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第22章 軍神の治める地では
第989話 『中立の地』にていろいろと
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とりあえずオレとクロンは無事に検問を通って『白馬領』と呼ばれる領域に入る。
見た限りでは田園風景が続いており、それを周囲から隔離するように山々が覆っているようだ。
ただ白馬は見当たらないようだが、たぶん『白馬領』という名前の由来は山の残雪が白馬に見えるとかそんな理由だろう――元の世界でもそうやって名前がつけられた土地は結構あったらしい。
このような盆地は当然ながら入り込める場所が限られているので、よそ者を嫌うケルマル信徒にとってはよい場所と言う事になる。
だが『のどか』というにはほど遠い、かなり物々しい空気が盆地全体を覆っているようにも感じられる。
あちこちに武器を持った兵士がいて、遠くでは動員されたと思しき農民達が粗略な槍をふるって訓練しているのだ。
近隣で戦争が起きている以上、警戒するのは当然と言えば当然だが、現状はどうなっているのだろうか。
建前上はこの地域は中立という事らしいが、そんなものは宣言しただけでは何の意味も無い。
元の世界でも中立国が一方的に蹂躙された事は歴史上珍しくも何ともなく、実力で中立を守る力が必要なのは当然だ。
それにエシュミール軍が仮に今は手出ししていなくとも、平定が一区切りついたら次はここに臣従を要求し、受け入れなければ攻め込んで来るかもしれない。
それにエシュミール軍がウルバヌスを信奉しているなら、ケルマル信徒を虐殺とまではいかなくとも、辺境の地に追い出す可能性もあるな。
もちろんこの白馬領でもそれが分かっているから、農民に動員をかけてまでいざという時に備えているのだろう。
しかしヒクソス王国軍が滅ぼされてしまえば、この白馬領だけでどれだけ立ち向かおうが、ゴーレムまで戦力として使っている相手にはとても太刀打ちなど出来まい。
推測だけどこの地域でも意見は分かれているのだろう。
中立のままでエシュミール軍が去るのを期待して待つか、中立を破棄しヒクソス軍と協力してエシュミール軍と戦うか。
戦えば確実に犠牲が出るし、敗れれば滅ぼされてしまうかもしれない。その一方で手をこまねいていれば状況が悪化するだけかもしれない。
オレが彼らの指導者だとしても簡単には決めかねる、非常に難しい問題だろうな。
クロンにすればもちろん戦う方を選んで欲しいところだろうが、そんなに簡単にケルマル信徒が伝統的な孤立政策を放棄する事は出来まい。
いずれにしてもオレがやるべきはフェスマールをここにあるケルマル寺院に届ける事であって、全てはそれからだろう。
とりあえず『鷹の目』で確認すると、盆地のほぼ中央部に黄金に輝くドームが見える。
石造のドームに金箔を貼ったのだろうが、その壮麗さはオレから見ても目を見張るものだった。恐らくは彼らの信仰する『朝焼け、夕焼けの神ケルマル』を示すもののはずだ。
フェスマールがこもる黄金と宝石で彩られた『権威の宝珠』もそうだが、ケルマル信徒はかなり豊かなのだろうか?
いや。過去、何百年にもわたり信徒達が血のにじむ努力をして、少しずつ集めてきた黄金で作り上げたのだろう。
そんな事をすれば略奪目当ての外敵をわざわざ呼び込むようなものの気がするが、彼らにとっては自らの信仰の証明なのだ。
この土地を出て行く事など、彼らには考えられないだろうが、外部の欲望をかき立てる真似をわざわざしてしまうのだから色々と面倒な人たちではある。
とりあえず黄金のドームに向かって移動することにしよう。
途中でも見回りの兵士がいるようだが、なるだけ関わらないよう避けて移動するのはオレにとってはさほど難しいことでは無い。
こそこそ人の目を隠れて行動するなど立派な不審人物ではあるが、彼らの至宝を届けるためなのだから、ケルマル神だって許してくれると信じよう。
しばしの後、オレとクロンは黄金に輝くドームがそびえる大寺院の門前町に来ていた。
かなり大勢の信徒が巡礼に来ているらしく、人の出入りは多いので今のところ疑われてはいないようだ。
ただ信徒達は聖地に巡礼している事を誇るより、どこか不安げな様子がうかがえる。
恐らくはみな将来に不安を抱き、救いを求めてこの寺院に来ているに違いない。
とりあえずこの近くに聖女教会の出張所であるイロールの社があるはずだ。
そこを通してケルマルの大寺院に話をつけてもらえれば、安全にフェスマールを引き渡せるだろう。
信徒でもないオレがいきなり至宝を持ち込んだら説明がいろいろと面倒だからな。フェスマール自身が『証人』になってくれるはずだけど、それでも万が一、盗んだとかなんとか言いがかりをつけられる危険性もある。
毎度の事ながら聖女教会に顔を出すのは躊躇せざるを得ないのだが、今さら引き返すわけにもいかない。
「とにかく急ごう」
「え?」
クロンはかなり急いているように感じられるぞ。
確かにクロンはエシュミール軍が迫る首都に急いで戻りたい筈だし、この白馬領に来たのは彼にとって脇道に逸れているだけだから気持ちは分かるのだが、どうも何かが引っかかる。
