異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

文字の大きさ
888 / 1,316
第20章 とある国と聖なる乙女

第888話 思わず明かされたイオドの本音は

しおりを挟む
 スコテイに対しイオドは改めて怒りをこめて叫ぶ。

「どういう事ですか! いかに閣下であろうと、我が親族に正当な理由もなくこのような仕打ちが認められるとお思いか!」
「だから落ち着け。この私が意味も無くこのような事をする愚か者に見えるか?」

 スコテイは平然と答えた。
 もちろん意味はあるだろうけど、それでも合法的な行動には出られないから、こんな真似をしたのは明白だ。

「つまり意味はあっても、罪に問える行為というわけではないのですな」

 イオドは腰の剣に手をかける。
 確かにオレが王妃に接近してあれこれ話をしたところまではつかんでいても、公式に捕まえて罪に問える事ではない筈。
 強引に身柄を拘束しても、王妃や学長、アイウーズ達、そして何より聖女教会がオレを弁護し、釈放を要求するのは分かりきっているから、いくらスコテイでも合法的にはどうしようも無かったろう。
 だから非合法手段でもオレを確保しようとしたに違いない。
 そして最初はネアラを人質にでもするつもりだったのが、オレが出てきたので力尽くでどうにかしようとしたのか。
 オレがアイウーズへの襲撃を軽く凌いでいたので、あの程度の攻撃では死なないと高をくくっていたのか、死んだら死んだで構わないと思っていたのかそれは分からないな。

「確かに体裁を整えればお前の言うとおりだ。しかし其奴が我が国を危機に陥れる姦物であり、お前がそれを呼び込んだ事は法では裁けずとも、間違いなく罪だ。それも国を危うくする大罪だ」
「何を勝手な事を! そのような大罪ならば、なおさら国王陛下の前で公明正大に裁くべきであろう! その程度の理非も分からぬほど目が曇ったか!」

 そう叫んだところで、イオドは剣を引き抜き、その切っ先をスコテイの方向に突きつける。
 当然の決裂だが、スコテイはもちろん動じない。

「お前もとうに気づいていただろう。養女にしたその娘が常人……いや。人間では無い事をな」

 この言葉を聞いてイオドは剣を握りしめる。そういえばオレが金髪だったのを見てもイオドはまるで動じていなかった。
 そうするとやっぱりイオドもオレの正体に気づいていたのか。
 ここでイオドは小声でオレに向けてささやく。

「アル……いや。アルタシャ様。申し訳ありません」

 やっぱりそうか。最初から見抜いていたわけではないだろうけど、いろいろあって見当をつけたというところだろうな。
 しかしなぜ謝る事がある?

「あなた様ならば、ひょっとしたらこの国の現状をどうにかして下さるのでは無いか。そう思っておりました……」
「それならば謝る必要などありませんよ」
「いえ。本音を言えば、私の考えた事はもっと卑しい事です」
「え? それは――」

 どういう意味だ? オレに対して『卑しい事』を考えたと言うなら、それはオレを肉欲の対象にするようなことだろうけど、イオドにはそんな様子はまるで無かった――これまで出会った男性から見れば不自然な程に。

「誉れ高きあなた様ならば、この国の方針を変え、追放同然に追いやられた父上を助ける事が出来るのでは無いか、それにアルタシャ様を養女としたなら我がニグリ家にも栄誉の欠片をいただけるのではないと思ったのです」

 なるほど。そういえば貴族同士の養子縁組についてもいろいろ聞かされてきたが、イオドもこの国の貴族の一員だったと言う事か。

「それがあなた様にとって危険を招くだろうと分かっていたにも関わらず――」
「別にいいですよ。気にしていませんから」

 これまでもさんざん不本意に利用された事があるからな。
 今更、イオドの下心ぐらいで怒ったりはしないさ。問題なのは目の前のスコテイの方だ。
 幸いにもイオドが出てきてくれたお陰で、時間が稼げた。
 オレは幾つか魔法を使ったところで立ち上がると、今度はイオドの前に立って、スコテイに対峙する。

「イオドさんはネアラさんを連れて逃げて下さい」

 そんなことを言って、逃げてくれるかどうかは分からないけど、オレがスコテイをどうにかするしかない。

「ほう。諦めて私に同行する気になったのか?」
「それであなたはわたしをどうするつもりなんです」

 とりあえずスコテイが今すぐオレを殺す気は無いのころまでは分かっているが、その真意はまだよく見えない。
 少なくとも単純に『この国を乱す存在』という事で罪に問うつもりではないはずだ。

「そうだな。まずは露出の多い服を着て、私の愛人になってもらうのがいいかね」

 ここでそんな下ネタを挟むところが、相変わらずだな。
 少なくともこの行為はスコテイ自身にとっても賭けであるはず。
 失敗すれば身の破滅もあり得ると覚悟しているだろうに、そこでも軽口をたたけるのは大したものだと思うべきかな。

「そうやってからかうのが目的だったら、わたしたち三人そろって帰ってもいいですか?」
「ははは。それは困るなあ。是非ともお招きを受けていただかないと、私にも立場というものがありましてな」

 オレの皮肉に対し、スコテイは相変わらずの笑みを浮かべる。オレがこの国に来てから、守護精霊だの、大地の精霊が形をとった巨躯の怪物だの、王妃だのいろいろな相手に出会ってきたが、恐ろしいと思えるのはこのスコテイだよ。
しおりを挟む
感想 104

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さくら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

処理中です...