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黎奈編
【黎奈編】#3 王様ゲーム
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「・・・・・」
___僕は目を瞑ってただただ心を無にしていた。
「あんた、いいわねそれ。面白いわよw」
「お兄ちゃん、可愛いです!」
「これは最高だね」
「・・・・・」
周りからは陽向、結希、琉輝が口々にそんな事を言ってきている。
黎奈は何も言わずに黙って見ているようだが・・・
『カシャ』
すると突然正面からカメラのシャッター音が聞こえてくる。
おい黎奈、今カメラで僕のことを取っただろ。僕の真正面にお前が座ってるのはわかってるんだぞ?
全く、黙って見てくれていると思ったらとんでもないやつだ・・・その写真は後で絶対に削除しておけよ?
(何でこんなことになっちまったんだ・・・)
周りがワイワイ言って賑やかな中、僕は悲壮感を漂わせつつ、数十分前のことを思い出すのだった。
「王様ゲームをしましょう!」
それは、結希のこの一言から全てが始まった。
「王様ゲーム?私は別に良いけど」
「僕も同じく」
僕と陽向がリビングのテレビで格ゲーで対戦をしていると、突然結希がそんな事を提案してきた。
「別に良いけど、なんで王様ゲームなんてしようと思ったんだ??」
疑問に思った僕がそう聞くと、結希は得意げに言う。
「それは、さっき王様ゲームをやってる動画を見て楽しそうだったからです!」
「おう、そうか。で、黎奈も参加するか?」
僕は「なるほどな」と納得しつつ、リビングのテーブルで本を読んでいる黎奈に視線を向けて声を掛ける。
「・・・いいよ」
黎奈は読んでいた本から視線を外し、こちらを向いてから首を縦に振りながらそう言う。
「やったー!これで4人ですね!あとは琉輝ちゃんにも声をかけて来ましょう!」
「あいつ、来るかなぁ?」
現在時刻は午後1時、一応起きてはいるだろうが、配信の準備とかがあった場合、参加するかどうかは怪しい。
「じゃあ僕が聞いてくるよ」
「そうですか、ありがとうございます!」
「じゃ、そう言う事で陽向。これで決めさせてもらうぞ!」
僕はそう言いながらコントローラーを全力で操作して・・・負けた。
「なんでだよ!?途中までいい感じだったのに!」
「そりゃ喋りながらプレイしてよそ見もしてたら勝てないわよね」
そう叫びながらリビングを出ていく僕を見て、陽向が呆れたようにため息を付きながらそう言ってくる。
おのれ陽向、この雪辱いずれ晴らしてくれるわ。いつか、いつかは勝ってみせるぞ・・・
なお、戦績___0勝423敗・・・
「面白そうじゃん、いいよ」
「お、参加してくれるのか!珍しいな」
「まあね、今日の配信の準備は終わってるし、ちょうど退屈してた所だから」
僕が琉輝の部屋に入って、結希がそんな提案をしてきた事を伝えると、琉輝はそれに即答で乗ってくれた。
「じゃあ、行くぞ」
「おっけ」
こうして、シェアハウスの住人全員による王様ゲームが幕を開けるのだった!!
「結希~!琉輝も参加するってよ!」
「よろしく」
リビングに入った僕は、結希に琉輝も王様ゲームに参加するという旨を伝えた。
「やったー!嬉しいです!さあさあみんな楽しんでやりましょう!」
それを聞いた結希は喜びながら、割り箸が入った箱をガラガラと音を出しながら振っている。
どうやら僕が琉輝を誘いに行っている間に用意したようだ。
「にしても、うまく割れてるな。全く見分けがつかないんだけど」
「駿もそう思うわよね?結希って割り箸を割るのがめちゃめちゃ上手いのよ」
僕がテーブルの椅子に座りながらそう呟く。どうやら隣に座っている陽向も同じように思っているようだ。
「それじゃ、やっていきますよ!」
琉輝の掛け声で、みんながそれぞれ1本ずつ割り箸を持つ。
ちなみにだがみんなの並びは、四角い長方形のテーブルに、僕から見て右隣が陽向、正面右から順番に琉輝、黎奈、結希が座っているという感じだ。僕の正面には黎奈、陽向の正面には琉輝が座っており、結希の正面・・・つまり僕の左隣は、椅子はあるが誰も座っていない。
「せ~の!」
「「「「王様だ~れだ?」」」」
結希の合図で全員が手に持っていた割り箸を引く。
僕は引いた割り箸の先を確認してみるが、『3』と書かれてあり、王様を引くことは出来なかった。
「私は王様じゃなかったわ」
「僕もだ」
「・・・・・」
「私でも無いです」
「あ、ボクだ」
どうやら王様の割り箸は琉輝の手に渡ったようだ。琉輝は一体どんな命令をしてくるのか、あまり予想が出来ないがなるべく軽いのを頼む。
「琉輝ちゃん、何を命令するんですか?」
「えと、じゃあ『4番が黒歴史を1つ話す』で」
おっと、僕ではなかったが初手から割とキツイのが来たな。僕も黒歴史はいくつがあるが、思い出すだけでも叫び出したくなるようなものばかりだ。
「・・・私だ」
どうやら4番は黎奈だったらしい。黎奈にやばい黒歴史があるとは思えないが、一体どんなエピソードが聞けるのか普通に気になる。
「どんな恥ずかしい話があるんでしょうね~?楽しみだわ」
「陽向、ノリノリだな」
「まあね」
どうやら陽向も僕と同じ気持ちのようだ。
「・・・シュン君とデートしてるのをシュン君のクラスメイトに見られたこと」
「・・・は?」
黎奈さん?ちょっとちょっと、それはなんか違くないですか?僕はデートのつもりなんてなかったし、そもそもそれが黒歴史ってどういうことやねん!
