異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第21章 神の試練と預言者

第937話 アンデッドを撃退した後で

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 しばしの後、アンデッド共が残らず打ち砕かれ、動きを止めたのを確認したところで、肩で息をしているサロールに近づく。
 当然ながらサロールもまったく無傷というワケではなく、小さな傷はあちこちについている。いますぐ致命傷とはいかずとも、注意しておくに越したことはない。
 そんなわけでオレはサロールに近づき『疲労回復』スタミナ『肉体の治癒』ヒール・ボディをかける。
 すると見る見るうちに傷は消え、サロールの呼吸も落ち着いてくる。

「ふう……お前にはそんな事も出来るのか」

 サロールは自分の身を興味深そうに見回している。
 どうやら回復魔法についても何も知らないらしい。まあこんなところで聖女教会が活動しているわけがないから、イル=フェロ信徒が知らないのは当然だ。

「ええ。それよりもどこかに痛むところはありませんか?」

 よくあるゾンビ映画のようにゾンビにかまれたら感染して次のゾンビになるという事は無くとも、毒があるかもしれないからな。

「いや。すっかり良くなった。しかし外の人間はお前のような事も出来るのか?」
「そんなに多くはありませんけどね」

 いまサロールに対して使った魔法は、並の聖女だと一日の全魔力を注いでどうにかというところだが、今のオレだったら時間があれば千回ぐらい軽く使えそうだがこの場は使える回数は関係無い。

「ふうむ……」

 サロールが考え込んでいるのは『堕落した存在』と見下していた外部の人間に対する認識を改めようとしているから――ではないだろうなあ。

「お前はその力を何に使っているのだ? 今までの話からすると、力なきものを助けたりしているのではないのか?」
「その通りですよ」

 ここで隠しても仕方ないが、オレの返答を聞いてサロールは呆れたと言わんばかりの表情を浮かべる。

「弱者を助けても、そいつが強者になれるわけではないのだぞ?」
「もちろんそれぐらいは分かっていますよ」
「ならばその弱者のために群れが弱くなり、そのために余計に命を落とす者が増えるではないか。たった一人の足手まといのために、群れ全体が危機に陥る事もあるのだ」

 サロールの言っていることもまあ分かる。
 彼も別に冷酷なのではなく、この厳しい環境で生き残るためには部族の役に立つ事の出来ないものを養っていけないということだ。
 このあたりはやはり群れについていけないものは見捨てられる、動物の群れと同じ感覚なのだろう。

「前にも言いましたけどこの地の外では、弱者も助けて可能な限り大勢が生きる事が出来るようにするのが当たり前なのですよ」

 オレの知る限り、この世界でそのような行為にもっとも熱心な組織の一つが聖女教会であり、国家としては神造者の支配するフォンリット帝国なのは、個人的に非常に不満のあるところだ。

「本当に……外の世界は堕落しているのだな……」

 そう言ってサロールはオレに背を向けて歩き出す。

「わたしもその堕落した者の一人という事ですね」
「当たり前だ」

 ぶっきらぼうに言い切るとサロールは歩き出す。
 サロールはオレに対して落胆したのだろうな。
 まあいい。すぐ理解してもらえなくとも構わない。
 今のところは『戦う力』以外にも世の中にはいろいろな『強さ』がある事を分かってくれるだけで十分だと考えよう。

「どうした。あいつに責められて落ち込んだのか?」

 ここでテセルが問うてくる。
 その声色には少しばかり嬉しげな空気が含まれている気もするぞ。
 テセルはひょっとするとオレがサロールを『恋人』に選んだのかと思って気にかけていたのかもしれないな。

「あんな自分たちの狭い世界しか知らない愚物の言う事などいちいち真に受けていたら身が持たんぞ」

 比較してどちらがオレに近いかと言えば確かにテセルの方だが、自分の世界の事しか考えないという点では五十歩百歩だ。
 それはともかくテセルに一つ聞きたいものもある。
 神造者はその地の守護神をすげ替える事で、荒れ地を豊かな穀倉地帯に変える事も出来れば、逆にその地域の生命を根絶やしにする事もあった。
 それと同じ事をこの地で行う事は可能だろうか?

「この地の守護神をすげ替えたら、かつてのような豊かな穀倉地に戻りますか?」
「無茶を言うなよ」

 テセルは呆れたように肩をすくめる。

「物事には限度というものがある。ただのやせた土地ならそれを豊かにする事は出来る。貧乏人が大金持ちになるのは困難であっても不可能ではないようなものだ。しかしこんな火山活動の結果によって引き起こされた大地の荒廃まではどうしようもない」

 やっぱりそうなるか。
 だいたい予想通りだったので、特に落胆はしなかったが。

「そもそもこの近隣に神造者は僕を含め、ごく一握りしかいない。ちょっとした精霊ぐらいならいざ知らず、地域の守護神をすげ替えるのは無理というものだ。いや。待てよ――」
「なんですか?」
「お前が僕に協力するなら、ひょっとすると可能かもしれないぞ」

 そう言ってテセルはオレの肩に手を伸ばしてくる。

「それは永遠に不可能でいいですよ」

 オレはテセルの手を振り切って、とっとと先を急ぐ事にした。
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