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第24章 全てはアルタシャのために?
第1261話 天地開闢以来の偉業?
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数々の神々が一斉にオレの方に向けて叫ぶ。
『我らがアルタシャのために一肌脱ぐぐらい容易い事だ』
『うむ。今は力を惜しんでなどおれぬ。信徒たちにも呼びかけようではないか』
『我らのこれまでの諍いはいったん棚上げとしよう』
えええ?!マジで言っているの?
この世界に来てから幾度も。信徒がしょうもない些細な教義の違いを許せず命懸けで争うのはもちろん、神同士が生きていた時の怨恨はもちろん神になってからの諍いも忘れずに、不毛な争いばかりを目にしてきたのだ。
オレとしては、驚くというか呆れるというか、にわかには信じがたいものがある。
『アルタシャ。良かったですね』
イロールは神々の助けの声を聞いて妙に嬉しげだ。
『あなたのこれまでの行いが、このような神々の助けをもたらしたのです。このわたくしも驚きました』
「あなたもこれまで神々の諍いをずっと見てきたのですよね?」
何しろ千年前から神をやっていて、大陸中に夫神がいるからな。場合によっては「夫神同士で戦争」なんて事も珍しくはなかったはず。
『もちろんです。わたくしも幾度も争いは止めようとしましたが、残念ながら聞き入れてもらえる事は殆どありませんでした』
確かに聖女教会の言う事を聞かなかったからと言って、戦争で負傷した人間の手当を拒絶すると言う事はなかったろうからな。
もっと言えばイロールのやり方は、基本的に受け身で意見はしても、それ以上の行動はしていないからな。
聖女教会の方も聖女が有力者の側室と言う事は、一定の影響力は行使出来ても、結局のところは戦争となれば夫を支持せざるを得ないだろう。
別にイロールが悪いわけでも聖女教会が手を抜いているわけでもなく、元の世界でも紛争地域で無差別に負傷した人々を治療する組織が、紛争そのものを辞めさせる事が出来なかったと同じ事だ。
ヘタをするとそういう立派な建前の組織が実はこっそりと一方に肩入れし、それを知った敵対勢力が情け容赦なく全てを襲撃して、言葉に出来ない程の残虐な真似をしたなんて話もあったな。
厳正中立で誰にでも慈愛を注ぐ、というのは口にするのは簡単だが実現するのは殆ど不可能に近い。
オレだって別に厳正中立なんてワケでは無く、むしろ途中で出会った知り合いに肩入れしまくっていた。
もちろんプロポーズされて振った数などどれほどいたか覚えてもいない。「お前は今まで食ったパンの枚数を覚えているのか」状態である。
正直に言って賞賛は無数に受けている自覚はあるが、同時に神々から疎まれているであろう自覚もあった。
そんなオレのために神々が一致結束するなんて想像も出来ない。
「今までこんなことはあったのですか?」
『まさか。わたくしだって見たことも聞いたこともありませんよ。恐らく他の神々も同じでしょうね』
「それでは伝説や神話で該当するような話はありませんか?」
千年前から神をしているイロールならオレよりも遥かに多くの神話について詳しく知ってはいるだろう。
『天地開闢のおりに原初の偉大なる存在が、常に流転する混沌に対し力を合わせて永続性を与えて世界を作った時にはその場にいた全ての神が力をあわせたそうですよ』
おいおい。そんな太古の神話にまで遡らないと、神々がたくさん力を合わせる事はありえないのか。
もちろんスケールでは「アルタシャの身体を再生する」のと比べようもないけど、そこまで大ごとだったのか。
『言わばあなたを回復させるのは、神々にとっても天地開闢以来の出来事と言えましょう』
「大げさにも程がありますよ!」
『これも全て今まであなたが行ってきた事の積み重ねですよ。改めて言いますが、わたくしも実に誇らしいです』
確かについ先ほどオレが行った『人間世界と神の世界を再び繋ぐ』行為は善悪抜きに全ての神から感謝されても当然だとは思っているけど、何でも自分に都合良く解釈するのが当たり前のこの世界の神々なら、それこそ「自分の功績」と言う事にしたいだろう。
いや。さすがにそれは無理か。
全ての神々が関わっていたのに、その中で突出した事を主張したら、それこそ袋だたきにされてしまうだろう。
いかな強力な神でもそこまでの無茶は出来ないか。
あ? もしかするとそれが理由か?
要するに自分も「神界と人間世界の修復に一部でも関わった」と言う事にしたいのだな。
そうすると『力を合わせてアルタシャを治した』事が将来的には神々がみんないっちょかみして世界を修復したとか、そんな大きな神話になっているかもしれない。
いや。もしかすると人間世界の方でも、そんな感じになっているのかな。
まあ皇帝だとか王だとか、そちらの連中だと自分を権威付けるには話が大きい方がいいだろうからな。
きっと「アルタシャと一緒に世界を救った」なんて事を言い出すのも大勢いるに違いない。
まあそれでもいいや。
オレの伝説がここまで大きくなってしまうと、細かい事を気にするのがばからしくなってくるな。
そんなわけでオレは飛び散っていった身体の破片が、再び集まりつつあるのを見つめるのであった。
『我らがアルタシャのために一肌脱ぐぐらい容易い事だ』
『うむ。今は力を惜しんでなどおれぬ。信徒たちにも呼びかけようではないか』
『我らのこれまでの諍いはいったん棚上げとしよう』
えええ?!マジで言っているの?
