しぇあはうす!

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黎奈編

【黎奈編】#1 健康第一!

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「痛てて・・・」
 翌日、自分の部屋のベッドの上で目覚めた僕は、まだ痛む後頭部を手で押さえながら階段を下りる。
 恐らく僕が気を失った後、陽向が運んでくれたんだろうが、1階の風呂場から2階の僕の部屋に行くためには当然階段を登る必要がある。つまり、陽向は僕を担いだまま階段を登ったという事になる。
 かなり申し訳無さを感じつつ、階段を下りた僕はリビングのドアを開ける。
「おはよう」
 リビングに入ると、テーブルでは黎奈と結希が朝ごはんを食べており、ここにいない陽向と琉輝は恐らくまだ寝ているのだろう。
 リビングの時計を見ると、針が8時を指しており、僕は5時間ほど寝ていた(気絶していた)という事が分かる。
「あ、お兄ちゃん!おはようございます!」
「・・・おはよ」
 朝ごはんを食べていた結希と琉輝は、僕に気が付くと、こっちを向いてそう挨拶を返してくる。
「今日は焼き魚と卵焼きと、味噌汁ですよ!あ!あと近所の吉永お婆ちゃんに貰った漬け物もありますよ!」
 黎奈の隣に座ろうとしている僕に、テーブルの正面から結希が笑顔で今日の朝ごはんのメニューを教えてくれる。
 この家では基本的に料理は結希が作っている。僕と黎奈は料理が出来ない訳では無いが、結希の作る飯が一番美味い為、いつの間にか結希がこのシェアハウスの料理係になっていた。
 まあ、その分他の家事とかは他のみんなで分担してやったりしている訳なのだが。
「陽向は?」
「まだ起きてないみたいですね~」
 やはり陽向はまだ起きてきてないようだ。まあ、3時過ぎまで起きていたらそりゃ起きれないか。
 僕はショートスリーパー気質だが、陽向はロングスリーパー気質らしいので、同じくらいの睡眠時間でも起きる時間が違うようだ。
 琉輝が居ないのはいつも通りとしても、陽向が居ないのは少し違和感があるな。
 それにしても陽向はなぜあんな時間にシャワーなんて浴びていたのだろう?夜中まで一人で何をしていたのだろうか?
 と、僕はそんな事を考えながら結希の作った味噌汁を飲む。
「うまい・・・」
 未だに痛む僕の後頭部に、結希の愛情の籠もった最高に美味い味噌汁が染みていくのだった。

「・・・入っていいか?」
 その日の夜10時ごろ、僕は琉輝の部屋をノックする。
「いいよ」
 5秒ほどの間をおいて、ドア越しにそんな声が聞こえて来たため、僕はドアを開いて琉輝の部屋の中に入る。
 いつものこの時間なら琉輝はまだ配信をしているのだが、今日はいつもより早く配信を終えたため、僕もいつもより早く琉輝の部屋に来た。
「今日は終わるの早かったな」
「配信見てたの?」
「ああ」
 琉輝の配信は流石そこそこ伸びているだけあって声も良いし、話し方も上手いため、普通に見ていて楽しい。ただ、トークのネタは僕たち・・・主に結希から聞いた話を、さも自分が体験した事かのように話しているのだが。
「なあ、散歩しに行かないか?」
 いつも僕が琉輝の編集を手伝うときに座っているイスに座って、僕は琉輝に対してそんな提案をする。
「え、今から?」
 パソコンに向かって作業をしていた琉輝は、こちらを向いて少し驚いた様な表情をする。
「めんどくさい・・・」
「そんな事いうなって。な?行こうぜ、散歩!」
 机に倒れ伏してそんな事を言う琉輝を、僕は強引に散歩に誘う。
「仕方ない・・・ちょっとだけだよ」
「よし、今から行こう!すぐ行こう!」
 そんな僕のダルすぎる誘いに根負けしたように、琉輝はその誘いを承諾する。

