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第20章 とある国と聖なる乙女
第888話 思わず明かされたイオドの本音は
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スコテイに対しイオドは改めて怒りをこめて叫ぶ。
「どういう事ですか! いかに閣下であろうと、我が親族に正当な理由もなくこのような仕打ちが認められるとお思いか!」
「だから落ち着け。この私が意味も無くこのような事をする愚か者に見えるか?」
スコテイは平然と答えた。
もちろん意味はあるだろうけど、それでも合法的な行動には出られないから、こんな真似をしたのは明白だ。
「つまり意味はあっても、罪に問える行為というわけではないのですな」
イオドは腰の剣に手をかける。
確かにオレが王妃に接近してあれこれ話をしたところまではつかんでいても、公式に捕まえて罪に問える事ではない筈。
強引に身柄を拘束しても、王妃や学長、アイウーズ達、そして何より聖女教会がオレを弁護し、釈放を要求するのは分かりきっているから、いくらスコテイでも合法的にはどうしようも無かったろう。
だから非合法手段でもオレを確保しようとしたに違いない。
そして最初はネアラを人質にでもするつもりだったのが、オレが出てきたので力尽くでどうにかしようとしたのか。
オレがアイウーズへの襲撃を軽く凌いでいたので、あの程度の攻撃では死なないと高をくくっていたのか、死んだら死んだで構わないと思っていたのかそれは分からないな。
「確かに体裁を整えればお前の言うとおりだ。しかし其奴が我が国を危機に陥れる姦物であり、お前がそれを呼び込んだ事は法では裁けずとも、間違いなく罪だ。それも国を危うくする大罪だ」
「何を勝手な事を! そのような大罪ならば、なおさら国王陛下の前で公明正大に裁くべきであろう! その程度の理非も分からぬほど目が曇ったか!」
そう叫んだところで、イオドは剣を引き抜き、その切っ先をスコテイの方向に突きつける。
当然の決裂だが、スコテイはもちろん動じない。
「お前もとうに気づいていただろう。養女にしたその娘が常人……いや。人間では無い事をな」
この言葉を聞いてイオドは剣を握りしめる。そういえばオレが金髪だったのを見てもイオドはまるで動じていなかった。
そうするとやっぱりイオドもオレの正体に気づいていたのか。
ここでイオドは小声でオレに向けてささやく。
「アル……いや。アルタシャ様。申し訳ありません」
やっぱりそうか。最初から見抜いていたわけではないだろうけど、いろいろあって見当をつけたというところだろうな。
しかしなぜ謝る事がある?
「あなた様ならば、ひょっとしたらこの国の現状をどうにかして下さるのでは無いか。そう思っておりました……」
「それならば謝る必要などありませんよ」
「いえ。本音を言えば、私の考えた事はもっと卑しい事です」
「え? それは――」
どういう意味だ? オレに対して『卑しい事』を考えたと言うなら、それはオレを肉欲の対象にするようなことだろうけど、イオドにはそんな様子はまるで無かった――これまで出会った男性から見れば不自然な程に。
「誉れ高きあなた様ならば、この国の方針を変え、追放同然に追いやられた父上を助ける事が出来るのでは無いか、それにアルタシャ様を養女としたなら我がニグリ家にも栄誉の欠片をいただけるのではないと思ったのです」
なるほど。そういえば貴族同士の養子縁組についてもいろいろ聞かされてきたが、イオドもこの国の貴族の一員だったと言う事か。
「それがあなた様にとって危険を招くだろうと分かっていたにも関わらず――」
「別にいいですよ。気にしていませんから」
これまでもさんざん不本意に利用された事があるからな。
今更、イオドの下心ぐらいで怒ったりはしないさ。問題なのは目の前のスコテイの方だ。
幸いにもイオドが出てきてくれたお陰で、時間が稼げた。
オレは幾つか魔法を使ったところで立ち上がると、今度はイオドの前に立って、スコテイに対峙する。
「イオドさんはネアラさんを連れて逃げて下さい」
そんなことを言って、逃げてくれるかどうかは分からないけど、オレがスコテイをどうにかするしかない。
「ほう。諦めて私に同行する気になったのか?」
「それであなたはわたしをどうするつもりなんです」
とりあえずスコテイが今すぐオレを殺す気は無いのころまでは分かっているが、その真意はまだよく見えない。
少なくとも単純に『この国を乱す存在』という事で罪に問うつもりではないはずだ。
「そうだな。まずは露出の多い服を着て、私の愛人になってもらうのがいいかね」
ここでそんな下ネタを挟むところが、相変わらずだな。
少なくともこの行為はスコテイ自身にとっても賭けであるはず。
失敗すれば身の破滅もあり得ると覚悟しているだろうに、そこでも軽口をたたけるのは大したものだと思うべきかな。
「そうやってからかうのが目的だったら、わたしたち三人そろって帰ってもいいですか?」
「ははは。それは困るなあ。是非ともお招きを受けていただかないと、私にも立場というものがありましてな」
