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第23章 女神の聖地にて真相を
第1103話 大聖堂を離れて
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推測だけど大神官にすればオレがさっさとこの地を離れるのが分かっているのも、安心している要素の一つだろう。
大神官は自分の引退は避けられないと分かっているようだが、それでも後釜には自分の息のかかっている聖女を据えて、影響力を残したいだろうからな。
オレが居座るとか、後任を指名するとかされると困るのだろうが、そんな気がさらさらない事を分かっているのだ。
「それでは失礼させていただきます」
「もう行ってしまわれるのですか? いえ。失礼しました。あなた様の行動は我らが女神の神意である以上、私ごときの及ぶところではありませんね」
だいたいオレはこの島で何度も命を狙われたんだけど。
大神官は既にそれは『過去の出来事』にしてしまっているのだな。
さきほど首謀者達は捕まったかもしれないが、あれで終わりかどうかは分からない。
何よりオレが『女性しか回復魔法は使えない』という教えを終わらせた事を恨んでいる聖女も多いだろう。
重荷を下ろすことが出来たと、胸をなで下ろしている大神官と異なり、回復魔法の使用を『女性の特権』だと考えていた聖女にとって、オレの行動は『既得権の侵害』でしかないはずだ。
大神官もそんな事は分かっているけど、力尽くで追い出すわけにもいかないし、それでいてここでオレが危害を加えられたら、やっぱり自分の責任問題になる。
そんなわけで可能な限り穏便にこのギルボック島を出るという点において、オレと大神官の利害は一致しているのだ。
「あなた様がお望みとあらば、早急にこの島を出る船を用意させましょう」
「その船は『癒やしの風』号のような船ですか?」
「あのように大勢の巡礼者が乗り込む船では、騒ぎを起こすものが出ないとも限りません。緊急時に連絡を取るために使用する高速船がありますので、そちらをご使用下さい」
そんなに急いでオレにいなくなって欲しいのか、などと考えるのはやっぱりオレの心が汚れているからだろうか。
「準備が整うまでの間、アルタシャ様の御身は私どもが責任を持ってお守りします。ただそのためにある程度の不自由はお許しいただけますでしょうか?」
「分かりました。警備はお任せします」
同意する以外に選択肢はなく、オレは貴賓室に押し込められる事となった。
それから数日、船の準備が整うまでオレは厳重な警備の中、大神官以外には身の回りの世話をする数人の侍女がいるだけの生活を余儀なくされた。
侍女たちもオレに対し、事務的な事を話すだけで接触を制限されているのは明白だったから文字通り『腫れ物扱い』と言う事だ。
その間に『回復魔法を使えるようになった男子』の扱いだとか、今後の聖女教会の組織をどうするのかとか、そういう議論も行われているのは間違い無いが、大神官に聞いてもハッキリした答えは得られなかった。
ごまかしているわけではなく、今のところ議論百出でとても今後の方針をまとめられる状態ではないのだろう。
何しろ千年ぶりの組織改革なのだ。
しかも女だけだった聖女教会に、男の癒やし手を入れるとなると、いろいろとややこしい問題が発生するのは避けられない。
聖女教会にとって美しく治癒の力に長けた聖女を有力者に輿入れさせるのは、重要な権力基盤だった。聖女の多くが男子に置き換えられるとなると、それについても大きな修正を余儀なくされるはずだ。
加えて聖女教会は決して一枚岩ではないし、大神官の言葉に各地の教会が無条件に従うわけでもない。
数日どころか数年かかっても結論は出ないかもしれないし、仮に上層部で結論が出ても下の連中が従うかどうかはまた別問題だ。
こういう事も元の世界ではよくあった話だな。
オレが隔離されたのは、身の安全を守るためなのは嘘では無いにしても、その議論に影響を与えるのを恐れたからかもしれないな。
そしてオレは大聖堂を出て、馬車に乗せられて港へと向かう。
当然ながら周囲には大勢、護衛がつきなんとも物々しい雰囲気だ。だが――
「おお! 見えたぞ!」
「あれにアルタシャ様が乗っておられるのだ」
「なんと嬉しい事だろう」
沿道には無数の人間が集まり、両脇でオレを待っていたのだ。
「これからは男でも回復魔法は使えるようになるのですね!」
「ありがとうございます!」
見たところ絶賛の嵐のようだ。
それも男性だけでなく、女性からも歓喜の声が聞こえてくる。
ここにいる民衆は聖女ではないが、それでもイロールを信仰しているはずだ。
オレが千年間、誰も成し遂げられなかった偉業を達成したという話を聞いて、単純に喜んでいるのだろう。
「こら! アルタシャ様のお通りを邪魔するな!」
このとき警備の兵士を振り切って、一人の少年が馬車に取りついて叫ぶ。
「お願いです。アルタシャ様! 俺の話を聞いて下さい!」
こうなっては仕方ない。危険はあるけどそれも覚悟の上だ。
