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第24章 全てはアルタシャのために?
第1308話 解釈と真理
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テセルの主張を聞いて思わず呆けてしまったが、冷静に考えれば『解釈を変える』のはむしろオレの方がよくある事だった。
元の世界だったら法律の解釈が国家を揺るがす事だって、しょっちゅうで新聞でもしばしば取り上げられていたのを思い出したよ。
そこに考えが至らなかったのは、むしろオレの方がこっちの世界に順応しすぎてしまったというべきか。
一神教徒たちも『預言者の言葉』の解釈で争っていたのではないかとは思っていたんだけど、多くの神が「信徒の掲げる教義などさして興味なく、平然とスルーしていた」のを目の当たりに続けたので感覚が麻痺していたな。
元の世界のもっとも大きな宗教だって使っている経典は一緒なのにその解釈を巡って、色々と面倒な話になっているんだったな。
もともと経典では「利息を取ってはならない」とか言ってたのに、そういう事には目を瞑って、複雑怪奇な利息を取って貨幣経済を大発展させていたりもしたな。
今にして思えば世俗と神聖の間に明確な一線を引いて「それはそれ。これはこれ」とするのがオレの目的なので、それはそれでいいかもしれない。
もちろんテセル本人がどこまで考えているのか、それは確かめないといけないな。
「それで何の利点があると思っているのですか?」
「もちろん下らない争い……いや。争いが口論で終わるだろ。あくまでも解釈を戦わせるだけで、血を流す必要が無い。アルタシャなら理解してくれると思っているがね」
まさかそこまでオレの考えを分かってくれていたとは。ちょっとばかり感動した。
いや。待て。こいつがそんなに殊勝な考えを抱くだろうか?
絶対に何か裏があるに違いない。
「あなたが組織の頂点に立つつもりなんですね?」
「ちょっと違うな。そもそもいくら僕でも、そこまで大それた事は考えていないつもりだ」
「え?」
「皇帝とか王のような大きなバックも無いのに、トップに立つなんて愚かな真似をしたらどうなるか分からないか? すぐに引き摺り下ろされるだけだ」
思ったよりも、そういうところはしっかりしているんだな。
「そもそも僕たち神造者はそんな直接的な権力になど大して魅力は感じないものだ。建前上の権威・権力など連中にくれてやるとも」
「だけど本音では何を考えているのか、教えてください」
絶対にコイツは何か裏で考えているはずだ。もちろん単純によからぬこととか、私服を肥やすではないだろうけど、それはそれで自分の得になることを仕組むつもりに違いない。
「簡単な事だ。僕自身はシステムを作り上げるけど、そのシステムで教義を考えるのはそれぞれに任せるさ。この僕がどんなに完璧な教義を作ったところで、全員が納得するなんてありえないからな」
「つまり自分では責任を負わないと言うことですか?」
「人聞きが悪いな。自主性に委ねると言ってくれ」
ものは言いよう、とはこのことだ。
「あくまでもシステムの創始者としての名声程度のことであなたの野心や欲望が満たされるとはとても思えないのですけどね。一体、何を企んでいるんですか?」
「アルタシャの考えている僕はどういう存在なんだ」
「ハッキリ言って欲しいのですかね?」
この問いにはしばし沈黙があった。
「……辞めておこう。愛の誓いはもっとムードのある時に聞きたいからな」
だいたいこんな事を言うだろうな、と予想が出来てしまう自分がちょっと嫌だ。
「そんなことを言って誤魔化そうとしてもダメですよ」
「わかった。わかった」
何となく肩をすくめたような感覚があるな。
「僕は教義を決めるのではなく、それを判定する立場になるつもりだ」
「要するにテセルの許可がないと、何も反映されないと言うことなんですね」
確かに支配するわけでもなく、いちいち口出しするわけでもなく、それでいて多くの教団に影響を及ぼしつつ、しかも責任取らなくていいいというかなり便利な立場だ。
元の世界だと『格付け会社』が凄い力を有していたけど、それに近いものがあるな。
世渡りが下手くそな男だと思っていたが、妙なところで頭が回るな。
しかし言うはやすしだ。
「そんな都合よくいくと思っているんですか? あなたの言うことを聞かなくても直接制裁なんて出来るわけではないですよね?」
「アルタシャはこんな僕の考えに協力してくれないのかい」
やっぱりオレを頼る気満々だったようだな。
「テセルや神造者の権勢のために協力する気は全くないですよ」
今までどれだけこっちが振り回されてきたか、もちろんこの男はそれを知っていながら口にしているわけなのだが。
「もちろん協力なんて望まないさ。今までだって神に協力を求めたんじゃない。ただ単により良いやり方を信徒たちに提供していただけだ」
