異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第24章 全てはアルタシャのために?

第1255話 最高の理解者は最悪の相手ともなる

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 つまりイロールは千年にわたり神として君臨して育て続けてきて、大陸中に広がっている自分の教団組織はもちろん神としての地位も何もかも全部オレに譲る、というか押しつけていくというのか?
 しかもそれはオレが言う事を聞かなかった事に対する意趣返しというのだから、いくら何でもごり押しに過ぎる。

「なんでそんな事になるんです?!」
『正直に言えばわたくしにもよく分かりません。いろいろと複雑な気持ちです』

 そんなあいまいな事で大陸を揺るがすような決定をしないでくれ。

『強いて言えば、わたくしはもちろんあなたに感謝の念も誇らしい気持ちもありますが、同時に少しばかり恨めしい意識もあるのですよ』

 それはもしかしてイロールが神になるまでに相当な期間――恐らくは数十年――を必要としたのに、オレがそれらを一気に飛び越してしまった事への嫉妬とか、そういう人間的な感情だろうか。
 今まで人間からはもちろん小神クラスからも嫉妬めいた感情をぶつけられた覚えがあるが、まさかイロールがそんな事を考えたとでもいうのか?

『もしもあなたがあらわれなかったら、わたくしは何も知らないまま、信徒達に騙されている事にすら気付かずにずっと過ごしていたでしょう』

 あ? この言い方はもしかしたら。

「つまり真実に気付かないままの方がよかったといいたいのですか?」
『そこまではいいません。しかしあなたも真実に気付かないままの方が、わたくしは幸せな気分で過ごせたのは分かってもらえるでしょう』

 気持ちは分かる。やっぱり「真相の令嬢が真実に気付く」ネタに近かったが、オレが妄想したように「広い世界に飛び出る」ではなく「真実なんて知らないままの方がよかった」というパターンの方だったか。

『もちろんあなたに非はありません。ただわたくしの不明を恥じるだけです。だから全てをあなたの譲る事に決めたのですよ』

 いや。いくら何でもそれは話が飛躍しすぎでしょう。

「それであなたはどうなるのです?」
『全て譲った後で、先代が出しゃばるのは人間の世界でも嫌われるでしょう?あなたに口出しなどしませんよ』
「そんな話はしていませんよ! あなたがどうするのかと尋ねているんです」

 わざと話を逸らそうとしているように感じられるな。

『そうですね……わたくしも久しぶりに人の身になって、活動してみましょうか』
「え? それはもしかしたら……」
『そうですね。今度はわたくしが「アルタシャ」となってあなたの後を継ぎましょう』

 おいおい。それは要するに入れ替わりなのか?
 もともとオレとイロールの容姿はよく似ている――イロールの影響でオレの身体が変化したのだからむしろ当然だ――その上で人の身になっても、常人を遥かに超越した魔力を有しているのも間違い無いから、知らない人間ならすぐに信じるだろう。
 いや。オレに対面した事のある人間でも、そうそう簡単にその違いには気付かないかもしれない。
 ごく一部を除けば、そんなに深い付き合いでもないからな。
 しかしそれでもごまかしの効かない相手はいるだろうが――たぶん彼らがみんな死んでしまうのを待つ事だってイロールには造作ないのかもしれない。

『これはアルタシャにとっても利益はありますよ。あなたが我が教団に対して可能な限り口出ししなかったように、わたくしも口出しはしませんが信徒の組織は見て回りましょう。そうすれば腐敗を抑止する事も出来ますね』

 そういえば神話でも「神は普段、一般的な人間の姿をとって世界を放浪している」という話はしばしばあったな。
 そんな神話があるからこそ、その神の信徒はどこに行っても「もしかしたら神様かもしれない」として歓待してもらえるという事を聞いた事がある。

『自分で言うのも何ですが、これだけ至れり尽くせりで全てを譲るという神は、大陸中探してもまずいませんよ』

 信徒に千年騙され続ける神もそうそういないと思うが、ヘソを曲げられてしまったらかえってこっちが困る。

「そんな条件で断るものも大陸中探して他にいないかもしれませんが、それでもあなたの目の前にいますよ」

 今までの事から、そんなのこっちが受ける筈がない事は分かっていて、それでも無理やりに譲ろうというのだから、何とも困った神様だ。

『その場合は聖女教会が崩壊します。もちろんそれだけでなく、ヘタをすれば大陸を揺るがす大騒動になるかもしれませんよ』
「そんな事をあなたも望んでいるとはとても思えませんよ。あなたを騙していた信徒だって、全体から見ればほんの一握りであって、それだけのためにずっと信奉し続けてきた人たちを裏切るのですか?」

 いくら自分の教団に失望したからって、そんな理不尽な行為は神とか何とか言う以前に誰であっても許されないだろ。

『もちろん裏切る気は無いです。だからアルタシャをわたくしの代わりに残すのですよ』

 ダメだコイツ。やっぱり話が通じない。
 しかもこっちの意図を分かっていて、無理やりに押しつけようとしているのだな。
 オレが女にされてから、ずっと「守護女神」として見てきたからこそ、断り切れなくなるのを分かって突きつけているのだから「一番の理解者が最悪の相手」になるパターンか!
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