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第21章 神の試練と預言者
第936話 これもまた『神の試練』として
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立ち上がった連中は、明らかにオレ達一行に向けてじりじりと迫ってくる。
どうやらこいつらは聖地に向かう道半ばで斃れたイル=フェロ信徒の死体が動き回っているらしい。
死体と言っても大半は肉がほぼ削げおち、ほとんど骸骨だけしか残っていない。
中にはまだ生きていた時の原型をとどめているのもいるようだが、たぶん死んでからさほど時間が経っていない『新鮮』なアンデッドなのだろう。
ひょっとするとサロールの前に、シャンサの事を神に尋ねるべく聖地に向かったイル=フェロ信徒のなれの果てもいるかもしれない。
そんな奴らに今まで何度も出くわしてきたが、たぶん無念のうちに命を落とした者が、後から来た相手を次から次へと同類として引き込んでいるのだろう。
生きているうちには誇り高き戦士でも、死んでしまえばまともな精神など残っておらず。ただ見つけた相手を襲うだけになるのは珍しくはない。
しかもオレの『霊視』では動く骸骨の周囲に、蒸気の亡霊がより力を増した存在がまとわりついているのが見える。
なるほど。あいつらが力をつけたら、その場合は人間を呪うのでは無く、死体を動かすようになるのか。
ひょっとすると強靭な肉体と戦闘力を求めるイル=フェロ神の意思がそのような事をさせているのかもしれないな。
しかし動く死体が目の前に迫りつつあるのに、我ながら落ち着いているものだ。
この程度は本当に『いつもの事』になってしまったように感じられるよ。
「うぉぉぉ!」
ここでサロールが咆哮とともに飛び出し、近づいて来た骸骨の頭部を手にした粗末な武器で打ち砕く。
周囲に飛び散った白いものは骨のかけらか、はたまた干からびた脳の残骸か。
もちろん他の連中はひるむ事などなく、もちろん死をも恐れず次から次へと押し寄せてくるが、サロールはそれを造作なく次から次へと砕き続ける。
ううむ。サロールは人間に手出しする力も無いたわいのない霊体にはあからさまに怯えていたが、武器で破壊出来る相手には確かに強いな。
テセルが言った通り、サロールは相当な実力があるらしい。
命がけでイル=フェロ神の聖地に向かおうと決意するだけのものはあるようだ。
しかし次から次へと骸骨を打ち砕いているけど、強度の低い骨の武器がよく持つな。
いや。たぶん魔法で強化しているのだろう。
それぐらいは無いと、この地でモンスターの相手など出来ないか。
アンデッド連中はやっぱり思考力は殆ど無いらしく、サロールに打ち砕かれても途切れる事無く迫ってくる。
こうなるとオレはまだしもテセルが危ないな。
まともな精神を持たないアンデッド相手では、暴力的活動を抑止する『調和』も効果は無いので奴らの行動を止める事は出来ない。
オレの場合、アンデッドに対しては回復魔法の効果が裏返って、ダメージを与える事は出来るのだがその場合は直接接触しないといけないのでどっちにしろ危険が伴う。
あくまでも身を守るための最後の手段なのだ。
もちろんテセルの方は肉体を持つ相手に対しては人並以下の能力しか持たないから、いま優先すべきはテセルの安全だな。
「テセル。ひとまず下がってください。危ないですから」
「お前はどうするんだ?」
「ここでサロールさんを出来る限り助けますよ」
オレの方はサロールが負傷したら、すぐに手当しないといけないから、あまり離れるわけにはいかないのだ。
「なんだよ。まるで僕が頼りにならないかのような口ぶりだな」
テセルはあからさまに不満げだ。
「もちろん。最初からそう思っていますよ」
「それではあのサロールとか言う男の方が当てになるというのか」
「テセルがいまサロールさんより頼りになるとでも?」
オレが聞き返すと、テセルは憮然とした表情で押し黙る。
そんなことを言っていると、アンデッドのいくらかはこちらに向かってくる。
サロール一人で相手をするには数が多すぎたか。
やれやれだ。仕方ない。
そんなわけでオレはテセルをかばって前に出ると、迫ってくる相手に触って『肉体の治癒』をかけると一瞬で朽ち果てチリと化す。
だがそのチリの向こうから、もう一体が幾つか指の欠けた手を伸ばしてくるが、そいつにもまた回復魔法によって消し去る。
「ほう。やはりお前ならこの程度の相手は造作も無いか」
テセルは感心したようにつぶやく。
確かに傍目には、オレが簡単にアンデッドを始末しているように見えるかもしれない。
しかしもしも身体をつかまれてしまったら、もろいこの身はひとたまりも無く打ち倒されてしまうのだからヒヤヒヤものである。
だがそうこうしているうちにサロールがアンドッド共を残らず打ち倒し、周囲にはその残骸だけが残っていた。
これで一安心と言いたいところだが、周囲には相変わらず蒸気と一体化した亡霊がうろつき回っている。
どうやら連中はまだまだオレ達に付きまとうつもりらしい。
上空から『鷹の目』で見下ろして、感知出来る脅威を避けていても、埋もれている死体まではどうしようもない。
つまり神の与える試練らしく『ズル』をしても、相応の報いがあるということか。
