異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第24章 全てはアルタシャのために?

第1183話 「神にも止められないもの」を止めるには

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 オレは必死でエルウリン神に訴える。

「あなたが神界の力を汲み上げ過ぎて、いま神造者の領域は崩壊しつつある。いえ。いまこうしている間にも崩壊が続いているのですよ!」
「それは吾には関係の無い話だ」

 やっぱりそうなるか。もう『法にガチガチに縛られた』お役所仕事ならぬ、神様仕事というところだな。
 神様やその使徒が決められた使命通りにしか活動できないというのは、よくある話だけど、それでもその枠を越える事も可能なはず。
 だからこそ神は時代と共に変化し、その神命すらも時には全く別物になる事すらあるのではないか。

「あなたも理解しているはずですよ。このままで神造者の神界が崩壊して、それが世界に大きな災厄をもたらしかねない事も知っているのでしょう」
『知っていてもどうすることも出来ぬ。吾は我が信徒とこの領域の事しか責任は持てぬからな』

 もしかしてエルウリンは自分の領域だけは今のところ無事――それは他の領域から力を吸い上げているから――なのでそのまま何事もなく過ごせると思っているのだろうか?
 もちろんそんなはずがない。
 神造者の他の領域が滅んだら、間違いなくエルウリンの領域も滅びるのだ。
 ただ単に早いか遅いかの違いでしかないが、神様の場合は『自分の領域がすべて』という発想も当然ありうるからな。

「このままでは遠からずあなたの領域も滅んでしまうのですよ! それでもいいのですか?!」
『それでよいわけがなかろうが!』
「ええ?」

 いきなりエルウリンが力を込めて叫んだので、オレはついつい驚愕する。

『吾とて状況は分かっているつもりだ! このままでは吾も、信徒もみな滅んでしまう! だが創造する事しか出来ない吾にはどうする事も出来ないのだ!』

 そうか。この神も事態の悪化には心を痛めていて、むしろ見ているだけというよりは、こうしている間にも膨大な力を神界からくみ上げ、事態を悪化させてしまっているのは自覚しているんだ。
 しかし神造者によって定められた使命を放棄する事が出来ないので、焦燥感を募らせているというわけだ。
 だが危機を認識しているのならば、打つ手はあるはず。

「とにかくあなた自身を、創造を止めてください。それで悪化が食い止められるかもしれません」
『だめだ。こうしている間にも我が信徒たちは心の底から助けを求めている。吾はそれに応える義務がある』
「その助けとは何ですか?」
『いろいろだ。吾自身の介入を求めるものもいれば、何でもよいから助けになればいいというものもいる。金や貴重品を授けるように祈っている信徒も多い』
「神界の外もそんな危機的状況なんですか?!」

 確かに現実世界がどうなっているのか分からなかったが、こういう場合、元の世界のファンタジーでも神界の混乱は現実世界にも大きな影響を与えるものだった。
 恐らくはとんでもない天変地異が起きているのではないだろうか?
 それで助けを求めている相手がよりにもよって、この状況を招いてしまった存在であり、彼らの祈りがかえって事態を悪化させているなど想像もしていないのだ。
 だが何とも困った事にここには『悪』はいない。打倒すればこの状況を切り抜けられる都合のいい『元凶』も存在しない。

『いずれにしても彼らの必死の願いにより、我は全力でそれをかなえようとしている最中だ。だから――』
「それをどうにかするには公式神話を修正するしかないのですね」

 だがそれを定める最高神学会が完全に機能しなくなってしまった以上、それは不可能だ。
 もうこうなったらエルウリンの残った領域まで完全に崩壊してしまうまで、止める事は出来ないのか。
 だがここでエルウリンは決意を込めた視線をオレに向けて注ぐ。

『仕方あるまい。この我を滅ぼすのだ。そなたなら出来るだろう』
「無茶を言わないでください!」

 正直に言えば邪悪な存在でもない、エルウリンを滅ぼすのは気が進まないが、そういう個人的な感情を抜きにしても物理的な破壊魔法のたぐいが一切使えないオレには、エルウリンを滅ぼすなど不可能だ。

「あなたと信者との繋がりを絶つことは出来ないのですか?」
『吾がそれを望んでも大半の信者たちが望むまい。何しろ彼らは願いをかなえるため、吾に己の魂の一部を含め、いろいろと捧げているのだからな』

 自分たちの望みのものを創造してもらうためエルウリンを信仰した人間が、その対価を受け取らずに信者を辞めろと言ってもはいそうですかと受け入れるのなら苦労は無いか。
 元の世界で言えば大勢の人間がバブルに踊って無茶な投機を行って、どうしようもなくなっているのに「儲けずに辞められるか」といつまでも投機を続けたのに相通ずるものがあるな。

「しかしこのままではその信者にも多大な犠牲が出てしまいます。あなたの意志を伝えて、いっときでも信者たちに祈りを止めて落ち着くように伝えてくれませんか」

 正直に言ってこれも望み薄な気がする。
 そもそも神界にいる神の声が聞こえるのは、ごく一部の高位の信徒だけだから彼らに呼びかけ、それを受け入れたとしても大多数の信徒にまでその神意が届くまで、相当な時間がかかるだろう。
 間に合わないだろうけど、それでも救える人間は増えるかもしれない。
 もうそれぐらいしか道はないのか。

「いや。そうでもないぞ」
「え?」

 思わず振り向くとそこにはテセルが『門』を開けて姿を見せていた。
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