異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第24章 全てはアルタシャのために?

第1260話 みんなはただひとりの乙女のため

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 耳元でがなり立てる声はちょっとばかり嬉しい気はする。もちろんだからといってテセルの主張するように妻になる気は全く無いけど。

「アルタシャの破片を全部、僕が集めてやる!だから待っていろ」

 それは何年どころか何十年かかるんだ? 少なくともテセルの人生全て捧げてもたぶん不可能だろう。
 何しろオレの破片を有しているであろう連中の殆どは、金や脅しで譲るような事はありえない奴らばかりだ――もちろんテセルを含む。
 感動的な台詞かもしれないけど、今のところ何の意味も無いな。
 ちょっと考えて見ると、もしオレがイロールの代わりに聖女教会の守護神になったり、イロールの一部という扱いになったりした後で「アルタシャの破片」が集められて復活したら、それはたぶんオレとは別の女神なんだろうなあ。
 もうややこしすぎて、自分でもワケが分からんが、神話や伝説どころか実在の人物ですら同じエピソードでもバリエーションが山のようにあって、何が真実かはハッキリしなくなっている事など珍しくも無かったからな。
 神造者の作ったアルタシャの化身が多数あったように、ヘタすると破片ごとにまた別々の伝説が生まれたりするかもしれないな。
 いや。そんな事に想像を回しても仕方ない。

「テセルの気持ちは嬉しいですけど、そのためには何十年もかかるでしょう。あなたの人生をそこまで犠牲にする事はないですよ」

 正直に言って「何十年」ですら期待薄だと思うけどな。

「何を言っているんだ! この僕がアルタシャのためにその程度の試練を乗り越えられないとでも思っているのか!」
「当たり前です!」

 オレは即答した。

「テセルだから出来ないのではなく、他の誰でも無理ですよ」

 むしろそんな事が出来る相手が全く思いつかないぞ。

「そんな事は無い! この僕がいま大勢のアルタシャの信徒達に連絡を取って話をしているのだからな!」
「え?!」

 それは「アルタシャの破片」を通じて、他の連中にも話が通じているのか?
 だがそれで破片を集めるなんて出来るとは思えないが。
 オレが連中の立場でも、自分のところに来た破片を手放すなんて絶対にしないだろう。

「そんな要求を聞き入れる相手がいるのですか?」
「もちろんだとも。大半の連中は同意しているぞ」

 そんなオレにとって都合のいい展開なんてあるのか? 今までこの世界に来てから、そのような漫画のような話など見た事すら無い。
 傍目にはオレの思い通りに何でも動いているように見えるかも知れないが、オレにとっては本当にままならない事ばかりだ。
 当然、それはいま現在も同じである。
「嘘じゃない! みんなアルタシャの復活を望んでいるんだ!」
 あ? そういうことか。
 たぶん神造者の施設を使っているテセルとは連絡がつくが、他の連中は横の繋がりがないのだろう。
 その上で「お前の持っているアルタシャの破片を使えばアルタシャが復活して、その恩恵を受けられる」とでも説得したんだな。
 元の世界のファンタジーでも「神を復活させてその祝福を受ける」は定番の展開――と言いたいのだが大抵は過去に敗れてバラバラにされた邪神の復活だったような気がするな。
 そして当然ながら、復活させたヤツを待っているのは破滅の運命で、場合によっては邪神に「お前を喰って我が一部にするから、お前は全知全能になれる」とかそんな理不尽な結末が祝福だったりした。
 しかしながら「アルタシャ」の場合だと、正直なところオレが与えられる祝福なんて何にもないぞ。
 まあテセルの事だからたぶんそのあたりは、幾らでもハッタリかましていそうだな。
 神造者の場合、詭弁と牽強付会はお手の物だ。
 オレとしても他に手がないのだし、それでいくしかないな。仮に失敗しても今よりはマシだろう。

『どうしました? 何かあったのですか?』

 イロールが困惑した様子で問いかけてくる。
 どうやら「アルタシャの破片」を通じた連絡はイロールの耳に入っていないらしい。

「少し待って下さい。あなたに神の力を返すことが出来るかもしれません」
『……それは構いませんけど、あまり待てませんよ』
「分かりました」

 一度得た神位をイロールに返還する事も出来るだろうけど、それはそれでかなり面倒臭い事になるのは確かだ。

「それではテセル、なるだけ急いでお願いします」
『『『待ってくれ!』』』

 え? 思わず振り向くとそこには大勢の神々――もちろん男神――が揃っていた。

『話は聞いた。失われたアルタシャの欠片を集めるというのなら、我が信徒達にも命じよう』
『助けてもらった借りは返さねば恥になるからな』
『我らにも手伝わせてくれ。喜んで力になろうぞ』

 何だって?! これまで寄ると触るといがみ合っていたこの世界の神々が、オレを助けるために協力するだって?
 いや。テセルの言葉では大陸中に散らばっている知り合いも協力すると言っているわけだが、神も人間も総出でオレをサポートしてくれるの?
 そんな「まともなファンタジー」みたいな事があるのかと、オレはちょっと愕然となった。
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