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黎奈編
【黎奈編】#5 命日
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結希と買い物から帰ってきた夜、僕たちはリビングでいつも通り夕食を食べていた。
ちなみに今日の夕食は生姜焼きに味噌汁、それと結希が近所のおばちゃんから貰った魚の煮付けだ。
改めて思うが、結希の作る料理は本当に美味しい。少なくとも、僕なんか比較対象にならないくらいには美味しい。
「あ、そういえば明日、僕と陽向はちょっと出かけるから」
結希の作った生姜焼きを食べて感動した僕は、そんな事を思い出したのでそう言っておく。
「・・・何しに行くの?」
「帰り道でも言ってましたけど、何か用事でもあるんですか?」
それを聞いた黎奈と結希はこっちを向いて、黎奈は不満そうに、結希は不思議そうな感じでそう聞いてくる。
「あ、特に大した用事じゃないんだが・・・」
「デートよ!」
陽向!?お前何急に何言ってんだ!?
僕の言葉に被せてくるようにそう言った陽向に、僕は困惑する。急にどうしたんだよ、僕らはそんな関係じゃ無いだろうに。
そもそもお前は用事が何か知ってるだろ。
「・・・シュン君・・・?」
「黎奈ちゃんとデートした次は陽向お姉ちゃんとデートですか」
ほら黎奈と結希の視線が痛い痛い。なんでわざわざ誤解される様な事を言うんだよ、後で誤解を解くのが面倒だろ。
「ね!シュン。久しぶりのデート楽しみね!」
陽向はこちらを向いて満面の笑みを浮かべてくる。ちょっと・・・というか圧が強いんだが?
「あーはいはい、そうだねー」
その圧に気圧された僕は、そう言うことしか出来ないのだった。
この後、黎奈と結希の誤解を解くのに1時間ちょい掛かった・・・
翌日、朝8時に家を出た僕たちはバス30分ほど乗り、そこから更に30分ほど山道を歩いていた。
「はぁ、はぁ・・・あっついわねぇ~!」
「まあ、確かにな」
現在時刻は9時過ぎだが、真夏で太陽が照っており、この時間帯でもかなり気温が高い。
「日頃運動してないからだぞ?たまには散歩にでも言ったらどうだ?」
「私は良いのよ!こんなに歩くのも年に一度だけなんだし」
「健康のためにも多少の運動はしといたほうがいいと思うけどな」
「・・・はぁ、あと、もうちょっと・・・」
そんな会話をしつつ、僕たちは山の階段を登っていく。にしてもここの階段長すぎなんだよな、普通に疲れるからここの管理人には、是非ともロープウェイを付けて頂きたい。
「はぁはぁ、到着・・・!」
「バテすぎだろ」
僕より一足早く階段を登り切った陽向は、そう高らかに宣言する。
「ここに来るのも1年ぶりだな」
「そうね、でもあんまり変わってないわね」
辺りを見渡してみると、視界中にお墓が建っているのが見える。
そう、見ての通りここは霊園だ。
「2年目か、ここに来るのも」
「そうね、もう2年目よ」
「時間が経つのは早いな」
「それもそうね」
僕たちはそんな事を話しながら目的の墓に向かって歩く。
「・・・っと、ここだな」
目的の墓まで辿り着いた僕たちは横に並んで墓の前で手を合わせる。
「来たよ、はるかさん」
「ったく、来てやったわよ!」
今日は、はるかさんの命日だ。
はるかさん、2年前に病気で死んだ僕の恩人。この世に絶望していた僕に唯一救いの手を差し伸べてくれた人。そして、なにより・・・あのシェアハウスの管理人だった人。
はるかさんは、親の居ない僕と陽向を拾ってくれて育ててくれた。元々あの家には、はるかさんと僕と陽向の3人で暮らしていたのだ。