 この辺は住宅街になっていて、街とは少し離れているため、夜は灯りがその辺の街灯ぐらいしかない。それだけだと危ないから僕はライトを持っている。
「夜風が気持ちいな!」
「まあ、そだね」
 琉輝と共に夜の住宅街を歩きながら、僕はそんな感想を口にする。
 今は夏休み真っ只中で蒸し暑すぎて死にそうになるが、今日の夜は珍しく涼しくて快適だ。まあ、それが今日琉輝を散歩に誘った理由なのだが。暑い日よりは涼しい日の方が良いだろうからな。
「散歩も意外と悪くないもんだろ?」
 僕は、隣を歩いている琉輝にそんな質問をする。
 それを聞いた琉輝は少し悩んでかみ、その後首を小さく縦に振る。
「少しは運動もした方がいい。部屋でパソコンばっかしてたら不健康な体になるからな。」
「それはそうだね」
「たまにはこうやって散歩してみても良いんじゃないか?僕で良かったら何時でも付き合うけど」
 僕も散歩したい気持ちがあるし、散歩するとしたらこの時間帯は琉輝一人では危ないからな。
「駿君も一緒に歩いてくれるの?」
「ああ、もちろん」
 琉輝が散歩して体を動かしてくれるだけで僕は嬉しい。
 琉輝は一緒の時間に食べている訳では無いが、結希の作ったご飯は全て残さず食べているため、食生活に関してはあまり問題はない。あとは運動量の少なさが問題だったが、散歩してくれるようになれば、それも解決する。
「じゃあ、たまに散歩するようにするよ。駿君も一緒に、ね?」
 これで琉輝はかなり健康に近づいたのではないのだろうか?
 まあ、何はともあれ琉輝が運動し出すというのは嬉しいことである。
 なんてったって"家族"にはなるべく健康でいて欲しいからな!

「・・・・・」
「・・・・・」
 翌日の夕方、リビングのテーブルで、僕は正面に座っている黎奈お睨み合っていた。
 現在リビングには僕と黎奈以外はおらず、2人きりだ。
「・・・・・」
 黎奈はこちら側に手を伸ばして、僕の持っていた"それ"を抜き取る。
「・・・・・」
「・・・っ!!」
「・・・また私の勝ちだね」
 黎奈は僕から抜き取った"トランプ"を見て、そう勝利宣言をする。
 僕と黎奈はトランプでババ抜きをしていたのだが、何故か毎回最後の駆け引きで負けてしまうのだ。
「シュン君弱すぎ・・・」
「クッ・・・!どうして勝てないんだ!?」
 ここまで12連敗、黎奈が思わずそう呟いてしまうほどに僕はババ抜きが弱かった。
「やっぱ顔に出てるのかな?」
「・・・そうだと思う」
 なるほど顔に出ていてはババ抜きで勝ち目が無いな。
 僕はそう自分の中で結論付けて、内心何度も自分の首を縦に振る。
「で、お願いなんだけど・・・」
「・・・そうだったな」
 元々僕たちは、"勝った方が負けた方のお願いを聞く" というルールでババ抜きをしていたんだった。まあ、僕が「もう一回!」を繰り返し続けた結果の12連敗な訳なのだが。
「明日一緒に、買い物に付いてきてくれない・・・?」
 「・・・え」
 という僕の想像とは大きく離れたお願いに、僕は思わずそんな言葉を漏らしてしまう。
「・・・嫌だった?」
「いやいや!そんな事は全然無いし、なんなら嬉しいくらいだけど・・・」
「・・・だけど?」
「なんかもっとこう・・・陽向にイタズラして来いだとか、今晩の飯を作れだとかそういう感じだと思ってたからさ!」
 少し落ち込んだような黎奈はの声を聞いた瞬間、僕は凄い勢いで弁解をし出す。
「とにかく黎奈と買い物に行くのは全然嫌じゃないと言うわけで・・・」
「・・・うん、そっか♪」
 若干・・・というかかなりテンパりつつも、頑張って弁解した甲斐があり、黎奈は嬉しそうな声色でそう呟くのだった。
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