「2人共付き合ってたんですか?」
「え、まじ?」
「・・・付き合ってる」
その瞬間、陽向がこちらに鋭い視線を向けてきた。それはそれはもう今にも殴りかかってきそうな程に。
「ちょっと待て陽向、誤解だ!話せば分かる!」
「ふ~ん、で?最期に言い残すことは?」
「幸せな人生でした・・・て、まだ死ねるか!」
その後、頭にたんこぶが2つほどできてしまったが陽向の誤解を解くことが出来た・・・あいつリアルの格ゲーも強えーじゃねぇかよ。
「じゃ、じゃあ気を取り直して行きましょう!せ~の!」
「王様だ~れだ?・・・って、僕以外誰も言わないんかい!」
「悲しいなぁ」
琉輝よ、頼むからそう思ってるなら言ってくれ。
僕の番号は『5』、またしても王様を逃してしまった。
「ふふん、次はわたしね!」
次なる王様は陽向か。一体どんな命令をしてくるのか・・・僕に来るのなら出来れば軽いのでお願いしまっせ。
「何にしましょうかね?」
「なんでこっちを見るんだよ」
「なんとなくよ」
訳の分からないやつである。
「じゃあ、1番と2番がハグをするってことにしましょう」
「あ、私1番ですね」
「ボク2番だ」
よかった、またしてもなんとか回避することができた。
それに、これは結希と琉輝がハグをするということか・・・つまり百合ってことだな、素晴らしい。
「そ、それじゃあ」
「よろしくお願いします」
結希と琉輝は席を立って広いスペースに移動して向かい合い、恥じらってぎこちないながらも徐々に距離を詰めて抱き合う。
「・・・結希って小さいね」
「そ、そんなこと言わないでください///」
「でもかわいいよ」
「あ、ありがとうございます?」
いやぁ何と言うか、女の子の同士って素晴らしいね。もうこのぎこちない感じとか最高だよね。
「・・・いいな」
「駿、あんた・・・かなり気持ち悪いわよ」
「まじ?」
「まじよ」
理不尽である。
「せ~の!」
「王様だ~れだ!ってまた僕だけかよ!」
やはり悲しいものはあるな。とにかく、僕の番号は『1』と、王様ではない。僕も王様やりたいのに、まあいいけど。
「私が王様ですね」
王様は結希か、なんとなくやばい命令はしてきそうにないが、それでも警戒はしてしまうな。
「そうですね、じゃあ1番と4番が『愛してるゲーム』をしましょうか!」
前言撤回、普通にやばい命令してきたわ。しかも今回に限って僕の番号が来たし。
「うげっ、私4番なんだけど」
「相手はお前か」
「あんた1番なの?」
「ああ」
僕たちは隣同士向かい合う。
愛してるゲームとは、2人が順番に「愛してる」と言っていき、先に照れたほうが負けというルールのゲームで、主に合コンとかで行われているゲームなイメージがある。
「じゃあ僕から言うぞ?」
「どうぞ?」
これって、面と向かって言うとなるとかなり恥ずかしいな。だが、負けるつもりは無い。
「陽向、愛してるよ」
「そう、私も愛してるわよ」
「僕の方が君を愛してるよ」
「わ、私の方が貴方の事を愛してるわよ!」
「いや、僕の方が愛してるね」
「私のほうが愛してるわよ」
「愛してる」
「愛してる!」
「愛してるよ」
「愛してるわよ!」
「・・・なんか、バカップルみたいだね」
「「・・・!」」
僕たちの愛してるゲームを見て、琉輝が呟いたその言葉を聞いた僕と陽向は互いに顔を背けてしまう。
「あ!2人共照れましたね!」
「・・・浮気?」
黎奈さん?ヤンデレみたいになってますけど、大丈夫ですかね?