「はるかさん、貴方には感謝しています。今年は結希っていうやつが新しく家に来ました、あいつも絶対に幸せにしてやります。」
「私も感謝してるわよ・・・ったく、死ぬのが早すぎるのよ!」
陽向の声は震えており、今にも泣き出してしまいそうだ。陽向だけじゃない、僕もここに来るたびに泣きそうになる。それほどまでに、僕たちにとってはるかさんという存在は大きかったのだ。
「・・・掃除、するか」
「そうね、お供物も持ってきたしね」
そうして僕たちは掃除に取り掛かるのだった___
「ふぅ・・・やっと終わったわ」
「かなり綺麗になったな」
「そりゃ私がかな~り頑張ったからね!」
たっぷり1時間掛けて墓の掃除を終えた僕と陽向は、持ってきていたタオルで汗を拭きながら水分補給をしていた。
「にしても、2年か。あんたもだいぶ変わったわよね」
「そうか?」
「そりゃそうよ、2年前のあんたと今のあんたじゃまるで別人よ」
「それは成長ってやつだな!」
「あら?『俺のレベルはもうカンストしている・・・!』んじゃ無かったっけ?」
「・・・それはやめてくれ、その時はまだ厨二病が完治してなかったんだ」
ほんとに、若気のいたりってやつだ。なんてったって、僕の黒歴史の殆どはその時期に作られたものだからな。
「・・・改めて思うけど、早いわね、時間が立つのは」
「・・・そうだな」
陽向は腕を組んでこちらに視線を向けながら感慨深そうに頷きながらそう言う。
「・・・だって、"あんたに振られてから、もう2年も経つのよ?"」
「たっだいま~!」
「ただいま」
その後、地獄の階段を降りた僕たちは、街でブラブラ歩きながら時間を潰して、夕方に家に帰ってきていた。
「おかえりなさい!」
僕たちが帰ってきたのに気づいた結希が、玄関まで来て出迎えてくれる。
「で、何してきたんですか?」
「街デートってやつよ」
「違うよ!?」
陽向の発言にそんなツッコミを入れつつ、僕はリビングのドアを開ける。
「ただいま、黎奈」
「・・・む、おかえり」
いつもの定位置で本を読んでいた黎奈は僕に気づくと、こちらを向いてそう言ってくれる。だが、その口調から少々怒っているようだ。
「ごめんって!な?今度また一緒に買い物行こ!」
「・・・うん」
よかった・・・どうやら機嫌を直してくれたみたいだ。
「しゅん?」
「・・・・・」
陽向?一体何に怒っていらっしゃるんだ?いや大体察しは付くけど・・・
「って~~~!」
またシバかれた、痛い。理不尽である。
ちなみに今日の夕食は生姜焼きに味噌汁、それと結希が近所のおばちゃんから貰った魚の煮付けだ。
改めて思うが、結希の作る料理は本当に美味しい。少なくとも、僕なんか比較対象にならないくらいには美味しい。
「あ、そういえば明日、僕と陽向はちょっと出かけるから」
結希の作った生姜焼きを食べて感動した僕は、そんな事を思い出したのでそう言っておく。
「・・・何しに行くの?」
「帰り道でも言ってましたけど、何か用事でもあるんですか?」
それを聞いた黎奈と結希はこっちを向いて、黎奈は不満そうに、結希は不思議そうな感じでそう聞いてくる。
「あ、特に大した用事じゃないんだが・・・」
「デートよ!」
陽向!?お前何急に何言ってんだ!?
僕の言葉に被せてくるようにそう言った陽向に、僕は困惑する。急にどうしたんだよ、僕らはそんな関係じゃ無いだろうに。
そもそもお前は用事が何か知ってるだろ。
「・・・シュン君・・・?」
「黎奈ちゃんとデートした次は陽向お姉ちゃんとデートですか」
ほら黎奈と結希の視線が痛い痛い。なんでわざわざ誤解される様な事を言うんだよ、後で誤解を解くのが面倒だろ。
「ね!シュン。久しぶりのデート楽しみね!」
陽向はこちらを向いて満面の笑みを浮かべてくる。ちょっと・・・というか圧が強いんだが?
