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第21章 神の試練と預言者
第935話 行き先に待っていたものは
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とりあえずオレ達は渓谷を進んでいた。
周囲には蒸気がまとわりつくが、どうも先ほどの廃墟同様、浮かばれぬ魂がその蒸気に取り憑き一体化しているらしい。
それらの霊体は直接、人間に危害を加えられるほどの力はないが、それでも視界を遮り、嗅覚も効かず、耳もよく働かない状態だ。
おまけに霊力や魔力を微量だが含んでいるため、オレの『魔法眼』や『霊視』でも全てがボンヤリと輝いてしまい、この蒸気の先は全く見通す事が出来ない。
しかも『鷹の目』により遠くでうごめいている相手を見る限り、どうもこの地域に住んでいる奴らは、この『亡霊込みの蒸気』に対応しているらしく、行動にも支障は無いらしい。
つまりこちらは完全に『敵地』というわけだ。
ぱっと見て水ならあちこちから吹き出ているが、いずれも硫黄臭が漂って鼻にくるもので、オレに食糧や水を綺麗にする『食糧・水浄化』の魔法がなかったら、それだけで根を上げていたかもしれない。
直線距離では聖地の山頂は見えるところにあるのだが、実際にたどり着くとなると極めて困難なのは明白だ。
おそらくオレのように『鷹の目』で上空から道を確認していなければ、ここを通過するだけで命がけになるはず。
その上で危険なモンスターや精霊・亡霊が闊歩してるとなると気が遠くなる限りだ。
「ふうむ。これはすごいな。正直に言って想像以上だ」
さすがのテセルもこれだけの難所を通った事はないだろう。
こんな奴でも一応は『友人』だ――決して『婚約者』などではないが。
死なれたら寝覚めが悪い。今からでも安全なところまで引き返すべきだろうな。
「もしもテセルが引き返したいというなら――」
「引き返すだと? お前は一体何を言っているんだ?」
テセルは呆れた表情を浮かべる。
「どれだけ崇拝を集めていても、お前の頭はよくならないのだな。まあそれが分っただけでも収穫――」
「その首を収穫して、この先にいる獣の餌にでもしましょうか!」
オレはかなりの怒りを込めて、テセルの首を絞め上げる。
「おい! 落ち着け!」
「落ち着いて欲しかったら、まずはその回りすぎる舌をどうにかしなさい!」
テセルはオレの手を振りほどいて、その赤くなった顔を向ける。
「相変わらず、お前の愛情表現は過激だな」
「まだまだ締め足りないのですかね?」
何度、死にかけてもテセルの毒舌は治らないようだ。
官僚や研究者としては極めて有能で、公僕としての意識も高くて私腹を肥やしたりもしないのだが、個人として付き合うには問題の多すぎる人間である。
「それよりもテセルは本当に引き返さないのですか?」
「当たり前だろう。少し見ただけでもあちこちに手つかずの遺跡が残っているではないか。今では失われてしまった信仰の断片が見つかるかもしれないと思うと、むしろ僕は気が高ぶってくるぞ」
「ここに来た当初の目的を忘れていませんかね?」
そういえばテセルは赴任地だった『酷い取引』でも支部長の地位にありながら自分で危険な調査に乗り出すような、向こう見ずな一面のある人間だったな。
本来ならばふんぞり返って部下に命じるだけでいい立場だったのに、それも弊履のごとく捨てて、何ら後悔した様子も無い。
テセルに対する不満は売るほどあるが、なんだかんだ言ってもオレが付き合っているのは、そんなコイツに僅かながら同類意識を感じている部分があるからかもしれない。
「念を押しておきますけど遺跡の探索は目的ではありませんよ」
言われてみればこれだけ過酷な環境にあると言う事は、外部の人間が入り込んで遺跡を荒らすような真似も極めて困難である。
テセルの場合も金銭的な利益には関心が薄いが、神造者として失われた信仰や神話に関する知識を得る事には貪欲だ。
もちろん今はそれに付き合う気はさらさらない。
「とにかくわたしの指示した通りに移動して下さい」
「分かった。その先に誇るべき戦いの相手がいるのだな」
オレとしては可能な限り戦いを避けたいが、戦う相手がいなければサロールも疑問を抱くだろう。
なるだけ弱そうな相手を探して、それと戦わせるしかないな。
いろいろとさじ加減が難しい事になりそうだ。
そんなわけでオレは時々、停止しては『鷹の目』の魔法で上空から見下ろして周囲の様子を確認する。
モンスターを避けるのは当然だが、下手に遺跡に近づけば今度はテセルが首を突っ込みかねないので、そちらにも注意が必要だ。
しかもうっかり強力な敵に出くわしたてもサロールに対しては『危険だから隠れよう』が通用しないのだからそれも深刻な問題である。
最悪の場合、魔法でサロールを止めてその隙にどうにかすると言った小細工が必要になるかもしれない。
サロールの扱いをテセルは『手のひらで小石を転がすようなもの』などと言ってくれたが、オレにとっては『ニトログリセリンを素手で扱う』ような意識である。
そんなわけで先に進むと、あちこちに金属片が落ちている場所につく。
もしかしたらと思ってその一つを拾い上げると、かなり腐食しているがイル=フェロ信徒のつけているベルトのバックルだった。
まさか?
ここにある金属片は全て今まで聖地に向かって、それを果たせなかった過去のイル=フェロ信徒の遺したものなのか?
いや。待てよ。
そんなものが多数あるという事は、それだけこの場所で命を落としているという事だよな。
これはまずい!
急いでこの場所を離れようと声を出しかけたところで、周囲の地面が急にうごめき出す。
やっぱりそうなるか!
