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琉輝編
【琉輝編】#1 バイト
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「・・・・・」
「・・・ねぇ」
黎奈とデートに行って告白された日の夜、僕は陽向に詰め寄られていた。ちなみに黎奈と結希はもう寝ており、琉輝は恐らく配信をしているため、今リビングには僕と陽向の2人きりだ。
「ん、何だ?」
「はぁ・・・私が何を聞きたいか、分かってるんでしょ?」
陽向は僕の目を見ながら、そう言ってため息を付く。
「・・・黎奈に告られたんでしょ?」
「まあ、そうだな」
そこまでバレているのなら、もうしらばっくれる理由も無いなと思い、僕は白状する。
「なんで分かった?」
「そりゃ、あんたらがデートに行って帰ってきたら、黎奈の様子がいつもと違うかったからよ」
「はぁ、お前もよく見てるな」
こいつはだらし無くてぶっきらぼうな所もあるが、シェアハウスの皆の事をよく見て気にかけている。それで今日の黎奈の様子が違う事にも気づいたのだろう。
「で、保留にしたの?振ったの?」
僕と黎奈が付き合う事になったというのは想定してないのか。まあ事実だし、そうで無ければ黎奈が落ち込んでいるはずがないという推測なのだろう。
「・・・振ったよ」
「まあ、そうでしょうね。"私のことを振っておいて"他の女と付き合うなんて、神が許しても私が許さないわよ」
「それは悪かったって・・・」
もう2年前の事なのだが、その事を引き合いに出されると何も言い返せない。
「黎奈には言ったの?告白を断った理由」
「・・・言ってないよ。一応言おうとはしたけど、その瞬間に黎奈が泣いちゃってさ。まあそれでも黎奈は納得してくれてるみたいだったし、わざわざ言うことでも無いかなと思っただけだ」
「はぁ・・・あんたの意志を否定する訳じゃ無いけど、あまり過去を引きずり過ぎないでよね」
「ん?それってどういう・・・」
「じゃあ私はもう寝るわ」
僕がそれを聞きかけた所で、陽向はそう言ってリビングを出て行ってしまった。
「・・・引きずってるわけじゃない・・・僕は背負ってるんだよ、陽向」
一人になったリビングで、僕はそう呟くのだった。
「よう、手伝いに来たぞ~」
数日後、僕は編集の手伝いをするため、いつもの様に琉輝の部屋に来ていた。
思えばここ数日編集の手伝いをしに来て無かったなと思いつつ、僕は編集用のパソコンを起動する。
「よろしく、ファイルは送っといたから頼んだよ」
「分かった」
僕はパソコンの起動が完了し終えると、琉輝から送られてきた動画ファイルを開いて編集を始める。
「・・・黎奈ちゃんの事、振ったんでしょ?」
「・・・ああ」
ここ数日琉輝の部屋に来てなかったため、琉輝と会話することも無かった。そのためか、数日前に黎奈から告白された件を琉輝から聞かれる。
というかなぜ琉輝は黎奈が告白したことを知っているんだ?
「黎奈ちゃんの好きな人が駿君って事は察してたけど、まさか振られるとはね。告白さえすれば絶対成功すると思ってたよ」
「・・・その口振りからしてお前、なんかしてたな」
「・・・うん、ちょっとアドバイスしただけだけどね」
琉輝は苦笑を浮かべつつ、そう言う。
「何か理由があるんでしょ?黎奈ちゃんを振った理由」
「・・・まあ、な」
僕はそう簡潔に答えて話を切り、編集作業に戻る。
「終わったぁぁぁ」
「お疲れ、今日もありがとね」
午前2時、ようやく編集が終わった僕は、椅子に持たれて背伸びをしていた。
「うん、いい感じだね。あとはこれを予約投稿に設定してと・・・」
僕が編集した動画を確認して、動画投稿の設定をする琉輝に、僕は話を切り出す。
「琉輝、バイトしないか?」
「・・・は?」
それを聞いて呆気に取られたように固まる琉輝。
「いやな?知り合いの実家の旅館の仕事を手伝ってくれって言われてさ」
「へ~そうなんだ」
「今週末から3日間泊まり込みで旅館の手伝いをするらしいんだが、琉輝も一緒に来ないかと思ってさ」
普段、部屋に籠もってばかりいる琉輝にはちょうどいいと思って誘ったのだ。
その誘いに少し考えたあと
「駿君も来るんでしょ?なら行こうかな、配信のトークのネタにもなるし」
「意外だな、てっきり断るのかと思ってたが」
配信活動第一の琉輝が素直に来ると言ってくれるとは、少々意外に思ってしまう。
「まあ、動画投稿もしたいし、配信もしたいけどね・・・でもボクを誘ったって事は、その間に投稿する用の動画は編集してくれるんでしょ?」
「・・・あ・・・まあな!」
完全に忘れていた。
琉輝が旅館でバイトする3日の間、流石に活動を休止するわけには行かないらしい。配信はしないにしてもせめて動画は投稿するのが当然だよなぁ。
「動画さえ撮っといてくれたら、暇な時間に編集して投稿しとくよ」
「ありがとね。じゃ、その知り合いに行くってことで伝えといて」