「対ありでした~」
「・・・バカ」
陽向に悪口を言われてしまった。
え、普通に悲しい。
「せ~の」
「「「王様だ~れだ?」」」
「いや今回は言うんかい!」
今回は僕もセリフを言わないでやろうと思って黙っていたのだが、逆に他の3人はセリフを言った。
どういう事だよと思いつつ、番号を確認すると『2』と書かれており、またしても王様にはなれなかった。
「・・・あ!」
そこで僕はうっかり手を滑らせてしまい、割り箸をテーブルの上に落としてしまった。
「2番だ」
「2番ですね」
「2番ね」
「・・・2番」
終わった・・・番号を見られた。
「・・・わたしが王様」
黎奈が王様か・・・正直これはもう死を覚悟するしかないだろう。
「もうなんでも受け入れてやるさ・・・覚悟があれば全てを受け入れられる、覚悟があるから幸福なんだぁ!」
「・・・じゃあ、2番。陽向の制服を着て」
前言撤回、終わった。人生の終わりではなく、人として終わりだよ。
「お兄ちゃん、ふぁいとです!」
「あははは!」
「いや待てお前ら!陽向が服を貸してくれるとは限らないだろ!?」
「特別に、今回だけ貸してあげるわよ」
「その特別扱いはいらないかなぁ!」
これはね、もう絶望だよ。
___そして現在に至ると。
「びっくりするほど似合ってないね」
「お化粧もしてあげましょうよ!」
「・・・シュン君、可愛いよ?」
「あんた最高よ」
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!
これはもう黒歴史確定だわ!僕の数多くある黒歴史の中でも、かなり上位に入ってくるレベルの黒歴史だよ。
「2...3...5...7...11...13...17...19...」
僕は素数を数えながら「そういえば、僕だけ王様になってないな」などということを考えつつ、意識をフェードアウトさせて行くのだった___
___僕は目を瞑ってただただ心を無にしていた。
「あんた、いいわねそれ。面白いわよw」
「お兄ちゃん、可愛いです!」
「これは最高だね」
「・・・・・」
周りからは陽向、結希、琉輝が口々にそんな事を言ってきている。
黎奈は何も言わずに黙って見ているようだが・・・
『カシャ』
すると突然正面からカメラのシャッター音が聞こえてくる。
おい黎奈、今カメラで僕のことを取っただろ。僕の真正面にお前が座ってるのはわかってるんだぞ?
全く、黙って見てくれていると思ったらとんでもないやつだ・・・その写真は後で絶対に削除しておけよ?
(何でこんなことになっちまったんだ・・・)
周りがワイワイ言って賑やかな中、僕は悲壮感を漂わせつつ、数十分前のことを思い出すのだった。
「王様ゲームをしましょう!」
それは、結希のこの一言から全てが始まった。
「王様ゲーム?私は別に良いけど」
「僕も同じく」
僕と陽向がリビングのテレビで格ゲーで対戦をしていると、突然結希がそんな事を提案してきた。
「別に良いけど、なんで王様ゲームなんてしようと思ったんだ??」
疑問に思った僕がそう聞くと、結希は得意げに言う。
「それは、さっき王様ゲームをやってる動画を見て楽しそうだったからです!」
「おう、そうか。で、黎奈も参加するか?」
僕は「なるほどな」と納得しつつ、リビングのテーブルで本を読んでいる黎奈に視線を向けて声を掛ける。
「・・・いいよ」
黎奈は読んでいた本から視線を外し、こちらを向いてから首を縦に振りながらそう言う。
「やったー!これで4人ですね!あとは琉輝ちゃんにも声をかけて来ましょう!」
「あいつ、来るかなぁ?」
現在時刻は午後1時、一応起きてはいるだろうが、配信の準備とかがあった場合、参加するかどうかは怪しい。
「じゃあ僕が聞いてくるよ」
「そうですか、ありがとうございます!」
「じゃ、そう言う事で陽向。これで決めさせてもらうぞ!」
僕はそう言いながらコントローラーを全力で操作して・・・負けた。
「なんでだよ!?途中までいい感じだったのに!」
「そりゃ喋りながらプレイしてよそ見もしてたら勝てないわよね」
そう叫びながらリビングを出ていく僕を見て、陽向が呆れたようにため息を付きながらそう言ってくる。
おのれ陽向、この雪辱いずれ晴らしてくれるわ。いつか、いつかは勝ってみせるぞ・・・
なお、戦績___0勝423敗・・・
「面白そうじゃん、いいよ」
「お、参加してくれるのか!珍しいな」
「まあね、今日の配信の準備は終わってるし、ちょうど退屈してた所だから」
僕が琉輝の部屋に入って、結希がそんな提案をしてきた事を伝えると、琉輝はそれに即答で乗ってくれた。
「じゃあ、行くぞ」
「おっけ」
こうして、シェアハウスの住人全員による王様ゲームが幕を開けるのだった!!
