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第24章 全てはアルタシャのために?
第1295話 せめて一つの道標に
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オレが「アルタシャのニセモノ」を「不問とする」と言ったのがそんなに驚きだとはな。
王族を名乗るのと同様に、アルタシャを名乗ると死刑、という国も少なくなかったらしいから、たぶん当然のように全員死罪を求めると思われていたようだ。
オレの感覚で言えば、元の世界の時代劇で主人公が大物の場合、その名を騙るニセ者が出てくる話は珍しくも無かった。
リアルに考えればもちろん死罪になる大罪だが、フィクションではそのニセ者が本物にひれ伏して赦しを乞うと、寛大に許していたものだったけ。
こっちでは不埒な罪人のクビをはねる、なんて珍しくも何ともないことだから、こういうところでも感覚の違いを実感せざるを得ないな。
「まさか御名を騙り貶めた者どもまで寛大にお許しになるとは?」
「いや。命を狙った相手ですら、命乞いをなさったことが幾度もあるそうだから、これが当たり前であられるのだろう」
「まさに真の慈愛の持ち主だ」
ちょっとこそばゆいが今はそれを聞き流しておこう。
「ただしもしも今まで不当に人々から蓄えた財があるなら、それは全て元の人たちに返してください」
「お待ちください。それらは形はどうあれ御身に捧げられたものです。だから貴方様のために使うべきではないでしょうか?」
誰かが呼びかけてくるな。たぶんオレが関心を持ちそうなものが聞こえてくるのだろう。
これもまた一つのチートパワーというものだろう。
「いいえ。本来ならばその金で多くの人が救えたはずです。だから返せないのならば、貧しい人々を助けるのに使ってください」
「やはり……本物は本当に別なのですね……繰り返しお布施を求めるので、もしかしたらとは思っていましたが、もっと早く御身にお会いできればと思わずにはいられません」
そんなのちょっと考えれば分かるだろう、と言いたいけどこっちはネットどころか写真もないから「ひょっとすると本物かもしれない」と思ったら、それが通ってしまう場合も少なくはないのだろう。
もっとも逆にすぐ見抜かれて、リンチされるような例が多くて、うまく行っていたのはごくわずかだったりするのだろう。
そしてもしもうまく行っていたところで、こんな事態に直面すれば当然、次に来るものも理解できる。
「ううう……ちくしょう! お前さえ現れなければ!」
「せっかく何もかもうまく行っていたのがお前のせいで」
「あと少しで平民だった私が『奥方様』になれたのに!」
「この子の将来をどうしてくれる!」
やっぱりオレを呪う声も少なくはないな。
ハッタリで「アルタシャ」を騙り、いい思いをしていたのが全部吹っ飛んだわけだ。
中には貴族の妻になるとか、そういうところまでいく寸前だったとか、子供までこさえていてそれで破局したとか、そんなのも少なくはなかろう。
もしかすると本当に愛情を抱いていたのに、この瞬間に破局したと言う事も十分にありうるだろうな。
相手には絶対に知られてはならない命に関わる秘密がバレて破局、というのも古いドラマではよくあったものだったけど、もちろん目の前で
もちろん完全な自業自得だし、オレとしても連中に対して少しも同情はしない。
もっと言えば逆恨みには慣れている。
だけどそれはそれでオレの方からも少しは助け舟を出すとしよう。
「もしもわたしを恨みたいのならば、好きにして下さい。だけど今まで『癒やしの英雄』を名乗って人々を救おうとするような意識が少しでもあったのならば、罪を償った後でそれを改めて自分の名で行ってください」
こう言っておけば、騙されて憤っている連中も少しは矛を収めるかもしれない。それで流血さえ避けられたらいいのだ。
もちろんオレの呼びかけが届いて、受け入れた人間がどこまでいるのかは分からない。
騙されてなけなしの財産を巻き上げられたり、人生を台無しにされたりした人間がはいそうですかと納得する方がおかしいし、その場合は「やっぱり許せん」と命を奪う事も十分にありうるのだ。
正直なところ無条件でオレを賛美する連中はともかく、今は黙っていても「綺麗事ばかり口にしている」というものもいれば「悪党を許すのか」と憤っているのもいるだろう。
しかしそれでも繰り返していれば、きっと世界を少しずつでもその方向へと進ませることができるはずだ。
何だって積み重ねが大事である。
これで僅かでも、みんながお互いの命を尊重するようになって欲しいところなのだがな。
この世界では誰もが「自分達こそもっとも正しい生活をしており、もっとも正しい信仰を守っていて、世界でもっとも幸せだ」と思っている。
現状に不満を抱く人間も出てくるけど、そいつらはしばしば「ニセアルタシャ」のような存在に騙されるどころか、もっとも悪いと「アンデッドにされて永遠の奴隷労働者」にされてしまったりする。
それは彼らに示される選択肢が殆ど無いから、何かよさげなものを示されてついつい飛びついてしまうのだろう――かつてのオレのように。