神様がオレにとってありがたい存在であった事は一度も無いが、これを『いつもの事』と受け入れるのはちょっと出来そうにないな。
どうやらこいつらは聖地に向かう道半ばで斃れたイル=フェロ信徒の死体が動き回っているらしい。
死体と言っても大半は肉がほぼ削げおち、ほとんど骸骨だけしか残っていない。
中にはまだ生きていた時の原型をとどめているのもいるようだが、たぶん死んでからさほど時間が経っていない『新鮮』なアンデッドなのだろう。
ひょっとするとサロールの前に、シャンサの事を神に尋ねるべく聖地に向かったイル=フェロ信徒のなれの果てもいるかもしれない。
そんな奴らに今まで何度も出くわしてきたが、たぶん無念のうちに命を落とした者が、後から来た相手を次から次へと同類として引き込んでいるのだろう。
生きているうちには誇り高き戦士でも、死んでしまえばまともな精神など残っておらず。ただ見つけた相手を襲うだけになるのは珍しくはない。
しかもオレの『霊視』では動く骸骨の周囲に、蒸気の亡霊がより力を増した存在がまとわりついているのが見える。
なるほど。あいつらが力をつけたら、その場合は人間を呪うのでは無く、死体を動かすようになるのか。
ひょっとすると強靭な肉体と戦闘力を求めるイル=フェロ神の意思がそのような事をさせているのかもしれないな。
しかし動く死体が目の前に迫りつつあるのに、我ながら落ち着いているものだ。
この程度は本当に『いつもの事』になってしまったように感じられるよ。
「うぉぉぉ!」
ここでサロールが咆哮とともに飛び出し、近づいて来た骸骨の頭部を手にした粗末な武器で打ち砕く。
周囲に飛び散った白いものは骨のかけらか、はたまた干からびた脳の残骸か。
もちろん他の連中はひるむ事などなく、もちろん死をも恐れず次から次へと押し寄せてくるが、サロールはそれを造作なく次から次へと砕き続ける。
ううむ。サロールは人間に手出しする力も無いたわいのない霊体にはあからさまに怯えていたが、武器で破壊出来る相手には確かに強いな。
テセルが言った通り、サロールは相当な実力があるらしい。
命がけでイル=フェロ神の聖地に向かおうと決意するだけのものはあるようだ。
しかし次から次へと骸骨を打ち砕いているけど、強度の低い骨の武器がよく持つな。
いや。たぶん魔法で強化しているのだろう。
それぐらいは無いと、この地でモンスターの相手など出来ないか。
アンデッド連中はやっぱり思考力は殆ど無いらしく、サロールに打ち砕かれても途切れる事無く迫ってくる。
こうなるとオレはまだしもテセルが危ないな。
まともな精神を持たないアンデッド相手では、暴力的活動を抑止する『調和』も効果は無いので奴らの行動を止める事は出来ない。
オレの場合、アンデッドに対しては回復魔法の効果が裏返って、ダメージを与える事は出来るのだがその場合は直接接触しないといけないのでどっちにしろ危険が伴う。
あくまでも身を守るための最後の手段なのだ。
もちろんテセルの方は肉体を持つ相手に対しては人並以下の能力しか持たないから、いま優先すべきはテセルの安全だな。
「テセル。ひとまず下がってください。危ないですから」
「お前はどうするんだ?」
「ここでサロールさんを出来る限り助けますよ」
オレの方はサロールが負傷したら、すぐに手当しないといけないから、あまり離れるわけにはいかないのだ。
「なんだよ。まるで僕が頼りにならないかのような口ぶりだな」
テセルはあからさまに不満げだ。
「もちろん。最初からそう思っていますよ」
「それではあのサロールとか言う男の方が当てになるというのか」
「テセルがいまサロールさんより頼りになるとでも?」
オレが聞き返すと、テセルは憮然とした表情で押し黙る。
そんなことを言っていると、アンデッドのいくらかはこちらに向かってくる。
サロール一人で相手をするには数が多すぎたか。
やれやれだ。仕方ない。
そんなわけでオレはテセルをかばって前に出ると、迫ってくる相手に触って『肉体の治癒』をかけると一瞬で朽ち果てチリと化す。
だがそのチリの向こうから、もう一体が幾つか指の欠けた手を伸ばしてくるが、そいつにもまた回復魔法によって消し去る。
「ほう。やはりお前ならこの程度の相手は造作も無いか」
テセルは感心したようにつぶやく。
確かに傍目には、オレが簡単にアンデッドを始末しているように見えるかもしれない。
しかしもしも身体をつかまれてしまったら、もろいこの身はひとたまりも無く打ち倒されてしまうのだからヒヤヒヤものである。
だがそうこうしているうちにサロールがアンドッド共を残らず打ち倒し、周囲にはその残骸だけが残っていた。
これで一安心と言いたいところだが、周囲には相変わらず蒸気と一体化した亡霊がうろつき回っている。
どうやら連中はまだまだオレ達に付きまとうつもりらしい。
上空から『鷹の目』で見下ろして、感知出来る脅威を避けていても、埋もれている死体まではどうしようもない。
つまり神の与える試練らしく『ズル』をしても、相応の報いがあるということか。
神様がオレにとってありがたい存在であった事は一度も無いが、これを『いつもの事』と受け入れるのはちょっと出来そうにないな。
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