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第24章 全てはアルタシャのために?
第1309話 何でも貫けば「神の領域」
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神の意志や教義で物事をはかるのではなく、解釈の変更だけで何でも出来るというなら、極端なことを言えば「正反対」な事をしても通ることになってしまいかねない。
そんな話は世界中に腐るほどあった。
そう言えば「民主主義」を高らかに国名に掲げておいて、民主主義の欠片もない独裁国家もあったぐらいだ。
もちろんその国の最高法規では、民主主義における大事な権利は保障されることになっていたのだが、そんな「最高法規」など誰も守ってはいなかった。
もちろん守ってもらえるはずの大衆もそんなことを口に出すことすら出来なかった。
まあそこまで行くのはかなり極端だけど、教義で禁止されているものでもなかった事になったり、何百・何千年という時代の流れの中で変化し過ぎて原型を留めなくなることもしょっちゅうである。
時代の流れで変化していくのは、もちろん良いことが多いとは思うが、何だって行き過ぎはまずい。
一時は「素晴らしい時代の進歩」とされたものが、行き過ぎて余計な犠牲を出してしまった例はいくらでも存在するのだ。
この世界でも神造者がまさにその実例だ。
「それをテセルが決めるのはダメですね」
「僕が信頼出来ないというのかい?」
「もちろんですよ」
「そうだな……そう言うとは思っていたんだけど」
ここでどこか諦観したような空気が流れる。
「ではアルタシャは誰なら信頼出来るんだ? 具体的に言ってくれ」
「……」
この言葉にはちょっとばかりオレも返答に詰まる。
「それは今すぐ答えられる問題ではないですよ。時間をかけて考えます」
「アルタシャは本当に誰も信じていないんだな……この僕だけでなく、本当に誰一人としてだ。そこまで徹底しているとはこちらも感心するよ」
「それはあんまりな言い草でしょう」
そんなに「誰も信じない」なんて悪の組織のラスボスか、猜疑心の塊になった独裁者ぐらいだろうに。
もちろん独裁者が耳に痛いことを言う人間を片っぱしから粛清していって、気がつくと周囲が媚びへつらうイエスマンばかりになってしまい、その結果としてかえって誰も信じられなくなるという話はよく聞くな。
だけどオレはどこからどう見てもそんなキャラではないはずだ。
そもそも文句なんてもうどれだけ言われてきたか、命がけで助けても感謝されずに文句言われた事だって幾度もあるぞ。
しかしテセルの言葉もどこか引っかかる。
「いいや。間違いない。アルタシャぐらい何でもかんでも疑うのは見たことがない。恐らくは自分自身すらも全く信じていないだろう」
元の世界では『神様を信じない人間』は別に珍しくなかったけど、それはあくまでも『神の存在を信じない』というものであり、この世界ではまずあり得ない。
もちろん『他の信仰の主張は一切認めない』のがその裏面に存在するのだが、それは『自分たちの信仰を無条件に正しいと信じる』がゆえのことだ。
そして実際に、長い間何世代にも渡ってそれが受け継がれてきた。
しかもそれは単なる言い伝えではなく、実際に神様が存在して「真実」を信徒に伝えている結果なのである。
この世界の住民のほとんどが恐ろしく保守的なのは、それが大きな理由だろう。もっとも途中で人間を騙して、自分の利益に変えようとする奴らも少なくなかった。
先祖代々の実績ある教えを捨てて、詐欺に引っかかり構成員の人生台無しという羽目に陥った共同体もあったはず。
そんな話が大袈裟に広まって、外部に対しては疑い深く保守的で、自分たちの優越性を疑わない連中が優先的に残ってきたのかもしれないな。
だからこそオレはこんな世界を変えたいと思っているのだけどな。
「自分の信念は変えたことないですんけどね」
「確かにその通りだろう。だけど信念は信じていても、自分の行動は常に注意して、踏み外さないように気をつけているのだろう?」
「そんなの当たり前じゃないですか」
「いや。そのアルタシャの思考こそが恐らくは、世界で唯一無二のものだろう」
幾ら何でも大袈裟すぎるとしか思えない。
「アルタシャのように周囲から絶賛され、容姿も能力も人望も全部持っているものが、それに溺れることなく常に自分を冷静に見ている。ハッキリ言ってそんな事が出来たらそれだけでも『神の領域』だよ」
元の世界だと『デス○ートに表情変えずに書き込む』だけで世界一の探偵が「神の領域」とか言っていた覚えがあるから、そんなことを言われてもあんまり大した事のようには感じられないんだけどなあ。
そもそも「神様」がこっちの世界では人間的過ぎて「神の領域」が全然ピンと来ない。
そんなのは一般人からすれば「大金持ちが一億円をはした金」と思うようなあまりにも贅沢すぎる感覚に近いのかもしれないけどな。
「我が同胞達は、自分達が神を操作し、神の領域を扱う事で、自らを神に等しい存在だと思い上がってしまった……僕もアルタシャに出会わなければ同じ道を歩んでいただろう」
ええ? テセルがそんな謙虚な事を言うなんて?!
