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黎奈編

【黎奈編】#2 実質デート

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 翌日の朝、目を覚ました僕は、自分のから階段を降りてリビングのドアを開ける。
「おはよう」
「・・・おはよ」
 テーブルでは陽向が朝ごはんを食べており、この時間には珍しく結希と黎奈がリビングに居ない。
「2人は?」
「結希は友達と遊びに、黎奈はショッピングモールに行くって言ってたわよ」
「そうか」
 黎奈が行ったというショッピングモールは、多分・・・というか絶対、今日僕と買い物に行く予定の場所だ。
 現在時刻は9時、予定では10時からなため、黎奈のやつかなり早くに出たな。
 そんな事を考えつつ、僕はイスに座って、結希が作っておいてくれたのであろう朝食を食べる。
「・・・・・」
「・・・なによ」
 陽向とは昨日の3時頃から全く喋ってないため、2人きりで対面するとなるとかなり気まずい。
「いや、昨日あんな事があったからな・・・何と言うか、すまん」
「はぁ・・・もういいわよ、今回だけは特別に許してあげる。これでこの話はお終いにしましょう」
「ああ、ありがとな」
「その代わり・・・忘れなさいよ」
「あ、ああ・・・」
 僅かに頬を赤らめつつも許してくれた陽向に、僕は感謝する。
 忘れられるかは分からないけどな。

「行ってきま~す」
「はいはい」
 午前9時半、黎奈のお願いで一緒に買い物に行くために僕は、陽向に見送られて家を出る。
「暑いな・・・」
 一昨日、陽向のパシリで昼間に買い物に行ったっきり、この時間帯に外出する事が無かったため、夏の暑さを思い出して思わずそう呟く。
 僕は白いTシャツに青い半ズボンという服装で、極力暑さを軽減できるような服装にしているが、その努力を嘲笑うかのように太陽の光は僕を照らしている。

「よう黎奈、待っ・・・てたよな」
「ん、今来たところ・・・」
 待ち合わせ時間である10時の5分前に、僕は待ち合わせ場所のショッピングモール前に到着すると、そこには恐らくかなりの時間待っていたであろう黎奈がポツンと立っていた。
「そ、そうか。で?どこに行くんだ?」
「・・・とりあえず、私に付いてきて」
「お、おう」
 黎奈はそう言うと、身を翻してショッピングモール内に向けてスタスタと歩いていくき、僕も黎奈に付いてショッピングモール内に入っていく。

「・・・服買う」
「分かった」
 建物の中に入ってすぐにあった服屋で、黎奈が服を買うことにしたらしく、店内に入っていく。
「この服・・・どう?」 
「かわいいと思うよ」
「じゃあこれは?」
「いいんじゃないか?」
「これは?」
「似合ってるよ」
「・・・それしか言ってなくない?」
 黎奈が次々と服を試着していき、その度に僕は反応を返していたのだが、どうやら黎奈の求めていた反応とか違ったようだ。
「じゃあどう反応したらいいんすかね・・・」
 本気で訳の分からない僕を、黎奈は半眼でじ~っと見てくる。
「・・・12点」
「何の点数だよ!?」
 突然口を開いたかと思えば、そんな点数を言う黎奈に、僕はそんなツッコミを入れる。
 というか12点てかなり低くないか・・・?

「・・・取って」
「ん?ああ、これか?」
 あの後、黎奈は先程試着していた服を3着全て買い、店を出て歩いていたのだが、ゲームセンター前を通り過ぎようとしたところで黎奈が立ち止まってクレーンゲームの一つを指差す。
 よく見ると、そこにはかわいい猫のぬいぐるみがおり、どうやら黎奈はこれが欲しいようだ。
 そういえば黎奈はかわいい物が好きだったなと思い出した僕は身を乗り出してこう言う。
「よし!僕に任せろ!」
 僕はそう言って自分の財布から100円玉を取り出してクレーンゲームの機械に入れるのだった!