もしかするとクロンも何かの目的があって行動しているのではないか、そう思わせる表情だったのだ。
見た限りでは田園風景が続いており、それを周囲から隔離するように山々が覆っているようだ。
ただ白馬は見当たらないようだが、たぶん『白馬領』という名前の由来は山の残雪が白馬に見えるとかそんな理由だろう――元の世界でもそうやって名前がつけられた土地は結構あったらしい。
このような盆地は当然ながら入り込める場所が限られているので、よそ者を嫌うケルマル信徒にとってはよい場所と言う事になる。
だが『のどか』というにはほど遠い、かなり物々しい空気が盆地全体を覆っているようにも感じられる。
あちこちに武器を持った兵士がいて、遠くでは動員されたと思しき農民達が粗略な槍をふるって訓練しているのだ。
近隣で戦争が起きている以上、警戒するのは当然と言えば当然だが、現状はどうなっているのだろうか。
建前上はこの地域は中立という事らしいが、そんなものは宣言しただけでは何の意味も無い。
元の世界でも中立国が一方的に蹂躙された事は歴史上珍しくも何ともなく、実力で中立を守る力が必要なのは当然だ。
それにエシュミール軍が仮に今は手出ししていなくとも、平定が一区切りついたら次はここに臣従を要求し、受け入れなければ攻め込んで来るかもしれない。
それにエシュミール軍がウルバヌスを信奉しているなら、ケルマル信徒を虐殺とまではいかなくとも、辺境の地に追い出す可能性もあるな。
もちろんこの白馬領でもそれが分かっているから、農民に動員をかけてまでいざという時に備えているのだろう。
しかしヒクソス王国軍が滅ぼされてしまえば、この白馬領だけでどれだけ立ち向かおうが、ゴーレムまで戦力として使っている相手にはとても太刀打ちなど出来まい。
推測だけどこの地域でも意見は分かれているのだろう。
中立のままでエシュミール軍が去るのを期待して待つか、中立を破棄しヒクソス軍と協力してエシュミール軍と戦うか。
戦えば確実に犠牲が出るし、敗れれば滅ぼされてしまうかもしれない。その一方で手をこまねいていれば状況が悪化するだけかもしれない。
オレが彼らの指導者だとしても簡単には決めかねる、非常に難しい問題だろうな。
クロンにすればもちろん戦う方を選んで欲しいところだろうが、そんなに簡単にケルマル信徒が伝統的な孤立政策を放棄する事は出来まい。
いずれにしてもオレがやるべきはフェスマールをここにあるケルマル寺院に届ける事であって、全てはそれからだろう。
とりあえず『鷹の目』で確認すると、盆地のほぼ中央部に黄金に輝くドームが見える。
石造のドームに金箔を貼ったのだろうが、その壮麗さはオレから見ても目を見張るものだった。恐らくは彼らの信仰する『朝焼け、夕焼けの神ケルマル』を示すもののはずだ。
フェスマールがこもる黄金と宝石で彩られた『権威の宝珠』もそうだが、ケルマル信徒はかなり豊かなのだろうか?
いや。過去、何百年にもわたり信徒達が血のにじむ努力をして、少しずつ集めてきた黄金で作り上げたのだろう。
そんな事をすれば略奪目当ての外敵をわざわざ呼び込むようなものの気がするが、彼らにとっては自らの信仰の証明なのだ。
この土地を出て行く事など、彼らには考えられないだろうが、外部の欲望をかき立てる真似をわざわざしてしまうのだから色々と面倒な人たちではある。
とりあえず黄金のドームに向かって移動することにしよう。
途中でも見回りの兵士がいるようだが、なるだけ関わらないよう避けて移動するのはオレにとってはさほど難しいことでは無い。
こそこそ人の目を隠れて行動するなど立派な不審人物ではあるが、彼らの至宝を届けるためなのだから、ケルマル神だって許してくれると信じよう。
しばしの後、オレとクロンは黄金に輝くドームがそびえる大寺院の門前町に来ていた。
かなり大勢の信徒が巡礼に来ているらしく、人の出入りは多いので今のところ疑われてはいないようだ。
ただ信徒達は聖地に巡礼している事を誇るより、どこか不安げな様子がうかがえる。
恐らくはみな将来に不安を抱き、救いを求めてこの寺院に来ているに違いない。
とりあえずこの近くに聖女教会の出張所であるイロールの社があるはずだ。
そこを通してケルマルの大寺院に話をつけてもらえれば、安全にフェスマールを引き渡せるだろう。
信徒でもないオレがいきなり至宝を持ち込んだら説明がいろいろと面倒だからな。フェスマール自身が『証人』になってくれるはずだけど、それでも万が一、盗んだとかなんとか言いがかりをつけられる危険性もある。
毎度の事ながら聖女教会に顔を出すのは躊躇せざるを得ないのだが、今さら引き返すわけにもいかない。
「とにかく急ごう」
「え?」
クロンはかなり急いているように感じられるぞ。
確かにクロンはエシュミール軍が迫る首都に急いで戻りたい筈だし、この白馬領に来たのは彼にとって脇道に逸れているだけだから気持ちは分かるのだが、どうも何かが引っかかる。
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