異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第24章 全てはアルタシャのために?

第1179話 「最高の知識の殿堂」における最低な話

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 まるでガラス細工のように神造者最高神学会の議事堂が砕けた先に見えているのは、はてなき荒野の見える空間だ。
 間違い無く先ほど見かけた、廃神達のいた荒廃した神界の一部である。
 最高神学会の議事堂が、いきなりそこに繋がってしまったと言う事になるな。

『なんだ? いったい何が起きたのだ?』

 オレを捕らえた神造者の霊体も、愕然としている。

『どうして神造者最高神学会にこのような事が起きるのだ?! あり得ない!』

 確かに神造者の中心部であるなら、いろいろな防備が施されているはずであって、いきなりこんな事態になるとは考えられない。
 もしかしたらオレがここに来た事と関係があるのだろうか?
 そんな事を思った瞬間、神界に出来た亀裂から次々に廃神が姿を覗かせる。

『ううう! ようやく……ようやくここに戻ってきたぞ』
『よくも。よくも我らをこのようにおとしめてくれたな……』

 彼らは口々に呪いの言葉を発しつつ、神造者にとっての最高権威たる議事堂の中をうろつき回っている。
 そうか! 最近になって急速に『元神造者の神々』が廃神になる数が増えたと言う話だったけど、連中は生きている間は神造者だったわけで、当然ながら自分達のやってきた事についても詳しいはずだ。
 それどころかもしかすると、肝心の防備を作った神造者が没後に崇拝されていながら、結局は廃神にされてしまった可能性すらある。
 もしもそうだとすれば、この廃神達は神造者の防備を破る事など造作もなかったという事になるぞ。
 この廃神達は自分達を裏切った、後世の神造者達に復讐するため、この最高神学会にまで攻め寄せて来たというわけか。
 いや。下手をすればこれはホンの一部に過ぎず、神造者が作り出した神界をあちこちで破壊して回っているのかもしれない。

『馬鹿な! いくら元神造者であろうと、一度廃神となった者達がここに入る事など出来ぬはずだ』

 オレを捕らえていた神造者はかなり驚愕している。

「いったいどういうことですか?」
『死後、神の列に加えられた時に、神界において我らの定めた区画に許可なく入る事は出来なくなる。それは廃神となってもかわらぬはず! それがどうして?!』

 確かに神造者がその対策を施していなかったとは考えられなかったが、それでは連中がここまで来たのはどのような手段によるものなのだろうか?
 だがその疑問はすぐに氷解した。
 廃神たちはオレを見て口々に騒ぎ出したのだ。

『おお……そこにいるのは先ほど我らに力を与えてくれた……』
『感謝するぞ。お陰で我らはここにたどり着く事が出来たのだ』

 ああ! コイツらはさっきオレが大人しくさせようと思って、霊力を分け与えた連中だ。
 その結果、神造者のものとは別口の力を得て、限定的にでもかつての意識を取り戻し、自分たちを貶めた相手に復讐しに来たというわけだ。
 しかもこの数はすでに何十体、いや、どんどん増えていく一方だ。
 さっきオレが霊力を与えたのは数体しかいなかったのだが、きっとそいつらが切り開いた道をたどってどんどんこちらにやって来ているに違いない。
 そして最高神学会の議事堂は見る見る崩壊しているが、オレの『魔法眼』で見る限り、その崩壊によって魔力が生じ、今度はそれが廃神に吸い込まれているぞ。
 この最高神学会の議事堂そのものも膨大な力を注ぎ込んで、神界に作り出し存在だったとすれば、それを解体すれば余剰の魔力が生まれる。
 いま廃神たちはそれを吸収して自分たちの力に変えているに違いない。

『こんなバカな事があるはずがない!』

 先ほどの神造者が驚愕している最中、一体の廃神がその霊体に向けて声をかける。

『ほう。そこにいたのか。久しいな……何十年ぶりだろうか……我が弟子よ』
『ま、まさか? あなたは?』

 やってきた廃神はどうやら、かつてはこいつの師匠だったらしい。
 その廃神は全身から汚らしい液体をしたたらせ、腐りかけた死体のような姿でジリジリと迫ってくる。

『死後、この私をお前が神位につけてくれた事には深く感謝したものだぞ』

 廃神の口から発されるくぐもった声には、表向きの言葉とは裏腹のドス黒い憎しみがこもっていた。

『そして私が開いた学派の代表として、お前が最高神学会の一員に選ばれた事は師として誇りに思ったぞ』
「あ、ありがとうございます」

 向こうも本体がここにいるのではなく、あくまでも神界に自分の依り代を送り込んでいるだけのはずだが、それでも冷や汗が流れているのが目に見えるかのようだ。

『そのお前が、まさかこの私を裏切って廃神に貶めてくれるとはな……』
「お待ちください! それは決して私利私欲のためではなく、神造者全体とフォンリット帝国臣民のために断腸の思いで行ったものです」
『ただ単にお前たちが自らの保身のために我ら先達を踏みにじっただけであろうが!』

 そういって廃神はその腕を伸ばす。
 だが神造者の方はそこで開き直った笑みを浮かべる。

「それもあなた方が行ってきた事を、我らが受け継いだに過ぎません。ただあなたの順番が来ただけです!」

 そう叫んだところで神造者の霊体は消え失せ、それと同時に最高神学会の議事堂は一気に崩壊した。
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