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第24章 全てはアルタシャのために?
第1166話 神界への入り口から現れたのは
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翌日になってオレ達はミシェルの案内を受け、グレイスフルの城門の中に入った。
万が一、ミシェルが裏切って軍勢が待ち伏せている可能性も考えたが、どうやらそんな様子も無く、見たところ街の様子は昨日と変わらない。
「ところでどこに向かうんだ?」
「今では使われていない礼拝所があるから、そこを使わせてもらうわ。もちろん昨日のうちに許可はとってあるわ」
「いいのか? そんな事をしたらお前のキャリアがお終いになるぞ」
テセルが他人の心配をするとは、オレとしては驚くべきだろうか?
「自分のキャリアを終わらせてしまったテセルがそれを口にする?」
「僕の場合は少しばかり遠回りしただけで、キャリアなんかどうとでもなる。だからそんな心配は不要だ」
このままではキャリアどころか人生が終わるかもしれないが、たぶんテセルはそんな事を考えてすらいまい。
自信過剰にも程がある気がするが、この男は自分の実力で何でも切り抜けられると常に確信しているのだ。
まあオレ自身、テセルの事を偉そうに言える筋合いではないけど。
それからしばしミシェルの案内に従って進むと人気の少ないやや寂れた街区に入る事になる。
「このあたりは再開発地域になっているようだな。住民の多くは既に立ち退き済みか……」
「どういうことなのですか?」
「公式神話の修正に伴い、このグレイスフルの街並みは常に改築されているのさ。だからこの地域の建物は近いうちに取り壊されて、より効率的に信仰の力を集められるように作り直される」
それはまたとんでもないな。
このグレイスフルの住民はある日、突然そんな理由で立ち退かされてしまいかねないのか。
いや。待てよ。
「もしかしてこの街区の修正は創造神エルウリンのためのものでしょうか?」
「ええそうよ。ただ……どういうわけか工事が進んでいないようだけど……やっぱり最高神学会の問題と関わりがあるのかもしれないわ」
ううむ。本当に何が起きているのだろうか?
創造神エルウリンそのものはあくまでも『信徒が捧げた崇拝に応じて創造物を与える』だけの神様という話だったが、そんな単純な話ではないのか。
はたまたオレが何でも無い事を深刻に考えているだけなのか。
「だけどそのお陰でつい先日まで使われていた寺院が放棄されているから、私達にとって役に立つものが残っているのよ」
ミシェルが口にした『私達』はやっぱり彼女とテセルの二人が最優先なんだろうな。
そんなわけでオレ達は再開発地区の片隅にある聖堂に足を踏み入れる。
すでに貴重な物品は残らず取り外されているが、それでも神造者の定めた様式で建てられた宗教施設であることは明白だった。
「ここならまだ神界への繋がりは維持されているな。エリート神造者たるこの僕ならばすぐにでも神界に入ることが出来るだろう」
「随分と簡単に言い切ってくれるが、本当に大丈夫なのだろうな?」
ミツリーンはいつも通りあからさまにテセルを疑っているな。
「もちろんよ。この私とテセルがいる以上、それぐらいは造作もない事よ」
ミシェルもテセルに同意する。なんだかんだい言いながらこの二人は仲良いな。
とにかく今はテセル達のいう通りにするしかない。
「それでは聖堂に入りましょう」
打ち捨てられた聖堂の中は当然、閑散としていて何の気配もない。
正面にはかつて神像が飾られていたと思しき窪みだけが残っていた。
ただオレの『魔法眼』では魔力が残存しているところまでは分かる。もっともその中身まではオレには見当もつかないけどな。
「それでは急いで儀式を始めようか」
テセル達が魔法を唱えると、しばらくして周囲の景色が歪み始める。
確かに神界に近いところらしく、すぐに道が開きそうだな。
見るとかつて神像のあった窪みの部分に穴が開いて見える。どうやらこれが神界へと繋がっているらしい。
何とも簡単すぎて拍子抜けする程だ――などと思ったのは早すぎた。
「それではいこうか――」
「危ない! テセル!」
いきなりミシェルが悲鳴を挙げた。
テセルが歩き出した瞬間、神界への道の入り口から人間よりも二回りは大きな相手が姿を見せたのだ。
それは大ざっぱに人型をしていたが、その表面には筋肉がむき出しになり、膿のような汚らしい液体がじくじくとしみ出している。
顔は人間に近いものだがまるで苦痛にのたうっているかのように声もなく大きく口を開き、その中にはデタラメに牙が並んでいた。
そして大きな腕をテセルに向けて振り下ろす。
「なんだ? こんなところに『廃神』がいるなんて聞いてないぞ」
テセルは目の前に八角形の光の魔方陣を作り出して相手の攻撃を受け止めていた。
そうだった。
神造者は物理的な荒事はからっきしだが、神や精霊に対しては圧倒的な強さを有するのだったな。
いまテセルが口にした『廃神』とは神造者が公式神話を作った時に、そこからこぼれ落ちて忘れ去られてしまった『かつて神だった存在』の事だ。
だがそんな相手が神造者の心臓部と言うべき首都グレイスフルの神界になぜ存在しているのだろうか?