この世界に来てから幾度も。信徒がしょうもない些細な教義の違いを許せず命懸けで争うのはもちろん、神同士が生きていた時の怨恨はもちろん神になってからの諍いも忘れずに、不毛な争いばかりを目にしてきたのだ。
オレとしては、驚くというか呆れるというか、にわかには信じがたいものがある。
『アルタシャ。良かったですね』
イロールは神々の助けの声を聞いて妙に嬉しげだ。
『あなたのこれまでの行いが、このような神々の助けをもたらしたのです。このわたくしも驚きました』
「あなたもこれまで神々の諍いをずっと見てきたのですよね?」
何しろ千年前から神をやっていて、大陸中に夫神がいるからな。場合によっては「夫神同士で戦争」なんて事も珍しくはなかったはず。
『もちろんです。わたくしも幾度も争いは止めようとしましたが、残念ながら聞き入れてもらえる事は殆どありませんでした』
確かに聖女教会の言う事を聞かなかったからと言って、戦争で負傷した人間の手当を拒絶すると言う事はなかったろうからな。
もっと言えばイロールのやり方は、基本的に受け身で意見はしても、それ以上の行動はしていないからな。
聖女教会の方も聖女が有力者の側室と言う事は、一定の影響力は行使出来ても、結局のところは戦争となれば夫を支持せざるを得ないだろう。
別にイロールが悪いわけでも聖女教会が手を抜いているわけでもなく、元の世界でも紛争地域で無差別に負傷した人々を治療する組織が、紛争そのものを辞めさせる事が出来なかったと同じ事だ。
ヘタをするとそういう立派な建前の組織が実はこっそりと一方に肩入れし、それを知った敵対勢力が情け容赦なく全てを襲撃して、言葉に出来ない程の残虐な真似をしたなんて話もあったな。
厳正中立で誰にでも慈愛を注ぐ、というのは口にするのは簡単だが実現するのは殆ど不可能に近い。
オレだって別に厳正中立なんてワケでは無く、むしろ途中で出会った知り合いに肩入れしまくっていた。
もちろんプロポーズされて振った数などどれほどいたか覚えてもいない。「お前は今まで食ったパンの枚数を覚えているのか」状態である。
正直に言って賞賛は無数に受けている自覚はあるが、同時に神々から疎まれているであろう自覚もあった。
そんなオレのために神々が一致結束するなんて想像も出来ない。
「今までこんなことはあったのですか?」
『まさか。わたくしだって見たことも聞いたこともありませんよ。恐らく他の神々も同じでしょうね』
「それでは伝説や神話で該当するような話はありませんか?」
千年前から神をしているイロールならオレよりも遥かに多くの神話について詳しく知ってはいるだろう。
『天地開闢のおりに原初の偉大なる存在が、常に流転する混沌に対し力を合わせて永続性を与えて世界を作った時にはその場にいた全ての神が力をあわせたそうですよ』
おいおい。そんな太古の神話にまで遡らないと、神々がたくさん力を合わせる事はありえないのか。
もちろんスケールでは「アルタシャの身体を再生する」のと比べようもないけど、そこまで大ごとだったのか。
『言わばあなたを回復させるのは、神々にとっても天地開闢以来の出来事と言えましょう』
「大げさにも程がありますよ!」
『これも全て今まであなたが行ってきた事の積み重ねですよ。改めて言いますが、わたくしも実に誇らしいです』
確かについ先ほどオレが行った『人間世界と神の世界を再び繋ぐ』行為は善悪抜きに全ての神から感謝されても当然だとは思っているけど、何でも自分に都合良く解釈するのが当たり前のこの世界の神々なら、それこそ「自分の功績」と言う事にしたいだろう。
いや。さすがにそれは無理か。
全ての神々が関わっていたのに、その中で突出した事を主張したら、それこそ袋だたきにされてしまうだろう。
いかな強力な神でもそこまでの無茶は出来ないか。
あ? もしかするとそれが理由か?
要するに自分も「神界と人間世界の修復に一部でも関わった」と言う事にしたいのだな。
そうすると『力を合わせてアルタシャを治した』事が将来的には神々がみんないっちょかみして世界を修復したとか、そんな大きな神話になっているかもしれない。
いや。もしかすると人間世界の方でも、そんな感じになっているのかな。
まあ皇帝だとか王だとか、そちらの連中だと自分を権威付けるには話が大きい方がいいだろうからな。
きっと「アルタシャと一緒に世界を救った」なんて事を言い出すのも大勢いるに違いない。
まあそれでもいいや。
オレの伝説がここまで大きくなってしまうと、細かい事を気にするのがばからしくなってくるな。
そんなわけでオレは飛び散っていった身体の破片が、再び集まりつつあるのを見つめるのであった。
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