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第20章 とある国と聖なる乙女
第859話 忍び込んでいたものは
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とりあえず今いちゃもんをつけている連中をどうするか?
知らん顔して言わせたいだけ言わせてもいいのだけど、それもまたうざいな。
もう少し魔法を使ってみせて連中を黙らせるか。
しかしオレの場合、見た目が派手な魔法はあんまりない。
一番、わかりやすくインパクトがあるのは植物を急激に成長させる『成長加速』だけど、これは使った後がいろいろと面倒だ。
他にも『精霊使い』で精霊を呼び出すのもあるけど、これに『精霊に頼み事』をする魔法なので、言う事を聞いてくれない可能性もある。
いくら何でも学校に面倒をかけるわけにもいかないので、ここはもっと別の魔法を使うべきだな。
そうだ。上空から見下ろす『鷹の目』なら、誰にも迷惑をかけることもなく、自分がまた別の魔法を使える事を証明出来るかな。
それでもまだ文句をつけてくることは考えられるけどその時はその時だ。
よし。それでいこう。
「わたしの事をお疑いなら、今から少しばかり魔法を使いますよ」
「何をするつもりなの?」
ネアラは少しばかり心配げに問うてくる。
「この蒼穹女学院一帯を上空から見下ろします。そこに何があるのか聞いて下さい。見たものをそのまま答えますよ」
そんなわけでオレは『鷹の目』を唱え、視角を空に上げる。
少なくとも見た目はこれまで幾度も見てきた、大きな町の光景とあまり変わらないな。
「視角を上げると本来の視角は使えなくなりますけど、何か聞いてもらえれば……」
だがここで思わぬものがオレの視角に飛び込んでくる。
校庭の片隅にある小さな林の中で動き回っている相手がいたのだ。
何だと? 上空から見下ろしているに加えて、木々が邪魔に何者かまでは分からないが、こそこそ動き回っているところからして少なくとも生徒や職員では無い事は明らかだ。
守護精霊のサバシーナも校舎に忍び込むのではなく、敷地の片隅でこそこそしている相手まではいちいち手を出さないのだろうな。
この状況でこの学院に忍び込むとは、まさか今朝方アイウーズを襲った相手と何か関係があるのか?
もちろん男子禁制のこの学院の敷地にアイウーズがいるはずが無いが、男子校の碧空学園は警戒が厳しいのでこっちに隠れ、隙を伺っているのかもしれない。
いや。アイウーズの殺害を邪魔したオレへの報復を考えている可能性もあるな――その手の逆恨みも慣れているよ。
しかしその場合は他の生徒が巻き込まれる危険性もある。何しろ相手は土の精霊を使役して大きな人型に変えて暴れさせるような真似も出来るのだ。
今朝はオレが即座に精霊を引き下がらせたから、ほとんど問題は無かったけど、ここでそんなことが起きたら生徒たちがパニックに陥る危険性もあるぞ。
そんな事態は絶対に避けねばならない。
どっちにしてもオレがやることは決まっている。
オレは急ぎ視界を自分に引き戻す。
「すみません! ちょっと後回しにして下さい!」
「ど、どういうこと?!」
「説明している時間はないです!」
オレはあっけにとられる連中を後にして、小さな林に向けて駆け出す。
背後で文句を言っている声も聞こえてきたが、そんなのにかまっちゃいられない。
同じ学院の敷地内だから林の場所まではすぐだ。
普通だったらよほど注意して凝視せねば分からないだろうが、知覚を強化しているオレには遠目にも木々の中で誰かが隠れて動いているのは見て取れた。
ただのこそ泥か覗き目的かもしれないが、どっちにしろれっきとした不審人物だ。
この蒼穹女学院に許可無く入り込むのは国王でも許されないそうなので、ここは遠慮無く魔法で身柄を拘束させてもらおう。
相手の戦力が分からない以上、先手必勝と言うことで『成長加速』と『植物歪曲』で周囲の木々を動かす。
相手も明らかに様子がおかしい事に気づいたようだが、もう手遅れだ。
逃げ出そうとしたところで、枝が一斉に伸びて襲いかかり、足下には雑草が絡みつく。
仮に魔法使いだったとしても、これでもう何も出来ないはずだ。
これがこそ泥だったら、気の毒なほどのオーバーキルではあるが、タイミングが悪かったと言う事で、諦めてお縄についてくれ。
そんなわけで念のため周囲の様子を確認しつつ、オレは林に足を踏みいれる。
もちろん相手は枝と雑草に絡まれて動く事が出来なくなっているはずだが、まだ他に何かあるかもしれないので、オレは油断せず相手に近づく。
だがそこでオレは思わぬものを目の当たりにする事となった。
「やあ。まさか君が来てくれたとはね。こんな姿だけど喜ばしいと言うべきかな」
「はあ?」
幾度も聞いた声に思わずあっけにとられる。
そこでオレの魔法によって縛り上げられていたのは、紛れもないアイウーズだったのだ。
「なんでこんなところにいるんですか?!」
オレも万一の事は考えたが、守護精霊のいる学園や神殿が隣接しているこの地域は通学路よりは安全なはずだ。
しかしそれだからと言って、なんで男子禁制の蒼穹女学院の敷地に忍び込んでいるんだ。
まあ現国王も王子の時、ここに忍び込んで制裁されたと聞いているから、男子校が隣接している以上、そういう事はしばしばあるのだろうが、時と場合を考えやがれ。
「もちろん君にどうしても会いたかったからだよ」
「あなたは……自分の置かれた立場を分かっているのですか?」
少々呆れつつ問いかけると、アイウーズは相変わらずの笑みを浮かべる。
「確かにこのような囚われの身で、君と再会するとは思ってもみなかったよ。だけどこれもまた一つの運命というものだろう」
この後に及んで格好をつけようとは、ある意味感心すべきだろうか?