要するに「コンサルタント」だと言いたいわけか。それで責任負わなくて済むのだから、相変わらずなやり方だな。
ただ確かに神造者がでしゃばり過ぎて世界を危機に陥れたことを考えれば、やっぱりその程度で止めるのが賢いというべきなのかもしれないがな。
元の世界だったら法律の解釈が国家を揺るがす事だって、しょっちゅうで新聞でもしばしば取り上げられていたのを思い出したよ。
そこに考えが至らなかったのは、むしろオレの方がこっちの世界に順応しすぎてしまったというべきか。
一神教徒たちも『預言者の言葉』の解釈で争っていたのではないかとは思っていたんだけど、多くの神が「信徒の掲げる教義などさして興味なく、平然とスルーしていた」のを目の当たりに続けたので感覚が麻痺していたな。
元の世界のもっとも大きな宗教だって使っている経典は一緒なのにその解釈を巡って、色々と面倒な話になっているんだったな。
もともと経典では「利息を取ってはならない」とか言ってたのに、そういう事には目を瞑って、複雑怪奇な利息を取って貨幣経済を大発展させていたりもしたな。
今にして思えば世俗と神聖の間に明確な一線を引いて「それはそれ。これはこれ」とするのがオレの目的なので、それはそれでいいかもしれない。
もちろんテセル本人がどこまで考えているのか、それは確かめないといけないな。
「それで何の利点があると思っているのですか?」
「もちろん下らない争い……いや。争いが口論で終わるだろ。あくまでも解釈を戦わせるだけで、血を流す必要が無い。アルタシャなら理解してくれると思っているがね」
まさかそこまでオレの考えを分かってくれていたとは。ちょっとばかり感動した。
いや。待て。こいつがそんなに殊勝な考えを抱くだろうか?
絶対に何か裏があるに違いない。
「あなたが組織の頂点に立つつもりなんですね?」
「ちょっと違うな。そもそもいくら僕でも、そこまで大それた事は考えていないつもりだ」
「え?」
「皇帝とか王のような大きなバックも無いのに、トップに立つなんて愚かな真似をしたらどうなるか分からないか? すぐに引き摺り下ろされるだけだ」
思ったよりも、そういうところはしっかりしているんだな。
「そもそも僕たち神造者はそんな直接的な権力になど大して魅力は感じないものだ。建前上の権威・権力など連中にくれてやるとも」
「だけど本音では何を考えているのか、教えてください」
絶対にコイツは何か裏で考えているはずだ。もちろん単純によからぬこととか、私服を肥やすではないだろうけど、それはそれで自分の得になることを仕組むつもりに違いない。
「簡単な事だ。僕自身はシステムを作り上げるけど、そのシステムで教義を考えるのはそれぞれに任せるさ。この僕がどんなに完璧な教義を作ったところで、全員が納得するなんてありえないからな」
「つまり自分では責任を負わないと言うことですか?」
「人聞きが悪いな。自主性に委ねると言ってくれ」
ものは言いよう、とはこのことだ。
「あくまでもシステムの創始者としての名声程度のことであなたの野心や欲望が満たされるとはとても思えないのですけどね。一体、何を企んでいるんですか?」
「アルタシャの考えている僕はどういう存在なんだ」
「ハッキリ言って欲しいのですかね?」
この問いにはしばし沈黙があった。
「……辞めておこう。愛の誓いはもっとムードのある時に聞きたいからな」
だいたいこんな事を言うだろうな、と予想が出来てしまう自分がちょっと嫌だ。
「そんなことを言って誤魔化そうとしてもダメですよ」
「わかった。わかった」
何となく肩をすくめたような感覚があるな。
「僕は教義を決めるのではなく、それを判定する立場になるつもりだ」
「要するにテセルの許可がないと、何も反映されないと言うことなんですね」
確かに支配するわけでもなく、いちいち口出しするわけでもなく、それでいて多くの教団に影響を及ぼしつつ、しかも責任取らなくていいいというかなり便利な立場だ。
元の世界だと『格付け会社』が凄い力を有していたけど、それに近いものがあるな。
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しかし言うはやすしだ。
「そんな都合よくいくと思っているんですか? あなたの言うことを聞かなくても直接制裁なんて出来るわけではないですよね?」
「アルタシャはこんな僕の考えに協力してくれないのかい」
やっぱりオレを頼る気満々だったようだな。
「テセルや神造者の権勢のために協力する気は全くないですよ」
今までどれだけこっちが振り回されてきたか、もちろんこの男はそれを知っていながら口にしているわけなのだが。
「もちろん協力なんて望まないさ。今までだって神に協力を求めたんじゃない。ただ単により良いやり方を信徒たちに提供していただけだ」
要するに「コンサルタント」だと言いたいわけか。それで責任負わなくて済むのだから、相変わらずなやり方だな。
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