異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第24章 全てはアルタシャのために?

第1114話 飛行の後にいろいろと

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 大空を飛びながらイオは問いかけてくる。

「アルタシャ。大陸の反対側と言っても広いけど、どこに行けばいいのだい?」
「ひとまずはずっと西に向けて飛んでいって下さい」
「それでは僕とアルタシャが出会ったところだったらいいのかな」

 川を流れてくるドラゴンの卵をそれと知らずに片っ端から略奪し、当然の結果として怒ったドラゴンによって一日にして滅ぼされた『卵さらい』ロブ・エッグの町だったな。

「そこでいいですよ」

 どうせ人間の名付けた地名など、イオはロクに知らないだろうからな。
 分かりやすい目的地を与えた方が手っ取り早い。

「到着するまでどれぐらいかかりますか?」
「途中で休みを入れて、二日ぐらいかな」

 一番早い船でも一月ところを、たった二日で行けるとは、地形も国境も無視して移動するのがいかに便利なのかがよく分かる。
 この世界の基準ではまさに次元が違うと言うところか。
 これだけ便利だと、イオに頼んで知り合いがいまどうなっているのか確認してみたい気持ちも出てくる。
 何しろ大陸を横断してきた間に知り合った相手は大勢いるが、ラマーリア王国王太子のテマーティンや マニリア帝国皇帝のウァリウスのような一国を動かすような相手には、神造者の作ったオレの化身――つまり偽者――が送り込まれている可能性が高い。
 あいつらはオレにプロポーズしておきながら、偽者に心を奪われたりする筈がない――などとはちっとも思わない。

 何しろオレはあいつらをフッたのだからな。
 もしも『アルタシャのコピー』がやってきて愛を誓い、自分につくしてくれたらそっちに転ぶ方がむしろ当然だろう。
 男だった時のオレが連中の立場だったら間違い無くそうなる。
 それでもあの連中が毎晩、化身とあれやこれやとやっていたら、それがオレの夢に出てくるわけだから、止めさせるしかないのだ。
 だから化身と愛し合っている事を責める気は無いが、それでも化身は消すしかない。
 しかしながら連中のところまでイオに乗って訪れるワケにもいかないな。
 たとえ王宮の守備隊を相手にしても、ドラゴンのイオが簡単に倒されるとは思えないが、派手な戦いになったら犠牲が出るのは避けられない。
 また連中が化身に騙されていなかったら、今度は真相を知って神造者との戦争に突入してしまいかねない。
 それだけは絶対に避けねばならないのだ。
 つまり化身とどうなっていようとも、今はテマーティンやウァリウスは後回しにするしかない。
 だから一時の夢であっても望み通り『アルタシャ』と愛し合っているのなら、その夢に浸っている事は許してやるよ。

 そんなわけでイオはもの凄い勢いで空を飛び続け、オレの眼下ではどんどん景色がはるか後ろへと去って行く。
 元の世界で言えば飛行機に乗った感覚が近いのだろうか。
 ただイオの背中は、やたら揺れるし、風は強いし、落ちたら死ぬしと快適な旅とはほど遠いものだ。
 行く先々で困った問題に直面してばかりだった、過去の旅と比べればそれぐらいは我慢すべきなのだろうけど、一緒に乗っているテセルとミツリーンは景色を見る余裕もなく、歯を食いしばって耐えている。
 ファンタジーではドラゴンの背はもちろん、空飛ぶ絨毯に乗るような事はよくあるが、実際にそれで空の旅はまさに命を削る旅になると言う事だ。
 そして数時間後、日が暮れたきた。

「そろそろ降りて休みましょう」
「僕はまだ飛べるけどね。アルタシャが言うならその通りにしよう」

 イオが着地したところ、テセルとミツリーンは息も絶え絶えと言わんばかりの様子で地面に転がる。

「ああ……動かない地面がこれほどありがたいとは……」
「こういう時には神造者でも大地母神を崇拝したくなってくるよ」

 二人とも地面に身を投げ出して、安堵した様子を見せる。
 オレは見たことがないが、元の世界における飛行機恐怖症の人間もこんな様子だったのだろうかと思わせる光景だ。
 しかしこの短時間でこの有様では、やっぱり二人を連れて行くのは難しいかもしれないな。

「ここまでよく来てくれました。しかしもう別れた方がいいと思いますけど――」
「何を言われますか。今までアルタシャ様を追いかけ続けた苦労と比較すれば、こんなものはウロコの一枚にもなりません」

 そう言えばミツリーンはずっとオレの動向を追っていたのだから、移動距離もほぼ同じぐらいのはずだ。
 おそらくはこの大陸でもっとも行動範囲の広い人間の一人だろう。
 もしも記録を残せば、何百年にも渡って語り継がれ後世の学者から『当時を知る貴重な資料』となりそうだ。
 今まで意識していなかったけど、ミツリーンも歴史に名を残すだけの事を成し遂げているのだなあ。

「この件が最高神学会絡みならば、僕の名を神造者の中に轟かせる千載一遇の好機というものだ。そんな機会を見逃すわけがないだろう」

 テセルの方は『上昇志向の強いエリート』的な発想で、はるか東方に左遷された――本人は認めていないが――自分が大出世する糸口だと思っているらしい。
 要するに二人ともここで文字通り『降りる』気は無いという事だ。
 この時、心配な反面、少しばかり嬉しい気がしたのは確かだった。
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