異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第24章 全てはアルタシャのために?

第1201話 捧げられた願いとは

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 凄まじいエネルギーがオレの体を導管にして流れていく。
 前もって自己再生の魔法をかけていなかったら、そして似たような経験が過去何度もなかったら、とっくに死んでいたかもしれない。
 仮に生きていても苦痛のあまり意識など一瞬で飛んでいただろう。
 全身にヤスリをかけられるような苦痛に、このままでは本当に神になってもいいかなという気にもなってくる。
 大勢の人間を救い、苦行の果てに解脱するという話はよく聞く事だが、その実態はこんなものだったのか?

 いや。オレのようなその場しのぎばかり繰り返して、いつの間にか英雄だの神だの言われている例が他にあるのだったら世界はとっくに終わっているのではなかろうか。
 もっともとんでもないのは、世界を破滅が覆いかねない状況で、こんなに無関係の事に頭を回しているオレの方かもしれないけどな。

『どうしました? もう意識が途切れているのですか?』

 イロールは少しばかり心配げだが、その口調からはさほど緊迫感があるようにも思えない。
 本当に千年前からずっとこんなのだったのなら、確かに自分の教団に欺かれていても気がつかないのも仕方ない――などとは思わないぞ!

「そんな事はありません……確かにとても苦しいですけどね。まだ我慢ぐらい出来ますよ」
『なぜあなたはそれほどまでに神の領域に入るのを拒むのですか?』

 その理由の大元は、あんたの教団に女にされてしまったので、ずっと不信感を抱いていたからなんだけどな。
 そして今では――あまりにたくさんの神々を見てきて、とてもあんなのになりたくないと思っているからだよ!
 どいつもこいつも『自分の権能』に縛られて、下手すりゃ自分の支配する町や島からも出られないし、そこまでいかずとも『出来ないこと』だらけである。
 そんな自由も何もない神様の地位に魅力を感じた事なんか無いよ。

「わたしが神で無いからこそ、出来る事がたくさんあるからです! 今回だってそうだったでしょう!」
『!』

 一瞬だがイロールだけでなく、周囲の廃神達も息を呑んだ気がする。
 人生をかけて努力し、ようやくその地位を得て、またそれを失った事にいつまでも恨みを抱いている連中にとって本当にとんでもない発言だったのだろう。
 それともあまりに馬鹿馬鹿しくて信じられないものだったのか。
 そんな事はどうでもいい。
 オレにとっても最初から結論は決まっているのだ。今さら悩む事すら無い。
 だがここでイロールは最初の驚きがすぐに収まったのか、相変わらずの柔らかな笑みを浮かべている。
 もちろんかの女神の先ほどの呼びかけが偽りだったわけではないだろうが、断られる事も前もって予想していたに違いない。

『そうですか。それがあなたの選んだ道なのですね……少しばかり残念と言いますか。いえ。むしろ喜ばしい事ですね』

 イロールはどこか誇らしげだ。
 冷静に考えるとオレがこれまでこの女神とその教団にもたらしてきた恩恵を考えれば、今のままでも十分よかったのだろう。
 だけど中途半端な状態で過ごしているオレの真意を、わざわざこんなところで確認したかったというところではないのか。

「そんな暢気な事を言っているヒマがあったら、手助けの一つもして下さいよ!」
『もちろん我が信徒達全員によびかけています。それはあなたの身を支える祈りです。あなたの体が維持されているのは、彼女達の祈りも大きいのですよ』

 確かにすぐにでも耐えきれなくなるほどの痛みではあるが、どうにか今でも持っているのは本当にオレを助けようとする
 それが事実でも恩に着る気は無いが、助けてくれているだけでも有難いと言うべきか。

『最悪の場合はあなただけでも、信徒達の祈りに応じればこの場から離れる事も出来ますよ』
「そんな事をしたら……どれだけの犠牲が出ると思っているのですか?!」
『もちろんそんな事は望みません。しかしあなたの身にはかえられません。たとえそれがどれほどの犠牲と引き替えにしても』

 イロールの表情には少しの躊躇もなかった。
 神様だから信徒以外、いや、信徒が含まれていても「大陸に名を馳せる英雄」の方が優先するという事か。
 理屈としては分からないでもない。
 元の世界でも似たような話は特に珍しいものではなかったからな。
 しかもこの神様にすれば、過去千年の間に戦争だの大災害だので多くの犠牲を見てきたのは間違い無いから、その一つに過ぎないのかもしれない。

『それにあなたに救いを求める声だけでなく、あなたの身を案じる声も聞こえませんか?』
「聞こえる気がするかもしれませんが、そっちに注意を割く余裕なんてこれっぽっちもありませんよ!」

 もちろんテセルやイオ、その他もろもろ、オレを心配してくれている相手だって大勢いるに違いない。
 女装皇帝や暴走王太子など、オレが無事に帰って妻になると言ったら国だって代償に捧げかねない相手だって何人も思い当たるフシがある。
 そして彼らの声にいちいち気を回していられないというのも本当だ。
 しかしそれでも、そのような助けがあってこそ、今のオレがこうやってなんとかやっていけているのは間違い無いな。生きて帰れたら、妻になる気はないが感謝はするぞ。
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