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第20章 とある国と聖なる乙女
第858話 危険な想像をしていると
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もしも今のオレの想像が正しいとすれば、このフラネス王国はこれまで個々の教団や精霊の信者たちがバラバラに守ってきた魔法の秘密を国家によって管理しようとしているのかもしれない。
そうやって各教団の魔法の秘密を手にした上で、学校でそれぞれの生徒の有する魔法の適正に合わせて訓練を行えば、飛躍的に強力な魔法使いを増やす事が可能になるはずだ。
この世界では『火球』や『電撃』のような魔法を使えるものはごく一握りしかいないが、それを大勢養成出来ればフラネス王国の力は飛躍的に増すだろう。
そうすればこの国が再度、東方を統一して帝国を復興させるのも夢では無いかもしれない。
しかし現実問題としてそれが可能だろうか?
オレと同じ事を過去に考えなかった国家が無いとは思えない。
だがそれを実行するとなれば、当然ながら自分たちが隠してきた秘密を暴かれる各教団が猛反発するに決まっている。
それぞれの神に仕える教団が信徒に教えている魔法は、自分たちの神や英雄から教えられているものであり、神聖な存在であると共に、信徒を獲得する『武器』でもある。
その秘密に触れるのは、元の世界で言えば自国内の企業に対し『企業秘密を国に差し出せ』と言っているようなものだ。
もちろん幾つもの国に拠点を置き、それらの国でも国政に大きな影響を与えている存在を相手にしてそんな要求をすれば大変な事になる。
しかも企業相手ならまだ金でどうにかなるけど、宗教界が相手では『金で秘密を買い取る』事も出来ない。神様に話を聞く『神託』もあるので、誰かを買収してこっそり教団の秘密を盗み取るというわけにもいかないのだ。
そしてこっちの世界では宗教界を怒らせたら、本当に国が滅ぼされてしまいかねない。
つまり思いつきだけならいざ知らず、実現は極めて困難だ。
しかしまるっきり不可能というわけでは無い。
以前に出会った神造者は『各宗教の神話を統一的に管理し、都合よく変える』という真似をしていた。
それを考えればこのフラネス王国がそのような挙に出ることは十分にあり得るな。
そうは言っても一歩間違えば国家が潰れるまで叩かれる危険性があるので、今の所は慎重にあくまでも『各寺院を王都の一角に移転させただけ』という建前で行動しているとも考えられる。
しかもそれをやっているのが新国王即位後となると、本来ならば王位を継ぐ立場では無かったらしい新国王を即位させる原動力となったらしい王妃が関わっているかもしれない。
王妃が『アルタシャ』だという噂も、聖女教会から回復魔法の秘密を得るための方便という線もあるぞ。
う~ん。いろいろと危険な匂いが漂って来るが、例によってオレの推測に過ぎないので、決めつけは禁物だ。
「随分と難しい顔をしていますね?」
「やはり図星だったようですね」
どうやらオレは考え事をしている最中に堅い表情になっていたらしい。それを見て、文句をつけてきた女子たちは勘違いしたようだ。
これが元の世界のバトル学園ものだったら、次には魔法による模擬戦となって、どっちが勝っても相互理解が進んで仲良くなれるだろう。
もちろん『お互いに全力で魔法を使って戦い、仮に相手を打ち負かしても怪我はしない』なんて都合のいい闘技場などこの世界には存在しない。
「せっかく皆さんが見ておられるのです。アルさんは是非ともご自慢の魔法を使って見せて下さいよ」
「出来るモノならですけどね」
彼女達は随分とオレに『いまこの場で』魔法を使わせたいらしい。いったい何の意図があるのだろうか?
また少しばかりオレが思考を回している最中にも、周囲は固唾を飲んで見守っている。
緊張半分、どうなるか期待半分というところか。
野次馬根性もあるのだろうが、何よりもオレの魔力が本当にどれほどのものか直に見て確かめたいという意識もあるに違いない。
しかしオレの方は人間離れした異常な魔力について知られる訳にはいかないから、魔法で他の生徒と競うわけにはいかないのだ。
少しばかりこちらが苦慮していると、横合いからネアラが口を挟む。
「お待ちください。アルは今朝方、アイウーズ様を守るために魔法を使ったばかりですよ。それなのにまた魔法など使えませんよ」
「それぐらいどうかしたのですか?」
「そうですよ。同じ事をしてくれたらよいだけです」
いま文句を言ってきている連中は、今朝方にオレが強力な魔法を使って魔力を消費していると思っていたので、あえてこんな形で挑発に来たのか。
恐らくはオレに残っている魔力では大した事など出来ないと高をくくっていて、それでこちらを困らせてやろうと思っているわけだ。
いやあ。オレ自身がこれまで『魔力切れ』なんてほとんど無かったし、今朝方使った魔法などごく些細なものだったから、そっちはまるっきり意識していなかったよ。
自分の正体を隠すためには、それも頭の片隅に置いておかないととんでもない失敗をやらかすかもしれないな――もう今更そんなことを心配しても仕方ないとも思えるけど。
そうやって各教団の魔法の秘密を手にした上で、学校でそれぞれの生徒の有する魔法の適正に合わせて訓練を行えば、飛躍的に強力な魔法使いを増やす事が可能になるはずだ。
この世界では『火球』や『電撃』のような魔法を使えるものはごく一握りしかいないが、それを大勢養成出来ればフラネス王国の力は飛躍的に増すだろう。
そうすればこの国が再度、東方を統一して帝国を復興させるのも夢では無いかもしれない。
しかし現実問題としてそれが可能だろうか?
