異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

文字の大きさ
970 / 1,316
第21章 神の試練と預言者

第970話 シャンサの次として……

しおりを挟む
 どうしてオレ達が噴火から逃げた先にシャンサの信奉者がいるんだ?
 ざっと見ても十人はいるな。
 オレたちの行動を先読みしていたのでもなければ、こんな事にはならないはずだ。
 待てよ。よくよく考えてみれば奴らがシャンサによって与えられた、イル=フェロ神の力が消えて無くなった訳ではないはずだ。
 特撮ヒーローもののように、黒幕を倒せば全て元どおりなどと都合のいい事がこの世界で起きたためしはなかったから、今でも奴らはシャンサに与えられた力が残っていても不思議では無い。

 ただ連中はオレたちのことを固唾を飲んで見つめてはいるが、今のところは攻撃してくる気配はない。
 だがオレたちがシャンサに対面したところで、このような事態を迎えたわけで、普通に考えれば敬愛していた預言者をオレたちが滅ぼした事になる。
 実際にはシャンサは自滅したわけだが、それをありのままに伝えても普通は信じないだろうな。

 だが仇を取るとか、そんな風にいきり立っている様子もない。
 念のため暴力的活動を抑止する『調和』ハーモニーをかけた上で様子をうかがおう。

「お前たち、何のつもりだ!」

 サロールが前に立って、連中に対峙する。
 取りあえず『調和』のお陰で戦いにはならないが、サロールは奴らの中でもリーダーらしい大きなバックル――そういえばイル=フェロ信徒はバックルが地位を示すのだった――をはめた相手に近づいて何事か話をしている。
 そうすると奴らは遠巻きにオレ達を包囲するように動き出す。
 しかも困った事にちらほらと新手の奴らも現れているようだ。
 むう。オレの『調和』は魔法をかけたとき、視界内にいる相手にしか効果はないし、後で現れた奴らが暴力的行動に出たら、効果は無くなってしまうのだ。
 こういう状況はかなりヤバい。

「アルタシャ……もしもの時はこの僕が……」

 緊張を含んだ声でささやきつつテセルはオレを庇うように前に立つ。
 いや。気持ちは確かにありがたいのだが、むしろ生身の人間に無力なテセルにはさっさと逃げて欲しいのだ。
 普段は毒舌が服を着て歩いているような奴のくせに、こういうところで格好をつけなくてもいいんだよ。
 そしてしばしの緊張の時間の後、シャンサの信奉者達は一斉にオレ達に迫ってくる。
 げげ。やっぱり逃げるしかないか。
 オレがそう思った瞬間、連中は一斉に地面にひれ伏した。
 しかもその対象はどうやらオレらしい。
 はれ? これはいったいどういうことだ?
 いつもの事だけど何か猛烈に嫌な予感がしてくる。
 そして先ほどのリーダーらしき男が緊張と共に口を開く。

「シャンサに代わりあなた様を我らの預言者と認めます」

 え? これってどういうことだよ?
 そしいてサロールはどこか嬉しげな様子でオレの方に駆け寄ってくる。
 もしかして――

「アル。どうやらお前がシャンサを一人で倒したと認められたようだ」
「ええ?! それではわたしが?」
「そうだ。アルがシャンサの次の預言者という事になるな」

 やっぱりそうか!
 確かにオレがシャンサのいたやしろに一人で入って、その後であんなことになったからな。
 イル=フェロ信徒は一対一の戦いで決着をつけるのが流儀だから、オレがシャンサを倒して預言者の座を勝ち取ったと思っているらしい。
 もちろん普通の地域ならば、そんな事が通るワケがないが、こいつらは『弱肉強食』『適者生存』のイル=フェロ神の教えの信奉者なのだ。
 預言者の座も実力で奪い取るのが当たり前だったと言うことか。

 しかしオレは完全によそ者だぞ。それがイル=フェロ神の預言者でいいのか――と思ったけど、そもそもシャンサも完全によそ者だったな。
 そういえばサロールもシャンサが『教えをゆがめた』事を怒ってはいたが、よそ者である事はまるで気にしていなかった。
 外部の人間は『堕落している』と蔑んでいたサロール達だが、それをこんなにあっさりと預言者と認めるなんてあっていいのかよ。
 いや。崇拝する神の預言者となるに当たって出自も性別も一切関係なしというのは、ある意味では平等と言えるのかもしれないのか。

「しかしあんな噴火……『神の怒り』が襲ったのですよ?」

 普通だったら『預言者が殺されたので神が怒った』とか考えないか?
 もちろんそのシャンサは『神の力を盗んでいた偽りの預言者』なんだけど、曲がりなりにも恩恵を与えて支持を獲得していたのだから、オレはかたきという事になるのが当たり前だと思うのだが。

「その件についてだがどうもシャンサの霊が奴らの前に現れたらしい」

 まるでそれは考えていなかったが、敵対していたオレ達の前に現れたのだから、自分の信奉者にも逃げる先を指示しても別段不思議では無いな。
 あくまでも道具として利用する事しか考えていなかった様子だが、それでも自分を信奉してくれている相手には情が移ったのか。

「それで奴らをここに導いた上で、自分の次の預言者はアルだと伝えたそうだ」

 なんだそれは?
 シャンサなりに自分の信奉者の将来を心配して、オレに任せようと思ったのか。
 それとも一つぐらいは仕返しでもしてやりたくて、オレに望みもしない預言者の座を押しつけようとしているのか。
 さすがにオレもそこは全く思考の埒外だったよ。
しおりを挟む
感想 104

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...