「結希~!琉輝も参加するってよ!」
「よろしく」
リビングに入った僕は、結希に琉輝も王様ゲームに参加するという旨を伝えた。
「やったー!嬉しいです!さあさあみんな楽しんでやりましょう!」
それを聞いた結希は喜びながら、割り箸が入った箱をガラガラと音を出しながら振っている。
どうやら僕が琉輝を誘いに行っている間に用意したようだ。
「にしても、うまく割れてるな。全く見分けがつかないんだけど」
「駿もそう思うわよね?結希って割り箸を割るのがめちゃめちゃ上手いのよ」
僕がテーブルの椅子に座りながらそう呟く。どうやら隣に座っている陽向も同じように思っているようだ。
「それじゃ、やっていきますよ!」
琉輝の掛け声で、みんながそれぞれ1本ずつ割り箸を持つ。
ちなみにだがみんなの並びは、四角い長方形のテーブルに、僕から見て右隣が陽向、正面右から順番に琉輝、黎奈、結希が座っているという感じだ。僕の正面には黎奈、陽向の正面には琉輝が座っており、結希の正面・・・つまり僕の左隣は、椅子はあるが誰も座っていない。
「せ~の!」
「「「「王様だ~れだ?」」」」
結希の合図で全員が手に持っていた割り箸を引く。
僕は引いた割り箸の先を確認してみるが、『3』と書かれてあり、王様を引くことは出来なかった。
「私は王様じゃなかったわ」
「僕もだ」
「・・・・・」
「私でも無いです」
「あ、ボクだ」
どうやら王様の割り箸は琉輝の手に渡ったようだ。琉輝は一体どんな命令をしてくるのか、あまり予想が出来ないがなるべく軽いのを頼む。
「琉輝ちゃん、何を命令するんですか?」
「えと、じゃあ『4番が黒歴史を1つ話す』で」
おっと、僕ではなかったが初手から割とキツイのが来たな。僕も黒歴史はいくつがあるが、思い出すだけでも叫び出したくなるようなものばかりだ。
「・・・私だ」
どうやら4番は黎奈だったらしい。黎奈にやばい黒歴史があるとは思えないが、一体どんなエピソードが聞けるのか普通に気になる。
「どんな恥ずかしい話があるんでしょうね~?楽しみだわ」
「陽向、ノリノリだな」
「まあね」
どうやら陽向も僕と同じ気持ちのようだ。
「・・・シュン君とデートしてるのをシュン君のクラスメイトに見られたこと」
「・・・は?」
黎奈さん?ちょっとちょっと、それはなんか違くないですか?僕はデートのつもりなんてなかったし、そもそもそれが黒歴史ってどういうことやねん!