知らん顔して言わせたいだけ言わせてもいいのだけど、それもまたうざいな。
もう少し魔法を使ってみせて連中を黙らせるか。
しかしオレの場合、見た目が派手な魔法はあんまりない。
一番、わかりやすくインパクトがあるのは植物を急激に成長させる『成長加速』だけど、これは使った後がいろいろと面倒だ。
他にも『精霊使い』で精霊を呼び出すのもあるけど、これに『精霊に頼み事』をする魔法なので、言う事を聞いてくれない可能性もある。
いくら何でも学校に面倒をかけるわけにもいかないので、ここはもっと別の魔法を使うべきだな。
そうだ。上空から見下ろす『鷹の目』なら、誰にも迷惑をかけることもなく、自分がまた別の魔法を使える事を証明出来るかな。
それでもまだ文句をつけてくることは考えられるけどその時はその時だ。
よし。それでいこう。
「わたしの事をお疑いなら、今から少しばかり魔法を使いますよ」
「何をするつもりなの?」
ネアラは少しばかり心配げに問うてくる。
「この蒼穹女学院一帯を上空から見下ろします。そこに何があるのか聞いて下さい。見たものをそのまま答えますよ」
そんなわけでオレは『鷹の目』を唱え、視角を空に上げる。
少なくとも見た目はこれまで幾度も見てきた、大きな町の光景とあまり変わらないな。
「視角を上げると本来の視角は使えなくなりますけど、何か聞いてもらえれば……」
だがここで思わぬものがオレの視角に飛び込んでくる。
校庭の片隅にある小さな林の中で動き回っている相手がいたのだ。
何だと? 上空から見下ろしているに加えて、木々が邪魔に何者かまでは分からないが、こそこそ動き回っているところからして少なくとも生徒や職員では無い事は明らかだ。
守護精霊のサバシーナも校舎に忍び込むのではなく、敷地の片隅でこそこそしている相手まではいちいち手を出さないのだろうな。
この状況でこの学院に忍び込むとは、まさか今朝方アイウーズを襲った相手と何か関係があるのか?
もちろん男子禁制のこの学院の敷地にアイウーズがいるはずが無いが、男子校の碧空学園は警戒が厳しいのでこっちに隠れ、隙を伺っているのかもしれない。
いや。アイウーズの殺害を邪魔したオレへの報復を考えている可能性もあるな――その手の逆恨みも慣れているよ。
しかしその場合は他の生徒が巻き込まれる危険性もある。何しろ相手は土の精霊を使役して大きな人型に変えて暴れさせるような真似も出来るのだ。
今朝はオレが即座に精霊を引き下がらせたから、ほとんど問題は無かったけど、ここでそんなことが起きたら生徒たちがパニックに陥る危険性もあるぞ。
そんな事態は絶対に避けねばならない。
どっちにしてもオレがやることは決まっている。
オレは急ぎ視界を自分に引き戻す。
「すみません! ちょっと後回しにして下さい!」
「ど、どういうこと?!」
「説明している時間はないです!」
オレはあっけにとられる連中を後にして、小さな林に向けて駆け出す。
背後で文句を言っている声も聞こえてきたが、そんなのにかまっちゃいられない。
同じ学院の敷地内だから林の場所まではすぐだ。
普通だったらよほど注意して凝視せねば分からないだろうが、知覚を強化しているオレには遠目にも木々の中で誰かが隠れて動いているのは見て取れた。
ただのこそ泥か覗き目的かもしれないが、どっちにしろれっきとした不審人物だ。
この蒼穹女学院に許可無く入り込むのは国王でも許されないそうなので、ここは遠慮無く魔法で身柄を拘束させてもらおう。
相手の戦力が分からない以上、先手必勝と言うことで『成長加速』と『植物歪曲』で周囲の木々を動かす。
相手も明らかに様子がおかしい事に気づいたようだが、もう手遅れだ。
逃げ出そうとしたところで、枝が一斉に伸びて襲いかかり、足下には雑草が絡みつく。
仮に魔法使いだったとしても、これでもう何も出来ないはずだ。
これがこそ泥だったら、気の毒なほどのオーバーキルではあるが、タイミングが悪かったと言う事で、諦めてお縄についてくれ。
そんなわけで念のため周囲の様子を確認しつつ、オレは林に足を踏みいれる。
もちろん相手は枝と雑草に絡まれて動く事が出来なくなっているはずだが、まだ他に何かあるかもしれないので、オレは油断せず相手に近づく。
だがそこでオレは思わぬものを目の当たりにする事となった。
「やあ。まさか君が来てくれたとはね。こんな姿だけど喜ばしいと言うべきかな」
「はあ?」
幾度も聞いた声に思わずあっけにとられる。
そこでオレの魔法によって縛り上げられていたのは、紛れもないアイウーズだったのだ。
「なんでこんなところにいるんですか?!」
オレも万一の事は考えたが、守護精霊のいる学園や神殿が隣接しているこの地域は通学路よりは安全なはずだ。
しかしそれだからと言って、なんで男子禁制の蒼穹女学院の敷地に忍び込んでいるんだ。
まあ現国王も王子の時、ここに忍び込んで制裁されたと聞いているから、男子校が隣接している以上、そういう事はしばしばあるのだろうが、時と場合を考えやがれ。
「もちろん君にどうしても会いたかったからだよ」
「あなたは……自分の置かれた立場を分かっているのですか?」
少々呆れつつ問いかけると、アイウーズは相変わらずの笑みを浮かべる。
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