愛する家庭を守るため 病んだ妻が決断したのは「夫を娘にする」事だった

高崎三吉

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もっとも大事なものは

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(違う! 俺は男だ! うぐぐぐ……苦しい……)

 ナオミは自分の前に示されたイメージに抵抗しようとした。
 けれどもイメージを無視したり、あるいはそれ以外の何かを考えたりしたとき、ナオミは吐き気や痛みを感じた。 
 だが画像で見えている活動について考えると、幸福と満足を感じた。
 それは全て彼女に繋がれたチューブから注入されている薬の影響だったのだが、そんな事は今の彼女には関係無かった。
 時間と共にナオミの意識はより弱くなり、抵抗は更に厳しくなった。
 ミチコはナオミの抵抗を見るのは不愉快だった。
 彼女はそんなことをしても無意味だと知っていたが、それが処理を長くして、そして時々ナオミに痛みをもたらしていたのは好きではなかったのだ。

(だけど全ては計画通りだわ)

 それを確認したところで、ミチコは少し休憩することにした。

「ケイ。しばらくあなたに任せるわ」

 ミチコはケイに機械の操作を引き継がせ、いったん部屋を去った。
 かつての夫の変化を全て見ることを望んだが、それを無理するべきではないことは分かっていたのだ。

  ミチコが一晩、休んで翌朝に帰ったとき、ナオミの反抗は減少しており、彼女は女性らしく生活することを学んでいた。
 ナオミの精神データを見ると、既に新しい娘は料理や編み物、掃除、洗濯といった女性的な活動を喜んで行い、またドレスをはじめ種々の女性の服装、下着や水着、さらにイアリングなどアクセサリー、口紅のようなさまざまな化粧を好むようになっていた。
 まだ彼女の心の一部が反抗することを望んでいたが、その部分は弱かった。
 ナオミは既にいろいろな女らしい物品を身につけることも、女らしく振る舞う事も愛するようになっていたのである。

「ケイ。あなたは暫く休んでいなさい」
「分かりました」

 ケイが下がったところでミチコはナオミに見せる画像を切り替えつつ呟いた。

「今が決定的な瞬間ね」

 ナオミは今度は男性を欲することを学ぼうとしていた。
 彼女は最初に男性たちを見る事に喜びを感じ、次により多くの事を望むようになりつつあった。
 ミチコはナオミを尻軽女に変えようとは思っていなかったが、彼女が同性愛者であることは望まなかった。
 だからナオミが男性たちに対する性欲の適切な量を学ぶことは重要であった。
 もちろんミチコはナオミの精神に残っている男性の心が同性に魅力を感じさせる事に対し、非常に強く反抗することを知っていた。
 予想されたとおり、ナオミの精神における羞恥心と嫌悪感は急速に上昇したのだ。

 男性たちのイメージが視界の中に現われ始めたとき、ナオミはほとんど吐き気がした。
 それは彼女が今女らしく振る舞う事が好きであったことぐらいでは十分では無かったのだ。
 今、組織が自分を男性が好きになるようにさせようとしていたのは明確だった。

「望ましい効果をあげるためには、彼女には男性たちが魅力的であることを見いださせて、精神の嫌悪部分を消去せねばならないわ」

 ミチコは自分自身に言い聞かせるようにつぶやいた。

「だけど羞恥心は残したままにしましょう」

 恥じらいが大きいから、魅力はそれ以上に大きくなければならない。
 長い時間に渡ってイメージと刺激を操作することによって、ミチコはゆっくりと、しかし確実にナオミの精神における男性に対する欲求を作り、少しずつ増やしていった。
 ミチコはナオミが男性たちについて空想にふけり、それに対して、恥じらいを感じていることについてほほ笑んだ。
 ナオミは男の体、力、そしてにおいによってさえ心をかき立てられるだろう。
 けれども恥じらいはほとんどの場合、彼女が性欲に基づいて行動するのを阻止するのだ。
 ある意味で彼女は『行儀良くふるまうようしつけられた少女』となるだろう。
 ナオミは男性たちを切望するが、ほとんどの場合は彼らを拒否するに違いない。
 ただ適切な男性に出会った時だけ、彼女の喜びはその恥じらいを克服出来るようになる。 
 そしてそのようなまれな例でだけ、ナオミは己の欲望に服従するのだ。

「もっとも大事なのは羞恥心と性欲のバランスだわ」

 性欲が強すぎれば、ナオミは尻軽女になってしまうし、逆に羞恥心が強すぎれば男を拒絶するばかりになってしまう。
 そのどちらもミチコは望んではいなかった。
 だからミチコは正しいバランスを見いだすために細心の注意を払っていた。
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