異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第24章 全てはアルタシャのために?

第1246話 思わぬ奇縁と手助け

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 目の前で神々の有する魔力が立ち上る。
 オレの半ば脅迫ともいうべき言葉を受けて、ようやく神々は重い腰を上げた様子だ。
 もちろん信仰の力が無くなったら、この世界の多くの人々は確かに困るだろう。
オレが調べた限りでは、こちらでは神から与えられた魔法により、たとえば乳幼児の死亡率は元の世界の中世あたりよりもかなり低いようだ。
 それ以外でも神の力で飢饉を乗り切ったり、疫病の蔓延を防いだりもある。
 もっともその一方で悪霊や精霊に襲われて命を落とす人間も少なくないから、人口爆発という事も無く「片手で救って片手で奪っている」とも言えるのだが。
 いずれにしても神の力がなくても人間は生きていける――そして神の力がなくても人間は信仰心そのものは失わない――のはオレ自身がよく知っている。
 しかしそれでも多くの人間が今は必要としているのだから、それが消えて無くなってしまうのは多くの混乱を引き起こすだろう。
 石油や電気がなくても人間は生きていけるが、それでは現代人に明日から石油なしで生活しろというのが無理筋なのはオレでもわかる。
 結局のところ神との繋がりが断ち切られるのが「人間が自ら選んだ結果」ならともかく、神造者の暴走の結果であるなら、オレはそれを正すべきと考えただけだ。
 そんなわけで神々を見ていると、中から一人こちらに寄ってくる。
 よくよく見るとそいつは手足を鎖で縛った、まるで奴隷のような外見だが、そういうヤツには一人思い当たる知り合いがいる。

「もしや……あなたはケノビウスさん(第7章)ですか?」

 この姿は一時期、オレの首にはめられた首輪に宿った一神教徒の聖霊ではないか?
 一神教の教祖との因縁がいろいろとあった面倒な存在だが、一神教では他の地域における「街の神」などは「聖人崇拝」という事で許容しているのであった。

『いや。それは我が弟子の方だ。我はザーロン。偉大なる聖セルムに仕えし価値無き、愚者に過ぎぬ』

 そっちは唯一神の預言者の友人だったが、神から預言を与えられた事に嫉妬し満座の前で辱めようとしたが、預言者の威厳に圧倒されて逃げ出し、世界の果てで許してもらって自分に鎖をはめて絶対服従を誓った相手だったな。
 それで今では一神教徒の中で「どんな愚か者でも悔い改めれば神は許す」という象徴になっているという話だった。
 どうやらケノビウスからオレの事を聞いていたらしい。
 そういえば一神教徒の間では「聖人は決して人の問いに答える事は無く、あくまでも生きている間に残した意志だけが伝わる」ものだったはずだが、神界においては違うのか。
 それとも単に「一神教徒がそういう事として信仰している」だけなのか。

「それは失礼しました」
『構わぬ。先ほど言ったとおり、我には価値など無い。唯一至高なのは唯一神であり、それを伝える偉大なる預言者だ』

 何というかかなり面倒そうだが、まさか多神教の神々との繋がりを妨害して、世界を一神教で埋め尽くそうと考えているのか?
 確かに多神教の神々と違い、一神教では神から力を与えられた結果として魔法が使えるのではなく、聖人から与えられた力と後は知識としての魔法なので、今の状態の方がいいのかもしれない。
 他の神々が知らん顔している様子だが、これは一神教の勢力との間でいろいろややこしい関係があるのかもしれない。
 神造者のテセルが知ったら、あれこれと学問的に答えを見いだしてくれるかもしれないが、今のオレにはどうでもいいことだ。

『もしも貴女が望むのであれば、我が出来る限り聖セルム教徒に協力するように呼びかけてもよいぞ』
「ええ?! それは本当ですか?」

 オレのさっきの想像とは正反対の呼びかけにちょっと驚いた。まったく予想外の出来事に驚く事には決して慣れることはないものだ。

『もちろんだとも。西方でも聖人達と信徒との繋がりが絶たれて、多くのものが混乱しているのだ。このままでは大きな戦乱を招きかねない』

 なるほど。やっぱり「聖人信仰」とすり替えても、基本的な構造は他の神々への崇拝と変わらないか。
 同じように「神界と人間界の間の橋」が壊れたら繋がりは絶たれてしまうのだな。
 唯一神の方は人間の呼びかけには決して応じないので、逆を言えば繋がりを絶たれても関係無いが、それに仕えている――とされる聖人――はみんな困っているというわけか。

『幸運にも貴女は、西方でも多くの人間に我と繋がりある聖人として知られている。それを伝えれば必ずや大きな力が得られるはずだ』

 ううむ。その「聖人」とやらの時は鎖と首輪をはめられて連れ回された、思い出したくもない記憶なのだが、それがこんなところで役に立つとは。
 本当に奇縁とはこんなことを言うのかも知れないな。

『どうかな? 貴女が望まぬのであれば無理強いはせぬ。我の道に続くものに無理強いは決してしない主義であるからな』

 オレは絶対に無理強いされたと思うのだが、今さらそんな建前に文句を言っても仕方ない。

「もちろん喜んでお願いします!」

 そう頼んだ瞬間に、今度は西方域からの力も流れ込んできたようだ。
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