「ああ」
こうして、僕と琉輝は旅館で手伝いをすることになったのだった。
「・・・ねぇ」
黎奈とデートに行って告白された日の夜、僕は陽向に詰め寄られていた。ちなみに黎奈と結希はもう寝ており、琉輝は恐らく配信をしているため、今リビングには僕と陽向の2人きりだ。
「ん、何だ?」
「はぁ・・・私が何を聞きたいか、分かってるんでしょ?」
陽向は僕の目を見ながら、そう言ってため息を付く。
「・・・黎奈に告られたんでしょ?」
「まあ、そうだな」
そこまでバレているのなら、もうしらばっくれる理由も無いなと思い、僕は白状する。
「なんで分かった?」
「そりゃ、あんたらがデートに行って帰ってきたら、黎奈の様子がいつもと違うかったからよ」
「はぁ、お前もよく見てるな」
こいつはだらし無くてぶっきらぼうな所もあるが、シェアハウスの皆の事をよく見て気にかけている。それで今日の黎奈の様子が違う事にも気づいたのだろう。
「で、保留にしたの?振ったの?」
僕と黎奈が付き合う事になったというのは想定してないのか。まあ事実だし、そうで無ければ黎奈が落ち込んでいるはずがないという推測なのだろう。
「・・・振ったよ」
「まあ、そうでしょうね。"私のことを振っておいて"他の女と付き合うなんて、神が許しても私が許さないわよ」
「それは悪かったって・・・」
もう2年前の事なのだが、その事を引き合いに出されると何も言い返せない。
「黎奈には言ったの?告白を断った理由」
「・・・言ってないよ。一応言おうとはしたけど、その瞬間に黎奈が泣いちゃってさ。まあそれでも黎奈は納得してくれてるみたいだったし、わざわざ言うことでも無いかなと思っただけだ」
「はぁ・・・あんたの意志を否定する訳じゃ無いけど、あまり過去を引きずり過ぎないでよね」
「ん?それってどういう・・・」
「じゃあ私はもう寝るわ」
僕がそれを聞きかけた所で、陽向はそう言ってリビングを出て行ってしまった。
「・・・引きずってるわけじゃない・・・僕は背負ってるんだよ、陽向」
一人になったリビングで、僕はそう呟くのだった。
「よう、手伝いに来たぞ~」
数日後、僕は編集の手伝いをするため、いつもの様に琉輝の部屋に来ていた。
思えばここ数日編集の手伝いをしに来て無かったなと思いつつ、僕は編集用のパソコンを起動する。
「よろしく、ファイルは送っといたから頼んだよ」
「分かった」
僕はパソコンの起動が完了し終えると、琉輝から送られてきた動画ファイルを開いて編集を始める。
「・・・黎奈ちゃんの事、振ったんでしょ?」
「・・・ああ」
ここ数日琉輝の部屋に来てなかったため、琉輝と会話することも無かった。そのためか、数日前に黎奈から告白された件を琉輝から聞かれる。
というかなぜ琉輝は黎奈が告白したことを知っているんだ?
「黎奈ちゃんの好きな人が駿君って事は察してたけど、まさか振られるとはね。告白さえすれば絶対成功すると思ってたよ」
「・・・その口振りからしてお前、なんかしてたな」
「・・・うん、ちょっとアドバイスしただけだけどね」
琉輝は苦笑を浮かべつつ、そう言う。
「何か理由があるんでしょ?黎奈ちゃんを振った理由」
「・・・まあ、な」
僕はそう簡潔に答えて話を切り、編集作業に戻る。
「終わったぁぁぁ」
「お疲れ、今日もありがとね」
午前2時、ようやく編集が終わった僕は、椅子に持たれて背伸びをしていた。
「うん、いい感じだね。あとはこれを予約投稿に設定してと・・・」
僕が編集した動画を確認して、動画投稿の設定をする琉輝に、僕は話を切り出す。
「琉輝、バイトしないか?」
「・・・は?」
それを聞いて呆気に取られたように固まる琉輝。
「いやな?知り合いの実家の旅館の仕事を手伝ってくれって言われてさ」
「へ~そうなんだ」
「今週末から3日間泊まり込みで旅館の手伝いをするらしいんだが、琉輝も一緒に来ないかと思ってさ」
普段、部屋に籠もってばかりいる琉輝にはちょうどいいと思って誘ったのだ。
その誘いに少し考えたあと
「駿君も来るんでしょ?なら行こうかな、配信のトークのネタにもなるし」
「意外だな、てっきり断るのかと思ってたが」
配信活動第一の琉輝が素直に来ると言ってくれるとは、少々意外に思ってしまう。
「まあ、動画投稿もしたいし、配信もしたいけどね・・・でもボクを誘ったって事は、その間に投稿する用の動画は編集してくれるんでしょ?」
「・・・あ・・・まあな!」
完全に忘れていた。
琉輝が旅館でバイトする3日の間、流石に活動を休止するわけには行かないらしい。配信はしないにしてもせめて動画は投稿するのが当然だよなぁ。
「動画さえ撮っといてくれたら、暇な時間に編集して投稿しとくよ」
「ありがとね。じゃ、その知り合いに行くってことで伝えといて」
「ああ」
こうして、僕と琉輝は旅館で手伝いをすることになったのだった。
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