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第24章 全てはアルタシャのために?
第1212話 天国の管理者が顕れて
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さっきイロールを解放したように、今度は神像になっているアンブラールを解放すれば、この領域でもこの神は好き勝手やってくれるはずだ。
気付いていないようだが、この天国にいるのは美女ばかりだから、さぞかし猛烈な勢いで口説きまくってくれるだろう。
まさかイロールを解放した経験が他に活かせる時が来るとは、そしてその「活かす」がオレにとっては結構ヤバい危機を内包しているとは、これまで想像だにしなかったな。
オレの身よりも遥かに巨大、というより誇張なりに山のようにそびえる巨大な神像ではあるが、恐らくは同じやり方で解放出来るはずだ。
「わたしの力を一部注ぎます。そうすればあなたはその像から解放されて、動く事ができるようになるはずです」
『おお。さすがは我が愛しの乙女だ。それほどまでに急いで吾の愛が欲しいか』
この世界においては神も人間もみんな自分に都合よく考えるのはいつものことだ。
『前の男(注:テセル)とは別れたのだな。まあこの吾と比較すれば、どちらを選ぶのかは自明の理だ。優れた娘が、より優れた男を選ぶのは当然の事だ。そなたは正しい選択をしたに過ぎんぞ』
「それは……ありがとうございます」
自分でも「正しい選択」だとは思っているが、そう言われても全然嬉しくは無いな。「愛の力で世界の危機を救う」のは、定番中の定番だからここはもう引き返せないのだ。
『初めての出会いの時にもそうしてくれたのならばよかったのにな。まあ大神たる吾にとっては些細な事だ。そなたの過去など一切、気にしてはおらぬぞ』
信徒が全員ハーレム要員で、なおかつ殆どが「実の娘」という海賊神ソルフも女の過去は一切問わないと言っていた。
確かにハーレム野郎には必須の心構えでも「単なる女好き」だと分かっていたら、まるでいい気はしないものだな。
とにかく今、優先すべきはこの「天国」を止める事なので、オレにとってもヤバいアンブラールの「封印」を解くとしよう。
「それではいきますよ」
『少し待ってくれ!』
オレが力を注ごうとすると、像のアンブラールから制止の声が飛んだ。
なんだ? まだ何かロクでもない事でもあるのか?
『そういう場合はせめて口づけでやってくれまいか? もちろん服ももっと肌を露出させてだな――』
「とてもそこまで届きません。だから少し待って下さいね」
オレはアンブラールの要望を無視して神像に近づく。
恐らくこの神界ではその気になれば、サイズだろうが何だろうがかなり自由であって、山の如き神像に口づけするのも可能な気がするがそんな要求に応えてやる義理はない。
だが――
「そこであなたは何をするつもりなのですか?」
この神殿のどこからかは分からないが、柔らかい声が響き渡る。
周囲には誰もいないが、だがオレには見当がつく。この神殿を守護している精霊というか、神だろうな。
「もちろんここに封じられている神を解放するのですよ」
「そのような冒涜的な事をすればどうなるか分かっているのですか」
言葉には特に感情は込められていなかった。本当に感情を持たないのか、平静を装っているのかそれは分からない。
「この神殿が崩壊するかもしれないということですかね?」
「それどころではありません。この天国が崩壊してしまいかねないのです」
おや。そこまで影響は大きいのか?
あまりにも周囲が膨大なエネルギーに満たされていたので、気がつかなかったが、この帝国諸神の神像の列は神造者とその支配地域の人間が捧げた信仰の精力を吸い上げて、天国を維持するためのものだったのだな。
わざわざ教えてくれてありがとうと、ここは感謝すべきだろうか?