「あーはいはい、そうだねー」
その圧に気圧された僕は、そう言うことしか出来ないのだった。
この後、黎奈と結希の誤解を解くのに1時間ちょい掛かった・・・
翌日、朝8時に家を出た僕たちはバス30分ほど乗り、そこから更に30分ほど山道を歩いていた。
「はぁ、はぁ・・・あっついわねぇ~!」
「まあ、確かにな」
現在時刻は9時過ぎだが、真夏で太陽が照っており、この時間帯でもかなり気温が高い。
「日頃運動してないからだぞ?たまには散歩にでも言ったらどうだ?」
「私は良いのよ!こんなに歩くのも年に一度だけなんだし」
「健康のためにも多少の運動はしといたほうがいいと思うけどな」
「・・・はぁ、あと、もうちょっと・・・」
そんな会話をしつつ、僕たちは山の階段を登っていく。にしてもここの階段長すぎなんだよな、普通に疲れるからここの管理人には、是非ともロープウェイを付けて頂きたい。
「はぁはぁ、到着・・・!」
「バテすぎだろ」
僕より一足早く階段を登り切った陽向は、そう高らかに宣言する。
「ここに来るのも1年ぶりだな」
「そうね、でもあんまり変わってないわね」
辺りを見渡してみると、視界中にお墓が建っているのが見える。
そう、見ての通りここは霊園だ。
「2年目か、ここに来るのも」
「そうね、もう2年目よ」
「時間が経つのは早いな」
「それもそうね」
僕たちはそんな事を話しながら目的の墓に向かって歩く。
「・・・っと、ここだな」
目的の墓まで辿り着いた僕たちは横に並んで墓の前で手を合わせる。
「来たよ、はるかさん」
「ったく、来てやったわよ!」
今日は、はるかさんの命日だ。
はるかさん、2年前に病気で死んだ僕の恩人。この世に絶望していた僕に唯一救いの手を差し伸べてくれた人。そして、なにより・・・あのシェアハウスの管理人だった人。
はるかさんは、親の居ない僕と陽向を拾ってくれて育ててくれた。元々あの家には、はるかさんと僕と陽向の3人で暮らしていたのだ。
「はるかさん、貴方には感謝しています。今年は結希っていうやつが新しく家に来ました、あいつも絶対に幸せにしてやります。」
「私も感謝してるわよ・・・ったく、死ぬのが早すぎるのよ!」
陽向の声は震えており、今にも泣き出してしまいそうだ。陽向だけじゃない、僕もここに来るたびに泣きそうになる。それほどまでに、僕たちにとってはるかさんという存在は大きかったのだ。
「・・・掃除、するか」
「そうね、お供物も持ってきたしね」
そうして僕たちは掃除に取り掛かるのだった___
「ふぅ・・・やっと終わったわ」
「かなり綺麗になったな」
「そりゃ私がかな~り頑張ったからね!」
たっぷり1時間掛けて墓の掃除を終えた僕と陽向は、持ってきていたタオルで汗を拭きながら水分補給をしていた。
「にしても、2年か。あんたもだいぶ変わったわよね」
「そうか?」
「そりゃそうよ、2年前のあんたと今のあんたじゃまるで別人よ」
「それは成長ってやつだな!」
「あら?『俺のレベルはもうカンストしている・・・!』んじゃ無かったっけ?」
「・・・それはやめてくれ、その時はまだ厨二病が完治してなかったんだ」
ほんとに、若気のいたりってやつだ。なんてったって、僕の黒歴史の殆どはその時期に作られたものだからな。
「・・・改めて思うけど、早いわね、時間が立つのは」
「・・・そうだな」
陽向は腕を組んでこちらに視線を向けながら感慨深そうに頷きながらそう言う。
「・・・だって、"あんたに振られてから、もう2年も経つのよ?"」
「たっだいま~!」
「ただいま」
その後、地獄の階段を降りた僕たちは、街でブラブラ歩きながら時間を潰して、夕方に家に帰ってきていた。
「おかえりなさい!」
僕たちが帰ってきたのに気づいた結希が、玄関まで来て出迎えてくれる。
「で、何してきたんですか?」
「街デートってやつよ」
「違うよ!?」
陽向の発言にそんなツッコミを入れつつ、僕はリビングのドアを開ける。
「ただいま、黎奈」
「・・・む、おかえり」
いつもの定位置で本を読んでいた黎奈は僕に気づくと、こちらを向いてそう言ってくれる。だが、その口調から少々怒っているようだ。
「ごめんって!な?今度また一緒に買い物行こ!」
「・・・うん」
よかった・・・どうやら機嫌を直してくれたみたいだ。
「しゅん?」
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陽向?一体何に怒っていらっしゃるんだ?いや大体察しは付くけど・・・
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