だからオレはせめてそんな人間たちにとっての「道標の一つ」になりたいというところである。
王族を名乗るのと同様に、アルタシャを名乗ると死刑、という国も少なくなかったらしいから、たぶん当然のように全員死罪を求めると思われていたようだ。
オレの感覚で言えば、元の世界の時代劇で主人公が大物の場合、その名を騙るニセ者が出てくる話は珍しくも無かった。
リアルに考えればもちろん死罪になる大罪だが、フィクションではそのニセ者が本物にひれ伏して赦しを乞うと、寛大に許していたものだったけ。
こっちでは不埒な罪人のクビをはねる、なんて珍しくも何ともないことだから、こういうところでも感覚の違いを実感せざるを得ないな。
「まさか御名を騙り貶めた者どもまで寛大にお許しになるとは?」
「いや。命を狙った相手ですら、命乞いをなさったことが幾度もあるそうだから、これが当たり前であられるのだろう」
「まさに真の慈愛の持ち主だ」
ちょっとこそばゆいが今はそれを聞き流しておこう。
「ただしもしも今まで不当に人々から蓄えた財があるなら、それは全て元の人たちに返してください」
「お待ちください。それらは形はどうあれ御身に捧げられたものです。だから貴方様のために使うべきではないでしょうか?」
誰かが呼びかけてくるな。たぶんオレが関心を持ちそうなものが聞こえてくるのだろう。
これもまた一つのチートパワーというものだろう。
「いいえ。本来ならばその金で多くの人が救えたはずです。だから返せないのならば、貧しい人々を助けるのに使ってください」
「やはり……本物は本当に別なのですね……繰り返しお布施を求めるので、もしかしたらとは思っていましたが、もっと早く御身にお会いできればと思わずにはいられません」
そんなのちょっと考えれば分かるだろう、と言いたいけどこっちはネットどころか写真もないから「ひょっとすると本物かもしれない」と思ったら、それが通ってしまう場合も少なくはないのだろう。
もっとも逆にすぐ見抜かれて、リンチされるような例が多くて、うまく行っていたのはごくわずかだったりするのだろう。
そしてもしもうまく行っていたところで、こんな事態に直面すれば当然、次に来るものも理解できる。
「ううう……ちくしょう! お前さえ現れなければ!」
「せっかく何もかもうまく行っていたのがお前のせいで」
「あと少しで平民だった私が『奥方様』になれたのに!」
「この子の将来をどうしてくれる!」
やっぱりオレを呪う声も少なくはないな。
ハッタリで「アルタシャ」を騙り、いい思いをしていたのが全部吹っ飛んだわけだ。
中には貴族の妻になるとか、そういうところまでいく寸前だったとか、子供までこさえていてそれで破局したとか、そんなのも少なくはなかろう。
もしかすると本当に愛情を抱いていたのに、この瞬間に破局したと言う事も十分にありうるだろうな。
相手には絶対に知られてはならない命に関わる秘密がバレて破局、というのも古いドラマではよくあったものだったけど、もちろん目の前で
もちろん完全な自業自得だし、オレとしても連中に対して少しも同情はしない。
もっと言えば逆恨みには慣れている。
だけどそれはそれでオレの方からも少しは助け舟を出すとしよう。
「もしもわたしを恨みたいのならば、好きにして下さい。だけど今まで『癒やしの英雄』を名乗って人々を救おうとするような意識が少しでもあったのならば、罪を償った後でそれを改めて自分の名で行ってください」
こう言っておけば、騙されて憤っている連中も少しは矛を収めるかもしれない。それで流血さえ避けられたらいいのだ。
もちろんオレの呼びかけが届いて、受け入れた人間がどこまでいるのかは分からない。
騙されてなけなしの財産を巻き上げられたり、人生を台無しにされたりした人間がはいそうですかと納得する方がおかしいし、その場合は「やっぱり許せん」と命を奪う事も十分にありうるのだ。
正直なところ無条件でオレを賛美する連中はともかく、今は黙っていても「綺麗事ばかり口にしている」というものもいれば「悪党を許すのか」と憤っているのもいるだろう。
しかしそれでも繰り返していれば、きっと世界を少しずつでもその方向へと進ませることができるはずだ。
何だって積み重ねが大事である。
これで僅かでも、みんながお互いの命を尊重するようになって欲しいところなのだがな。
この世界では誰もが「自分達こそもっとも正しい生活をしており、もっとも正しい信仰を守っていて、世界でもっとも幸せだ」と思っている。
現状に不満を抱く人間も出てくるけど、そいつらはしばしば「ニセアルタシャ」のような存在に騙されるどころか、もっとも悪いと「アンデッドにされて永遠の奴隷労働者」にされてしまったりする。
それは彼らに示される選択肢が殆ど無いから、何かよさげなものを示されてついつい飛びついてしまうのだろう――かつてのオレのように。
だからオレはせめてそんな人間たちにとっての「道標の一つ」になりたいというところである。
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