異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第24章 全てはアルタシャのために?

第1307話 「完璧」を求めるためには

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 テセルからの想定外の呼びかけに対し、オレの方からとりあえずどうしようと考えているとあっちの方から話しかけてくる。
「どうしたんだ? あまりのありがたさに感動して言葉もないのか。何しろこの僕が全て面倒を見ると言っているのだからな」
 相変わらず厚かましい言い草だが、それでも当然ながら気になることがある。
「仮にテセルが『アルタシャ教団』を作るとしたら、どんなものにするつもりなんですか?」

 一応は『公僕』としての自負もあるテセルのことだ。
 流石に自分が私服を肥やすような馬鹿げたものにはしないだろうが、どんなものを想定しているのだろうか。

「もちろんあらゆる面で僕の理想通りにするさ。そしてそれはアルタシャにとっても必ずいいことになるぞ」

 なんとなく嫌な方向に進んでいるような気がするぞ。

「その理想の中身は『全てにおいて一から十までやり方が決まっている』ものなのですよね?」
「当たり前だろ?」
「後世の人間が不満を持って改めようとした場合、その余地はないのですか?」
「そんなものが必要ないぐらい完璧なものを作ればいいじゃないか」

 流石にこの言い分はオレも納得はしづらいな。
 恐らくテセルは今まで教団を作ったことなどないはずだ――普通は経験がある方がおかしいけどな。
 しかし神造者はその場その場で教団どころか、神すら都合がいいように作ってしまう。
 言ってみれば「新しい会社を作る」のと大して変わらない気分だろう。だから過去のものよりも己の作ったものが素晴らしいと考えているのだろうか。
 だけど先人の失敗を参考にして、その欠点をなくしたつもりが、やっぱり新しい欠点だらけなんて話も珍しくはない。
もしかすると自分の能力を過大評価してしまっているのか?
 幾度も挫折を経験したそれなりに経験を得たやつかと思っていたが、やっぱり根っこのエリート意識というか選民意識は消えないのだろうか。

「はははは。そんなものができる筈がない事は分かっているさ。そもそも常に変化し続け最善を求めるのも神造者の心がけだ」
「最初から分かっていて、そんな事は言わないで下さい」
「だからこそ僕が教団を最善の存在であり続けられるようなシステムを作ればいいだろ?」

 随分と軽々しく言ってくれるが、そんな事が出来たら苦労はない。
 そう言えば元の世界のフィクションでも「世界を支配しているマザーコンピュータが既に的外れな考えに固執して、かえって人々を苦しめている」なんてオチもしばしばあったな。

「ハッキリ言いますけど、そんな事は不可能です。わたしを含めて誰にも出来ません」

 テセルが組織を定めたら、恐らく全世界津々浦々の教団を統一し、教義も神話も一つに決めることになるのだろう。
 他の神々は自分の教義や神話が場所ごとに都合よく変わっていても、それに殆ど興味がないのはオレも分かっている。
 だから教義や神話にまでいちいち口を挟まず、信徒が都合の良いように振る舞うことを優先するのがほとんどだ。
 元の世界でも布教時に現地の宗教を頭から否定するのではなく、むしろ「この女神はこちらの女神様の化身だから同じだよ」と言ってその神話ごと取り込むことも珍しくはなかった。
 日本でも結構有名なバビロニア神話の『愛と美の女神』様がその方法で信徒を増やしていったそうだ。

 当然ながらその結果、あちこち似合った恋愛の神話を統合したので、行く先々で無数の恋人を作っては捨てていくという、愛は多いがそれが失せると冷酷非情な女神様ということになって、やっぱり色々と問題を引き起こしていた。

 これまた日本でも有名なバビロニア神話の最強の英雄様は、その女神の実態を知っていたので寵愛を断ったら『私の過去の所業を突きつけた!』と怒って復讐するんだから、本当に『女の怒りは恐ろしい』という事を示す神話なのだろうな。
 困ったことにどこの世界でもそういう話が人目を引くものだから、みんなが喜んで広めてしまうのである。
 だがテセルが次に口にしたのはこれまた予想外だった。

「もちろん完璧なんて神を含めてあり得ない事は重々承知の上だ」
「それは分かっていたんですね」

 この世界で完璧とされているのは一神教徒の信じる『唯一なるもの』ぐらいだが、その神は確か『自分が完璧であるからこそ、可能性を解き放って不完全な世界をあえて作って進歩をもたらそうとした』という教えだったな。
 それではテセルは何をするつもりなんだ?

「だけど信徒たちに『完璧だと思わせる事』は出来るだろう? そしてその完璧な教団を完璧という前提で動かせばいいだけだ」

 そういうことか。
 元の世界でも『神学論争』とか完璧な筈の神の戒律をいかに現実に合わせて解釈するかというものだったが、テセルはそれをやろうとしているんだな。
 ちょっと考えればすぐに思いつきそうだけど、こっちの世界ではあまりにも「人間の都合で何でも好き放題に変える」のが当たり前だったからそれがオレも当然だと思っていた。『時代に合わせて変える』のが教義ではなく解釈になるのはさすがに盲点だった。
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