驚くポイントがズレている事はオレ自身自覚しているつもりだ。
そんな話は世界中に腐るほどあった。
そう言えば「民主主義」を高らかに国名に掲げておいて、民主主義の欠片もない独裁国家もあったぐらいだ。
もちろんその国の最高法規では、民主主義における大事な権利は保障されることになっていたのだが、そんな「最高法規」など誰も守ってはいなかった。
もちろん守ってもらえるはずの大衆もそんなことを口に出すことすら出来なかった。
まあそこまで行くのはかなり極端だけど、教義で禁止されているものでもなかった事になったり、何百・何千年という時代の流れの中で変化し過ぎて原型を留めなくなることもしょっちゅうである。
時代の流れで変化していくのは、もちろん良いことが多いとは思うが、何だって行き過ぎはまずい。
一時は「素晴らしい時代の進歩」とされたものが、行き過ぎて余計な犠牲を出してしまった例はいくらでも存在するのだ。
この世界でも神造者がまさにその実例だ。
「それをテセルが決めるのはダメですね」
「僕が信頼出来ないというのかい?」
「もちろんですよ」
「そうだな……そう言うとは思っていたんだけど」
ここでどこか諦観したような空気が流れる。
「ではアルタシャは誰なら信頼出来るんだ? 具体的に言ってくれ」
「……」
この言葉にはちょっとばかりオレも返答に詰まる。
「それは今すぐ答えられる問題ではないですよ。時間をかけて考えます」
「アルタシャは本当に誰も信じていないんだな……この僕だけでなく、本当に誰一人としてだ。そこまで徹底しているとはこちらも感心するよ」
「それはあんまりな言い草でしょう」
そんなに「誰も信じない」なんて悪の組織のラスボスか、猜疑心の塊になった独裁者ぐらいだろうに。
もちろん独裁者が耳に痛いことを言う人間を片っぱしから粛清していって、気がつくと周囲が媚びへつらうイエスマンばかりになってしまい、その結果としてかえって誰も信じられなくなるという話はよく聞くな。
だけどオレはどこからどう見てもそんなキャラではないはずだ。
そもそも文句なんてもうどれだけ言われてきたか、命がけで助けても感謝されずに文句言われた事だって幾度もあるぞ。
しかしテセルの言葉もどこか引っかかる。
「いいや。間違いない。アルタシャぐらい何でもかんでも疑うのは見たことがない。恐らくは自分自身すらも全く信じていないだろう」
元の世界では『神様を信じない人間』は別に珍しくなかったけど、それはあくまでも『神の存在を信じない』というものであり、この世界ではまずあり得ない。
もちろん『他の信仰の主張は一切認めない』のがその裏面に存在するのだが、それは『自分たちの信仰を無条件に正しいと信じる』がゆえのことだ。
そして実際に、長い間何世代にも渡ってそれが受け継がれてきた。
しかもそれは単なる言い伝えではなく、実際に神様が存在して「真実」を信徒に伝えている結果なのである。
この世界の住民のほとんどが恐ろしく保守的なのは、それが大きな理由だろう。もっとも途中で人間を騙して、自分の利益に変えようとする奴らも少なくなかった。
先祖代々の実績ある教えを捨てて、詐欺に引っかかり構成員の人生台無しという羽目に陥った共同体もあったはず。
そんな話が大袈裟に広まって、外部に対しては疑い深く保守的で、自分たちの優越性を疑わない連中が優先的に残ってきたのかもしれないな。
だからこそオレはこんな世界を変えたいと思っているのだけどな。
「自分の信念は変えたことないですんけどね」
「確かにその通りだろう。だけど信念は信じていても、自分の行動は常に注意して、踏み外さないように気をつけているのだろう?」
「そんなの当たり前じゃないですか」
「いや。そのアルタシャの思考こそが恐らくは、世界で唯一無二のものだろう」
幾ら何でも大袈裟すぎるとしか思えない。
「アルタシャのように周囲から絶賛され、容姿も能力も人望も全部持っているものが、それに溺れることなく常に自分を冷静に見ている。ハッキリ言ってそんな事が出来たらそれだけでも『神の領域』だよ」
元の世界だと『デス○ートに表情変えずに書き込む』だけで世界一の探偵が「神の領域」とか言っていた覚えがあるから、そんなことを言われてもあんまり大した事のようには感じられないんだけどなあ。
そもそも「神様」がこっちの世界では人間的過ぎて「神の領域」が全然ピンと来ない。
そんなのは一般人からすれば「大金持ちが一億円をはした金」と思うようなあまりにも贅沢すぎる感覚に近いのかもしれないけどな。
「我が同胞達は、自分達が神を操作し、神の領域を扱う事で、自らを神に等しい存在だと思い上がってしまった……僕もアルタシャに出会わなければ同じ道を歩んでいただろう」
ええ? テセルがそんな謙虚な事を言うなんて?!
驚くポイントがズレている事はオレ自身自覚しているつもりだ。
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