いつも通りオレが直感した時には手遅れだった。
あっという間に周囲の地面から、ボロボロに朽ち果てた骸骨が次々に立ち上がってきたのだった。
周囲には蒸気がまとわりつくが、どうも先ほどの廃墟同様、浮かばれぬ魂がその蒸気に取り憑き一体化しているらしい。
それらの霊体は直接、人間に危害を加えられるほどの力はないが、それでも視界を遮り、嗅覚も効かず、耳もよく働かない状態だ。
おまけに霊力や魔力を微量だが含んでいるため、オレの『魔法眼』や『霊視』でも全てがボンヤリと輝いてしまい、この蒸気の先は全く見通す事が出来ない。
しかも『鷹の目』により遠くでうごめいている相手を見る限り、どうもこの地域に住んでいる奴らは、この『亡霊込みの蒸気』に対応しているらしく、行動にも支障は無いらしい。
つまりこちらは完全に『敵地』というわけだ。
ぱっと見て水ならあちこちから吹き出ているが、いずれも硫黄臭が漂って鼻にくるもので、オレに食糧や水を綺麗にする『食糧・水浄化』の魔法がなかったら、それだけで根を上げていたかもしれない。
直線距離では聖地の山頂は見えるところにあるのだが、実際にたどり着くとなると極めて困難なのは明白だ。
おそらくオレのように『鷹の目』で上空から道を確認していなければ、ここを通過するだけで命がけになるはず。
その上で危険なモンスターや精霊・亡霊が闊歩してるとなると気が遠くなる限りだ。
「ふうむ。これはすごいな。正直に言って想像以上だ」
さすがのテセルもこれだけの難所を通った事はないだろう。
こんな奴でも一応は『友人』だ――決して『婚約者』などではないが。
死なれたら寝覚めが悪い。今からでも安全なところまで引き返すべきだろうな。
「もしもテセルが引き返したいというなら――」
「引き返すだと? お前は一体何を言っているんだ?」
テセルは呆れた表情を浮かべる。
「どれだけ崇拝を集めていても、お前の頭はよくならないのだな。まあそれが分っただけでも収穫――」
「その首を収穫して、この先にいる獣の餌にでもしましょうか!」
オレはかなりの怒りを込めて、テセルの首を絞め上げる。
「おい! 落ち着け!」
「落ち着いて欲しかったら、まずはその回りすぎる舌をどうにかしなさい!」
テセルはオレの手を振りほどいて、その赤くなった顔を向ける。
「相変わらず、お前の愛情表現は過激だな」
「まだまだ締め足りないのですかね?」
何度、死にかけてもテセルの毒舌は治らないようだ。
官僚や研究者としては極めて有能で、公僕としての意識も高くて私腹を肥やしたりもしないのだが、個人として付き合うには問題の多すぎる人間である。
「それよりもテセルは本当に引き返さないのですか?」
「当たり前だろう。少し見ただけでもあちこちに手つかずの遺跡が残っているではないか。今では失われてしまった信仰の断片が見つかるかもしれないと思うと、むしろ僕は気が高ぶってくるぞ」
「ここに来た当初の目的を忘れていませんかね?」
そういえばテセルは赴任地だった『酷い取引』でも支部長の地位にありながら自分で危険な調査に乗り出すような、向こう見ずな一面のある人間だったな。
本来ならばふんぞり返って部下に命じるだけでいい立場だったのに、それも弊履のごとく捨てて、何ら後悔した様子も無い。
テセルに対する不満は売るほどあるが、なんだかんだ言ってもオレが付き合っているのは、そんなコイツに僅かながら同類意識を感じている部分があるからかもしれない。
「念を押しておきますけど遺跡の探索は目的ではありませんよ」
言われてみればこれだけ過酷な環境にあると言う事は、外部の人間が入り込んで遺跡を荒らすような真似も極めて困難である。
テセルの場合も金銭的な利益には関心が薄いが、神造者として失われた信仰や神話に関する知識を得る事には貪欲だ。
もちろん今はそれに付き合う気はさらさらない。
「とにかくわたしの指示した通りに移動して下さい」
「分かった。その先に誇るべき戦いの相手がいるのだな」
オレとしては可能な限り戦いを避けたいが、戦う相手がいなければサロールも疑問を抱くだろう。
なるだけ弱そうな相手を探して、それと戦わせるしかないな。
いろいろとさじ加減が難しい事になりそうだ。
そんなわけでオレは時々、停止しては『鷹の目』の魔法で上空から見下ろして周囲の様子を確認する。
モンスターを避けるのは当然だが、下手に遺跡に近づけば今度はテセルが首を突っ込みかねないので、そちらにも注意が必要だ。
しかもうっかり強力な敵に出くわしたてもサロールに対しては『危険だから隠れよう』が通用しないのだからそれも深刻な問題である。
最悪の場合、魔法でサロールを止めてその隙にどうにかすると言った小細工が必要になるかもしれない。
サロールの扱いをテセルは『手のひらで小石を転がすようなもの』などと言ってくれたが、オレにとっては『ニトログリセリンを素手で扱う』ような意識である。
そんなわけで先に進むと、あちこちに金属片が落ちている場所につく。
もしかしたらと思ってその一つを拾い上げると、かなり腐食しているがイル=フェロ信徒のつけているベルトのバックルだった。
まさか?
ここにある金属片は全て今まで聖地に向かって、それを果たせなかった過去のイル=フェロ信徒の遺したものなのか?
いや。待てよ。
そんなものが多数あるという事は、それだけこの場所で命を落としているという事だよな。
これはまずい!
急いでこの場所を離れようと声を出しかけたところで、周囲の地面が急にうごめき出す。
やっぱりそうなるか!
いつも通りオレが直感した時には手遅れだった。
あっという間に周囲の地面から、ボロボロに朽ち果てた骸骨が次々に立ち上がってきたのだった。
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