オレの皮肉に対し、スコテイは相変わらずの笑みを浮かべる。オレがこの国に来てから、守護精霊だの、大地の精霊が形をとった巨躯の怪物だの、王妃だのいろいろな相手に出会ってきたが、恐ろしいと思えるのはこのスコテイだよ。
「どういう事ですか! いかに閣下であろうと、我が親族に正当な理由もなくこのような仕打ちが認められるとお思いか!」
「だから落ち着け。この私が意味も無くこのような事をする愚か者に見えるか?」
スコテイは平然と答えた。
もちろん意味はあるだろうけど、それでも合法的な行動には出られないから、こんな真似をしたのは明白だ。
「つまり意味はあっても、罪に問える行為というわけではないのですな」
イオドは腰の剣に手をかける。
確かにオレが王妃に接近してあれこれ話をしたところまではつかんでいても、公式に捕まえて罪に問える事ではない筈。
強引に身柄を拘束しても、王妃や学長、アイウーズ達、そして何より聖女教会がオレを弁護し、釈放を要求するのは分かりきっているから、いくらスコテイでも合法的にはどうしようも無かったろう。
だから非合法手段でもオレを確保しようとしたに違いない。
そして最初はネアラを人質にでもするつもりだったのが、オレが出てきたので力尽くでどうにかしようとしたのか。
オレがアイウーズへの襲撃を軽く凌いでいたので、あの程度の攻撃では死なないと高をくくっていたのか、死んだら死んだで構わないと思っていたのかそれは分からないな。
「確かに体裁を整えればお前の言うとおりだ。しかし其奴が我が国を危機に陥れる姦物であり、お前がそれを呼び込んだ事は法では裁けずとも、間違いなく罪だ。それも国を危うくする大罪だ」
「何を勝手な事を! そのような大罪ならば、なおさら国王陛下の前で公明正大に裁くべきであろう! その程度の理非も分からぬほど目が曇ったか!」
そう叫んだところで、イオドは剣を引き抜き、その切っ先をスコテイの方向に突きつける。
当然の決裂だが、スコテイはもちろん動じない。
「お前もとうに気づいていただろう。養女にしたその娘が常人……いや。人間では無い事をな」
この言葉を聞いてイオドは剣を握りしめる。そういえばオレが金髪だったのを見てもイオドはまるで動じていなかった。
そうするとやっぱりイオドもオレの正体に気づいていたのか。
ここでイオドは小声でオレに向けてささやく。
「アル……いや。アルタシャ様。申し訳ありません」
やっぱりそうか。最初から見抜いていたわけではないだろうけど、いろいろあって見当をつけたというところだろうな。
しかしなぜ謝る事がある?
「あなた様ならば、ひょっとしたらこの国の現状をどうにかして下さるのでは無いか。そう思っておりました……」
「それならば謝る必要などありませんよ」
「いえ。本音を言えば、私の考えた事はもっと卑しい事です」
「え? それは――」
どういう意味だ? オレに対して『卑しい事』を考えたと言うなら、それはオレを肉欲の対象にするようなことだろうけど、イオドにはそんな様子はまるで無かった――これまで出会った男性から見れば不自然な程に。
「誉れ高きあなた様ならば、この国の方針を変え、追放同然に追いやられた父上を助ける事が出来るのでは無いか、それにアルタシャ様を養女としたなら我がニグリ家にも栄誉の欠片をいただけるのではないと思ったのです」
なるほど。そういえば貴族同士の養子縁組についてもいろいろ聞かされてきたが、イオドもこの国の貴族の一員だったと言う事か。
「それがあなた様にとって危険を招くだろうと分かっていたにも関わらず――」
「別にいいですよ。気にしていませんから」
これまでもさんざん不本意に利用された事があるからな。
今更、イオドの下心ぐらいで怒ったりはしないさ。問題なのは目の前のスコテイの方だ。
幸いにもイオドが出てきてくれたお陰で、時間が稼げた。
オレは幾つか魔法を使ったところで立ち上がると、今度はイオドの前に立って、スコテイに対峙する。
「イオドさんはネアラさんを連れて逃げて下さい」
そんなことを言って、逃げてくれるかどうかは分からないけど、オレがスコテイをどうにかするしかない。
「ほう。諦めて私に同行する気になったのか?」
「それであなたはわたしをどうするつもりなんです」
とりあえずスコテイが今すぐオレを殺す気は無いのころまでは分かっているが、その真意はまだよく見えない。
少なくとも単純に『この国を乱す存在』という事で罪に問うつもりではないはずだ。
「そうだな。まずは露出の多い服を着て、私の愛人になってもらうのがいいかね」
ここでそんな下ネタを挟むところが、相変わらずだな。
少なくともこの行為はスコテイ自身にとっても賭けであるはず。
失敗すれば身の破滅もあり得ると覚悟しているだろうに、そこでも軽口をたたけるのは大したものだと思うべきかな。
「そうやってからかうのが目的だったら、わたしたち三人そろって帰ってもいいですか?」
「ははは。それは困るなあ。是非ともお招きを受けていただかないと、私にも立場というものがありましてな」
オレの皮肉に対し、スコテイは相変わらずの笑みを浮かべる。オレがこの国に来てから、守護精霊だの、大地の精霊が形をとった巨躯の怪物だの、王妃だのいろいろな相手に出会ってきたが、恐ろしいと思えるのはこのスコテイだよ。
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