「はぁはぁ、黎奈・・・これ!」
 数分後、僕はクレーンゲームで取った猫のぬいぐるみを黎奈に手渡していた。
 ちなみにこれを取るまでに20回ほどの試行錯誤を重ねており、かなりの時間黎奈を待たせてしまった。
「・・・遅い」
「ごめんな、待たせちまって」
 ぬいぐるみを受け取りながらそう言ってくる黎奈に僕は頭をポリポリと掻きながら謝る。
 ん?なんで僕が謝ってるんだ?僕は頑張ってぬいぐるみを取ったのに。
 と、僕がそんな事を考えていると、黎奈が僕から若干頬を赤らめながら視線を逸らして呟く。
「・・・ありがと」
「おう、どういたしまして」
 その言葉で、僕の脳は思考をやめて「黎奈がお礼を言ってくれたし、珍しい黎奈の表情も見れたしまあいいか」という結論を出すのだった。

「次はどこに行くんだ?」
「・・・どこ行こ」
 その後もフードコートや雑貨屋、スイーツ店など様々な場所を2人で回り、時刻も午後2時を過ぎた頃、僕たちは次に行く場所に悩んでいた。
「他に行く場所とか決めてないのか?」
「・・・行きたかった場所は、もう全部行った」
「じゃあもう帰るか?」
「・・・それは嫌。」
「じゃあどうするんだ?」
 僕たちが次に行く場所について話していると、突然後ろから肩をトントンと叩かれる。
「よぉ遠江、デート中か?」
「なんだお前か、ちなみに違うぞ?」
「嘘つけ!お前彼女いたのかよ!この裏切り者め!許せん!」
 と、まくしたてるようにそう叫んでいるこの男は崎野勝海、僕や陽向と同じ高校に通っており、僕のクラスメイトだ。
「落ち着け、周りからの視線が痛い・・・それにこいつは彼女じゃないって言ってるだろ!」
「・・・彼女、だよ?今デート中」
「やっぱり彼女なんじゃねぇか!」
「はぁ!?黎奈お前何言って・・・」
「・・・・・」
 突然、僕の彼女宣言しだす黎奈に僕は本気で困惑し、勝海にも勘違いされてもうめちゃくちゃだ。
「お嬢ちゃん、お名前は?」
「・・・黎奈」
 と、完全に不審者のように名前を聞く勝海に、黎奈は呆れた目で見ながら、自分の名前を言う。
「そうか、黎奈ちゃんかぁ。ねぇ、こんなやつより俺の彼女にならない?」
「いや」
「なぁ、お前いい加減キモいぞ?」
 いつも話し始めるまでに少し間を置く黎奈がノータイムで拒否するということは、よほど勝海の事を気持ち悪いと思ったのだろう。
 僕は勝海の肩に手を当ててその事実を伝えてやる。
「ちっくしょぉ・・・この裏切り者がぁ・・・覚えてろよぉぉぉ!」
 すると勝海はそう言い、僕に何かを手渡して涙を流しながら走り去って行ってしまった。
「・・・なんか、悪いな僕の知り合いが」
「・・・キモかった」
「そうか」
 まあ、あいつも悪気は無いんだろうな・・・そういう奴だ。
 だが素であのキモさなのもそれはそれでやばいが・・・
「そういえば、何だこれ?」
 僕は勝海に別れ際に手渡された物に視線を向ける。
「・・・チケット?」
「映画館のチケットみたいだな、ポップコーンの割引券か」 
 映画自体のチケットじゃなくポップコーンの割引券な辺り勝海らしいなと思いつつ、僕は黎奈にこんな提案をする。
「映画見て帰らないか?面白そうな映画がやってるのを思い出したんだ」
「・・・いいね、行こ」
「多分黎奈も楽しめるはずだから」
 黎奈もその提案に賛成してくれて、この時ばかりは勝海に感謝だなと思いつつ、僕たちは映画館方面へと歩き出すのだった。

「面白かったな」
「・・・そだね、面白かった」
 映画を見終わった僕と黎奈は、映画館を出て感想を話していく。
 ちなみに僕たちが見たのは海外のコメディ映画だ。
「笑えたし、最後は感動もしたよな」
「・・・最初のあれが繋がって来るとは思わなかった」 
「伏線が凄かったよな」
 まあ、何はともあれ黎奈も楽しんでくれたようで良かった。
「んん~!もう6時前か、そろそろ帰らないと結希に怒られるな」 
 僕は近くにあった時計を見て、背伸びをしながらそう言う。
「・・・帰ろうか」
「そうだな」
 黎奈は少し名残惜しそうにしていたが、流石に帰らないと行けないと思ったのだろう。
「今日は楽しかったよ、ありがとな」
「・・・私も、楽しかった」
「それはよかったよ」
 こうして、罰ゲームから始まった僕たちの買い物は終わりを迎えるのだった。
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