「あなたはよほど強い意識を有していたのでしょうね。だからこの天国でも自由に行動出来るようですが、そのような事はおやめなさい。永遠の喜びを無に帰すつもりですか?」
なるほど。ここに大した防備が無いのは、そもそもここまでたどり着くのですら至難の業――オレだってジストルに「生け贄」として放り込まれなければ来る筈も無かった――であるのに加えて、ここの住民は誰も権力だの野心だのを有していないからだろう。
「その永遠の喜びのために、世界がどうなっているのか分かっているのですか?」
「それは我が命には関係ありません。役目はこの世界を維持し、こうしている間にも送り込まれてくる神造者達の魂に永遠の喜びと安らぎを与えることです」
想像通りだが、この天国の管理者もまた世界の状況などどうでもいいというよりは、自分には全く関係無い事なのだ。
「もしも世界がこのまま崩壊すれば、この天国も維持出来なくなって滅びるのですよ。それでもいいのですか?」
「それは心苦しい事です。そのような事態は何としても避けねばなりません」
一応は状況の深刻さを理解してくれているのか。ならば話し合いでどうにか出来るかもしれない。
「しかしそれでもあなたの行いを認めるわけにはいきません。なぜなら危機は乗り越えられると信じているからですよ」
なぜか無駄に自信を持ちつつ「天国の管理者」は言い切った。
気付いていないようだが、この天国にいるのは美女ばかりだから、さぞかし猛烈な勢いで口説きまくってくれるだろう。
まさかイロールを解放した経験が他に活かせる時が来るとは、そしてその「活かす」がオレにとっては結構ヤバい危機を内包しているとは、これまで想像だにしなかったな。
オレの身よりも遥かに巨大、というより誇張なりに山のようにそびえる巨大な神像ではあるが、恐らくは同じやり方で解放出来るはずだ。
「わたしの力を一部注ぎます。そうすればあなたはその像から解放されて、動く事ができるようになるはずです」
『おお。さすがは我が愛しの乙女だ。それほどまでに急いで吾の愛が欲しいか』
この世界においては神も人間もみんな自分に都合よく考えるのはいつものことだ。
『前の男(注:テセル)とは別れたのだな。まあこの吾と比較すれば、どちらを選ぶのかは自明の理だ。優れた娘が、より優れた男を選ぶのは当然の事だ。そなたは正しい選択をしたに過ぎんぞ』
「それは……ありがとうございます」
自分でも「正しい選択」だとは思っているが、そう言われても全然嬉しくは無いな。「愛の力で世界の危機を救う」のは、定番中の定番だからここはもう引き返せないのだ。
『初めての出会いの時にもそうしてくれたのならばよかったのにな。まあ大神たる吾にとっては些細な事だ。そなたの過去など一切、気にしてはおらぬぞ』
信徒が全員ハーレム要員で、なおかつ殆どが「実の娘」という海賊神ソルフも女の過去は一切問わないと言っていた。
確かにハーレム野郎には必須の心構えでも「単なる女好き」だと分かっていたら、まるでいい気はしないものだな。
とにかく今、優先すべきはこの「天国」を止める事なので、オレにとってもヤバいアンブラールの「封印」を解くとしよう。
「それではいきますよ」
『少し待ってくれ!』
オレが力を注ごうとすると、像のアンブラールから制止の声が飛んだ。
なんだ? まだ何かロクでもない事でもあるのか?
『そういう場合はせめて口づけでやってくれまいか? もちろん服ももっと肌を露出させてだな――』
「とてもそこまで届きません。だから少し待って下さいね」
オレはアンブラールの要望を無視して神像に近づく。
恐らくこの神界ではその気になれば、サイズだろうが何だろうがかなり自由であって、山の如き神像に口づけするのも可能な気がするがそんな要求に応えてやる義理はない。
だが――
「そこであなたは何をするつもりなのですか?」
この神殿のどこからかは分からないが、柔らかい声が響き渡る。
周囲には誰もいないが、だがオレには見当がつく。この神殿を守護している精霊というか、神だろうな。
「もちろんここに封じられている神を解放するのですよ」
「そのような冒涜的な事をすればどうなるか分かっているのですか」
言葉には特に感情は込められていなかった。本当に感情を持たないのか、平静を装っているのかそれは分からない。
「この神殿が崩壊するかもしれないということですかね?」
「それどころではありません。この天国が崩壊してしまいかねないのです」
おや。そこまで影響は大きいのか?
あまりにも周囲が膨大なエネルギーに満たされていたので、気がつかなかったが、この帝国諸神の神像の列は神造者とその支配地域の人間が捧げた信仰の精力を吸い上げて、天国を維持するためのものだったのだな。
わざわざ教えてくれてありがとうと、ここは感謝すべきだろうか?
「あなたはよほど強い意識を有していたのでしょうね。だからこの天国でも自由に行動出来るようですが、そのような事はおやめなさい。永遠の喜びを無に帰すつもりですか?」
なるほど。ここに大した防備が無いのは、そもそもここまでたどり着くのですら至難の業――オレだってジストルに「生け贄」として放り込まれなければ来る筈も無かった――であるのに加えて、ここの住民は誰も権力だの野心だのを有していないからだろう。
「その永遠の喜びのために、世界がどうなっているのか分かっているのですか?」
「それは我が命には関係ありません。役目はこの世界を維持し、こうしている間にも送り込まれてくる神造者達の魂に永遠の喜びと安らぎを与えることです」
想像通りだが、この天国の管理者もまた世界の状況などどうでもいいというよりは、自分には全く関係無い事なのだ。
「もしも世界がこのまま崩壊すれば、この天国も維持出来なくなって滅びるのですよ。それでもいいのですか?」
「それは心苦しい事です。そのような事態は何としても避けねばなりません」
一応は状況の深刻さを理解してくれているのか。ならば話し合いでどうにか出来るかもしれない。
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