明日から通う『蒼穹女学院』の建物を示されたぐらいだ。
これが少年漫画だったら学院の建物は、異様なオーラに覆われて『ゴゴゴゴ』なんて書き文字の擬音が踊っていたりするのがお約束だが、もちろんそんな事はなく、遠目ではかなり立派な石造りの建物だという点しか分からない。
「それからここでは――」
「待って下さい」
ネアラが説明を始めようとしたところで、いつの間にかオレ達二人を包囲するように軍人が何人か集まってきている事に気がついた。
まさかオレ達を連行するつもりか?
「何よ。口答えは許さないと言ったはずよ」
状況をまだ把握していないネアラは、またしてもオレを睨み付ける。
まずいな。オレ一人ならどうにでもなったけど、ネアラを置き去りにして逃げて彼女だけ拘束されるような事態は避けたい。
それに兵士たちの目的はネアラではなく、オレのはずだ。
とにかく今はネアラに危害が及ばない事を最優先しよう。
そう考えたところで、兵士たちが揃って近寄ってくる。さすがに武器を抜いてはいないが、もしもオレが逃げ出したら躊躇なく拘束するつもりで身構えているのは間違いない。
「な、何ですか?」
ようやく兵士たちに気づいたネアラは、ただならぬ空気を感じ取ってオレに対し叫ぶ。
「ちょっとあなた! 何をやらかしたのよ!」
その質問はもう身に覚えがありすぎて、何から答えていいのか分からないぐらいだよ。
そして寄ってきた兵士は落ち着いた口調で問いかけてくる。
「失礼します。あなた方は二グリ家のご令嬢であられますな?」
「ええ……そうですけど。いかなる要件でしょうか」
兵士たちの口調が『犯罪者の拘束』のようなものではないと分かったので、ネアラも少しは落ち着いたようだ。
「この度、ニグリ家の養女となられたのはどちらのお方ですかな?」
「わたしです」
オレが答えると隊長らしき男が前に出てくる。
「申し訳ありませんが、縁組に伴う手続きがありますので、お手数ではありますが我らにご同行願えますかな」
表向きは丁重な態度だが、こちらに有無を言わせぬだけの威圧感があった。
もちろん断ればどうなるかは考えるまでも無い。
「来ていただくのはお一人だけで結構ですので、そちらのお嬢さんはお引き取りいただけますか?」
「手続きの話というなら仕方ないわね。夕食までは帰ってきてよ」
「分かりました。それでは後の事はよろしくお願いします」
ひとまずオレはネアラと別れ、兵士達に同行する。
もちろんこれがただの『手続き』の話でない事は分かっていたけど、こうなってはジタバタしても無駄だ。
鬼が出るか蛇が出るか――もっともオレの経験上、出くわす相手はそのどちらよりも遥かに恐ろしい事が多いのだけどな。
しばしの後、オレは役所の一室に案内されたが、そこで待っていたのは予想通り、底知れぬ笑みを浮かべたスコテイだった。
「いったい何の用ですか? 聞いていた手続きの話ではないですね?」
予想通りだったとしても、ちょっとは緊張せずにはいられない。
ただ建前上は『イオドの義理の娘』であるオレを犯罪者として無理矢理に連行するような真似は出来ないからこのような手段をとったとすれば、スコテイもそうそう手荒なことはしてこないはずだ――少なくとも今のところは。
「ふうむ。随分と落ち着いたものだな。やはりこの国を調べるべく送り込まれた『聖女』ともなると違うものなのか?」
「いったい何の話ですか」
オレは別にシラを切っているわけではない。
本当に聖女教会とは無関係なのだから――相手がどう思うかは別として。
「ふん。お前が深傷を負ったイオドの傷を治した事は見当がついているのだよ」
そんな事をスコテイが知っているのは、やはりイオドを待ち伏せした連中と繋がっているからだろうか?
もっとも仮に問い詰めたところで、この男がそれをバラすような間抜けの筈が無いけどな。
「聖女教会所属の聖女が一人でうろついている筈がありません。もしもわたしの事をお疑いならば聖女教会に問い合わせてくれても結構ですよ」
「随分とふてぶてしいものだな。もちろんそれぐらいはとっくにやっている」
ここでスコテイは以前に見せた、怜悧な視線をオレに注いでくる。
どうやらこちらの反応を伺ったらしい。
「なるほど。確かにお前は『この地の聖女教会』とは無関係らしい」
そりゃそうだ。
だいたい聖女教会が本当にこの国をスパイするなら、わざわざマークされやすい回復魔法の使い手では無く、ミツリーンのような男を送り込むだろう。
しかし実際に聖女教会といろいろ面倒な関係にあって、警戒している側からすれば、オレに対して疑念を持つのは当然か。
「いずれにしてもお前がどう言いつくろうとも、こちらがその気になれば小娘ひとりぐらい、どうにでもなる事は分かるな」
「それでもこうやって連れてきたと言う事は、わたしに何か要求する事があるのでしょう?」
スコテイがオレに求めるのは、身体を要求するとかそんな俗な欲望では無いはずだ。
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