オレと同じ事を過去に考えなかった国家が無いとは思えない。
だがそれを実行するとなれば、当然ながら自分たちが隠してきた秘密を暴かれる各教団が猛反発するに決まっている。
それぞれの神に仕える教団が信徒に教えている魔法は、自分たちの神や英雄から教えられているものであり、神聖な存在であると共に、信徒を獲得する『武器』でもある。
その秘密に触れるのは、元の世界で言えば自国内の企業に対し『企業秘密を国に差し出せ』と言っているようなものだ。
もちろん幾つもの国に拠点を置き、それらの国でも国政に大きな影響を与えている存在を相手にしてそんな要求をすれば大変な事になる。
しかも企業相手ならまだ金でどうにかなるけど、宗教界が相手では『金で秘密を買い取る』事も出来ない。神様に話を聞く『神託』もあるので、誰かを買収してこっそり教団の秘密を盗み取るというわけにもいかないのだ。
そしてこっちの世界では宗教界を怒らせたら、本当に国が滅ぼされてしまいかねない。
つまり思いつきだけならいざ知らず、実現は極めて困難だ。
しかしまるっきり不可能というわけでは無い。
以前に出会った神造者は『各宗教の神話を統一的に管理し、都合よく変える』という真似をしていた。
それを考えればこのフラネス王国がそのような挙に出ることは十分にあり得るな。
そうは言っても一歩間違えば国家が潰れるまで叩かれる危険性があるので、今の所は慎重にあくまでも『各寺院を王都の一角に移転させただけ』という建前で行動しているとも考えられる。
しかもそれをやっているのが新国王即位後となると、本来ならば王位を継ぐ立場では無かったらしい新国王を即位させる原動力となったらしい王妃が関わっているかもしれない。
王妃が『アルタシャ』だという噂も、聖女教会から回復魔法の秘密を得るための方便という線もあるぞ。
う~ん。いろいろと危険な匂いが漂って来るが、例によってオレの推測に過ぎないので、決めつけは禁物だ。
「随分と難しい顔をしていますね?」
「やはり図星だったようですね」
どうやらオレは考え事をしている最中に堅い表情になっていたらしい。それを見て、文句をつけてきた女子たちは勘違いしたようだ。
これが元の世界のバトル学園ものだったら、次には魔法による模擬戦となって、どっちが勝っても相互理解が進んで仲良くなれるだろう。
もちろん『お互いに全力で魔法を使って戦い、仮に相手を打ち負かしても怪我はしない』なんて都合のいい闘技場などこの世界には存在しない。
「せっかく皆さんが見ておられるのです。アルさんは是非ともご自慢の魔法を使って見せて下さいよ」
「出来るモノならですけどね」
彼女達は随分とオレに『いまこの場で』魔法を使わせたいらしい。いったい何の意図があるのだろうか?
また少しばかりオレが思考を回している最中にも、周囲は固唾を飲んで見守っている。
緊張半分、どうなるか期待半分というところか。
野次馬根性もあるのだろうが、何よりもオレの魔力が本当にどれほどのものか直に見て確かめたいという意識もあるに違いない。
しかしオレの方は人間離れした異常な魔力について知られる訳にはいかないから、魔法で他の生徒と競うわけにはいかないのだ。
少しばかりこちらが苦慮していると、横合いからネアラが口を挟む。
「お待ちください。アルは今朝方、アイウーズ様を守るために魔法を使ったばかりですよ。それなのにまた魔法など使えませんよ」
「それぐらいどうかしたのですか?」
「そうですよ。同じ事をしてくれたらよいだけです」
いま文句を言ってきている連中は、今朝方にオレが強力な魔法を使って魔力を消費していると思っていたので、あえてこんな形で挑発に来たのか。
恐らくはオレに残っている魔力では大した事など出来ないと高をくくっていて、それでこちらを困らせてやろうと思っているわけだ。
いやあ。オレ自身がこれまで『魔力切れ』なんてほとんど無かったし、今朝方使った魔法などごく些細なものだったから、そっちはまるっきり意識していなかったよ。
自分の正体を隠すためには、それも頭の片隅に置いておかないととんでもない失敗をやらかすかもしれないな――もう今更そんなことを心配しても仕方ないとも思えるけど。
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