異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第22章 軍神の治める地では

第1008話 出世をつぶされた使者は、死の使いとなる

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 迫り来るゴーレムの前には、アクタスと共に立ち向かう護衛の兵士数人では心許ないにも程がある。

「お二人とも早くお逃げください!」
「ふははは! 逃がすはずがなかろうが!」

 ニランザルは声を張り上げている。
 周囲には白馬領で、あいつを守っていた兵士達も同行しているようだ。
 使者がゴーレムを引き連れていたら、白馬領を刺激しすぎると思って、どこかに隠していたかもしれないが、交渉に失敗して追い出されたので合流してわざわざオレを追いかけてきたらしい。

「よくもよくも私の功績を台無しにしてくれたな! だがお前を捕らえて陛下に献上すればそんなものは些細な事だ!」

 もうニランザルは表面的にも紳士的な態度はかなぐり捨てたらしい。
 面目をつぶされたまま帰るワケにもいかず、オレへの復讐と共に、自分の出世の最期のチャンスと言う事で、全てを注いでいるのだろうな。
 とりあえずオレは『精霊使い』ファミリア・スピリットの魔法で近くにいる大地の精霊を呼び出す。
 この魔法はあくまでも魔力など対価を払って、協力をお願いするものであって、ゴーレムとの直接戦闘のような事はさせられないが、今の状況なら十分だ。
 迫り来るゴーレムが兵士に向けてその拳を振るわんとした瞬間、その足下が凹んでその巨体は轟音と共に倒れる。
 そこで次に『成長加速』グロウス『植物歪曲』ワープ・ウッドをかけてゴーレムを縛り上げた。
 これでどうにか動きを封じる事が出来るか?

「あれは……何が起きたんだ?」
「あんな事をする相手に勝てるのか?」
「ええい! 怯えるな! あやつは少しばかり魔法に長けているだけの小娘に過ぎん!」

 取りあえず先頭のゴーレムが倒れた上で、緑に覆われたのを見てニランザルの連れてきた兵士も明らかに動揺しているようだ。
 これで戦意を喪失してくれれば、無駄な流血を招く事無く、オレとしても助かるのだけど一般兵はともかくニランザルはこれぐらいで引いてはくれまい。

「おお! これもアルタシャ様のお力ですか?!」

 アクタスや周囲の兵士達は歓呼の声をあげているが、安心するのはまだ早い。
 人間ならばこれで十分過ぎるのだが、相手はなにしろゴーレムなのだ。

「調子に乗るな! その程度の事で我らのゴーレムが倒せると思っているのか!」

 ニランザルの叫びと共に、ゴーレムは巻き付いたツタや草、枝をおぞましい音と共に引きちぎりつつ起き上がろうとする。
 やっぱりとてつもない怪力だ。
 そしてその様子を見て、相手の兵士も少しはやる気を取り戻してきたらしい。
 精神を持たないゴーレムは破壊しない限り動きは止まらないので、一般兵のように植物に巻き付かれて恐怖のあまりパニックに陥るような事にはならない。
 ええい。それならこちらももっと魔力を注ぐだけだ。
 大地の精霊は更に地面を深く穿って、ゴーレムの身を引き込む。
 それと共に周囲の植物は再度、その金属の身体に巻き付き始める。
 これだけで普通の魔法使いなら、軽く数十人分の魔力は注いでいる筈だが、それでも完全にゴーレムを止める事は出来ないのだ。
 残念ながらニランザルの言うとおり、オレに『ゴーレムを倒す』手段はない。
 そしてオレはこのとき、ゴーレムとニランザルばかり注意していたため、それ以外について気が回っていなかった。

「アルタシャ様! 危ない!」
「あ?!」

 クロンが叫びつつオレを突き飛ばす。
 ニランザルの周囲にいた兵士がオレに向けて、一斉に矢を放ってきたのだ。
 しまった。ここしばらく魔法や怪物の相手ばかりしてきたからか、生身の人間からの攻撃について殆ど考えていなかったのだ。

「うぐう!」

 オレの身代わりとなったクロンの身には幾つもの矢が突き立つ。
 軽装とは言え鎧を着けていたから、即死とまではいかないようだが、もちろん深傷を受け手しまったのは間違い無い。

「しっかりして下さい!」

 オレは慌ててクロンに駆け寄って『肉体の治癒』ヒールボディをかける。
 これでクロンの方は大丈夫だが、今度は再びゴーレムがその身体をきしませつつ、立ち上がりかけている。
 ええい。安手のホラー映画の怪物じゃないんだから、いったん倒されたらそのまま大人しくしていろよ!
 次から次へと難題ばかりやってくるんじゃない。『吉事は一人で来るが、凶事は友を連れてくる』と聞いた事があるが、オレの場合は凶事しかやってこない気がするぞ。
 クロンが命をかけてオレを助けてくれた以上、こっちも危険を覚悟でやるしかないか。

「クロン王子の事は頼みます!」

 オレは兵士に声をかけると、今まさに立ち上がらんとするゴーレムに向かう。
 ゴーレムは当然、魔力で動いているわけだから、その魔力を消せば活動を止められる――と口で言うのは簡単だが、その魔法の動力が外部にむき出しになっているわけではない。
 殆どの魔法は術者が知覚できないものには効果が無いので、内部に収容されている魔法動力に対して、オレの使う『魔力消散』ディスミス・マジックでその魔力を消す事は困難なのだ。
 それが可能になるのは、直に接触して内部の魔力を知覚できた場合だけという事になる。
 そういうわけでオレは、周囲に矢が飛び交う中で、今まさに起き上がろうとするゴーレムに接触すべく駆け出した。

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