能力者の都市で僕が最強の"覇王"になるまで。

ミースケ

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#5

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トーナメントにはいくつかのルールがある。
1つ目、試合会場であるリング外に出ると負け。
2つ目、試合中に気絶すると負け。
3つ目、規定の範囲内ならば銃や剣の持ち込みを認める。
4つ目、出場者は学校指定のジャージを着ること。
5つ目、本戦出場者は各ブロックの優勝者と、各ブロックの準優勝者の2名が試合をして勝利した方の合計3名のみ。
6つ目、各ブロックの決勝戦は地形が変更される。
とまあこんな感じだ。
ちなみに合計出場者数は32名で、Aブロック16人、Bブロック16人だ。

勝負は一瞬でついた。
試合開始と同時に京夜は銃を抜き、草履は地を蹴り京夜との距離を詰める。
刹那、京夜の銃口から、一直線に突撃してくる草履に向けて発砲音と共に弾丸が放たれる。
「おおおお!」
草履は突撃しながら右肩を前に出してそれを正面から受け止めようとするが、弾丸が右肩に直撃した瞬間に草履の動きが止まる。
「・・・!?」
その事実に草履は驚愕する。
草履の能力である《筋力強化》はその名の通り自身の筋力を強化するというものだ。
それの能力を使って足の筋肉と右肩の筋肉を強化して弾丸を防ぎ、一気に距離を詰めて近接戦闘に持ち込む。
そうすれば銃使いの京夜に勝てると踏んでいたのだが、存外弾丸のパワーが強く、弾丸を押しきれずにせめぎ合いになっている。
右肩に直撃した弾丸がゴム製なのと《筋力強化》によって弾丸が肩の中に入ることはないがこのままでは先にこちらの体力が無くなってしまう。
そう考えた草履は《筋力強化》をフルパワーで発動し一気に弾丸を押し切り弾こうとする。
その瞬間、発砲音がして右肩の負担が更に大きくなる。
「あっああああがぁ~!」
それにより草履は逆に弾丸に押し切られ数m吹き飛ばされてしまう。
試合会場は30mの正方形で、せめぎ合いは中央近くで起こっていたためリング外に出ることはなかったが、草履はどうやら頭を打って気絶してしまったようだ。
『勝者、東近京夜!』
それと同時にそんな審判の声がスピーカーで流れる。
「ふぅ・・・」
京夜は一息つき、倒れた草履の元に近づく。
草履は割とすぐに目を覚ましたようで、体を起こしている。
「ナイスファイト」
京夜はそう言って草履に手を差し出す。
「こちらこそ。お陰で自分の弱さを実感出来たよ」
草履はそう返してその手を取る。

「わ~お、京夜さん強いですね!」
観客席で京夜の試合を観戦していた瑠衣が隣で見ていた玲奈の方を向きそんなことを言う。
「・・・ん」
玲奈は表情を変えずにそう返す。
「それにしても京夜さんはどんな能力なんですかね?」
放った弾丸がゴム弾とは思えないほどのパワーを持っていたことから銃に関係した能力であることには違いないのだが、詳細については検討もつかない。
まあそんなに何度も京夜の能力を見たわけでは無いためわからないのは当たり前といえば当たり前なのだが、どうしても気になってしまう。
「・・・《狙撃》」
隣から玲奈の抑揚のない声でそんな言葉が聞こえてくる。
「どういうことですか!?」
瑠衣が食い気味に聞くと、玲奈は若干引き気味で答える。
「・・・弾丸の加速と威力の増強」
「なるほど!」
玲奈が京夜の能力を教えてくれたことで疑問が少し消えた。
「それって教えてもいいやつなんですか?」
能力はバレると対策される危険があるため、あまり教えないほうがいい。
そのため、玲奈に言ってよかったのかと疑問の声を上げる。
「・・・京夜の能力はバレても問題ない」
「へぇ、そうなんですか」
瑠衣はたしかに戦闘向けの能力はサポート向きの能力よりはバレてもあまり問題は無いなと思い、頷く。
「それにしても京夜さんのジャージ姿似合ってますね~!」
学校指定の、紺色に青いラインが入ったジャージを着ている京夜を見ながらそんなことを呟く。

『さて!Aブロックの決勝戦は、ここまで無双中の東近京夜対、快進撃を見せているスーパー1年生の加藤雅治!』
「京夜さんガンバレ~!!」
京夜は弾丸を避けることが出来ない相手には圧倒的有利で、そんな人物そうそう居ないため、余裕で決勝戦まで駒を進めた。
「・・・ガンバ」
「おうおう、頑張れ頑張れ~」
京夜を応援している玲奈と瑠衣の席の後ろでは、零が腕を上げて棒読みで京夜にファイトを送っている。
「何で居るんですか?」
本来選手用観客席に居るはずの零が背後にいることに瑠衣は振り向いて疑問の声を上げる。
「相手は1年生の加藤か。ここまでの試合を見る限り能力は《透明化》ってところか」
加藤はこれまでの試合で姿を消して距離を詰め、近距離戦闘でも透明なことで優位に立ち回るといった戦法で勝ち進んできた。
身体能力も高く、近距離戦闘に持ち込まれたら勝つのは流石の京夜でも厳しいかもしれない。
京夜は近距離戦闘に持ち込ませない戦い方をするのか、もしくは・・・
そんなワクワクに身を震わせながら試合が始まるのを待つ。
『それでは決勝戦、始め!』
そんな掛け声と共に気合の決勝戦が始まる。