もしかするととんでもない事態が裏で進んでいるのではないか、そんな不吉な予感がオレの胸中を満たしつつあった。
万が一、ミシェルが裏切って軍勢が待ち伏せている可能性も考えたが、どうやらそんな様子も無く、見たところ街の様子は昨日と変わらない。
「ところでどこに向かうんだ?」
「今では使われていない礼拝所があるから、そこを使わせてもらうわ。もちろん昨日のうちに許可はとってあるわ」
「いいのか? そんな事をしたらお前のキャリアがお終いになるぞ」
テセルが他人の心配をするとは、オレとしては驚くべきだろうか?
「自分のキャリアを終わらせてしまったテセルがそれを口にする?」
「僕の場合は少しばかり遠回りしただけで、キャリアなんかどうとでもなる。だからそんな心配は不要だ」
このままではキャリアどころか人生が終わるかもしれないが、たぶんテセルはそんな事を考えてすらいまい。
自信過剰にも程がある気がするが、この男は自分の実力で何でも切り抜けられると常に確信しているのだ。
まあオレ自身、テセルの事を偉そうに言える筋合いではないけど。
それからしばしミシェルの案内に従って進むと人気の少ないやや寂れた街区に入る事になる。
「このあたりは再開発地域になっているようだな。住民の多くは既に立ち退き済みか……」
「どういうことなのですか?」
「公式神話の修正に伴い、このグレイスフルの街並みは常に改築されているのさ。だからこの地域の建物は近いうちに取り壊されて、より効率的に信仰の力を集められるように作り直される」
それはまたとんでもないな。
このグレイスフルの住民はある日、突然そんな理由で立ち退かされてしまいかねないのか。
いや。待てよ。
「もしかしてこの街区の修正は創造神エルウリンのためのものでしょうか?」
「ええそうよ。ただ……どういうわけか工事が進んでいないようだけど……やっぱり最高神学会の問題と関わりがあるのかもしれないわ」
ううむ。本当に何が起きているのだろうか?
創造神エルウリンそのものはあくまでも『信徒が捧げた崇拝に応じて創造物を与える』だけの神様という話だったが、そんな単純な話ではないのか。
はたまたオレが何でも無い事を深刻に考えているだけなのか。
「だけどそのお陰でつい先日まで使われていた寺院が放棄されているから、私達にとって役に立つものが残っているのよ」
ミシェルが口にした『私達』はやっぱり彼女とテセルの二人が最優先なんだろうな。
そんなわけでオレ達は再開発地区の片隅にある聖堂に足を踏み入れる。
すでに貴重な物品は残らず取り外されているが、それでも神造者の定めた様式で建てられた宗教施設であることは明白だった。
「ここならまだ神界への繋がりは維持されているな。エリート神造者たるこの僕ならばすぐにでも神界に入ることが出来るだろう」
「随分と簡単に言い切ってくれるが、本当に大丈夫なのだろうな?」
ミツリーンはいつも通りあからさまにテセルを疑っているな。
「もちろんよ。この私とテセルがいる以上、それぐらいは造作もない事よ」
ミシェルもテセルに同意する。なんだかんだい言いながらこの二人は仲良いな。
とにかく今はテセル達のいう通りにするしかない。
「それでは聖堂に入りましょう」
打ち捨てられた聖堂の中は当然、閑散としていて何の気配もない。
正面にはかつて神像が飾られていたと思しき窪みだけが残っていた。
ただオレの『魔法眼』では魔力が残存しているところまでは分かる。もっともその中身まではオレには見当もつかないけどな。
「それでは急いで儀式を始めようか」
テセル達が魔法を唱えると、しばらくして周囲の景色が歪み始める。
確かに神界に近いところらしく、すぐに道が開きそうだな。
見るとかつて神像のあった窪みの部分に穴が開いて見える。どうやらこれが神界へと繋がっているらしい。
何とも簡単すぎて拍子抜けする程だ――などと思ったのは早すぎた。
「それではいこうか――」
「危ない! テセル!」
いきなりミシェルが悲鳴を挙げた。
テセルが歩き出した瞬間、神界への道の入り口から人間よりも二回りは大きな相手が姿を見せたのだ。
それは大ざっぱに人型をしていたが、その表面には筋肉がむき出しになり、膿のような汚らしい液体がじくじくとしみ出している。
顔は人間に近いものだがまるで苦痛にのたうっているかのように声もなく大きく口を開き、その中にはデタラメに牙が並んでいた。
そして大きな腕をテセルに向けて振り下ろす。
「なんだ? こんなところに『廃神』がいるなんて聞いてないぞ」
テセルは目の前に八角形の光の魔方陣を作り出して相手の攻撃を受け止めていた。
そうだった。
神造者は物理的な荒事はからっきしだが、神や精霊に対しては圧倒的な強さを有するのだったな。
いまテセルが口にした『廃神』とは神造者が公式神話を作った時に、そこからこぼれ落ちて忘れ去られてしまった『かつて神だった存在』の事だ。
だがそんな相手が神造者の心臓部と言うべき首都グレイスフルの神界になぜ存在しているのだろうか?
もしかするととんでもない事態が裏で進んでいるのではないか、そんな不吉な予感がオレの胸中を満たしつつあった。
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