異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

文字の大きさ
953 / 1,316
第21章 神の試練と預言者

第953話 溶岩人形を前にしていろいろと

しおりを挟む
 サロールの眼前に灼熱の拳が迫り、オレは思わず息を呑む。
 だがサロールは燃えた剣の柄を手放しつつ、ギリギリで避けて地面を転がる。
 幸いにも『溶岩人形』ラヴァ・ゴーレムの動きはサロールよりもだいぶ遅いので、どうにかかわす事が出来たようだ。
 だが真っ赤に溶けた溶岩人形は、近くにいるだけで人体に危険なレベルの高熱を発しているのは明らかで、サロールの体はあちこち火傷している。
 このまま何もせずににらみ合っているだけで、サロールは倒れるだろう。
 もちろん相手は武器もなくなったサロールを容赦なく攻撃するはずだ。

「ふうむ。これは困ったな」

 テセルはどこか他人事のように呟く。
 サロールの事は本当にテセルにとっては無関係なので、たとえ命を落とそうと、知ったこっちゃないのかもしれない。
 しかしサロールが殺されたら当然、次はオレやテセルが攻撃されるのだ。
 もちろんサロールを殺されるわけにはいかないけど、一体どうすればいい?
 サロールにすれば一騎打ちでこの怪物を倒さねばならないのだろうけど、そんなのオレの知ったこっちゃない。
 ついでに言えば、こいつは『神の試練』ではなく、何らかの人間によるものだろう。
 そんなわけでオレとしては、この『溶岩人形』を倒す手段を考えよう。

 以前に見かけた蒸気の精霊のように、こいつも時間が経てば冷めて固まるのは間違いない。
 幾ら精霊が宿っていても、溶岩の放つエネルギーを外気に触れたまま長時間維持する事は出来ない筈だからな。
 だがその前にこっちを三人とも黒焦げにするには十分すぎる。
 ひとまず『霊視』ソウルサイトで確認するが、全体的に光っていてどこに霊体が宿っているのかよく分からない。
 恐らくは溶岩で形成された肉体の放つ魔力が強すぎるのだ。
 それを裏付けるかのように『魔法眼』ウィザード・アイでも全てがまばゆく輝いて見える。

 ううむ。つい先日、フラネス王国で王宮守護の精霊トゥロガスに出くわした事があるが、この溶岩の精霊はそれよりも強力かもしれないぞ。
 大国の王宮を守る精霊よりも、こんな辺境の地で呼び出された精霊の方が強力とはちょっと驚きだ。
 ここが火山活動をつかさどるイル=フェロ神の聖地なのと、年中無休、二四時間王宮を守り続ける精霊と、一時的に呼び出された精霊の違いというものなのだろうか。
 どちらにしろ精霊の本体を確認せず、闇雲に魔法を打ち込んでも通用はすまい。
 トゥロガスを撃退した時は、その水で出来た体内に飛び込んで精霊の本体を確認したけど、何しろ相手は溶岩だ。
 触っただけで、こちらはひとたまりも無く黒焦げだ。
 仕方が無い。ここは不本意だがテセルを頼れるだろうか。

「テセルはあの怪物をどうにか出来ますか?」

 神造者は神や精霊を『公式神話』に定義する事によって、管理・支配するが可能なはずだ。
 もちろん簡単な事ではないが、テセルは『エリート中のエリート』なので、即行で相手を公式神話に組み込むという離れ業もやって見せた事がある。

「ふうむ。あのサロールではなく、この僕を頼るとはいい心がけだ」

 テセルは無駄に自慢げな表情で、説明を始める。

「僕たち神造者は定められた公式神話に神や精霊を組み込む事を仕事にしている」
「もったいぶってないで、質問に答えて下さい!」

 オレがこんなことを考えている間にも、サロールの身体にはやけどが増え続けている。このままではそう長くはもたないだろう。

「残念ながらこの地には神造者の公式神話そのものがない。いくら超エリートの僕でも、神話を作るところから始めるとなると――」
「つまりあなたは頼りにならないと言う事ですね!」
「失敬なことをいうな。今はまだ研究中だというだけの話だ」
「結論は一緒でしょうが!」

 このままではマジでサロールが危ない。
 こうなったら大やけどを覚悟して、オレがあの『溶岩人形』に接触してでも精霊の場所を探るべきだろうか。
 もうあれこれと考えている場合ではない。
 思考が行き詰まったら、先の事は考えずに行動するのが、オレの流儀というものだ。
 この身が黒焦げになろうが魔法を使って後で治せばいい。
 半ば諦めつつ賭けだそうとしたところで、オレの脳裏に声が響く。

『どうした? 困っている様子だな?』

 袋に放り込んできた宝珠の中のフェスマールが問いかけてきたのだ。

「あなたならあの精霊をどうにか出来るのですか?」
『当たり前だ。太陽は熱と光をつかさどるものだ。あの精霊は光を持たぬが、熱を有する以上は我らの眷族という事になる』

 ううむ。ちょっとどころではない強引な論理の気もするが、この場で助けになるなら何だっていいや。

「あなたはあの精霊を追い払えるのですか」
『いや。そこまでは無理だ。だがあの身体の中から引き出してその存在を露わにする事は出来るぞ』
「それだったら早くやって下さい!」
『そなたはこの我をただの道具だと思っておらぬか?』
「思っていないから、後でケルマル信徒に渡すと約束したでしょう! 普通は道具と約束なんかしませんよ!」

 説明する前にとっとと実行しろと言いたいが今は我慢だ。
 しかし何だってオレの周囲の連中は、どいつもこいつももったいぶるのか。
 オレが少しばかり憤っていると『溶岩人形』の胸部から、まるで抉り出されたかのように精霊の光が突出して見えてきた。
しおりを挟む
感想 104

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...