そういえば決勝戦は地形が変わるんだったな。
京夜は変わっていくリングを見ながらそう思う。
先程まで平面だったリングは見る見るうちに遮蔽物が出来ていき、数十秒もしない内に完成する。
リング内には複数の小さな建物や壁等があり、若干加藤に有利な地形になったなと思いつつ、加藤がいる正面を見る。
しかし、そこに加藤の姿は無い。
「あ、もう始まってるんだったな」
京夜がそう呟いた瞬間、背後に気配がする。
「先輩馬鹿ッスかw」
背後から聞こえてくる声の主である加藤が、持ち込んだ木刀で攻撃してくる。
「・・・あ、おう」
京夜は加藤の放った木刀の横振りを身をかがめて避け、即座に振り向きホルダーから銃を抜いて発泡する。
「痛った!?」 
完全に勝ちを確信していた加藤は京夜の放った弾丸を避けることが出来ずに、直撃して食らう。
が、加藤は直ぐに透明になって姿を消してしまい、直ぐ様更に数発発泡するが当たった感じはしない。
そこは流石だな。
「・・・チッ」
京夜は舌打ちをする。
至近距離で発泡して加速しきる前に加藤に命中したため、ゴム弾では一撃で倒せなかったようだ。
「さて、どうするか」
再び攻撃してくるのを待ってもいいが、恐らく対策してくるよな。
ならばこちらから仕掛けるか。
そう考えた京夜は周囲360度に弾丸を乱射する。

「京夜さんどうしちゃったんですかね?」
急に銃を乱射しだした京夜を見て瑠衣はそんなことを聞いてくる。
「さあて、どうしたんだろな?」
僕はその質問に答えずにリングの方を指さす。
「何ですか・・・わっ!?」
リングの方を見た瑠衣がそんな声を上げる。
リングでは京夜の周りを大量の弾道線が覆っている。
よく見ると京夜の放った弾丸同士が跳ね返るのを繰り返すことで成り立っているのが分かる。
なるほどゴム弾の反発性を利用して自分の周囲を弾道線で囲い、加藤が近づけないようにしているのか。
「でも何で弾丸同士があんなきれいに跳ね返ってるんですか?」
通常、ゴム弾同士がぶつかっただけでは特に何も起こらないが、京夜の能力《狙撃》を使うことによって、弾丸を加速させ、弾丸の弾道を曲げることによりこれが成り立っている。
もちろんこれを成立させるためには、
1,弾丸を加速させる。 

2,弾丸の弾道を曲げて同士をぶつけさせる。

3,ぶつかった弾丸をまた他の弾丸とぶつかるように弾道を曲げる。

4,これを自分を中心に半球状になるようにかつ超高速繰り返す。
という常人には出来ないようなとんでもなく難易度の高いことをやり続けなければならない。
これは京夜の得意技で、相手や間接攻撃を通さないことから僕は勝手に【弾道防壁】と呼んでいる。
「ここからどうするか、だな」
これで透明になれるだけの加藤は京夜に近づけないが、それだけでは勝てない。
「・・・!?なるほどな」
次の瞬間、京夜がアクションを起こした。
京夜を囲っている弾丸の一部がリング内の遮蔽裏に飛んで行き出した。
京夜を囲っていた弾丸の半径は数m、加藤がタイミングを伺うとするならそこから更に2,3m程離れた遮蔽裏だろう。
京夜は今その遮蔽裏を手当たり次第に攻撃して行っている。
「見つけたか・・・」
虱潰しに放たれていた弾丸が一点に集中して放たれだした事で加藤の場所が判明したことが分かる。
ある程度の居場所が分かれば後は詰将棋的に相手の動きを予測して攻めるだけで勝ててしまう。
一度逃してしまった失敗をした京夜が学んだ事でもうこれは勝確だな。
僕はそう思い選手用観客席に戻る。

負け?
加藤は自分に撃ち込まれて来る弾丸の痛みを感じながら思う。
自分はこれまでとてつもない量の努力をしてきたつもりだ。
能力無しの近接戦闘なら同学年に自分と並ぶものはいない。
能力も攻撃系じゃないが、うまく使っているつもりだった。
だが、勝てなかった。
全力で勝ちに行っても勝てない。
それも圧倒的技術力と実力差を見せられた上で完敗だ。
どうやら自分は負けたらしい・・・
加藤は薄れゆく意識の中、敗北の悔しさよりも大きい、憧れを抱いた。
(これが能力を極めた人か・・・)
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