「馬車を止めて下さい」
「え? よろしいのですか?」
「お願いします」
御者は驚愕しているが、ここはオレの意志を押し通させてもらおう。
馬車が止まったところで、オレは扉を開け、人々の前に顔を出した。
大神官は自分の引退は避けられないと分かっているようだが、それでも後釜には自分の息のかかっている聖女を据えて、影響力を残したいだろうからな。
オレが居座るとか、後任を指名するとかされると困るのだろうが、そんな気がさらさらない事を分かっているのだ。
「それでは失礼させていただきます」
「もう行ってしまわれるのですか? いえ。失礼しました。あなた様の行動は我らが女神の神意である以上、私ごときの及ぶところではありませんね」
だいたいオレはこの島で何度も命を狙われたんだけど。
大神官は既にそれは『過去の出来事』にしてしまっているのだな。
さきほど首謀者達は捕まったかもしれないが、あれで終わりかどうかは分からない。
何よりオレが『女性しか回復魔法は使えない』という教えを終わらせた事を恨んでいる聖女も多いだろう。
重荷を下ろすことが出来たと、胸をなで下ろしている大神官と異なり、回復魔法の使用を『女性の特権』だと考えていた聖女にとって、オレの行動は『既得権の侵害』でしかないはずだ。
大神官もそんな事は分かっているけど、力尽くで追い出すわけにもいかないし、それでいてここでオレが危害を加えられたら、やっぱり自分の責任問題になる。
そんなわけで可能な限り穏便にこのギルボック島を出るという点において、オレと大神官の利害は一致しているのだ。
「あなた様がお望みとあらば、早急にこの島を出る船を用意させましょう」
「その船は『癒やしの風』号のような船ですか?」
「あのように大勢の巡礼者が乗り込む船では、騒ぎを起こすものが出ないとも限りません。緊急時に連絡を取るために使用する高速船がありますので、そちらをご使用下さい」
そんなに急いでオレにいなくなって欲しいのか、などと考えるのはやっぱりオレの心が汚れているからだろうか。
「準備が整うまでの間、アルタシャ様の御身は私どもが責任を持ってお守りします。ただそのためにある程度の不自由はお許しいただけますでしょうか?」
「分かりました。警備はお任せします」
同意する以外に選択肢はなく、オレは貴賓室に押し込められる事となった。
それから数日、船の準備が整うまでオレは厳重な警備の中、大神官以外には身の回りの世話をする数人の侍女がいるだけの生活を余儀なくされた。
侍女たちもオレに対し、事務的な事を話すだけで接触を制限されているのは明白だったから文字通り『腫れ物扱い』と言う事だ。
その間に『回復魔法を使えるようになった男子』の扱いだとか、今後の聖女教会の組織をどうするのかとか、そういう議論も行われているのは間違い無いが、大神官に聞いてもハッキリした答えは得られなかった。
ごまかしているわけではなく、今のところ議論百出でとても今後の方針をまとめられる状態ではないのだろう。
何しろ千年ぶりの組織改革なのだ。
しかも女だけだった聖女教会に、男の癒やし手を入れるとなると、いろいろとややこしい問題が発生するのは避けられない。
聖女教会にとって美しく治癒の力に長けた聖女を有力者に輿入れさせるのは、重要な権力基盤だった。聖女の多くが男子に置き換えられるとなると、それについても大きな修正を余儀なくされるはずだ。
加えて聖女教会は決して一枚岩ではないし、大神官の言葉に各地の教会が無条件に従うわけでもない。
数日どころか数年かかっても結論は出ないかもしれないし、仮に上層部で結論が出ても下の連中が従うかどうかはまた別問題だ。
こういう事も元の世界ではよくあった話だな。
オレが隔離されたのは、身の安全を守るためなのは嘘では無いにしても、その議論に影響を与えるのを恐れたからかもしれないな。
そしてオレは大聖堂を出て、馬車に乗せられて港へと向かう。
当然ながら周囲には大勢、護衛がつきなんとも物々しい雰囲気だ。だが――
「おお! 見えたぞ!」
「あれにアルタシャ様が乗っておられるのだ」
「なんと嬉しい事だろう」
沿道には無数の人間が集まり、両脇でオレを待っていたのだ。
「これからは男でも回復魔法は使えるようになるのですね!」
「ありがとうございます!」
見たところ絶賛の嵐のようだ。
それも男性だけでなく、女性からも歓喜の声が聞こえてくる。
ここにいる民衆は聖女ではないが、それでもイロールを信仰しているはずだ。
オレが千年間、誰も成し遂げられなかった偉業を達成したという話を聞いて、単純に喜んでいるのだろう。
「こら! アルタシャ様のお通りを邪魔するな!」
このとき警備の兵士を振り切って、一人の少年が馬車に取りついて叫ぶ。
「お願いです。アルタシャ様! 俺の話を聞いて下さい!」
こうなっては仕方ない。危険はあるけどそれも覚悟の上だ。
「馬車を止めて下さい」
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