「2人共付き合ってたんですか?」
「え、まじ?」
「・・・付き合ってる」
その瞬間、陽向がこちらに鋭い視線を向けてきた。それはそれはもう今にも殴りかかってきそうな程に。
「ちょっと待て陽向、誤解だ!話せば分かる!」
「ふ~ん、で?最期に言い残すことは?」
「幸せな人生でした・・・て、まだ死ねるか!」
その後、頭にたんこぶが2つほどできてしまったが陽向の誤解を解くことが出来た・・・あいつリアルの格ゲーも強えーじゃねぇかよ。
「じゃ、じゃあ気を取り直して行きましょう!せ~の!」
「王様だ~れだ?・・・って、僕以外誰も言わないんかい!」
「悲しいなぁ」
琉輝よ、頼むからそう思ってるなら言ってくれ。
僕の番号は『5』、またしても王様を逃してしまった。
「ふふん、次はわたしね!」
次なる王様は陽向か。一体どんな命令をしてくるのか・・・僕に来るのなら出来れば軽いのでお願いしまっせ。
「何にしましょうかね?」
「なんでこっちを見るんだよ」
「なんとなくよ」
訳の分からないやつである。
「じゃあ、1番と2番がハグをするってことにしましょう」
「あ、私1番ですね」
「ボク2番だ」
よかった、またしてもなんとか回避することができた。
それに、これは結希と琉輝がハグをするということか・・・つまり百合ってことだな、素晴らしい。
「そ、それじゃあ」
「よろしくお願いします」
結希と琉輝は席を立って広いスペースに移動して向かい合い、恥じらってぎこちないながらも徐々に距離を詰めて抱き合う。
「・・・結希って小さいね」
「そ、そんなこと言わないでください///」
「でもかわいいよ」
「あ、ありがとうございます?」
いやぁ何と言うか、女の子の同士って素晴らしいね。もうこのぎこちない感じとか最高だよね。
「・・・いいな」
「駿、あんた・・・かなり気持ち悪いわよ」
「まじ?」
「まじよ」
理不尽である。
「せ~の!」
「王様だ~れだ!ってまた僕だけかよ!」
やはり悲しいものはあるな。とにかく、僕の番号は『1』と、王様ではない。僕も王様やりたいのに、まあいいけど。
「私が王様ですね」
王様は結希か、なんとなくやばい命令はしてきそうにないが、それでも警戒はしてしまうな。
「そうですね、じゃあ1番と4番が『愛してるゲーム』をしましょうか!」
前言撤回、普通にやばい命令してきたわ。しかも今回に限って僕の番号が来たし。
「うげっ、私4番なんだけど」
「相手はお前か」
「あんた1番なの?」
「ああ」
僕たちは隣同士向かい合う。
愛してるゲームとは、2人が順番に「愛してる」と言っていき、先に照れたほうが負けというルールのゲームで、主に合コンとかで行われているゲームなイメージがある。
「じゃあ僕から言うぞ?」
「どうぞ?」
これって、面と向かって言うとなるとかなり恥ずかしいな。だが、負けるつもりは無い。
「陽向、愛してるよ」
「そう、私も愛してるわよ」
「僕の方が君を愛してるよ」
「わ、私の方が貴方の事を愛してるわよ!」
「いや、僕の方が愛してるね」
「私のほうが愛してるわよ」
「愛してる」
「愛してる!」
「愛してるよ」
「愛してるわよ!」
「・・・なんか、バカップルみたいだね」
「「・・・!」」
僕たちの愛してるゲームを見て、琉輝が呟いたその言葉を聞いた僕と陽向は互いに顔を背けてしまう。
「あ!2人共照れましたね!」
「・・・浮気?」
黎奈さん?ヤンデレみたいになってますけど、大丈夫ですかね?
「対ありでした~」
「・・・バカ」
陽向に悪口を言われてしまった。
え、普通に悲しい。
「せ~の」
「「「王様だ~れだ?」」」
「いや今回は言うんかい!」
今回は僕もセリフを言わないでやろうと思って黙っていたのだが、逆に他の3人はセリフを言った。
どういう事だよと思いつつ、番号を確認すると『2』と書かれており、またしても王様にはなれなかった。
「・・・あ!」
そこで僕はうっかり手を滑らせてしまい、割り箸をテーブルの上に落としてしまった。
「2番だ」
「2番ですね」
「2番ね」
「・・・2番」
終わった・・・番号を見られた。
「・・・わたしが王様」
黎奈が王様か・・・正直これはもう死を覚悟するしかないだろう。
「もうなんでも受け入れてやるさ・・・覚悟があれば全てを受け入れられる、覚悟があるから幸福なんだぁ!」
「・・・じゃあ、2番。陽向の制服を着て」
前言撤回、終わった。人生の終わりではなく、人として終わりだよ。
「お兄ちゃん、ふぁいとです!」
「あははは!」
「いや待てお前ら!陽向が服を貸してくれるとは限らないだろ!?」
「特別に、今回だけ貸してあげるわよ」
「その特別扱いはいらないかなぁ!」
これはね、もう絶望だよ。
___そして現在に至ると。
「びっくりするほど似合ってないね」
「お化粧もしてあげましょうよ!」
「・・・シュン君、可愛いよ?」
「あんた最高よ」
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!
これはもう黒歴史確定だわ!僕の数多くある黒歴史の中でも、かなり上位に入ってくるレベルの黒歴史だよ。
「2...3...5...7...11...13...17...19...」
僕は素数を数えながら「そういえば、僕だけ王様になってないな」などということを考えつつ、意識をフェードアウトさせて行くのだった___
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