異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

文字の大きさ
859 / 1,316
第20章 とある国と聖なる乙女

第859話 忍び込んでいたものは

しおりを挟む
 とりあえず今いちゃもんをつけている連中をどうするか?
 知らん顔して言わせたいだけ言わせてもいいのだけど、それもまたうざいな。
 もう少し魔法を使ってみせて連中を黙らせるか。

 しかしオレの場合、見た目が派手な魔法はあんまりない。
 一番、わかりやすくインパクトがあるのは植物を急激に成長させる『成長加速』グロウスだけど、これは使った後がいろいろと面倒だ。
 他にも『精霊使い』ファミリア・スピリットで精霊を呼び出すのもあるけど、これに『精霊に頼み事』をする魔法なので、言う事を聞いてくれない可能性もある。
 いくら何でも学校に面倒をかけるわけにもいかないので、ここはもっと別の魔法を使うべきだな。

 そうだ。上空から見下ろす『鷹の目』イーグル・アイなら、誰にも迷惑をかけることもなく、自分がまた別の魔法を使える事を証明出来るかな。
 それでもまだ文句をつけてくることは考えられるけどその時はその時だ。
 よし。それでいこう。

「わたしの事をお疑いなら、今から少しばかり魔法を使いますよ」
「何をするつもりなの?」

 ネアラは少しばかり心配げに問うてくる。

「この蒼穹女学院一帯を上空から見下ろします。そこに何があるのか聞いて下さい。見たものをそのまま答えますよ」

 そんなわけでオレは『鷹の目』を唱え、視角を空に上げる。
 少なくとも見た目はこれまで幾度も見てきた、大きな町の光景とあまり変わらないな。

「視角を上げると本来の視角は使えなくなりますけど、何か聞いてもらえれば……」

 だがここで思わぬものがオレの視角に飛び込んでくる。
 校庭の片隅にある小さな林の中で動き回っている相手がいたのだ。
 何だと? 上空から見下ろしているに加えて、木々が邪魔に何者かまでは分からないが、こそこそ動き回っているところからして少なくとも生徒や職員では無い事は明らかだ。
 守護精霊のサバシーナも校舎に忍び込むのではなく、敷地の片隅でこそこそしている相手まではいちいち手を出さないのだろうな。

 この状況でこの学院に忍び込むとは、まさか今朝方アイウーズを襲った相手と何か関係があるのか?
 もちろん男子禁制のこの学院の敷地にアイウーズがいるはずが無いが、男子校の碧空学園は警戒が厳しいのでこっちに隠れ、隙を伺っているのかもしれない。
 いや。アイウーズの殺害を邪魔したオレへの報復を考えている可能性もあるな――その手の逆恨みも慣れているよ。
 しかしその場合は他の生徒が巻き込まれる危険性もある。何しろ相手は土の精霊を使役して大きな人型に変えて暴れさせるような真似も出来るのだ。
 今朝はオレが即座に精霊を引き下がらせたから、ほとんど問題は無かったけど、ここでそんなことが起きたら生徒たちがパニックに陥る危険性もあるぞ。
 そんな事態は絶対に避けねばならない。
 どっちにしてもオレがやることは決まっている。
 オレは急ぎ視界を自分に引き戻す。

「すみません! ちょっと後回しにして下さい!」
「ど、どういうこと?!」
「説明している時間はないです!」

 オレはあっけにとられる連中を後にして、小さな林に向けて駆け出す。
 背後で文句を言っている声も聞こえてきたが、そんなのにかまっちゃいられない。
 

 同じ学院の敷地内だから林の場所まではすぐだ。
 普通だったらよほど注意して凝視せねば分からないだろうが、知覚を強化しているオレには遠目にも木々の中で誰かが隠れて動いているのは見て取れた。
 ただのこそ泥か覗き目的かもしれないが、どっちにしろれっきとした不審人物だ。
 この蒼穹女学院に許可無く入り込むのは国王でも許されないそうなので、ここは遠慮無く魔法で身柄を拘束させてもらおう。
 相手の戦力が分からない以上、先手必勝と言うことで『成長加速』グロウス『植物歪曲』ワープ・ウッドで周囲の木々を動かす。
 相手も明らかに様子がおかしい事に気づいたようだが、もう手遅れだ。

 逃げ出そうとしたところで、枝が一斉に伸びて襲いかかり、足下には雑草が絡みつく。
 仮に魔法使いだったとしても、これでもう何も出来ないはずだ。
 これがこそ泥だったら、気の毒なほどのオーバーキルではあるが、タイミングが悪かったと言う事で、諦めてお縄についてくれ。
 そんなわけで念のため周囲の様子を確認しつつ、オレは林に足を踏みいれる。
 もちろん相手は枝と雑草に絡まれて動く事が出来なくなっているはずだが、まだ他に何かあるかもしれないので、オレは油断せず相手に近づく。
 だがそこでオレは思わぬものを目の当たりにする事となった。

「やあ。まさか君が来てくれたとはね。こんな姿だけど喜ばしいと言うべきかな」
「はあ?」

 幾度も聞いた声に思わずあっけにとられる。
 そこでオレの魔法によって縛り上げられていたのは、紛れもないアイウーズだったのだ。

「なんでこんなところにいるんですか?!」

 オレも万一の事は考えたが、守護精霊のいる学園や神殿が隣接しているこの地域は通学路よりは安全なはずだ。
 しかしそれだからと言って、なんで男子禁制の蒼穹女学院の敷地に忍び込んでいるんだ。
 まあ現国王も王子の時、ここに忍び込んで制裁されたと聞いているから、男子校が隣接している以上、そういう事はしばしばあるのだろうが、時と場合を考えやがれ。

「もちろん君にどうしても会いたかったからだよ」
「あなたは……自分の置かれた立場を分かっているのですか?」

 少々呆れつつ問いかけると、アイウーズは相変わらずの笑みを浮かべる。

「確かにこのような囚われの身で、君と再会するとは思ってもみなかったよ。だけどこれもまた一つの運命というものだろう」

 この後に及んで格好をつけようとは、ある意味感心すべきだろうか?
しおりを挟む
感想 104

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さくら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...