異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

文字の大きさ
1,112 / 1,316
第24章 全てはアルタシャのために?

第1112話 遠方より来た友は

しおりを挟む
 フォンリット帝国の上層部が『アルタシャ』を使って、大陸支配に乗り出しているとなるともはや普通に話し合って止めさせるのは絶望的かもしれないぞ?
 しかも聖女教会にまで化身を送り込んで、自分達に敵対出来ないように手を打っているとなると、本当にオレに出来る事は本物の女神になることだけかもしれない。
 いや。諦めるにはまだ早い。
 神造者も決して一枚岩ではないのだ、オレを利用するのに反対している勢力だってあるだろう。
 そいつらと交渉すれば、道が開けるかもしれない。

「それでは神造者がわたしの化身を作るのを止めるにはどうすればいいのですか?」
「そんな事まで分かるわけがないだろう。ここからフォンリット帝国は殆ど大陸の反対側なんだぞ」

 そりゃそうか。大ざっぱな事は分かっても、フォンリット帝国上層部の思惑まではこんなところからでは見当もつかなくて当然だ。

「アルタシャ様……先ほどから何の話をしておられるのですか?」

 何も伝えていないミツリーンが話についていけないのは当たり前か。
 仕方ないので大ざっぱにここ数日の事を説明する。

「なんと! それでは神造者達はアルタシャ様を冒涜していると言う事ですか!」

 そこでミツリーンはテセルをにらみつける。

「そのような真似をして恥ずかしくないのか! お前たちはアルタシャ様を何だと思っているのだ!」
「おい! 待て。僕は確かに神造者だが、この件には無関係……いや。むしろアルタシャの味方だぞ!」
「そんな事を言って本当は監視しているのではないのか!」

 今は喧嘩されては困るので、とにかくミツリーンを止めるしかない。

「待って下さい! ミツリーンさん。先ほど言ったようにテセルは大切な友人です。疑うのは止めて下さい」
「こ、これはすみません。つい興奮してしまって」
「だからなんで僕が『友人』なんだよ……」

 オレの言葉を受けて、二人ともいったんは引き下がる。
 もっともテセルは『婚約者』と言って欲しい様子だが。

「とにかくなるだけ急いでフォンリット帝国に向かいたいのですが、何かよい移動手段はありますか?」

 帝国上層部が関わっているとなるとオレが出向くのは間違い無く危険だ。暗殺どころか公然と殺害しようとする可能性すら否定出来ない。
 だがこのまま何もしないわけにもいかないし、聖女教会達を扇動して宗教戦争になるような事も出来ない。
 直接出向いてどうにか事態を打開するしかないのだ。

「もっとも早いのは海路だろうけど、早い船でも一月はかかるだろうな」

 魔法で水の精霊を使えば、もっと早く行けるだろうけどいずれにしても相当な時間がかかるのは間違い無い。
 しかし他の選択肢もないのは明らかだ。

「それでお願いします。急いでフォンリット帝国に向かう船を調達して下さい」
「分かった。このエリート神造者たるこの僕に任せるがいい」
「私も同行させていただいてよろしいのですね」

 以前に置き去りにした事を気にしているのか、ミツリーンは念を押してくる。

「もちろんですよ……あれ?」
「どうしたんだ」

 オレの心に何か引っかかるものがあった。
 何者かが遠くからオレの事を呼んでいる、そんな気がするのだ。
 まさかまた神造者が何かを仕掛けてきているのか?
 いや。それにしてはどこかがおかしい。
 どういうわけかオレはその呼びかけを以前に聞いた覚えがあるし、なるだけ急いでその声に応じる必要があると思うのだ。
 そうしないと何かとんでもない事態を招くような気がする。

「すみません! 急いで行くべきところがあります!」
「おい! いったいどこに行くつもりだ?!」
「待って下さい。私も行きます」

 テセルとミツリーンがついてくる中、オレはゴドーナ市の城門をくぐり町の外に出る。

「いったいどういうつもりだ? まさか海路ではなく陸路でフォンリット帝国に向かうつもりなのか?」
「アルタシャ様が向かうところが、私の行くところです」

 どっちも違う。急いで城壁を出たのは『このまま町の中にいてはいけない』との意識があったからだ。
 そしてそれは正しかった。
 遠くの空にポツンと小さな点が見えたかと思ったら、それがドンドンと大きくなっていく。

「うん? あれは……もしや?!」
「まさか! あの姿は?!」

 近づいてくる相手は翼を生やした巨大な爬虫類、つまりドラゴンだった。
 そしてオレに呼びかけてくるドラゴンに思い当たるのは一人しかいない。
 まさかこんなところでその姿を見るとは夢にも思わなかったが、どことなく再会を喜ぶ気もあった。
 そしてあっという間に迫ってきたドラゴンは、ゆっくりとオレたち三人の眼前に着地する。

「こ、こいつは……本物のドラゴンが……」
「アルタシャ様……」

 テセルとミツリーンは恐怖に青ざめ、ゴドーナ市の方でもドラゴンの姿を認めた市民が大騒ぎしているようだ。
 そしてドラゴンはいかにも嬉しげにその牙の並んだ口を開く。

「やあ。アルタシャ。会いたかったよ」
「久しぶりですね。イオ」

 かつて『アルタシャの魔力』によって卵から急速に成長し、オレが名付け親となったドラゴン・イオ(第十三章)は甘えるようにその鼻をこすりつけてきた。
しおりを挟む
感想 104

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さくら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

処理中です...