異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第24章 全てはアルタシャのために?

第1124話 マルキウスの明かした事は

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 周囲に人の気配が無いことを確認したところで、マルキウスは頭を下げる。

「すまぬの。このようなところに連れてきてしまって。いや。大陸中で女神とも言われておる『アルタシャ様』がワシごときしがない老いぼれの言葉を聞いてくださっただけでも、ひれ伏して感謝せねばならぬのかのう」
「そんな事はありませんよ。今まで通りで結構です」
「こんな老いぼれにまで気をつかって下さるとは本当にありがたい事じゃ。今からでも皇后様として是非とも国の柱石になってもらいたいのう」

 あいにくオレにそんな気はさらさら無いが、この発言からすると少なくともウァリウスが『アルタシャと共に暮らしている』というわけではないらしい。

「ところで皇帝陛下は今、どうされているのですか?」
「そこなんじゃが……」

 マルキウスはどこか申し訳なさそうに言葉を濁す。
 ただ何かを明確に知っているからというよりは、漠然とした不安を口にしているだけのように思える。

「何かあったのですか?」
「実は皇帝陛下はここしばらく、ワシを含めた廷臣の前にもお姿を見せて下さらぬのじゃ」
「それはいかなる理由でしょうか?」
「分からん……表向きはご病気という事になっておるが……」

 マルキウスはその理由を信じていないのは間違い無いな。
 そうするとオレの方にも思い当たる節がある。

「もしかすると神造者と何か関係があるのでしょうか?」
「お前さんもそれに気付いておったか……いや。当然の事じゃな」

 勝手に納得しているけど、予想通りでもやはり嬉しくはない。

「あの八角形の連中が大貴族共に取り入ってなあ。もちろん陛下にも近づいてきたのじゃが、陛下は警戒しておられてな」
「いかなる理由でしょうか?」
「奴らはどうもお前さん――女神アルタシャ――を自由に出来ると陛下に吹き込んだらしい。しかし陛下はそれをお断りになったのじゃ」
「それはもしかして……」

 ここでマルキウスは力を込めて断言する。

「もちろん愛ゆえじゃ!」

 やっぱりそっちかよ!
 オレとしてはウァリウスが偽者でも何でも『アルタシャ』に溺れているような展開を予想していたけど、どうやら逆だったらしい。

「陛下が望んでいるのは『本物のアルタシャの愛』だったのじゃ。偽りの愛など何の価値もないと一蹴されておったぞ」
「それで陛下は……」
「恐らくは神造者共に与した貴族達に監禁されてしまっているのではないか……ワシはそれを心配しておるのじゃ」

 ここでマルキウスはいきなりオレの手を取る。

「お願いじゃ! 陛下を救ってくれ! お前さんなら出来るはずじゃ!」
「ま、待って下さい。本当に陛下は監禁されているのですか? それもマルキウスさんに確信があるわけではないのでしょう?」
「た、確かにその通りじゃが……しかしそれでも陛下がお姿を隠しておられるのは事実なのじゃ。是非とも一度、陛下に会ってもらえぬじゃろうか?」

 正直に言えばウァリウスのことは心配だ。
 マルキウスの言葉通り、オレに対する純愛を貫いていると言うなら、それに対して少しも心が動かないと言えば嘘になる。
 オレにそこまで入れ込んでいるのならば、申し訳無い気もしてくるよ。
 もちろん妻になる気はさらさらないが、本当に監禁されているのなら助けるのはやぶさかではない。
 しかしそれがマルキウスの思い込みに過ぎず、大喜びで抱きついてこられたりしたらオレとしても困るのだ。
 だがこのまま何もせずに立ち去るか、それともウァリウスを助けるのかとなればオレとしては何もしない――と言うわけにもいかずウァリウスを助ける事になる。
 我ながら面倒臭い性分だが、こればっかりはどうしようもない。

「とりあえず今はわたしたちのいる宿に――」

 この時、いきなり周囲に異変が生じていた。
 人通りのない裏道が急に騒がしくなった、というよりはいろいろな霊体が集まりつつあるのがオレの『霊視』ソウルサイトが感知したのだ。
 しかもその姿は漆黒の瘴気のごとき外見で、そこから人の姿が浮かび上がっては消えるという何ともおぞましいものだ。
 先日、オレを襲った亡霊どもの同類か?
 よくよく見るとこの国の後宮で皇帝を名乗ってオレをチョメチョメしかけ、結局は命を落とした皇帝ウァリウスの叔父である大公の姿が浮かび上がってくる。
 先日も他の亡霊ともども撃退したけど、何しろ死んでいて、オレを恨んでいるから何度でもやってくるわけだ。

『我が妻よ……なぜ我が愛を受け入れてくれなかったのだ……』

 大公らしき『人型の黒いタール』とでも言うべき存在はズルズルと迫ってくる。
 その姿と執念深さは殆どホラー映画の悪役そのものだな。
 前回よりもかなり強化されているように感じられるのは、恐らくここが大公にとって自分の死んだ場所に近い言わば『地元』だからだろう。
 何者かがここに送り込んで来たというよりはこの亡霊共は『アルタシャの存在を察知したら襲撃するようにセットされている』のかもしれない。
 ええい! 面倒だ!
 お前ら全部まとめて失せろ!
 オレは改めて魔法でこの亡霊共を追い払い、急ぎその場を後にした。
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