異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第20章 とある国と聖なる乙女

第866話 どうにか一安心……と思ったところで

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 気がつくと明らかに話がずれているので、ここははっきりと宣言しておくべきだろう。

「断っておきますけど、わたしは国王陛下に輿入れなんて考えていませんからね」
「それでは――」
「もちろんあなたの妻になる気もありません」
「そうか。それは仕方ないなあ」

 どうやらオレが『国王の妻』の座に興味が無いと知って、それだけでもプラスと考えたらしい。その前向きな姿勢は感心すべきだろうか。
 しかしオレを養女に欲しいと言ってきた連中の中には、間違いなく国王に輿入れさせる駒として考えている奴らもいるんだろうなあ。
 イオドにすれば一時とは言え『娘』にした相手が国王に輿入れするなら、自分の出世にも役立つ筈なのに、それをおくびにも出さなかったのだから大した男だ。
 仮であっても『娘』として尊敬するよ。
 そして窓から覗く周囲の景色から、どうやら何事もなく『登校』出来そうだ。それが当たり前のはずだけど異常事態が日常と化すと、むしろ落ち着かない気がしてくるな。
 オレの心の片隅からは『そんなに平穏無事に終わるはずがない』という声が湧き上がってくるのだ。
 もちろん昨日アイウーズを襲撃して失敗した相手が、今日また攻撃してくるという保証はどこにもない。
 一回の失敗で諦める事は無いにしても、次から警戒が厳しくなる事は当然予想できるし、なぜ失敗したのかの分析もしているだろう。
 この馬車に乗っているのがアイウーズ本人ではなく、囮のニセモノという可能性だって考えられるはずだ。
 こちらの動きに気づいていたとしても、あえて手出しせず様子を伺っている可能性はあるな。

「そろそろ碧空学園に着きそうですね」
「名残惜しいなあ。もしもかなうなら君に是非とも僕の屋敷に来て欲しいのだけどね。もちろんそのまま何日でも泊まっていっていいよ」

 人の気も知らないこの男の心臓を、この場で止めていってやろうかという気持ちがすこしばかり湧き上がる。
 そんな事を考えていると、校門よりもすこし前で馬車が止まる。
 見ると校門前には何台もの馬車が止まっていて、先に進めないようになっているのだ。
 明らかに昨日、襲撃を振り切りつつアイウーズと共にここまで来た時よりも混雑している。

「おや。いつもよりも随分と混んでいるな」

 一緒にいられる時間が増えたと思ったのか、アイウーズはやっぱり嬉しげだ。

「たぶん昨日の件を聞いて、普段は徒歩で登校している人たちも馬車を使っているのでしょう……」

 登校時に生徒を狙ったテロがあったと聞けば、自分の息子が狙われている可能性は低くとも警戒するのは当然か。
 学校の方でも手が回らず交通整理がうまくいかなくて、かなり狭いところに馬車がひしめいて渋滞しているようだ。
 しかも貴族同士だから、順番だの家の格だのを巡って、譲れ・譲らんで下らない口論もしているようだ。
そういうところは元の世界とあんまり変わらないものだな。
 しかしアイウーズを狙った相手の襲撃の可能性がある以上、こっちを最優先で通してもらいたいところだが、この事態は馬車に乗ったアイウーズを囮にして刺客を誘い出そうとした側にとっても想定外のはず。
 おかげでこちらも先に進めない状態だ。
 いったいどうする?
 このまま待っていたら、狙ってくれと言っているようなものだ。
 いくらこの馬車が魔法で防護され、周囲を警戒していると言っても刺客の方だってそれぐらいは予想しているだろう。
 それでは引き返すか?
 いや。周囲にはこの馬車を警護している相手もいるという事だけど、こちらから連絡を取る手段が無い。
 さすがに引き返すのは事前の段取りに無いだろうから、混乱を招いてしまいかねないな。
 仕方ない。ここは目の前の碧空学園に飛び込むしかないか。
 刺客も昨日と同じ手で来る事はまず無いだろうが、強力な魔法使いをそうそう何人も用意できるとも思えない。
 少なくとも昨日のような精霊の攻撃ならば、仮に二体や三体やってきてもオレにとっては恐れるに足らないのだ。
 一番、考えられるのは精霊を送り込んだ上で『弾丸』バレットのような遠隔攻撃を同時に仕掛けてくる事だ。
 昨日は別々にやってきたから比較的簡単に対処できたけど、あれでまとめてこられたら確かに面倒だな。
 相手が近接攻撃だけだったら、暴力的活動を抑止する『調和』でどうにかなるのだけど、相手をオレの視界に捉えていなければどうしようもない。
 仕方が無いので、馬車の扉の学校側から出て、隠れつつ校門から中に飛び込むとしよう。
 アイウーズも昨日その効果を見せてもらった魔法防護のお守りを身につけているから、万一攻撃されても一度ぐらいはしのげる筈だ。

「このままでは危険です。馬車を降りて学校に逃げ込みましょう」
「その場合、君が僕の盾になってくれるのだろう? 嬉しい気はするけど、やはり申し訳ないなあ」

 この後に及んで格好つけようとするんじゃない!
 オレが文句をつけようとすると、アイウーズはどこか嬉しげに扉を開ける。

「さあ。急ごうじゃないか」
「……そうですね」

 少しばかり複雑な気分で、オレは周囲を警戒しつつ馬車を降りた。
 そしてアイウーズはオレを引き連れている事でどこか誇らしげな上に、オレの容姿が無駄に注目を集めてしまう。
 ええい。下手をすればいきなり魔法攻撃をぶち込まれかねないのに、お前ら何を平和ボケしていやがる。男子校生徒の鬱屈した欲望に満ちた視線は、オレにとってある意味で魔法攻撃よりも不快なものだ。
 だが幸か不幸かオレの魔法を見る『魔法眼』ウィザード・アイや霊体を感知する『霊視』ソウルサイトには特別なものは引っかからない。
 どうやら襲撃は無かったようだ。

 オレは一安心すると、足を止めて校門に入らんとするアイウーズを見送る。
 そしてアイウーズもまた校門の直前で止まっている馬車の横でオレを名残惜しそうに振り向いた――その時の事だった。
 その馬車の中から『何か』が飛び出して、アイウーズの身から鮮血が飛び散ったのだ。
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